鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

西行図鐔 宜時 Yoshitoki Tsuba

2019-02-14 | 鍔の歴史
西行図鐔 宜時


西行図鐔 宜時

 安藤宜時は出羽金工佐藤珍久の門人。歌枕を訪ねて旅した西行を描いたもの。歌枕そのものが我が国の山水風景に重なるところがある。穏やかに、そして幾重にも連なる山並みに水辺の風景。中国の李白と重ね合わせた作品ではないが、画中に景色を眺める人物を描くことにより、この鐔を見る自身が鐔の中に入り込んでゆくような、意識の融合を狙ったものであろう。宜時の最高傑作のひとつである。赤銅地高彫に金色絵。□


山水図鐔 貞次 Sadatsugu Tsuba

2019-02-14 | 鍔の歴史
山水図鐔 貞次


山水図鐔 貞次

 長州鐔工には埋忠の流れをくむ者がある。この鐔は、以前にも紹介したことがある埋忠一族とみられる光忠の作風によく似ている。銘がなければ光忠、あるいは古埋忠と極められる風合い。水辺の風景だけをふわっと浮かび上がらせる表現で、描かれているのは干網と蛇籠、そして帰雁の群。かすむ彼方に山並みが連なっていることを暗に示している。