水の中で太一はふっとほほえみ、口から銀のあぶくを出した。もりの刃先を足の方にどけ、クエに向かってもう一度えがおを作った。
「おとう、ここにおられたのですか。また会いに来ますから。」
こう思うことによって、太一は瀬の主を殺さずに済んだのだ。大魚はこの海の命だと思えた。
太一の心の中には、クエを獲りたいという気持ちはあるが、少しずつクエを殺してはいけないという気持ちが出てくる。
太一は、そのクエを獲りたいという欲望を押し殺すために、無理やりクエを父と思う手段を使う。父になら笑顔を見せなければいけない。父にもりを突き刺すわけにはいかない。そうして太一はだんだんクエを獲りたいという欲望を抑え込んでいく。そして、最終的にはそのクエを海の命だと思えるようにまで変わってしまう。
殺す相手を父と思うなどというのは普通にはできることではない。その努力は並大抵のことではない。でも太一はその努力をして、自分の心を変えたのだ。
Ⅰ 太一の変化を発見し、追求の方向を明確に する段階
C1 「殺さずに済んだ」というのは、「殺さなかった」と同じか、違うか。
C2 違う。
C3 「殺さずに済んだ」というのは、殺したらあかん理由があったみたいな感じ。
C4 「殺さなかった」は最初から「殺そう」とは思っていない感じがする。
C5 自分の意思がある。
T1 どっちが?
C6 「殺さなかった」
C7 殺さんとこうって決めた。
T2 こっち(「殺さずに済んだ」)は?
C8 殺さなくてよかった、って。
C9 いいことをした。
T3 「~済んだ」って例文を挙げてみる?
C10 無駄遣いしないで済んだ。
C11 人を蹴らずに済んだ。
C12 事故にならなくて済んだ。
T4 これらの裏にはどんなことが隠れているの?
C13 人を蹴るかもって思っていたけど変わった。
T5 うん。そうだね。
C14 無駄遣いするかも…って思っていた。
C15 人を蹴ってしまうかも…って思っていた。
C16 事故をしてしまうかも…って思っていた。
T6 そうか。じゃ、無駄遣い、人を蹴ること、事故っていうことは?
C17 いやなこと。
C18 悪いこと。
C19 良くないこと。
T7 そうだね。
C20 良くないことをしなくて済んだ、ってこと。
T8 だから、結果としては?
C21 よかった。
T9 それぞれ、良くないことっていうのは?
C22 無駄遣い。
C23 人を蹴ること。
C24 事故。
T10 それを、この部分(殺さずに済んだ)に当 てはめてみればいいんだよね。
C25 この場合、殺すことが良くないことになる。
C26 そう。
C27 じゃ、ずっと獲りたいって思っていたのに、なぜ、殺すことが良くないことになってしまうの?(くるみ)
T11 どういうこと?
C28 前までは、殺すことを良くないこととは思 ってなかった。
T12 思ってなかった…のに?
C29 この段階では、殺すことは良くないことと 思っている。
C30 変わっている。
T13 そうやね。獲ろうという気持ちが 100 パーセントやから、その気持ちのなかに「殺すことは良くない」なんて気持ちはないよね。
C31 本当の一人前の漁師になりたかったらから。
C32 一人前の漁師になるためには、このクエと戦って殺すことがテストやったんやから。
C33 だから、当然のこと。
T14 そうだよね。テスト受けて合格しないと高校に入れない。それと同じだよね。だから殺すことも当然のことだったんだよね。でも、ここでは?
C34 変わっている。
C35 じゃ、どこで変わったの?
C36 どんな理由で変わったの?
