高校3年の終わりごろ、茨城の中学時代の友人から、「A子が、ニューフェイスとして俳優デビュー」と知らされ、やった!と思った。A子は、学年ナンバー1というより、学校でも、あるいは町の女子高生を含めても、随一の美女と言える存在だったからだ。 私が思ったのは、当時の男子高校生の憧れの的だった若尾文子さん、南田洋子さんのような明るさより、どこか影のある雰囲気の役で成功するのではないかということだった。 大映か松竹かなどと想像しているうちに、また友人から手紙が来て、A子は新劇のZ座に入るという。私はガッカリした。 Z座は左翼系として名高く、どこかA子の美貌が活きない気がした。 私はA子に手紙を書こうと思ったが、ある思想に取り込まれた人間には通じないと考えてあきらめた。 数年後、A子は同じ劇団仲間と結婚し、間もなく離婚、劇団も去った。そして、その悲嘆の彼女を受け入れたのが、これも同級生のB子だった。以後、二人は(たぶん現在でも)二人だけの生活を続けている。 私は、男同士の性愛は全く理解できないし、想像することも不可能だ。しかし女性同士の方は、わずかではあるが、わかる気もする。 A子は、左翼思想についていけなかったのだと思う詞、そういう色に染まった男性との生活は、苦難の2文字だったのだろう。 私は(同級生でありながら)B子のことはよく知らないのだけれど、A子が救いを求めたのが男性ではなかったことを(彼女の美貌と重ね合わせて)どこかほっとした気持ちで懐古している。
男性も女性もやるスポーツは、女性を観る方がおもしろいと言ったのは、山口瞳先生であるが、そのい最たる例はフィギュアスケートだろう。若い女性があれほどの角度で開脚し、しかもそれがごく自然であるというのが凄いと思う。 テニスも女性美を感じる競技だ。シャラポワ選手は充分に或る種のファッションモデルが務まるはずだ。 バレーボールも女性のものだと思うのは、昭和39年の東京五輪の東洋の魔女が頭に残っているからだけでなくう、あの、転びながらのレシーヴに、女性ならではの魅力がある。 ゴルフも、石川遼君より宮里藍ちゃんだし、卓球の福原愛ちゃんは60歳になっても老けない顔だ。 と書いてくると、競技そのものよりも、女性とスポーツと色気の話になってしまうが、その伏線というか、遠い昔の思い出がある。 昭和23年か24年か、女子プロ野球チームがいくつか結成され、その中の1ツ『ロマンス・ブルーバード』なるチーム(ロマンスという雑誌の宣伝用)が、茨城の町にやってきて、小学校のグラウンドで、町の選抜チーム(男子)と対戦した。ロマンス・ブルーバード軍のユニフォームは下が短パンだった。当時、女性の短パン姿は珍しく、若い女性の膝小僧と、その上の数センチの白い肌を見るのは、12歳の私でも胸が高鳴った。それが後に、石川遼よりも宮里藍~につながるのかどうか、山口瞳の名言とは無関係のものになっているのかどうかはわからない。とにかく、いまや、膝小僧どころか、女子マラソンもすべて、ヘソ出しルックになった。
原因不明(MRI検査をしても異常なし)の股関節痛が1カ月間続いていた娘が、痛みが消えたと喜んでいる。こういうことは時にはあるもので、私も50代のころ、鼻血が4時間も止まらず、それでもなんでもなかった経験がある。 NHK杯将棋は、名前をきいたことのない若手同士の対戦で、『刑事コロンボ』のDVDを観る。 やはり、テレビ将棋は、名前で観たい。 昼食は市販のドリア。器ごと買ってきてレンジで温めるだけの、まさにインスタンドだが、味は悪くない(エビもたっぷり入っていた)。 家人に値段を訊いたが、笑って答えないので、私の予想では300~500円よりは安いのだろう。 競馬フローラステークスに(この前書いた)ミッドサマーフェア(持ち主はドバイの王様 モハメド殿下)が出走してきたので、買っても負けても買いだ。 馬連で5点買いして的中したが、いちばん安い目が入って配当は7.3倍。 でも、気分はいい。 先週末のニューヨーク株(ダウ平均)は60ドル高。 ナスダックが横ばいなので、明日の東京マーケットも大きな上下はないだろう。それにしても、復興ブームが起こらない。 最近、ますます少食になった。ただし、酒は以前と同様に呑めるし、少食といっても食べ物自体は旨いから、ただ胃袋が小さくなっているのだろう。今夜は、水割りの前に、次女にもらった会津・宮泉の初しぼりのオン・ザ・ロックスを1杯。
のんべえは、飲兵衛と書くのが正しいのかもしれぬが、私は呑ん平と書きたくなる。そして、呑ん平とは、酒を愛してしまった(愛してやまぬ)人達を言う言葉である。 昭和40年代まで、JR千の鶴見駅に近い線路傍にホドヂンと書かれた(かなり大きいので乗客の目をひく)広告塔があった。あるとき下請け会社の社長のA氏と雑談になったときに、その広告のことが話題となり、A氏が、「あれは、呑めるんです」と言った。訊いてみると、ホドヂンは一種の消毒薬であって、エチルアルコールの成分が入っていると言う(メチルアルコールを摂取すると、人間は、よくて失明、たいていは死亡するが、エチルの方はヤバくない)。 A氏は軍隊経験があり、その期間中に何か呑めるアルコールはないかと探し続けていて、その中に、安全な消毒薬があったのだろう。 つまり、いかなる欠乏の時代でも、呑ん平はアルコールを発見するのだろう。やがて、終戦となってA氏は復員するが、そのとき航空燃料なるものを持ち帰り、これが呑めるアルコールで、A氏がソレを紅茶で割って(ヤミで)販売すると、飛ぶように売れたそうだ。 A氏と酒を呑むと楽しかった。 A氏は、実に旨そうにグラスを傾けた。 酒灼けした頬が、いかにも一級品の呑ん平だった。 ランクをつけるとすれば、A氏はライオン級であり、私はモスキート級だった。A氏が、「戦争はいけませんなぁ」と呟くと、重みがあり、その辺の平和愛好者とは異なる貫禄があった。 山口瞳先生は、軍旗祭の日に、兵隊に1杯の酒すら配給できないのなら、もう戦争は(その時点で)やめるべきだと書いているが、その通りだろう。
ミカちゃんって、どんな字?、 ウツクシイにチュウカのカ・・・。 隣室から、家人と娘の話す声がきこえてくる。なるほどと思う。 華の文字を華麗、豪華、華美などと言うより中華の華と言う方がわかりやすい。しかし、美華ちゃん本人は自分の名を誰かに説明するときにチュウカのカと言うだろうか。 この前、テレビで或る若い女性タレントが、この文字のことを「ハナという字の、イカツイ方」と言っていたが、これもなるほどである。 花より華の方がイカツイと表現できる人は、そう多くはないだろう。 この前のセンバツのとき、大会の歴史紹介の中で、懐かしい言葉がでてきた。「泣くな別所、センバツの華!」である。 別所とは、戦前の大会でナンバー1投手として名を馳せた別所昭(のちに毅彦と改名。プロ入りして南海・巨人のエースとなる)のことで、彼のいた滝川中(兵庫)は強力な優勝候補だったが、途中の試合で左腕を骨折、それでも次の試合には左腕にサポーターを巻いてマウンドに上がる。むろん敗退するのだが、その姿を讃えた新聞の記事が「泣くな~」であって、いわばセンバツ球史に残る名文なのだ。 活け花の道をきわめることを華道と言うのかと思うが、これを花道とすると、どこか男の花道のような印象になってしまうから、ここは華でなければなるまい。やはり、イカツイ方でなければなるまい。 そうそう、このイカツイを言ったのは、たしか大下か木下という姓だったと、いま思い出した。彼女は何者なのか。