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呑ん平

2012-04-22 08:45:28 | 日記
のんべえは、飲兵衛と書くのが正しいのかもしれぬが、私は呑ん平と書きたくなる。そして、呑ん平とは、酒を愛してしまった(愛してやまぬ)人達を言う言葉である。 昭和40年代まで、JR千の鶴見駅に近い線路傍にホドヂンと書かれた(かなり大きいので乗客の目をひく)広告塔があった。あるとき下請け会社の社長のA氏と雑談になったときに、その広告のことが話題となり、A氏が、「あれは、呑めるんです」と言った。訊いてみると、ホドヂンは一種の消毒薬であって、エチルアルコールの成分が入っていると言う(メチルアルコールを摂取すると、人間は、よくて失明、たいていは死亡するが、エチルの方はヤバくない)。 A氏は軍隊経験があり、その期間中に何か呑めるアルコールはないかと探し続けていて、その中に、安全な消毒薬があったのだろう。 つまり、いかなる欠乏の時代でも、呑ん平はアルコールを発見するのだろう。やがて、終戦となってA氏は復員するが、そのとき航空燃料なるものを持ち帰り、これが呑めるアルコールで、A氏がソレを紅茶で割って(ヤミで)販売すると、飛ぶように売れたそうだ。  A氏と酒を呑むと楽しかった。 A氏は、実に旨そうにグラスを傾けた。 酒灼けした頬が、いかにも一級品の呑ん平だった。 ランクをつけるとすれば、A氏はライオン級であり、私はモスキート級だった。A氏が、「戦争はいけませんなぁ」と呟くと、重みがあり、その辺の平和愛好者とは異なる貫禄があった。 山口瞳先生は、軍旗祭の日に、兵隊に1杯の酒すら配給できないのなら、もう戦争は(その時点で)やめるべきだと書いているが、その通りだろう。

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