大木昌の雑記帳

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「森友問題」とは何なのか?―エリート官僚の哀しさ―

2018-03-18 16:25:59 | 政治
「森友問題」とは何なのか?―エリート官僚の哀しさ―

そろそろ世間の話題から消えてしまいそうになっていた、いわゆる「森友問題」が、今年に入って、
にわかに火を吹き始めました。

全ては、昨年2月17日の衆議院予算員会で、安倍首相が「私や妻が関係していたということになれ
ば、これはもうまさに総理大臣も国会議員も辞めるということははっきり申し上げておきたい」、と
いう言葉から始まりました。

この時から、政府と官僚との間で、前代未聞の、決裁文書の改ざんが始まったのです。

確認しておくと、決裁文書とは、各官庁が何らかの決定をした際に、その経緯や内容を記した公文書で、
そこには決裁に関係した官庁の役職者が内容を確認して確認印を押したものです。

これは、ある決定がなぜなされたのかを、後から歴史的な検証できるようにするために作成されるもの
で、もしろん、これは国民の知的共有財産であり、民主主義の根幹です。

もし、こうした決済文書を隠したり改ざんされるなら、国民には本当のことが知らされることなく、権
力を持つ者は何でもできてしまうのです。

森友学園に関連して、今年に入ってさまざまなことが、明るみに出てきました。

そのきっかけは、『朝日新聞』が今年の3月2日に、森友関連の公文書(決裁文書)が書き変えられた
疑いがある、と報じたことです。

政府は、もう森友問題は乗り切ったと思っていた矢先に重大な問題が勃発したのです。

その後の経緯は、メディアで繰り返して報じられているので、ここでくわしく説明するまでもありません
が、要点だけを整理しておきます。

① 佐川宣寿元財務省理財局長は国会答弁で、森友学園との土地取引に関する文書は、事案が終了したの
で全て破棄した、と何度も証言した。

② ところが、実際には、その時の決裁文書が存在していたことが後に判明し、財務省理財局も認めて、
決裁文書を国会に提出した。

③ しかし、この決裁文書は改ざんされたもので、それとは別の決裁文書(改ざんまえの文書)が存在す
ることも明かとなった。

④ 新たに明るみに出た決裁文書と国会に提出されたものと比較すると、国会に提出された方の文書から
は、政治家(安倍首相、麻生財務大臣、ほか政治家4~5名)、安倍昭惠夫人の名前、値段交渉の経緯な
ど、この契約が「特例的である」ことの記載などが大幅に削除されていることが判明。

⑤ 全14の文書、70ぺ―ジに300か所に近い改ざんが行われていた。

⑥ 現在まで、所管の大臣である麻生財務大臣は、森友関係の決裁文書書き変えは、財務省理財局の一部
の職員が勝手に行い、その責任は佐川元局長にあると繰り返し述べています。

さて、以上の中には多くの矛盾と虚偽が含まれています。

まず、①について、佐川氏は、事案が終了したから関連文書を廃棄した、と言っていますが、もし本当だ
としたら、これは明らかに問題です。なぜなら、この土地取引は売り払い前提の10年の借地契約です。
そして、1億円あまりの土地代金も10年の分割払い、という特例中の特例です。いずれにしても、10
年間はまだ取引は完結していないのです。

もし、何らかの問題が起こった場合、国の財産を管理する理財局は、契約条件の証拠として文書は残さな
ければなりません。

②改ざんした文書を国会に提出したことは、国権の最高機関であり国民によって選挙で選ばれた国民の代
表が構成する国会(したがって国民)を欺いたことになります。公文書を偽造した者は1年以上10年未
満の刑事罰に該当します。

付け加えると、財務省は、国会だけでなく国土交通省にも大阪地検にも改ざん後の文書を提出しています。

③決裁文書とは、最終決定の文書であり、一つの案件については「最終」文書はひとつしかないはずですが
全く同じ日付で同じ人物が承認印を押した文書が二通あるという事自体、絶対にあり得ないし、あってはな
らないことです。

