人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「ワイルド・スピード ICE BREAK」「トリプルX:再起動」を観る~どれだけ車を破壊すれば気が済むのか!?という映画

2017年08月22日 07時52分26秒 | 日記

22日(火).わが家に来てから今日で1056日目を迎え,米イージス駆逐艦「ジョン・S・マケイン」が21日午前,シンガポール沖のマラッカ海峡近くでタンカーと衝突し,乗組員約330人のうち10人が行方不明となっている というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      6月にイージス駆逐艦とコンテナ船が衝突したばかりだよね  何かイージーッスね

 

                                            

 

昨日,夕食に「豚の生姜焼き」「生野菜とサーモンのサラダ」「冷奴」を作りました  「生姜焼き」と言えば普通はキャベツの千切りが付きものですが,わが家では毎日必ずサラダを付けるので省略です

 

     

 

                                             

 

昨日,池袋の新文芸坐で「ワイルド・スピード  ICE  BREAK」と「トリプルX:再起動」の2本立てを観ました

「ワイルド・スピード  ICE  BREAK」はF.ゲイリー・グレイ監督による2017年アメリカ映画(136分)です

ドム(ヴィン・ディーゼル)は,キューバで恋人とバカンスを楽しんでいたが,ある大切な人を人質に取られてしまう   その人物を救うために,彼はファミリー(仲間)を裏切って,サイバーテロリストと組むことを強いられる   ファミリーの連中はドムのことだから何か理由があるはずだと思うが思うように真相が掴めない.そうこうしているうちに仲間同士の闘いが始まる.誤解は解けるのか.そしてファミリー共々生き残ることが出来るのか

 

     

 

この映画はシリーズになっていますが,往年の名車や最新の車が次々と出てくるので車好きにはたまらない映画でしょう   理想を言えば,シリーズの最初から続けて観るのがこの作品を最も楽しむ方法だと思いますが,私のように何でも観るけれど必ずしもシリーズ全部を観たいとまでは思わない者にとっては作品を半分くらいしか楽しんでいないのだと思います  それにしてもどれだけ車を破壊すれば気が済むのか,と思うほどあらゆる種類の車が破壊され,燃え上がります   痛快カーアクションと言えば聞こえが良いですが,破壊は破壊です.どうも手放しで楽しんでいられないような気がします

 

                                           

 

「トリプルX:再起動」はD.J.カルーソー監督による2017年アメリカ映画(107分)です

ザンダー・ケイジ(ヴィン・ディーゼル)は政府の極秘エージェントとなり,「パンドラの箱」と呼ばれる制御不能の軍事兵器を悪の手から奪還しようと,最強の敵ジャン(ドニー・イェン)と闘うことになる   彼は新たに招集されたチーム「トリプルX」と共に,全世界の政府の最高権力者たちをターゲットとした世界撲滅の陰謀に巻き込まれていく.「パンドラの箱」を無事に奪還することが出来るのか

 

     

 

この映画に出てくるトリプルXのチームメンバーは,ひと言で言えば「危険なことが大好きな連中」です   以前このシリーズで観た「神の手」も健在でした.「神の手」とは ある人物の顔データをコンピューターに呼びこませると,世界中に張り巡らせた監視システムにより,その人物が現在どの国のどこにいるかが判明するという優れもの技術です   こんな技術があったら指名手配犯など一瞬のうちに発見され逮捕されてしまうでしょう   まあ,映画だから楽しんで観ていられますが,監視社会の最先端を行く技術だと考えると怖い感じもします

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大友直人+東京交響楽団で芥川也寸志「トリプティーク」,黛敏郎「饗宴」,團伊玖磨「飛天繚乱」,千住明「滝の白糸」を聴く~東響オペラシティシリーズ第99回公演

2017年08月21日 07時44分19秒 | 日記

21日(月).わが家に来てから今日で1055日目を迎え,米韓両軍は21日に朝鮮半島有事を想定した定例の合同軍事演習を韓国で始めるが,北朝鮮の金正恩委員長は演習を凝視している模様だ というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     米朝は必要以上に北朝鮮を刺激しないで 桂米朝の落語CDでも聴かせた方が良くね?

