稲村亭日乗

京都の渓流を中心にルアーでトラウトを釣り歩いています

古座川アマゴへの思い

2024年08月03日 | トラウト
 古座川への夢
 南紀を代表する古座川。

 ぼくにとっては子どもの頃から慣れ親しんできた川だ。

 竹を切ったヤスでアユを追った日々もなつかしい。

 この川の水がかすかに帯びる青あるいは緑の色合い、
それは思わずうっとりするような深い透明感を伝えてくれる。 

 その古座川でぼくが初めてアマゴに出会ったことはすでに書いた。

 以来、ぼくはこの広い古座川水系の隅々までアマゴを釣り歩きたいものと夢みてきた。

 望みはたくさんのアマゴに出会うこと、できればノボリ(サツキマス)、
そして古老から聞いていたイワナにも出会うことだった。 
  ( 本ブログ 2011.9.15「古座川 まぼろしのイワナ」参照 )

 こうして退職後、ぼくの京都からの古座川通いが始まった。

     

 きびしかった古座川釣行
 しかし、ほぼ3年かけた釣行も、結果はきびしかった。

 土地の人の話を聞きながらのノボリ釣りは、
結局大きなウグイをたくさん釣っただけに終わった。

 また、イワナについては土地の人々に聞いても
「知らない」というばかりで、情報もなく、やはり釣れなかった。

 この間、ぼくはアマゴが放流されたと思われる水域は避け、
できるかぎり支流の奥など上流部を重点に探った。

 その結果、支流の奥地などで、在来種と思われるアマゴたちに出会うことができた。

 これはうれしかった。

     

 アマゴがいるはずなのに
 しかし他方では、地図で見るといい支流なのに、
一匹も釣れないどころか、追いすらなかったところも多かった。

 ある日ぼくは古座川漁協の組合員の方に出会い、放流状況を聞かせてもらった。

 古座川漁協では三か所の定点放流で、それ以上の分散放流はしていないこと、
また漁協内では「アマゴの放流事業をやめよう」という意見もあるそうで、漁協の主な関心はアユだという。

 ぼくには放流方法があまりに乱暴では?という印象だった。

 というのも、この方法では放流されたアマゴは堰堤にはばまれ、その上流や他の支流には広がらないからだ。

 もう一か所の放流現場にも出くわしたが、ここでも同じだった。

 堰堤の分布状況を考慮しながら、もっと分散放流しては?
と思ったが、労力、予算などいろいろな制約があるのだろう。

 アマゴのいない支流や谷があることの背景には、こうした事情もあるようだ。
 が、気になったのはもうひとつのケースだ。

 これも地図で見るといい支流。

 しかし、アマゴの追いがない・・・。

 と思っていたら、かろうじて10cmあまりの小さいのが釣れた。

 そんな支流がいくつかあった。

 そこでのアマゴたちは型、数ともにとても貧弱に見えた。

 いったいこれらの状況は何を語っているのだろう?

     

 古座川アマゴの衰退という予感
 いい支流なのにアマゴがいない。

 これは漁協の放流の仕方が不適切だから?

 しかし、太古の昔にはアマゴはいたはず。

 ならば漁協の放流がなくとも、天然モノが自力で命をつないでいてもおかしくないはずでは?

 ここでぼくが推測したのは、
これは古座川アマゴの衰退を示しているのではないかということだった。

 そんなとき、串本の知り合いがぼくに言った。

 「和歌山県のあちこちの川でアマゴ釣りをしている人が言っていました。
 古座川のアマゴは放流事業をやめればすぐ絶滅ですよと」。

 この話を耳にしたとき、ぼくにもわかるような気がした。

 専門的なことはともかく、古座川は元々四国、九州などの南部と並び、
アマゴやヤマメの分布はほぼ南限といってもいいだろう。

 温暖化という長きにわたる環境変化のなか、
古座川のアマゴたちには自然の繁殖や生育がむずかしくなりつつあるのではなかろうか。

 数値的裏付けのない、ぼくの個人的推測ではあるが、この予感はぼくを愕然とさせた。

 さよなら古座川
 こうして、ぼくの古座川通いの結果は、残念ながら当初の期待に沿うものではなかった。

 それでも奥地でのアマゴたちとの遭遇のうれしさは何ものにも代えがたかった。

 せめて彼らがこの先、少しでも長くその命をつないでくれることを願うばかりだ。

 慣れ親しんできた古座川、いつまでもあの深い透明感を伝える美しい川であってほしいもの。

 ありがとう古座川、さよなら。

     

 
* なお、ぼくの解釈はあくまでも個人的な体験を基にした推測で、 
 ほかにもいろいろな解釈があることと存じます。可能であれば御教示願います。

* また、同じ古座川水系に属する七川漁協の放流状況については確認できていないことをお断りしておきます。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする