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とりがら時事放談『コラム新喜劇』



小学校の6年間というものは、給食をいかに残さず食べるのか、というプレッシャーに押され続けた毎日だった。
毎日毎日、どうしてこんなに不味いものが作れるのか不思議でならないのが学校給食への私の感想だった。
まず、主食のパンが気に入らない。
親が昭和一桁世代だったので、小学校に入学するまでパン食というものをしたことがなかった。だから食事といえばご飯が当然で、パン食なんかオヤツの一つ。おまけに給食で出てくるコッペパンは焼け方も味付けも食べられればそれで良い、というような格好だけはパンの形をした物体だった。
おかずはアルマイトのバケツに入ったシチューやカレー、スープ類。これまた和食の家で育った我が身にはとても食えた代物ではなかった。
「先生たちが子供の頃は、食べるものなどなかったんですよ。(だから)食べなさい。」
と戦中戦後の特殊な時代を例に上げ命令口調の圧力に食器を前に昼休みを潰してしまったことも数知れず。
「そりゃ、あなた。好き嫌いが激しいだけじゃないの?」
というなかれ。ある日のこと、試食会にきた父兄が首を傾げて帰って行ったことを私は知っている。
だから中学生になって一番嬉しかったことは「もう、給食は食べなくていいんだ。」ということだった。これではまるでアーロン収容所から帰還した、もと日本兵とかわらない。

この学校給食に負けず劣らずの味覚をしているのが、飛行機に出てくる機内食だ。
各エアラインが競い合うサービスの代表が機内食だと思うのだが、これがちっとも美味しくない。場合によっては先の学校給食よりも不味いことがある。

初め乗った飛行機は、成田出発ロサンゼルス行きのパンアメリカン。今は潰れて無くなったこのエアラインも、機内食の味を思い出したら倒産するのも当然だったと思えてくる。それほど不味い味だった。
初めての飛行機で、しかも初めての国際線での機内食。ホントは私、めちゃくちゃ期待していたのだ。
離陸して暫く経つと、機内食のサービスが始まった。黒人の男性客室乗務員がワゴンを押して、
「チキン、オア。ビーフ?」と訊いてきた。
私はビーフを注文し、出された食事に胸ワクワク。しかしメインのお皿のラップを取ると、「なんじゃこれは?」と卒倒するくらい、不味そうな匂い(香りではない)が漂いでてきたのだ。
恐る恐るナイフとフォークでビーフを千切り口に入れると、やっぱり不味い。
試しに帰りの飛行機でチキンを注文してみたが、これもやっぱり不味かった。
一年に一度は利用するシンガポール航空の機内食も、これまた不味い。
人気エアラインの一つに数えられているこの会社も、華僑の誇りは何処へやら。離陸早々に配布されるお洒落なメニューは結構だけど、そのメニューと中身が合致しない。フライトアテンダントの容姿なんかどうでもいいから。もっと美味しいものを食べさせていただきたい。そんな気分にさせる機内食なのだ。
これまでいちばんマシだったのは15年ほど前に乗った全日空の国内線。
那覇から大阪に戻る途中にでてきた、サンドイッチのランチだった。あの頃はまだスーパーシートに乗らなくても国内線で機内食が出てきたのだ。

不味い機内食を意識してか、昨年ぐらいから羽田空港を中心に駅弁ならぬ「空弁」が人気を集めている。味音痴の航空会社に任せられないと、空港サービスの会社が結論を出したのか、なかなか美味い弁当を販売しているらしい。
しかし、世の中にはもっと上手が現れた。
エコノミークラスの機内食はすべて廃止すると先週デルタ航空が発表した。でも理由が納得いかない。経費の節減で止めるのだという。私はてっきり、あまりに不味いから止めるのかと思ったが違うらしい。
でも、これで国際線も弁当持参持ち込み可能でアーロン収容所から開放ということか。

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