 

                                           

 

昨日,初台の東京オペラシティコンサートホールで,東京交響楽団のオペラシティシリーズ第99回演奏会を聴きました   プログラムは①芥川也寸志「弦楽のための三楽章”トリプティーク”」,②團伊玖磨「管絃楽幻想曲”飛天繚乱”」,③黛敏郎「饗宴」,④千住明:オペラ「滝の白糸」から第3幕です   ④のソプラノ独唱=中嶋彰子,メゾ・ソプラノ独唱=鳥木弥生,テノール独唱=高柳圭ほか,合唱=東響コーラス,指揮=大友直人です

この日前半のプログラムは,1953年6月に結成された「三人の会」(芥川也寸志,團伊玖磨,黛敏郎)のメンバーによる作品です

 

     

 

弦楽奏者が配置に着きます.いつもの東響の並びで,左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという編成です.コンマスはグレブ・二キティンです

1曲目の「弦楽のための三楽章”トリプティーク”」は,芥川龍之介の三男・芥川也寸志が,1951年からN響の常任指揮者を務めていたクルト・ヴェスのアメリカ・ツアーに際して委嘱され,芥川が愛聴していたアレクサンデル・タンスマンの弦楽四重奏または弦楽合奏のための「トリプティーク(三連画)」に因んで名付けられました   第1楽章「アレグロ」,第2楽章「子守歌」(アンダンテ),第3楽章「プレスト」の3つの楽章から成ります

芥川也寸志の音楽の特徴は,一定の音型やリズムを繰り返す「オスティナート」という手法です   これは東京音楽学校(現・東京藝大)で師事した伊福部昭(ゴジラのテーマ音楽で有名)の影響が大きいと思われます   第1楽章を聴いていると,どこかプロコフィエフを思わせる曲想が現れます   伊福部昭はプロコフィエフの影響を受けています.第2楽章では,チェロやヴィオラが楽器の胴を手で叩く奏法が見られます   第3楽章は,リズムを中心とした激しい音楽が展開します

2曲目は團伊玖磨「管絃楽幻想曲”飛天繚乱”」です   オケに管楽器奏者が加わります.團伊玖磨と言えば「團伊玖磨ポップス・コンサート」を思い出します   大学時代にハガキで公開録画に応募して友人と渋谷公会堂に聴きに行ったものです 

「管絃楽幻想曲”飛天繚乱”」は大阪センチュリー交響楽団(現・日本センチュリー交響楽団)の委嘱作品として1991年に作曲されました   「飛天」とは空中を舞って佛を讃える天女のことです.作品はロンド風の単一楽章の曲です.全体を通して聴く限り「和風ディズニーアニメの付随音楽」といったファンタジックな曲想です   天女が自在に天空を飛び回る有様を表したフルートの独奏がありますが,首席の相澤政宏の演奏は天空を舞う天女の姿を思い浮かべるほど見事な演奏でした

3曲目は黛敏郎「饗宴」ですが,黛敏郎と言えばテレビ番組「題名のない音楽会」を思い出します   放映中,さんざん右翼的だと批判されながらも独自の視点で企画を練り上げ,ジャンルを超えてあらゆる音楽取り上げていました

「饗宴」は2部から成る作品です.オケにサクソフォン5人が加わり,文字通りフル・オーケストラ編成に成ります   第1部の導入部から芥川とも團とも異なる荒々しい曲想が展開します   第2部ではサクソフォン群がダイナミックな演奏を展開しますが,まるでビッグバンド・ジャズの如しです   9月にサントリーホールで「サマーフェスティバル」が開かれ,黛敏郎の作品も取り上げられますが,企画プロデューサーの片山杜秀氏によると「あらぶる黛」となっています   まさに,現状を打破してやろうという荒ぶる音楽を聴いているようです

 

     

 

休憩後は千住明:オペラ「滝の白糸」から第3幕です   この作品は泉鏡花の「義血侠血」が原作で,黛まどかの台本による日本語オペラです.公益財団法人金沢芸術創造財団などの委嘱により作曲され,2014年に高岡市,金沢市,東京で初演され,2015年11月に改訂版が金沢市で初演されました

歌手陣は滝の白糸(水島友)=中嶋彰子(ソプラノ),欣弥の母=鳥木弥生(メゾ・ソプラノ),村越欣弥=高柳圭,その他のソリスト:ソプラノ=北原瑠美,テノール=加藤太朗,寺田宗永,北嶋信也,バリトン=大川博,小林啓倫,バス=清水那由太,金子宏.合唱=東響コーラスです

