大木昌の雑記帳

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子どもの世界(4)―子どもの恋物語―

2015-03-22 13:24:51 | 社会
子どもの世界(4)―子どもの恋物語―

小学1年生が,大人と同じような恋愛感情をもっているということを,大人はほとんど分かっていません。

しかし,子どもたちは驚くほど豊かな恋愛感情をもち,それを率直に語っています。その対象は,同級生や先生にも向けられます。

やきもち   だこだ しげあき
    やきもちゆうたら
    おとことおんなが
    あいしあうことや

しげあき君は,愛し合っているからやきもちを焼くことを知っています。小学1年生でこれが分かっているとは,たいしたものです。
 
すきどうし  かわつ ゆう
    おおはたさんはかじくんがすきで / かじくんはおおはたさんがきらいで
    かじくんはわたしがすきで / わたしはかじくんがきらいです
    せんせい こういうとき / どうすればいいのかおしえてください

子どもの間にも大人顔負けの三角関係があるんですね。聞かれた先生はどんなふうに答えたのでしょうか?

デート   とさ ようこ
    ゆうきちゃんとかえりました
    「いっしょにあそぼ」といいました
    でもゆうきちゃんがあそばれないといいました
    だれにもいうたらあかんで
    きょうふくがきくんとデートやねんといいました

ようこちゃんにとって,同性のゆうきちゃんと遊ぶより,「彼」(ふくがき君)とのデートの方が優先するんですね。

ぼういふれんど   かたひら ちさと
    おにいちゃんのおともだちとあそびました
    おおはまひろしくんゆうなまえです
    わたしがてをつないだら / てれるのうとゆいました
    かえりてをつないで / ばいばいっていいました

ちさとちゃんは,とっても積極的な女の子です。なにより,詩のタイトルを「ぼういふれんど」,としているように,
お兄ちゃんのお友達をもうすっかり恋人として,自分から手をつないでゆきます。

こんな風に,ごく自然に子どもの心に恋愛感情がはぐくまれてゆくのが理想的なのでしょう。

かのじょ    むらかみ まりこ
    そらのかみさんにでんわをしたけど
    だれがでたとおもう / せんせいのいえにかかったよ
    おんなのひとがでたよ
    まりこはすごくどきどきしたよ
    もしかして / かしま先生のかのじょじゃないのかなあ
    いいなあ / まりこもかれしがほしいよ 

鹿島先生は,かみさまの電話番号といって,実は自分の家の番号を生徒に教えてありました。
電話をすると女の人が出たので,まりこちゃんは「すごくどきどきした」と書いています。

まりこちゃんは,鹿島先生が結婚していることは知っているので,もしこの女性が先生の「彼女」だとしたら,
と思ってどきどきしたのでしょうか。真偽のほどは本人しか分かりません。

この電話で,まりこちゃんも「かれしがほしいよ」と痛切に思ったようです。小学1年生ともなると,
女の子はもう「かれし」が欲しくなるんですね。

子どもたちは,自分の恋愛感情をさまざまな表現で語りますが,男の子と女の子では違いがあります。

   おだ てるゆき
    もてる男は / つらい!
    もてない男も / つらい!

短いけれども,ズバリ真理をついた秀逸の詩です。てるゆき君は,「もてる男」の辛さを経験したのでしょうか,
それとも「もてない男」の辛さを体験したのでしょうか?   

すきな女の子   きむら しょういち
    ぼくはたまにすきな女の子のことを / かんがえるときがある
    わらっとうときのかおがすきやねん
    まえはすきな子がいっぱいおったけど
    いまはひとりだけでいいとおもっている

しょういち君はどうやら惚れやすい性格だったのに,今は一人でいいと思うようになったようです。
何がきっかけでこの変化が起こったのでしょうか?

男の子の異性にたいする感覚は,どちらかというと頭の中で考えたことが中心ですが,女の子の場合は,
かなり大人の恋愛感情に近いものがあります。
 
くごくん   ないとう ようこ
    わたしが「くごくん だいすき」っと / かんじをだしていったら
    おかあさんは「まけそー」といって / ひっくりかえりました
    それにしてもどうしてくごくんは / あんなにきれいなかおをしているんだろう
    くごくんのかおをみると / ちからがぬけて
    からだがふにゃふにゃになります
    かみさま / どうしてかおしえてください

ようこちゃんには,くご君に対する気もちを書いた詩がもう一つあります。

デート   ないとう ようこ
    くごくんとデートしながらかえりました
    からだがほんわかして / きもちがよかったよ
    みちがずっとずっとつづけば / いいのにとおもいました

どうですか? ようこちゃんのくご君にたいする想いは,もう大人の恋愛感情と全く同じです。もうほとんど,
くご君にメロメロといった感じです。

しかも,くごくんという異性への愛情を,「ちからがぬけて からだがふにゃふにゃに」なったり,
「からだがほんわかして」気持ち良くなるなど,体でしっかり感じています。

ちゅう    みぞがみ さえこ
    せんせい / きょうかえるとき
    ちゅうしたやろ / おぼえておくで
    さえこ あのとき / せんせいがすきになりました
    そのとき / むねがどきどきしました

さえこちゃんも,ちゅう(キス)によって先生に対して「好き」という恋愛感情が芽生えたことを素直に書いています。

ようこちゃんも,さえこちゃんも,具体的には分からなくても,これが異性に対する性的衝動であることを本能的に体で感じています。

先生にたいしていだく想いは,上に引用したさえこちゃんの例ほど直接的ではありませんが,
ほのかな愛情を抱いていることは珍しくありません。

やくしまる ひろこ    たかせ けいこ
    せんせいは / やくしまるひろこさんを
    ほんとうにすきなんですか
    せんせいは / ほんとうにけっこんしたいのですか
    わたしはできないとおもいます
    だってとうきょうの人だし / せんせいはおくさんがいるんでしょ
    それにわたしがいるんですよ
    わたしも先生がすきだからね

けいこちゃんは,先生が薬師丸ひろこが大好きなこと,奥さんがいることを知っていながら,それでも「それにわたしがいるんですよ」
と言います。小学1年生とはいえ,強力なライバルと張り合う勢いです。もう一人前の「女」ですね。

以上,子どもたちは,心の中にある異性への恋愛観を,隠したり作ったりすることなく,ありのままの「恋の物語」
を赤裸々に表現しています。

これらの詩から私たちは,子どもたちが,大人の想像や思い込みを超えた,はるかに豊かな恋愛観をもっており,
そして日々,それを感じていることを知ることができます。
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