鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

花鳥十二ヶ月揃小柄 堀江興成

2009-10-01 | 小柄






九月 尾花に鶉


十一月 枇杷に千鳥



 今年の10月18日まで、徳島城博物館(徳島市)において《阿波刀の世界…刀、刀装具の美・刀剣を愉しむ》展が開催されています。蜂須賀家の旧蔵品が主に展示されるようです。時間がありましたらご鑑賞下さい。装剣金工では『花鳥十二ヶ月揃小柄』をお薦めします。以下は筆者自らが手にとって鑑賞した記録からの、簡単な解説です。

 阿波蜂須賀家に仕えた堀江興成(ほりえおきなり)の十二点揃いの小柄です。十二点の揃い物は、『新古今和歌集』の撰者として知られる鎌倉時代の歌人藤原定家の、自選和歌集『拾遺愚草』の中巻に収録されている『詠花鳥和歌各十二首』から歌意を得て表現したものです。
 興成の得意とした、赤銅魚子地に高彫、金、銀、素銅、朧銀の色絵を華麗に施し、裏板を金哺で鮮やかに彩るという後藤流の表現技法を駆使した、興成にとっては最高傑作の一つです。『詠花鳥和歌各十二首』は琳派の絵師にとっては好画題であったためか、絵画作品は間々見られます。もちろん興成のこの作品も琳派の美観を背景に独創世界を追求したもので、繊細緻密な彫刻表現になる季節の花と鳥の表情はWebでは満足できないでしょう、ご容赦ください。技法は、高彫に色絵だけでなく、露象嵌、魚子地の表面に施されたケシと呼ばれる霞か朧のように淡い金色絵なども鑑賞のポイントです。十二点揃いの豪華さには目を奪われることでしょう。
(表面が均等に揃った点の連続であるため、パソコンなどのモニターで鑑賞するとモアレが生じて不鮮明になることがあります)

徳島城博物館