鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

花菱透図鍔 京透 Kyo-Sukashi Tsuba

2016-02-05 | 鍔の歴史
花菱透図鍔 京透


花菱透図鍔 京透

 透かしの文様としても唐花は素敵であり、明らかに家紋として意識して用いられた作を見る。専ら唐花は五弁に構成されるが、四つの花弁を組み合わせ、菱形に構成したものを花菱とも呼んでいる。一つの花弁を見れば基本が同じであることは明瞭。でも、4つと5つではずいぶん印象が異なってくるものだ。ここがデザインとして面白いところ。因みに唐花は、木瓜と組み合わされることも多い。唐花木瓜である。さて、この鍔は、中央に十字形を構成している。鍔の円周、即ち円形と曲線による十字の組合せが七宝文。これを天地左右に連続させてゆくと、円が重なり合った地文の七宝繋文になる。いずれも装剣小道具の図柄として多い。これら、文様構成を、単純な文様として心に止めない方もおられるようだが、このように洗練された文様美はとても美しく古くから尊ばれている。特に細い線による構成は京透の特徴。


花菱透図鍔 尾張

 明らかに菱形を意識した文様。いずれも家紋として存在する。花菱の四つの花弁を分解してより簡素にすると四つの菱形の組合せだ。これらの家紋を用いたのが甲斐の武田家。尾張鍔は京透に比較して武骨なところに特徴があるも、本作は京透に似て洗練美に溢れている。