鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

一ノ谷熊谷敦盛図目貫 後藤宗乗 Sojo-Goto Menuki

2011-03-30 | 目貫
一ノ谷熊谷敦盛図目貫 後藤宗乗


一ノ谷熊谷敦盛図目貫 無銘 後藤宗乗

一たび京を離れた平家は、瀬戸内を西に逃れたものの何処においても叛旗が翻され、流離った末に屋島に辿り着き、仮の御所を築造した。もちろん平家の水軍が持つ舟戦の力は衰えておらず、京を目指して反撃の機会を窺っていた。一ノ谷は、背後を急峻な山で護られているため、京奪還を狙う平家にとっては重要な足掛かりの地。寿永三年初頭から盛んに兵を送り込み、城郭としての機能を高めていた。この追討を命じられたのが源範頼と義経。
 一ノ谷の合戦でも多くの場面が語り継がれている。最も有名で、涙を誘うのが、熊谷直実が、わが子ほどの年齢の若武者敦盛の首を取らねばならなかった出来事であろう。沖へ逃れようとする敦盛を呼び返して一騎打ちを挑んだ熊谷を、左右に描いてその対照的な様子を浮かび上がらせる手法は、目貫という金具に適していよう。
 この目貫は後藤宗家二代宗乗の作。精巧で緻密な彫刻表現を鑑賞してほしい。