太一は、直前まで、泣きそうになりながらも、クエを獲る(獲りたい)気持ちを 100 パーセントもっていた。その太一が、「殺さずに済んだ」 となっているのは合わない、という疑問から、太一の変化が明らかになり、その変化の原因を探るという方向づけができた。
Ⅱ 太一の変化がどこで起こったのかを予想し、段落を限定し、そこで問題をつくる段階
T15 いい問題ができたね。じゃ、変わったのはこの2つの段落のどちらか、もしくはこの前か、どこだろうか。
C37 (挙手)
- 段 落 32 人
- 段 落 0 人
T16 へえ、全員が 26 段落か!じゃ、
26 段落のどの言葉から考えていこうか。
C38 「もう一度えがおを作った。」
C39 「作った」
C40 太一は本心か、本心じゃないのか。
C41 「もう一度」ってことは、太一は、前も作 ったのかな?
C42 前っていつ?
T17 そうだね。「もう一度えがおを作った」ってあるんやから…
C43 前にも一回は作っているはず。
C44 どこ?
T18 そんなのあるの?
C45 「作る」ってさ、うそ笑いやろ。
C46 そう。つくり笑い。
C47 自分では面白いって思ってなくても、周り が笑っているから、合わせて笑う時とか。
C48 顔は笑っているけど、心は笑ってない。
心 ⇒ 笑っていない 顔 ⇒ 笑っている
T19 これで問題できる?
C49 何に対して笑っているのか?
C50 心は笑っていないのだったら、今、太一の 心の中はどうなっているのか?
T20 どうなんだろうね。ちょっと近くの人と相 談してみる?
C51 難しい。
T21 じゃ、本当はどっちなの? 心? 顔?
C52 心 。
T22 そうだよね。心が本当なんだよね。
C53 顔はみんなに見えるけど、心はみんなに見
えない。
T23 だから、想像しないとね。
C54 獲りたかったけど、獲れないって悔しさが ある。
C55 お父さんのことを考えていて、顔では笑っ ているけど、心は笑っていない。
C56 本当は、戦って一人前の漁師になりたいの に、なれないっていう思いがある。
C57 獲れなくてくやしい。
C58 でも、もう獲りたいとは思ってないんじゃ ないの?
T24 さあ、そこで問題できるね。
段落を限定、文を限定、そして言葉を選び問題を作る、というのは内容を深く読み取っていくための重要な過程である。ここでは、「作った」という言葉から、太一の本心は違うという見通しをもつことができ、そしてC58 によって、考えの対立を生むことになる。
Ⅲ 太一の心境について、対立問題をつくり議論する段階
C59 今、獲りたいって気持ちが完全に無くなっ ているのか。残っているのか。
T25 どっち?
C60 <挙手>
① 完全に無くなった(0%) 21 人
② 何パーセントか残っている
11 人C61 ぼくは①で、もりがなかったら獲れないし、
もうもりを足の方にどけているから、獲る気持ちはなくなっている。
C62 私も、もりの先をクエに向けていないから、獲りたい気持ちはない。
C63 私も①で、何か「また、会いにきますから」って書いてあるから、獲りたい気持ちはない。
C64 ぼくも同じで、また会いにくるっていうの は、生かしておくっていうことやから。
C65 ぼくは、やっぱり「殺さずに済んだ」って書いてあるし、「もう一度えがおを作った」のときに、言ってないだけで、心の中では「お父」と思っているから…。よく分からん。
C66 私は、獲りたい気持ちが、まだ残っている ほうで、クエと戦って一人前の漁師になりたいんやけど、でもクエは戦ってくれないから、獲れなくて。これやったら一人前の漁師になれないし…。
T26 どういうこと?
C67 そんなに簡単に、獲りたいって気持ちは完全になくならへん、ってことやろ。
T27 ああ、この獲りたいって気持ちは100パーセントやったからね。
C68 私は獲りたい気持ちが残っていると思うんやけど、獲りたい気持ちが0パーセントやったら、やっぱり心から笑うんとちがうかな。
C69 でも、お父さんのことを考えたりしてたら、心から笑えへんかも。
C70 獲りたい気持ちが残っているんやったら、もりの刃先を足の方にはどけないと思う。
T28 なるほど。この段階で0パーセントになったから、もりをどけられたって言うんやな。
C71 「おとう、ここにおられたのですか」って、おとうと思って、欲張らんでいいって、太一は分かって、「おとう、ここにおられたのですか」って思う前も、「おとう」と思っていて、笑顔をつくったときに、もう「おとう」と思っていて、笑顔を作ったと思うから、欲張らんでいいと思っているから、もう獲りたい気持ちはなくなっていると思う。
C72 私は、あれほど獲りたい獲りたいって、泣きそうになっても思っていたんだから、そんなにすぐになくなるのはおかしいと思う。
C73 私も、獲りたい気持ちは残っていて、本当は獲りたいけど、クエをお父さんと一緒のように感じたから、もりの刃先を足のほうにどけた。
C74 なぜ、クエを「おとう」と思ったの?
