「ジョニーは戦場へ行った(1971年作)」という映画がある。
第一次世界大戦に従軍していた一人の兵士が、敵の爆弾の攻撃に晒される。
四股は吹き飛び、鼓膜は破れ、目は失明し、顎が破壊される。
しかし、彼は死ななかった。
収容先の病院で彼は意識を取り戻す。
音は......聞こえない。目は.......見えない。声は.......出せない。
四股が無くなり手を使うことも足をばたつかすこともできないのだ。
それでも彼は生きていた。
病室に降り注ぐ太陽の明かりを、陽の暖かさで感じ取り、心優しい看護婦の指文字で季節を知る。
やがて彼はわずかに動かすことのできる頭を枕に打つことでモールス信号を発信し、他人に自分の意思を伝えることを思いつく。
だが、世間に彼を知らしめたくない上官は彼に冷たく告げるのだ。
「頭で意思を伝えることは、禁止する」
と。
フロリダ州で植物状態が続いていた40代の女性に対し、先日、尊厳死が認められ、生命を維持するための栄養供給がストップされた。
これに対し、尊厳死を認めないと訴えを起こしていた女性の夫を除く家族が連邦議会に働きかけ、このほど生命を維持するために必要な法案が議会を通過。ブッシュ大統領はすぐさま署名し、法案が成立した。
彼女は20代であった15年前に自宅で意識を失い一時的な心肺停止に陥った。
このため脳死状態となり、自立呼吸はできるものの栄養の摂取、意思の表現はできなくなってしまったのだ。
医師たちは一様に植物状態を宣言し、彼女の復活はないものと判断した。
夫は愛する妻をこのままの状態で生かし続けることは残酷だとして尊厳死を認めるように何度も提訴。その都度彼女の両親姉妹は死なせるのは可哀想、生かせてあげてと逆提訴。
お互いの葛藤が繰り返され続けている。
医学が発展し、50年前であれば命を落としていたようなケースの病気や事故の患者や犠牲者の多くについて、本人の意思とは関係なく「生かし続ける」ことができるようになった。
上記の報道は、科学が生み出した悲劇と滑稽さであるといえる。
このケースも争っているのは彼女の家族で彼女自身ではないのである。果たして彼女自身がどう希望しているのかは誰にもわからないことなのだ。
もしかすると、ジョニーのように枕を叩くことはもちろん、眉一つ、目線一つ動かすことができないほど意思を表現する方法が全くないだけで、はっきりとした意識を持っているのかもしれないのだ。
人の意識が肉体のどの部位に存在し、どのように機能しているのかは現在の科学ではまだ明らかにできていない謎なのだから。
20年間ものあいだ、植物状態であった30代の女性が目を覚まし、ベッドの傍らで看病を続けていた母親に「お母さん」と呼びかけたというニュースも記憶に新しい。
しかし、意識がはっきりしているしてないに関わらず、生きている者の生と死の尊厳を尊重するのは難しい問題だ。
「このままで生きたくない」とジョニーはラストシーンで叫んでいたが、現実はどうなのか誰にもわからない。
第一次世界大戦に従軍していた一人の兵士が、敵の爆弾の攻撃に晒される。
四股は吹き飛び、鼓膜は破れ、目は失明し、顎が破壊される。
しかし、彼は死ななかった。
収容先の病院で彼は意識を取り戻す。
音は......聞こえない。目は.......見えない。声は.......出せない。
四股が無くなり手を使うことも足をばたつかすこともできないのだ。
それでも彼は生きていた。
病室に降り注ぐ太陽の明かりを、陽の暖かさで感じ取り、心優しい看護婦の指文字で季節を知る。
やがて彼はわずかに動かすことのできる頭を枕に打つことでモールス信号を発信し、他人に自分の意思を伝えることを思いつく。
だが、世間に彼を知らしめたくない上官は彼に冷たく告げるのだ。
「頭で意思を伝えることは、禁止する」
と。
フロリダ州で植物状態が続いていた40代の女性に対し、先日、尊厳死が認められ、生命を維持するための栄養供給がストップされた。
これに対し、尊厳死を認めないと訴えを起こしていた女性の夫を除く家族が連邦議会に働きかけ、このほど生命を維持するために必要な法案が議会を通過。ブッシュ大統領はすぐさま署名し、法案が成立した。
彼女は20代であった15年前に自宅で意識を失い一時的な心肺停止に陥った。
このため脳死状態となり、自立呼吸はできるものの栄養の摂取、意思の表現はできなくなってしまったのだ。
医師たちは一様に植物状態を宣言し、彼女の復活はないものと判断した。
夫は愛する妻をこのままの状態で生かし続けることは残酷だとして尊厳死を認めるように何度も提訴。その都度彼女の両親姉妹は死なせるのは可哀想、生かせてあげてと逆提訴。
お互いの葛藤が繰り返され続けている。
医学が発展し、50年前であれば命を落としていたようなケースの病気や事故の患者や犠牲者の多くについて、本人の意思とは関係なく「生かし続ける」ことができるようになった。
上記の報道は、科学が生み出した悲劇と滑稽さであるといえる。
このケースも争っているのは彼女の家族で彼女自身ではないのである。果たして彼女自身がどう希望しているのかは誰にもわからないことなのだ。
もしかすると、ジョニーのように枕を叩くことはもちろん、眉一つ、目線一つ動かすことができないほど意思を表現する方法が全くないだけで、はっきりとした意識を持っているのかもしれないのだ。
人の意識が肉体のどの部位に存在し、どのように機能しているのかは現在の科学ではまだ明らかにできていない謎なのだから。
20年間ものあいだ、植物状態であった30代の女性が目を覚まし、ベッドの傍らで看病を続けていた母親に「お母さん」と呼びかけたというニュースも記憶に新しい。
しかし、意識がはっきりしているしてないに関わらず、生きている者の生と死の尊厳を尊重するのは難しい問題だ。
「このままで生きたくない」とジョニーはラストシーンで叫んでいたが、現実はどうなのか誰にもわからない。