鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

富士越龍図小柄 後藤光美 Mitsuyoshi-Goto Kozuka

2012-01-01 | 鍔の歴史
新しい年が始まりました。まだしばらく続けられそうですので、今年もお付き合い下さい。
龍の図で連続しているので、お正月らしく吉兆の図を。



富士越龍図小柄 後藤光美(花押)

 後藤宗家十五代光美の作。波間から姿を現した龍が富岳を目差しているところを捉え、赤銅魚子地高彫に金銀朧銀の色絵で彫り表わしている。波に銀の露象嵌を加えて波飛沫を表現している。金の色調は、雲と龍の身体でわずかに違えており、様々な部分で表現を試みていることが理解できよう。
我が国では最も標高の高い富士、そのさらに上を目差す意識が示されていることから、江戸時代には好まれた図柄の一つでもある。ところが、その画題の歴史については全く不明。せいぜい江戸初期にまで遡るであろうかという程度。誰が創案した図なのか判っていないのである。□