T29 問題できたね。こんなことある? クエの顔とお父さんの顔が似ていた、とか。
C75 ありえやん。(笑)
T30 じゃ、なぜ、クエをおとうと思うのかな。でも、それはちょっと置いておいて、さっきの問題。難しいね。今、ここまでやってきて、考えが変わった人いる?
C76 変わってない。
① 完全に無くなった(0%) 21 人
② 何パーセントか残っている 11 人
ここでの対立は、それぞれ、殺したい気持ちがそんなに簡単に無くなるはずがないというこ と、もりの刃先をどけたのだからもう殺す気持ちはなくなっているということを根拠にしている。しかし、この議論は平行線のままであった。 さらに「なぜクエを父と思うのか。」という問題 もできて、混とんとしつつあった。支持数も変わらず、私も子どもの考えをどう 組織すればよいか迷ったので、この議論をいっ たん打ち切り、違う問題から迫っていくように子どもに働きかける。
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Ⅳ 対立問題を解決するために、新しい問題をつくり、議論する段階
T31 じゃ、ちょっと問題を変えよう。どれをやるかな?
C77 私は「ふっとほほえんだ」は本心からやと思うし、「えがおを作った」は本心じゃないと思うから、そこでなぜ変わったのかが分からない。
T32 それに関連するのは…?
C78 「もう一度作った」やから、前にも作ったことがある。
C79 わざと作ったところはどこ?
T33 どこ?
C80 「ふっとほほえみ」しかないんじゃないの。
C81 他にはどこにも書いてない。
C82 そう思う。
C83 じゃ、そこ(「ふっとほほえみ」)も本心じ ゃなくなってくる。
T34 どういうこと?
C84 「ふっとほほえみ」も本心じゃない。
T35 みんな、納得?
C85 うん。
T36 じゃ、これ(「ふっとほほえみ」)が1回目 のつくり笑いで、これ(「もう一度えがおをつ くった」)が2回目のつくり笑いってことやね。
そこで問題できる?
C86 なぜ、つくり笑いをしなければならないの か?
C87 しかも2回も。
T37 そうだね。なぜ太一は2回も、わざわざ笑顔をつくったのか? つまり、太一は心の中では違ったことを思っているけど、顔では笑っているってこと。変やね。
C88 たてまえやね。
C89 やりたくないのにやっている。
C90 いやいややっている。
C91 無理やりやっている。
T38 そういうことやね。無理やり笑顔を作って る。なぜ、無理やりそうしてるんやろね。
C92 1回目は、もりを刃先を向けたままやし。 2回目はもりをどけている。
C93 どういうこと? 1回目は殺してやろうと思いながら微笑んでいるってこと?
C94 本心では獲りたいけど、微笑んいでる。
C95 心と体が一致しない。
T39 うまいこと言うね。どう一致してないの?
C96 「笑う」と「いやいや」
C98 だから体は動く。C99 顔は笑っているけど。
C100 ここ(「ふっとほほえみ」)では、まだ獲りたい気持ちが残っている。
T40 賛成の人?
C101 賛成(全員)
T41 じゃ、次は(「もう一度えがおを作った」)?
C102 もりの先をどけたんやんやから、もう獲り
たい気持ちはない。
C103 そうかな?
