

茶席の装いの如くに桐樹を捉えた鐔で、初代勘四郎にも二代にもない西垣勘平(にしがきかんぺい)独創の意匠。勘平は初代の子で、二代勘四郎は兄。色合い黒々とした鉄地を、ごくわずかに耳際を薄くした碁石形(ごいしなり)に造り込み、表面を微細な石目地に仕上げて素材が持つ質実なる美観を高めている。鋭く切り込んだ陰の意匠になる桐樹は、透かしの構成線が微妙に変化して動きがあり、表裏から彫り込んだ結果であろう、透かし内面の中央辺りに肉が付いてこれが意図せぬ景色となっている。地面に散らされた枯木風の金象嵌も風情を高めている。西垣勘平作七十三歳の作。
一般的に初代が最も優れ、二代、三代あるいは子と代が下がるに従って力量が劣るとされる傾向にあるが、一考を要する見方である。