鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

宇治川先陣図小柄 後藤光理 Mitsumasa-Goto Kozuka

2011-03-24 | 小柄
宇治川先陣図小柄 後藤光理


宇治川先陣図小柄 銘 後藤光理(花押)

 この先陣争いには因縁があった。両者が操る跨る馬はいずれも頼朝の愛馬であったが、高綱のイケヅキは荒馬で、頼朝さえも手に余しているほどであった。最初にこれに目を付けたのが景季であったが、頼朝からは許されず、代わりに与えられたのが磨墨。これも名馬。ところが高綱は執拗に頼朝に迫り、ついに頼朝から「この馬も盗まれてしまってはどうにもなるまいな」と諦め顔で言われ、その意を解した高綱はある夜見事に盗み出してイケヅキ我が物としたのである。それが故に景季には強い対抗心があり、宇治川渡河はどうしても自らが先頭を切らねばならなかったのだが…。策士としての高綱の姿が浮かび上がる一方、景季の一徹さも窺いとれる物語である。
 この小柄は、後藤宗家十二代光理の在銘作。