T42 じゃ、きいてみようか。
C104 <挙手>
(「もう一度えがおをつくった」のとき)
① 完全に無くなった(0%) 2人
② 何パーセントか残っている 30人C105 ここでは、もりをどけているんやから、心
と体が一致して、一致したというのは、どけるってことやから、ここでは獲りたい気持ちはない。
C106 でも、そうなら、なぜ「つくった」って書いてあるの?
C107 どけたときは心と体が一致して、また心と体がバラバラになったってこと?
C108 それは…(笑)
C97 心の中では獲りたい。
「つくり笑い=いやいや、無理やり」という考えが出て、獲りたい気持ちが残っている、 を支持する子どもが増える。授業の前半(C 45~48あたり)で、このことをやっておけば、もっと早く明確になったのかも知れない。しかし、まだ、もりの刃先をどけるという行動が、獲る気持ちがなくなっているから、と強く主張する子どもが存在している。そこで太一の行動の一つ一つの関連性から考える方向に進める。
Ⅴ 対立問題の解決のため、太一の行動の関連性を考え、行動の原因を探る段階
T43 みんなはどう? 心と体が一致してない人は、「つくった」が証拠になっているし、一致してるって人は「どけた」が証拠になっているんやね。
ちょっと整理してみようか。太一がとった行動っていくつあるかな。
C109 3つかな。
T110 1つめは?
C111 「ふっとほほえんだ。」
C112 「あぶくを出した」は?
C113 それは勝手に出たんやろ。
C114 2つめは、「もりの刃先をどける。」
C115 3つめは、「もう一度えがおをつくる。」
T44 そのそれぞれで、獲りたい気持ちが残っているのかどうか考えやんとあかんね。
もう一つ聞きたいのは、やっぱりなぜ2回も笑顔を作らんとあかんかったのか?
C116 お父さんの「海のめぐみだからなあ」が分かったからほほえんだ。
C117 獲れなくて悔しくて笑うしかない。
C118 殺したい気持ちが残っているから、笑わな
いと、その気持ちが勝ってしまうから。
C119 私もいっしょで、笑うことで、殺したい気
持ちを抑えようとしている。
C120 欲望があったらはずかしいし、お父さんのことを思い出したおけがで、自分がはずかしいことをしなくて済んだから、お父さんに対して笑った。
T45 また新しい問題ができたね。分かる?
C121 えっ? 分からん。
T46 笑顔を作る前に、もう「おとう…」って思っているんていうことかどうかって問題。それはちょっと置いておくけどね。
他に?
C122 もう獲れないんだ…って、笑うしかなくて。
T47 笑わんとしゃーない、ってことやね。
C123 泣きそうになるのをこらえるためかな。
T48 じゃ考えの支持をきくけど。
C124 <挙手>
獲れなくて悔しいから 0 人
父に関することを思っているから。14 人
殺す気持ちを抑えるため。 18 人
笑わないとしかたないから。 0 人
泣くのをこらえるため。 0 人
T49 そうか、残る考えは2つやね。でもこの2 つは、一つは理由で、一つは目的になってい
るから、対立にはならないね。どっちもいいかもしれないし、どっちもダメかもしれない。だから、難しいよね。そこで、この26、2 7段落にはいくつ文があるかな。
C125 4つ
T50 番号をつけよう
(1)水の中で太一はふっとほほえみ、口から銀のあぶくを出した。
(2)もりの刃先を足の方にどけ、クエに向かってもう一度えがおを作った。
(3)「おとう、ここにおられたのですか。また会いに来ますから。」こう思うことによって、太一は瀬の主を殺さずに済んだのだ。
(4)大魚はこの海の命だと思えた。
T51 「お父さんのことが頭にあって」というのは、(3)が先にないと合わないよね。こんなふうにこの4つの文の順番は、変えられる可能性があるのかな?考えてみて。
C126 <案を出す>
A (1)→(2)→(3)→(4)
B (1)→(3)→(2)→(4)
C (3)→(1)→(2)→(4)
T52 みんな(4)が最後っていうのは共通なんやな。どれがこの内容の事実に合ってくるのかな?