オケの後方に東響コーラスが入り,指揮者の近くに中嶋,高柳,鳥木の3人が,管楽器の左右に他のソリストたちがスタンバイします

演奏されるのは,「序曲」(当日追加された)とオペラ全3幕のうち「第3幕」です   プログラム冊子に「オペラのあらすじ」と「第3幕の歌詞」が紹介されていますが,このオペラを聴くに当たって,これらをあらかじめ読んでおかないと理解は不十分に終わると思います   幸い私は事前に3回ほど読めたので,オペラ全体のストーリーと歌手たちによって歌われる歌詞を頭に入れて聴くことが出来たので,オペラへの理解が深まり,容易に感情移入することができました

歌手陣は主役級の3人はもちろんのこと,他のソリストたちも絶好調と言ってもよい出来でした   特に滝の白糸(水島友)を歌った中嶋彰子は,さすがは1999年からウィーン・フォルクスオパーで活躍した実績をもつソプラノで,抒情的でしかも力強い歌声を披露してくれました   村越欣弥を歌った高柳圭は「滝の白糸」の初演時にも同役を歌っていますが,良く通る明るいテノールです   鳥木弥生は,かつて見た彼女とはまったく別人のように見えました   歌手としての年輪を重ねたということでしょうか.役に成り切っていたということで言えば,鳥木は歌っている時はもちろんのこと,歌っていない時も終始悲痛な表情で,命の恩人の滝の白糸が裁判にかけられ死刑になっていくことに対する悲しみを湛えていました

終演後,拍手の中,客席に居た作曲者の千住明氏がステージ上に呼ばれ,大友,中嶋,高柳,鳥木とハグして讃え合いました   大友直人が同時代の歌劇をコンサートで取り上げていることはもっと賞賛されて良いと思います

 

                                            

 

8月3日のブログで,東京オペラシティコンサートホールで開かれるコンサートにおけるアナウンスについて,概要次のような要望を手紙に書いて財団法人東京オペラシティ文化財団あて郵送した旨 書きました

「東京オペラシティコンサートホールで開かれるコンサートの休憩時間に流されるアナウンスは,『開演中にケータイ電話が鳴り出しますと 他のお客様のご迷惑になることがございます.電源をお切りください』としているが,いかに演奏中のケータイ着信音が迷惑かを考えれば『ご迷惑となることがございます』ではなく『ご迷惑になります.電源をお切りください』と断言すべきである

私の住所・氏名,メルアド明記のうえ財団あて郵送しましたが,昨日まで何の反応もありませんでした   そこで,昨日のコンサートでは休憩時間のアナウンスに耳を傾けていたのですが,残念ながら相変わらず「他のお客様のご迷惑になることがございます」とアナウンスしていました   まだ1か月も経っていないので,しばらく様子を見ることとし,9月以降に東京オペラシティコンサートホールで開かれる公演を待って今後の対応を考えたいと思います

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「METライブビューイングアンコール2017」の4枚セット券を取る / 中村文則著「教団X」を読む / 新国立オペラ「避難体験オペラコンサート」(9/7)参加確定

2017年08月20日 08時04分23秒 | 日記

20日(日).わが家に来てから今日で1054日目を迎え,トランプ米大統領が18日,最側近のスティーブン・バノン大統領首席戦略官を更迭した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      政権発足後に辞任・更迭となった政府高官はこれで7人目 次はだれだろうか?

 

                                           

 

9月7日(木)午後3時から開かれる新国立劇場の「第2回避難体験オペラコンサート」に応募しておいたのですが,同劇場からメールが届き,応募者全員が参加できることになったということでした   当日は午前11時から上野で藝大モーニングコンサートがあるので,それが終わってから初台に向かいたいと思います

 

     

 

                                           

 

「METライブビューイングアンコール2017」の4枚セット券を使い切ったので,新たに1セット買いました   単券で4枚買うと12,400円(ワーグナーを観るともっとかかる)ですが,セットでは10,400円と格安になっています.4回以上観る場合はセット券が絶対に得です

 

     

 

     

     

 

                                           

 

中村文則著「教団X」(集英社文庫)を読み終わりました   中村文則は1977年愛知県生まれ,福島大学卒業.2002年「銃」で新潮新人賞を受賞してデビュー.2005年「土の中の子供」で芥川賞を受賞,2010年「掏摸(すり)」で大江健三郎賞を受賞しています

この作品には以前から興味があり文庫化するのを待っていたのですが,読むに当たっては一種の覚悟が必要でした.何しろ595ページの大作です   文末に「解説」があればある程度の文脈を頭に入れたうえで読み進めることが出来るのですが,それがないので自力で最後まで読み進めなければなりません