④と⑤ 政治家や昭惠夫人の名前だけでなく、財務局とのやり取りなども削除されていたことは、これらの
事実が明るみに出ると政権にとってまずいからでしょう。

むしろ、これらの名前を消してつじつまを合わせるために文書全体の大幅な削除と書き変えが必要となった
としか考えられません。

⑥に関して、もし、国の行政に関わる決裁文書が、一部の職員によってどうにでも書き換えられたとすると、
それは民主主義の根幹を揺るがす大事件である、という認識が麻生氏の頭には全くありません。

とにかく麻生には、佐川氏個人に全ての責任を押しつけることしか頭にないようです。

官僚が、自分の判断で文書を改ざんすることはあり得ません。佐川氏は、決裁文書の改ざんが重大な罪にな
ることを十分知っていながら、それでも、なぜ、あのような虚偽発言をしなければならならなかったのか。
ここが問題の本質です。

つまり、自らを危険にさらしてもウソを言わなければならないほどの大きな力が働いていた、ということし
か考えられません。

これに関して自民党の村上衆議院議員は、防衛省(稲田防衛相当時)のPKO日報隠蔽問題、加計学園問題
の加計氏、今回の籠池氏をめぐる森友問題、これら全ては安倍氏のお友達関係、安倍さんから発している、
と、テレビカメラの前で率直に発言しています。

ところで、最近、二つの重要な事実が明らかになりました。

一つは、森友学園の小学校建設の工事を請け負った土木会社が大阪地検に、土地の地下から出てきたゴミの
量に関して、財務省理財局の方から虚偽の報告を書くよう要請され、そのように書類を作ったと証言してい
たことです。

つまり、8億円以上の値引きの根拠となる地中のゴミは、地下9メートルどころか3.8メートルでさえ確
認していなかったことが明らかになったのです。この部分はすっぽりと削除されています。

二つは、財務省がこれまで「本省には残っていない」と言い張っていた森友関連の決裁文書の改ざん前の原本
が本省の電子決裁システムに保存されていたことが分かったことです。

このシステムは中央省庁が採用している文書管理システムで、参議院財政金融委員会の委員の1人が先週、
この中に書き換えの記録が残っているのでは?」と質問すると、現太田充理財局長は
     
    文書を一元的に管理するシステムで、書き換えを行うと、書き換え後の文書とともに書き換え前の
    文書も保存される。更新履歴をたどれば確認できる。調査の過程でこのことを知った

と曝露してしまいました(注1)。

このような重要なことを佐川氏のようなエリート官僚が知らないわけはありません。

こうしてみてくると、一つの核心的な事実を隠そうとすると、次々と他の部分もつじつま合わせのために改
ざんが必要となることが分ります。

しかし、こうしてボロボロといろんな事実が明るみになっているということは、隠そうとしてもすべてを隠
すことはできない、という実態も明らかになりました。

佐川氏は国会で証人喚問に呼ばれるようですが、辞任と退職に追いやられてもなお、やはり死ぬまで本当の
ことを言わないでしょう。

佐川氏だけでなく、野党のヒヤリングに出席している財務省の富山一成氏も、佐川氏と同様、鉄面皮の顔で、
苦しい言い訳を言い続けていますが、内心ではどんな気持ちでいるのでしょうか?

東大を出て誇り高い財務省のキャリア官僚となった人物が、カメラの前で苦しい言い訳をしている姿をみて
いると、プライドも権威も失われ、哀れをもようします。

彼らは心の中で、自分は日本を背負って仕事をするために官僚になったのに、なぜ、こんなことのために自
分のようなエリートが恥をかかされなければならないのか、と思っているのではないでしょうか?

(注1)『日刊ゲンダイ デジタル』(2018年3月18日) https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/225274

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