C127 < 挙 手 >
A(1)→(2)→(3)→(4) 0 人
B(1)→(3)→(2)→(4) 10人
C(3)→(1)→(2)→(4) 22人
C128 Cは変で、もし(3)が最初に思ったんやったら、なんでもりの刃先を向けたまま、そんなこと言うのかなって思う。
C129 でも、お父さんと思ってからどけるというのもあるから。
C130 私はCやけど、Bやったら、なんでお父さんと思う前に笑うのかな。
C131 「ふっとほほえみ」ってあるから、その前に何か考えていて、それがきっかけで微笑んだから。それがお父さん。
C132 「ふっとほほえんで」で、「おとう、ここに…」と思って、そしてもりの刃先をどけた。C133 (3)が最初にくると、普通のほほえみじゃなくて、ふっとというのは、先に何か頭の
中に思い浮かんだ感じで、(1)が最初にくるのはおかしい。
C134 でも、それなら何で(3)で2回も笑わんとあかんの?
C135 ぼくも2回笑うのが変になってくると思う。
C136 私はBで「おとうここに…」って思ったから、もりの刃先を足の方にどけたと思う。
T53 難しいね。ここの直前までクエは何やった かというと…?
C137 テストの材料。
C138 殺す相手。
T54 そうだね。殺す相手に対して(1)のときの太一の心の中、(2)のときの太一の心の中、
(3)のときの太一の心の中はどんなふうに変わっているんかな。直前までは殺す相手やったのに。
C139 一番変わっているのは(2)
C140 もりの刃先をどけているから、もう殺す相手じゃない。
C141 笑っているときも。
C142 (3)では完全に変わっている。
C143 「おとう」って思っている。
C144 殺す相手に対して、「おとう」って言っている。
T55 変わっているね。
C145 「また会いにきますから」
T56 生かすってことが決まっているよね。しか も(4)では?
C146 海の命だとも思っている。T57 その変化って簡単やね。C147 簡単じゃない。
T58 なぜ?
C148 殺す相手に対しての気持ちを変えるわけやから。
「お父さんのことが頭にあって」と主張する 子どもがいたおかげで、4つの文の順番が変えられるかどうか、という問題が生まれた。 この問題を提示したとき、教材文の通り(A) という子どもはいなかった。つまり、もりの刃先を向けた相手をお父さんとは思えないという考えがあるのだろう。だからもりの刃先をどける前にはお父さんと思った、というのが全員の認識である。このとき私は、ここでの議論を難しくしている原因が、太一の行動が、ある結果として起こっているのか、何かをする目的として起こっているのかを、はっきりさせていない点 であることに気づいた。つまり、もりの刃先 をどけたのは、結果なのか、目的なのか、ということである。T49 で子どもに示唆したにも関わらず、それを使おうとはしていなかった。このことが大きなミスだと思った。そこで、こちらから次のような唐突な問題を出さざるを得なくなる。
Ⅵ 太一の行動の内容を考え、対立問題の解決に向かう段階
T59 じゃ、(1)(2)(3)の3つを比べたら、 一番難しいのはどれ?
C149 (3) おとうと思うから。
T60 じゃ、(3)が超難しい。次に難しいのは?
C150 (2)
T61 (2)が中難しい。
C151 (1)は少し難しい。
T62 (1)はやや難しい、んやね。みんな納得?
C152 納得。
C153(3)は相手を変えてしまうわけやから。T63 じゃ、そうしたときに、Bやったらやや難
しいことから太一はやろうとしたし、Cやったら超難しいことから太一はやろうとしたということになるね。どうかな?
C154 <挙手>
B(やや難から) 13人C(超難から) 19人
C155 やっぱり、難しいのからはいけやんでしょ。C156 私はBやけど、Cやったら、最初から殺す
気はなくなっているはずやし。
C157 Cやったら、かなり時間がかかると思う。C158 私はBで、やっぱり最初から一番難しいこ
とはできないと思う。
C159 ぼくはCやけど、「おとう」と先に思わなかったら、微笑んだり、もりの刃先をどけたりはできない。
C160 どういうこと?
