8月23日(水)、私が委員長を務める文教民生常任委員会で、広島県府中市の小中一貫教育の視察へ行って来ました。
府中市は、伊藤新市長のリーダーシップのもと混乱していた教育の立て直しとして、平成16年度から小中一貫に取り組まれました。当時、隣町の世羅高校長が自殺をされるなど、広島県内の教育は混乱していたようです。伊藤新市長は、「当たり前の教育」を府中市で行うことをうたい、日本たばこ産業府中工場の跡地を利用し、平成20年に小中一貫教育一体型の府中学園を建設しました。続いて、平成29年度より、一体型の府中明郷学園、併設型(連携型)の上下学園、併設型(併用型)の府南学園がスタートし、府中市全域に小中一貫教育を広げ、「教育課程の特例」が適用できるようにされています。「教育課程の特例」とは、①学年を4・3・2、4・5の9年生にする。②指導内容の入れ替え、移行が可能。③教科担任制。④新教科(ことば探究科)の設置が可能となります。
府中市の現教育長は、文部科学省からの出向の45歳の若い荻野教育長です。これまでの教育長も、西脇市のような小中学校校長退職者ではなく、県教育委員会の方が就任されているとのことでした。ただ、現場を指揮する門田教育部長は、小中一貫教育に15年以上も前から関わってこられた元小学校教諭の方です。今年で退職されるということですが、現場⇒市教委⇒現場校長という西脇市のようなコースではなく、府中市全体の教育に携わり続けておられます。私たちの質問に的確にわかりやすく答えてくださいますし、問題点についても正直に話してくださいました。
学校規模は、府中学園は787人、府中明郷学園は242名、上下学園(1中2小学校で211人)、府南学園(1中4小学校で1,075人)と4学園とも異なります。上下学園の上下南小学校は全校生42名の複式学級です。上下中学校の学年1学級です。学校規模によって、すぐに統廃合を考える西脇市とは大きく異なっています。それぞれの地域の歩みを大切にし、小中一貫教育の良さを全市的に広げようとされています。
府中市の小中一貫教育は、①基礎的・基本的な学力の定着、②中1ギャップの解消を目的に取り組まれました。その結果、小中一貫教育カリキュラムを作成し、①本時に必要な下学年の既習事項と本時に続く上級学年の未修事項を関連付ける。②「付けたい力」を系統表に表す。③学習指導案のモデルを記載。④各校でアレンジできる。今習っていることが、どこから来ていてどこにつながるのかを系統づけています。9年間を見通した中で、全ての子どもの可能性を伸ばす教育を進めようとされています。また、令和3年度から「ことば探求科」を独自に設け、学習の基盤となる言語能力・情報活用能力・課題発見解決能力を身に付けさせようとされています。
また、府中市は、コミュニティ・スクールに積極的に取り組んでいます。平成24年度からコミュニティ・スクールの研究に着手し、各校2年間の研究期間を経て順次設置し、平成31年4月に全市での導入が完了しています。
コミュニティ・スクールは、「地域とともにある学校づくり」と「学校を核とした地域づくり」の両輪で取り組みが進められ、子どもたちの学びを「社会に開かれた教育課程」実現しようとしています。コミュニティ・スクールで学ぶ4つの大切な視点として、①地域を学ぶ(地域の施設・偉業・伝統等を学ぶ場をつくる)②地域を生かす(地域のひと・もの・ことを生かして学習をつくる)③地域に貢献する(ボランティア活動・地域貢献する過程で学校の学びを確かめる)④地域と学ぶ(地域の方と一緒に学ぶ場をつくる)を挙げています。
コミュニティ・スクールの運営のために、学校運営協議会が設置されており、「塾議」を大切にされているということでした。
小中一貫教育やコミュニティ・スクール等の府中市教育15年間(2007年⇒2022年)で変容したこととして、中学3年生の意識を挙げられました。①自分には良いところがある(58.3%⇒83.9%)②将来の夢や目標を持っている(71.9%⇒72.5%)③今住んでいる地域の行事に参加している(40.4%⇒53.0%)④人の役に立つ人間になりたい(85.4%⇒94.3%)⑤難しいことでも失敗を恐れないで挑戦する(57.5%⇒72.5%)
今回の府中市教育の取り組みを視察して、西脇市が現在進めている学校学習規模適正化計画(小中学校統廃合計画)の考え方とは大きく異なっていました。西脇市の教育をどう進めていくのかということよりも、小学校では複式学級にさせない、中学校で2学級以上を維持させるという学校規模だけが先行して議論されていると思われます。また、複式学級の改善子どもたちの教育環境をどう小中一貫教育の取り組みると考えました。コミュニティ・スクールの取り組みもこれからという状況です。府中市の取り組みを西脇市でも取り入れればと考えています。