 

     

 

2つの宗教団体をめぐる物語の大雑把なあらすじは次の通りです

「主人公の楢崎は,付き合っていた女性・立花涼子が突如姿を消したことを不審に思い,調べた結果たどり着いたのが松尾正太郎が率いる宗教団体だった   教祖の松尾はかなりいい加減な人物で,どちらかというと,彼のキャラクターに魅かれて話を聞くために集まってくる緩やかな組織だった   その団体の人たちによると,立花はこの団体にいたことは事実だが,本当は沢渡という教祖が率いる『教団X』の教徒で,松尾の団体を詐欺にかけたうえで姿を消したという   団体を不信に思っていた楢崎だが,録画された松尾の講話を聞くうちに親近感を持つようになる.しかし,松尾に会おうとした間際に『教団X』からの使者が現れ,楢崎を連れて行く   彼はそこで立花や教祖の沢渡に会うことになるが,教団の中ではクーデター計画が進められていた

この小説には「教祖の奇妙な話」というタイトルでいくつかの科学と宗教に関する話が語られますが,私が”なるほど”と思ったのは「輪廻転生」に関する概要次のような話です

「死んだら我々の身体はどうなるか   火葬場で人間の身体が焼かれても,実は消滅しない.人間の身体は全て原子でできている.火葬場で焼かれる時,原子同士の結び付きである分子レベルでの解体は行われるが,そのことによって我々の身体を構成する原子そのものが壊れることはない.もちろん消滅もしない   我々の身体をつくっていた原子は煙の中で空中に拡散する.つまり,この地球上に常に存在し続ける.そして,その原子たちは再び誰かの身体の構成物に成り得る.空気中で何かの原子と結びつき,何かの分子になり,再び生物に取り込まれ,誰かがその生物を食すことによってまた人間の構成物になり得る   地球が誕生して以来,そこにあったあらゆる原子は消滅していない,と考えられている.いわば人間の身体の構成物は,大昔からの使い回しであると言い換えることができる   一方,人間は1年もすれば身体を構成している原子がすっかり入れ替わっている.すなわち,人間の身体の材料は大昔からの使い回しであり,しかもその身体は現在も入れ替わり続けていると言える   我々は,遥か古代から現代まで,常に流れているものの一部である

以上のような「講話」がメインストーリーの合間に展開します   これらの「講話」を読むだけでも,普段は考えないことを考えることになり参考になります

2人の教祖の普段の態度を見る限り,二人ともかなりいい加減な人物だと思いますが,後にそれぞれから語られる「なぜ教祖になったのか」を読むと,宗教というのはいろいろなルーツがあるけれど,この二人に関しては「生」と「性」が深く結びついていることが良く分かります

ところで,ストーリーからは離れますが,この作品の中ではクラシックとジャズの名曲が1曲ずつ出てきます   クラシックの方は,主人公の一人,教団Xの高原が電話を待つシーンで出てきます

「電話を待つだけで本も読めなくなるなんて.高原は椅子から立ち上がり,オーディオのスイッチを入れる.ショスタコーヴィチ『弦楽四重奏曲第1番』.旋律に身を任せようとしたのに,やはり頭痛がする」

もし高原が聴いていたのが第1楽章「アレグロ」だったら,落ち着いて「旋律に身を任せる」ことは出来ないでしょう.何しろせわしない曲想ですから

ジャズの方は,楢崎が教団Xに連れてこられ,ベッドに寝かされているときの回想シーンに出てきます

「驚いたんだよ.怒鳴る上司の声を聞きながら,僕は脳内で音楽を鳴らしていた.ビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビイ』」

こちらは,なぜビル・エヴァンスなのかまったく分かりません

最後に,この作品を読んでいて,地下鉄サリン事件を起こしたカルト教団「オウム真理教」の教祖・麻原彰晃のことを考えざるを得ませんでした.いい加減な人物として

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「 METライブビューイング アンコール2017」でマスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」,レオンカヴァッロを「道化師」観る ~ヴェリズモ・オペラの傑作

2017年08月19日 07時51分12秒 | 日記

19日(土).わが家に来てから今日で1053日目を迎え,上野動物園が17日,6月に生まれたジャイアントパンダの雌の赤ちゃんの名前で32万2581件の応募があったと発表した というニュースを見て パンダに似た ”不審人物” を誘導尋問するモコタロです

 

     

      モコタロ「色は似てるけど パンダじゃないよね」 白黒「名前はニヤニヤだよ」 

 