C161 自分の親やったら、そんなことできやん。親に対して刃先を向けたりはできやん。
T64 それはどうなる?
C162 お父さんに対してやから、ほほえまんとあかんし、刃先をどけやんとあかん。
C163 でも、そう思いながら刃先を向けていることになるよ。最初は。
C164 「おとうここに…」と思っているときは刃先を向けている。
C165 けど、思うってことは一瞬のことやから、思って刃先をどけたと思う。もし、これを口に出してしゃべっていたら、刃先をどけてからしゃべったと思う。
T65 ああ、思った瞬間にこういうこと(「ふっとほほえみ」)が始まったということか。そしてもりをどけたのか。
C166 でも、やっぱり「おとう」と思うのはそんなに簡単じゃない。殺す相手やったのに。
T66 それを解決できる言葉はないかな?
C167 「こう思うことによって」かな。
T67 うん。これって大事。これはどういうこと?
C168 このおかげで。
C169 こうすることで。
T68 違う言い方をすると?
C170 こう思う方法で。
C171 こういう方法を使って。
T69 こう思う方法を使って、っていうことは? その方法は自然と出てくるのかな?
C172 わざわざって感じかな。
T70 そう。わざわざこういう方法を使うってことやね。
C173 わざわざ「クエ」=「父」と思う方法で、ってこと。
T71 わざわざその方法を使って難関を突破した ってことになるね。
今の支持は?
C174 <挙手>
B(やや難から) 0人
C(超難から) 32 人
T72 みんなCなの?
C175 そう。
T73 じゃ、なぜ太一はそこまでしなければなら なかったの
C176 自分の欲望を捨てやんとあかんて思った。
C177 自分の殺したいって気持ちを無くさんとあかんと思ったからじゃないかな。
T74 ということは、太一の心の中には殺したい、という気持ちがあって、でもちょっとその気持ちをなくさないとだめだ、って気持ちが出てきたの?
C178 そう。
C179 前からあったんちがう。それを忘れていたというか…。
T75 そう。人間の「良心」って聞いたことある?
C180 ある。
T76 どんな悪いことをしていても、心のどこかにちょっと「これはダメ」という気持ちがあるんだよ。それが良心。みんなだってあるでしょ。ルールを破っても、本当はそれで平気じゃない。どこかで「まずいなあ」と思ってる。太一にもあったんだよね。良心と言えるかどうか分からないけど。お父さんや与吉じいさの教えは知っていたはずだから。でも、一人前の漁師になりたいという欲望で、その気持ちが…
C181 消えていた。
T77 うん。でも、このときそれがちょこっと蘇 ってきたんだよね。
そして、その気持ちが、殺したいという気持ちと戦っていくんだよ。そしてどんどん戦って、最終的には?
C182 勝つ。
T78 勝っちゃったね。その勝つ一番の方法が?
