鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

山水図鐔 長義 Nagayoshi Tsuba

2019-02-12 | 鍔の歴史
山水図鐔 長義


山水図鐔 長義

 山の様子から我が国の風景と思える。静かに暮れ行くころ。赤銅地に微細な石目地を施して闇に包まれてゆく時間を表現している。霧に包まれているように、太陽や月を描かないのがまたいい。長義は一宮長常の門人。

山水図鍔 若芝 Jakushi tsuba

2019-02-08 | 鍔の歴史
山水図鍔 若芝


山水図鍔 若芝

 若芝も山水図を得意とした。一門はみな本作のような高彫に金銀の布目象嵌を施して絵画調の描画としている。特に布目象嵌の線が細く、金工作品では描法の難しいボカシに挑んで成功している。これによって特徴的存在感を示している。表は夕時で、帰雁、帰舟の賑わい感がある。裏は月が出ている、かなり落ち着いた風景。表裏で見事に描き分けている。

山水図鐔 光忠 Mitsutada Tsuba

2019-02-07 | 鍔の歴史
山水図鐔 光忠


山水図鐔 光忠

 桃山頃の名工埋忠明壽の一類で、明壽に先行する金工群とみられているのが古埋忠。中でも、まま銘が残されていて活躍の確かな金工が光忠。真鍮地に布目象嵌を施す手法による線描写を主とする、いかにも古風な描法であり、決して上手と追うわけではないが味わい深い、大きな魅力がある。鐔など装剣金工における、山水図の初期のものと捉えてよいだろう。

山水図鐔 龍青珉 Ryu-Seimin Toshinori Tsuba

2019-02-06 | 鍔の歴史
山水図鐔 龍青珉


山水図鐔 龍青珉

 東龍斎派の名人壽矩の、透き通るような作品。全体の造り込みに、東龍斎派独特の空気感がある。裏面は詩文の一節であろう。山の形様はなだらかながら、切り立って天を突く美しくい威容に目が行ってしまう。山陰には寺院。湖水の波にわずかに金の点象嵌を施して陽の照り輝く様子を表現している。一口に山水風景図といっても多様である。彫刻手法の違いだけでなく、いったい何を表現しようとしているのか、その背後にまで意識の働く作品があって興味は一入である。

山水図鐔 東雨 Tou Tsuba

2019-02-05 | 鍔の歴史
山水図鐔 東雨


山水図鐔 東雨

 土屋安親の、中国の水墨画を見るような、鉄地一色の素材に薄肉彫表現からなる作。それほど肉高く彫り出しているわけではないのだが、遠近感があり、霧に浮かびあがる奇岩、かすかに見えるのは夕日だろうかここだけが銀象嵌、遠くの天を突く鋭い山も霧に浮かんでいるようで、その立ち込める霧の中からすうっと滑りくるように小舟が現われた・・・といった風情。全体に施されている石目地が、空気感を生み出す大きなポイントであろう。

山水図鐔 如石 Joseki Tsuba

2019-02-04 | 鍔の歴史
山水図鐔 如石


山水図鐔 如石

 ちょっと珍しい備前岡山の金工。山水図で有名な染谷知信風に鏨の痕跡を活かした表現。この鐔に描かれているのは太陽であろう。高い山が切り立つその谷間に沈んでゆく・・・深い谷間のことだからまだ夕刻とはいえないだろう、それでも山陰は薄暗くなってゆく。舟を操るのは僧のようにも見える。


山水図鐔 勝成 Katsunari Tsuba

2019-02-01 | 鍔の歴史
山水図鐔 勝成


山水図鐔 勝成

 奇岩の下に舟遊びする人物を主題としている山水図。これも風景の中で人物の存在を強く意識している。月見舟であろうか、日本風の月見舟図は間々あるが、大陸的雄大な風情。雲の様子、切羽台に雲を絡ませている構成も面白く、古代中国の趣がある。