                                           

 

昨日,夕食に「スタミナ丼」「生野菜サラダ」「冷奴」を作りました   スタミナ丼は基本的に豚バラ肉ですが,前日余った鶏モモも使いニラを一緒に炒めました

 

     

 

                                            

 

昨日,東銀座の東劇で「 METライブビューイング  アンコール2017」のマスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」とレオンカヴァッロを「道化師」の2本立てを観ました   これは2015年4月25日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です.2本ともテノールのマルセロ・アルヴァレスが主役を歌っています この2作品の組み合わせにより2本立てで上演したのは1893年のMETが初めてだったとのことです   随分長い歴史があるものです

マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」は,翻訳すると「田舎の騎士道」という身も蓋もない日本語になってしまいますが,レオンカヴァッロ「道化師」とともに,当時流行した真実(ヴェリズモ)主義文学の流れに沿って人々の生活に題材をとり,その現実を描く「ヴェリズモ・オペラ」の傑作と言われています

キャストはトゥリッドゥ=マルセロ・アルヴァレス(テノール),サントゥッツァ=エヴァ=マリア・ヴェストブルック(ソプラノ),アルフィオ=ジェリコ・ルチッチ(バリトン),管弦楽・合唱=メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団,指揮=ファビオ・ルイージ,演出=デイヴィッド・マクヴィカーです

全1幕(約70分)のストーリーは次の通りです

「復活祭の日,教会近くの酒場マンマ・ルチアに悲痛の面持ちのサントゥッツァが現れる.彼女はルチアの息子トゥリッドゥと恋人同士だが,最近彼は元恋人で人妻のローラと縒りを戻しているらしい   サントゥッツァは現れたトゥリッドゥに泣きつくが,彼は取り合わない   嫉妬に狂ったサントゥッツァはローラの夫アルフィオに,不倫を告げ口する.怒ったアルフィオとトゥリッドゥは決闘になり,トゥリッドゥが殺される

 

     

 

この公演に当たって,指揮者のファビオ・ルイージは歌手陣に「やり過ぎないように」と注意を促したそうですが,それを忠実に守っていたのがサントゥッツァを歌ったエヴァ=マリア・ヴェストブルックでした   抑制された歌唱と演技が反って現実味を感じさせていました   一方の主役トゥリッドゥを歌ったアルヴァレスは,役柄にのめり込んでいて,やりすぎの一歩手前までいっていました   ただ,「役に成りきる」ことが理想の歌手だということなら,彼こそ相応しい歌手でしょう

歌に力があり,説得力があるということで言えばアルフィオを歌ったジョージ・ギャグニッザが一番かも知れません   これまでのMETライブで,彼の役柄で一番印象深いのは「トスカ」におけるスカルピア役です   いかにも残忍な悪役がピッタリでした

途中でオーケストラによって演奏される「間奏曲」は感動的でした   このオペラの悲しさが静かに切々と迫ってきます   これは指揮を取るルイージの力によるところが大きいと思います   スーザン・グラハムとのインタビューで,彼はこの公演の前日にレハールのオペレッタ「メリー・ウィドウ」(スーザンも出演した)を指揮したとのことですが,日本では考えられません.喜劇の翌日に悲劇を指揮するのですから,並みの指揮者では”切り替え”が困難でしょう

 

                                                      

 

2本目のレオンカヴァッロ「道化師」は1892年に作曲された全2幕のオペラです   キャストはカニオ=マルセロ・アルヴァレス(テノール),ネッダ=パトリシア・ラセット(ソプラノ),トニオ=ジョージ・ギャグニッザ(バリトン),管弦楽・合唱=メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団,指揮=ファビオ・ルイージ,演出=デイヴィッド・マクヴィカーです

実際に起きた事件に基づいた「道化師」全2幕(80分弱)のストーリーは次の通りです

「旅回り一座の座長カニオは年若い妻ネッダとの間がうまくいっていないことに悩んでいる   実はネッダは村の若者シルヴィオと恋仲なのだが,カニオは知らない   2人が駆け落ちの相談をしているのを見つけた座員のトニオは,ネッダに言い寄って振られた腹いせに,カニオに告げ口をする   ネッダの不倫を見たカニオは傷心のまま道化師の衣装を付け舞台に立つ   芝居が始まり現実との区別が付かなくなったカニオはネッダを刺し殺す

 

     

 

