鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

引両桐透図鐔 深信

2009-10-18 | 




 古い時代の唐草文の多くは、布目象嵌などによる面の描写、あるいは象嵌の幅を細くし得ないが故に幅のある線模様で構成されていた。ところが肥後の二重唐草文は、糸のような細線による縁取りの構成であり、しかも二重の線とされたため、ここから古典的な唐草文にはない華やかさが生み出され、肥後金工を特徴付ける文様の一つとなった。技術的には二代勘四郎辺りからであろうと推考される。写真はその技術をさらに洗練させた、江戸時代後期の神吉深信(かみよしふかのぶ)の鮮烈な趣のある鐔。鉄地を微細な石目地に仕上げ、引両に桐紋を配してすっきりとした平面空間を構成し、引両部分のみに華麗な二重唐草文を散している。