C183 クエを父と思う方法で。
T79 そういうことやね。
「こう思うことによって」をていねいにやれ ばよかったのだが、私の焦りで、私が主導で授業を引っ張ってしまった。「わざわざこういう方法を使って」という意味をうまく適用させられれば、何か目的があったはずだとはっきりさせられたと思う。しかも「クエを父と思う」という、あり得ないような方法を使ってまでやるのだから、その目的は相当の内容があるという見通しをもつことができたはずである。
この授業の展開のまずさは、「笑顔をつくる」「こう思うことによって」「済んだ」「思えた」などの言葉の意味とその内容、関連性をしっかりつかんで授業構想を練れなかったことにある。また、それに関わって、子どもいい問題をつくっているが、それをどう構造的に解決していくのかという見通しが十分でなかったのも原因である。授業記録を読むと、子どもたちは活発に意見を出しているように思うであろうが、実際はそうではない。難しい内容なので、苦しみながら何とか自分の考えを出そうとしながらの授業であった。
私がうまく組織できれば、子どもはもっと考えを出し合っていただろうと思うと、申し訳なく思う。その意味でも、私の弱点をはっきりと露呈した授業であったと思う。
<授業後の子どもの感想より>
太一はクエを獲りたい、殺したいという気持ちを、無理やりクエをおとうと思ったり、 刃先をどけたりする努力をして、殺したいという気持ちをなくしていったのはすごいと思います。自分の気持ちを変える努力は大切だと分かりました。
太一は、なぜ2回もつくり笑いをしたかが、分からなかったけど、文の順番を考えてみた ら、最初に「おとう…」がくるって分かって、太一が自分の殺したいという気持ちを消す ためにすごい努力をして、そしてその気持ち を消して、最後にクエが海の命だと思えるま でに変わったんだと思いました。
太一は自分の欲望を捨てるためにクエをおとうと思い、最後にクエを海の命までとも思うように変わったのが驚いた。私も自分の欲望だけで周りの人を傷つけてしまうことがあります。だからそれを無くす努力を、太一のようにやらなければ、と思います。
自分は良くないことをしても、太一のようには変わることができないことが多くありました。でもこの物語を深いところまで追求して少し自分も変われたような気がします
自分の気持ちを変えることはすごく大変なことなのだと思いました。太一は、自分の気持ちを変える努力ができてすごいなと思いました。
太一の気持ちの変化を考えていくのがすごく難しかったけど、その変化は、太一が努力をして、自分の欲望を捨てていったということだった。自分の欲望をすてるのはかなり難しいと思うけど、それができた太一はすごいと思います。自分にはできないかも。
太一は自分の気持ちを変える努力をした。自分もその場その場に応じて、自分の気持ちを変える努力をしていきます。
太一は自分の気持ちを変えてしまうほどの努力をした。だからぼくも自分の気持ちをかえる努力を、これから先、いろいろなところでやっていきたいです。この物語は、自分の生き方を変える努力をしなさい、といういいお話でした。
書込み大変失礼致します。
皆様にこの度どうか知って頂きたい事があり、誠に恐縮ですが書込ませて頂きました。
テレビが大きく報じぬ中、連日尖閣奪取を狙う、中国の日本領海侵犯が激しさを増す現状を、中国に侵略虐殺を受けるウイグル等と重ね、どうか多くの方に知って頂きたいです。
かつて9条の様に非武装中立を宣言し、平和的で軍事力の弱かったチベット等は、中国に武力で侵略虐殺され、その覇権拡大は現在進行形で行われています。
韓国が日本の竹島を不法占拠した際、多くの船員が機関銃で襲撃され死傷し、北朝鮮には国民を拉致され、
尖閣には中国公船が侵犯する現状でも、9条により日本は国を守る為の手出しが何一つ出来ません。
中朝ロの数千発の核ミサイル標準は常時日本に向けられており、尖閣、台湾周辺の動きも激化する中、9条を改正し自立した戦力を持たなければ、
有事の際、敵基地攻撃能力を持たず、原発も動かず資源の無い現状防衛力では、日本人の命と領土は守れません。
中韓による侵略は、メディアや野党が法制化を目指す、外国人参政権や夫婦別姓等からも始まっており、
外国人参政権はアメリカ始め世界でも認める国は少なく、
ハワイは米国に外国人参政権を与え乗っ取られ、ウクライナのクリミア半島も住民投票を行った体でロシアに帰属しました。
又夫婦別姓等も元々は中韓の制度であり、地位の低い女性は夫の姓を名乗らせないという、女性蔑視の歴史的背景によります。
この夫婦別姓は最終的に戸籍廃止を目的としており 、戸籍により追跡発見が出来た
背乗りやスパイ等の犯罪も、これを無くす事で不都合な出自隠蔽も容易となります。
先進国で唯一スパイ防止法が無い日本で、
中韓に軸足がある野党やメディアが、制度の危険性を隠し国民を誘導する現状からも、既に浸透工作は最終段階である事、
日本でウイグルの悲劇を生まない為に、一人でも多くの方に目覚めて頂きたいと切に思っております。
長文、大変申し訳ありません。