「淡味清麗の料理法」
さて、ご家庭では料亭や高級レストランのように有り余る材料をほしいままにする
ということはなかなか叶うものではありません。
時間的・経済的にも制約が多くて
限られた品数で満足感を得るには大変な工夫を凝らさねばなりません。
この点においては本来、ご家庭のほうが、
より献立の構成が重要となるべきものであります。
俗に「一汁一菜」「一汁三菜」と申しますが、
いかに「汁もの」と「菜」を組み合わせ、
ご飯との相性を見据えてそれぞれを補完し、
シンプルながらも不足のない組み合わせになるよう心掛けたいものです。
ここで言うところの「一汁一菜」の汁は味噌汁を指します。
茶懐石ではまず炊き立てのご飯と味噌汁で構成される一の膳をお出しします。
あくまでも献立の柱は有史以来、
日本人の食卓を構成する根幹のお米です。
すなわち「炊き立ての白いご飯をいかに美味しく頂くか」
この一点にありました。
最近では欧米の影響を受けて食習慣も多様化
ご飯の占めるウェイトもかなり低くなってきましたが、
やはり私たちにとってはご飯というものは特別なものであることに変わりはありません。
かと言って、味噌汁・おかずともに濃い味つけにしてしまうと
何気にご飯は進みますが、
本来の米の甘味や美味しさを覆い隠してしまいます。
やはり主役である米は少し手間をかけ、
一度は土鍋で炊かれることをお勧めいたします。
この土鍋を使えば、
驚くほど簡単にふわっとし、仕上がりのみずみずしいご飯を炊くことができます。
べつに特別な技を必要といたしません。
土の持つ素材が均等に熱を伝導させ、また著しく保温性を高め、少々の失敗を包み込んでくれます。
ご飯と相性の良いものは不思議と酒とも相性がよいものと思います。
考えてみれば酒の原料は米であるわけですから、
このことは至極当然のことなのでしょう。
ここでも先ほどの方程式が当てはまります。
すなわち、あまりにも塩味の利いた肴は酒がどんどん進みますが、
本来の酒そのものの味をこれまた覆い隠してしまいます。
料理の優劣は素材が9割を占めるものだと
常々思っています。
魚や野菜そのものの持ち味を下ごしらえや塩梅、加減によって
いかに引き出すことができるか。
このことこそが料理することの一番の目的です。
それなればこそ同じ筍でも孟宗竹(もうそうちく)筍は孟宗竹、
「淡竹(はちく)」や「根曲がりだけ」「真竹」「寒山竹」などとは違います。
そのような微妙な素味の違いを味わうことができますでしょう。
どうぞ皆様におかれましては、思い切ってこの
淡味清麗の料理法に挑戦なさってください。
今までに味わったことのない、「辛い・甘い・酸っぱい・苦い・塩辛い」
という五味の範疇に収まりきれない
滋味・妙味を発見なさること必定です。
うま味とは味の記憶です。
最近ではお母さん方が料理をしなくなって、"おふくろの味"が"袋の味"、
つまりパッケージされた食品の味になってきています。
今、そんな味の記憶をつくってくれる人がいなくなっているのは
悲しいことです。
また、味は教養です。
味を知っていることは教養であり、
料理は文化です。
淡味清麗の料理法
日本の文化を継承してほしいですね。
明日、四月十ニ日(火曜日) は通常の 営業日 です。
今日も、皆さんの happy な一日を願っています(^-^)
ゆったり、ほっこり♪
巻寿司大使・昆布料理研究家・岩佐 優