大木昌の雑記帳

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新規感染者激減のナゾ―ウイルスの自壊か周期なのか―

2021-11-02 21:54:59 | 健康・医療
新規感染者激減のナゾ―ウイルスの自壊か周期なのか―

日本における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のまん延は、第五波で2021年8月20日
の新規感染者は全国で2万5851人をピークに達しました。この背景には、感染力が極めて
強いウイルスの変異株、アルファ株やデルタ株の流行がありました。

しかし、このピークを境に新規感染者は急減しました。緊急事態宣言とまん延防止等重点措置
が廃止された9月30日には、1574人と、ピーク時の6%、15分の1以下に激減し、も
はや収束したかのような数字になっています。

このころ、この急激な減少にたいして、専門家の間でも、なぜ、急減したのかについてさまざ
まな議論や仮説が発表されてきましたが、未だに決定的な説明は現れていません。

専門家を代表して、感染症対策分科会会長の尾身氏が9月28日に、5つの仮説を発表しまし
た。これにつては本ブログの2021年10月5日の「コロナ新規感染者急減の謎」というタイト
ルで紹介しましてあります。

だれもが、収束の要因として挙げるのはワクチン接種率の増加です。菅元首相は、5月くらい
から、とにかくワクチンさえ広まればコロナ問題は解決すると、1日100万人の接種を各自
治体に圧力をかけていました。私もこれを否定するわけではありません。

しかし、ワクチンの効果を過大評価することもできません。というのも、欧米各国は日本より
早くから、ワクチンを接種してきており、イスラエルにいたっては80%の人が二回目のワク
チンを接種しているのに、現在まで増減を繰り返しているからです。

イギリスにおいても、早くからワクチン接種をはじめ10月末には二回接種者の割合が70%
に達しているのに、1日の感染者が5万人に達しています。日本の人口はイギリスの2倍ですか
ら、この数字を日本に当てはめると、1日10万人ということになります。

いずれにしても、日本における新規感染者の減り方、そのスピードは世界に例がありません。
たとえば、東京と大阪をみると、ピークの8月13日には、5773人もの新規感染者が出た
のに、11月1には何と、わずか9人でした!

こうした減少をみて、最近、二つの興味深い説が登場しました。

一つはウイルスの自滅説(自壊説)です。児玉龍彦(東大名誉教授)によれば、これはノーベル
賞受賞者でもあるエイゲン(Manfred Eigen)が1971年に予言した『エラー・カタストロフの限
界(ミスによる破局)』という概念です。

この内容は私のような素人には分かりにくい内容ですが、簡単にいうと次のようなことらしい。

つまり、ウイルスは増殖の過程でミス・コピーが生じて、色んなタイプの変異種ができる。新型
コロナウイルスは、ウイルスの生存に有利な「正の選択」を行うミスコピーの修復システム(一
群の酵素)を持っている。しかし、この修復酵素が何らかの理由で変質させられて変異種を作り
出してしまい、しかもそれが一定の限界を超えて増えてしまうと「エラー・カタストロフ」(大
量のミス・コピーによって修復が不能になって、突如として自壊します、というほどの意味か)
が起きる可能性がある。

ただし児玉氏は、「デルタ株が支配的な日本で急速に感染者数が減っているのは妙だが、エラー・
カタストロフの限界によって自壊しているのだとしても感染防御の手を緩めてはいけない、と警告
しています(注1)。

二つ目の説は、いわばコロナ流行の4か月周期説です。



まず、上のグラフを見ていただけると分かりますが、コロナの流行は、ワクチンの接種や人の流れ
とは関係なく、第一波から第五波まで、ほぼ規則的に始まりから収束まで4か月周期で増減を繰り
返してきました(注2)。

特に注意すべき事実は、第一波から第四波までは、ワクチン接種がほとんど進んでいなかった時期
です。それでも、時間が経つと自然に収束していったのです。

この法則を見つけ出した京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授は、
    第5波が収束したのは、感染症の波とは上がっては下がるものだから。感染者数が天井知ら
    ずに増加するというのは間違いで、人流は主要因ではありません。
    昨年の第1波も、緊急事態宣言が出された4月7日にはすでにピークアウトしていましたが、
    宣言を出してからも、感染者数の減少スピードは一定でした。緊急事態宣言による人流抑
    制が、感染者数に影響するなら、減少スピードは加速するはずです。第3波も同様で、12月
    末にはピークアウトしましたが、今年1月8日に緊急事態宣言が出され、以後、減少スピード
    はむしろ遅くなりました
と、言い切ります。

また、東京大学名誉教授で、食の安全・安心財団理事長の唐木英明氏も、「現象論として、第1波か
ら今回の第5波まで、4カ月周期で非常に規則正しく波がやってきています」とのべています。

唐木氏はさらに、「なにかが原因で流行し、対策をしたから下がった、というものではなく、かなり
自然要因で増減しています」とのことです。 その「自然要因」とは、 「ウイルスの性質によるもの
なのか、季節が関係しているのかわかりません。いずれにせよ、人為的にコントロールできるもので
はなく、可能なのは波の高さを変えることくらいです。実は、WHOによる世界の感染者数と死亡者数
のデータを見ても、4カ月周期の同じ傾向がわかります」とも指摘しています(注3)。

科学的根拠はありませんが、私はウイルスの自壊説も、周期説も非常に説得力があり、納得します。

今回の衆院選で菅元首相は、現在陽性者が減っているのは、私が努力したワクチン接種の成果だと強
調していましたが、ワクチンが陽性者の現象にどれほど効果があったのかは、今の段階では不明です。
主としてワクチン側の事情で、減少の周期に入っただけなのかもしれません。

宮沢氏によれば、次の感染者増加の周期は1か月後の12月に始まると、予測しています。
 

                      注

(注1)Yahoo News (2021年10月5日) https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20211005-00261667
  なお、2002年から翌年にかけて一部地域で流行したサーズ(SARS)も、2002年から翌年に
  かけて一部地域で流行したが、ある時、忽然と消滅してしまったことを考えると、ありえない事
  ではない。
(注2)NHKデジタル ニュース https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/entire/
(注3)Yahoo News (2021年9月29(水) 5:57配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/a6c6b7e6bb21431b5ba32a4e19608f8874b7e65f?page=2
 


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