初恋 島崎藤村 

2023-06-16 07:45:07 | Jポップス
朗読 

舟木一夫



まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり

わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな

林檎畠の樹(こ)の下に
おのづからなる細道は
誰(た)が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ






オリジナルは昭和38年11月に「男の道/初恋」で小林旭が歌っています。

昭和の抒情歌の伝統に連なる曲調ですが、古くからの歌曲ではなく、小林旭のために作られた曲でした。

小林旭はその2年前に「北帰行/惜別の唄」(昭36-10)で藤村の詩を原型とする「惜別の唄」を歌った実績があったからかも知れません。

島崎藤村の詩「初恋」が作曲されたのはこれが初めてではありません。

古くは大中寅二(藤村の詩「椰子の実」の作曲者)による曲がありますが、これは唱歌風の曲調でした。



島崎藤村 「初恋」オリジナル曲(Original song)



だから、「初恋」を見事な抒情歌謡に仕立てたのは若松甲の功績です。(たぶん「惜別の唄」の曲調を踏まえての作曲だったでしょう。)

若松甲はその前年、昭和37年に作曲家生活を始めたばかりでした。

その「初恋」を8年後に舟木一夫がアレンジを変えて歌います。

小林旭の甲高く突き抜ける声質で生かしきれなかった抒情性を見事に歌いあげて、舟木一夫、久々の大ヒットになります。

昭和46年=1971年の紅白歌合戦でも舟木は「初恋」を歌います。

青春歌謡歌手としての舟木一夫がひとり支えてきた反時代的抒情の最後の光芒でした。

































































































































































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