このオペラは座員トニオの「人生のひとコマを描いた現実のお話しです」という「前口上」で幕が開きますが,ギャグニッザは見事に休憩前の「カヴァレリア・ルスティカーナ」の悲劇の登場人物から,一気に喜劇の狂言回し役に転じ,聴衆を「道化師」の世界に引き込みました

この公演では,カニオを歌ったアルヴァレスもネッダを歌ったラセットも役に成りきっていました   とくにアルヴァレスが第2幕の直前に歌う「衣装を付けろ」は「これぞヴェリズモ」と言うような迫真の歌唱・演技でした   ラセットはいつもは真面目な役柄が多いのですが,ここでは「旅回り一座」の一員ということで,喜劇的な一面も見せ聴衆の笑いを誘っていました

2つのオペラを通じて,ファビオ・ルイージ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団の演奏は,オペラの登場人物の微妙な心象風景を音で表し,見事でした

 

     

     

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安住正著「ゼロの激震」を読む~マグマの移動を阻止せよ! / 丸善池袋店がオープンしてます

2017年08月18日 08時08分32秒 | 日記

18日(金).わが家に来てから今日で1052日目を迎え,トランプ米大統領が白人至上主義の発言を明確に否定しないことについて,米主要企業による大統領の助言組織からの離反が相次いでいる というニュースを見て謎かけ遊びをするモコタロです

 

     

                バナナとかけてトランプ大統領と解く その心は どちらも良くスベルでしょう

 

山田く~ん 座布団1枚もってきてください

 

                                           

 

昨日,夕食に「鶏肉とアスパラの中華炒め」「生野菜サラダ」「冷奴」を作りました   「鶏肉~」は2度目ですが,美味しく出来ました

 

     

 

                                           

 

先日このブログでご紹介した丸善池袋店がオープンしていました

 

     

 

1階はカフェスペースで,書籍も少品種ですが置いてあります.なぜか鉄道関係書籍が多いようです   この日はオープン記念として,高田郁さんの時代小説「みをつくし料理帖」とのコラボ企画が実施されていました   地下と2階が文具売り場になっていますが,文具は丸善オリジナルの商品が目立ちました   すぐそばにはビル1棟すべてが書籍スペースというジュンク堂池袋本店があります   「丸善」と「ジュンク堂」は2015年2月に合併し「丸善ジュンク堂書店」となっていますが,書籍のネット販売が進む中,リアル書店の生き残り競争も大変ですね

 

     

 

     

 

                                           

 

安住正著「ゼロの激震」(宝島社文庫)を読み終わりました   安住正は1958年京都市生まれ.京都大学大学院工学研究科修了.第11回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し「生存者ゼロ」で2013年に作家デビュー   現在建設会社に勤務しながら作家活動を続けている

私が「ゼロの激震」を読もうと思ったのは,感染症の恐怖を描くバイオサスペンスのような幕開けを告げる第1作「生存者ゼロ」が面白かったからです

 

     

 

2021年6月 栃木県と群馬県の県境で原因不明の大規模な土砂崩れが起き,次いで7月に栃木県日光市で震度5の地震が起きた直後に現地からの連絡が途絶える.現地では大量の死者が出ていた   これは自然災害なのか,何らかの人災なのか・・・・そんな折,大手の太平洋建設で技術者だった木龍純一のもとに奥立という男が現れる.彼は,関東地方で起きている事象はすべてマグマの活動に伴う火山性事象が原因であり,今以上の被害を阻止するため木龍の力を借りたいという   木龍はかつて地盤や地質,地下構造物の設計と施工に精通する稀有な人材として,世界最大の人工島を東京湾の浦安沖に建設するという巨大プロジェクトの現場代理人を務めていた   その最終目標は,浦安沖人工島から,深さ50キロにおよぶ立坑を掘削してマントル層に到達させ,マントルの熱を利用した地熱発電を実現させるという壮大な構想だった   工事はガイアという巨大シールドマシンにトラブルが発生し,それが元となり木龍は退社するが,工事は後輩たちに受け継がれ完成させた   マグマが東京へと南下していく中,放っておくと関東地方が,ひいては日本列島が沈没してしまう   なぜ急に地下のマグマが移動するという火山性事象が生起したのか・・・実は自分たちが完成させた地熱発電システム自体がマグマを刺激し災害を起こしていることが判明する   木龍をはじめ元建設会社の同僚たちは,持ち前の土木技術でマグマの活動を抑制するため命を懸けた難事業に取り組むことになる

「深さ50キロの立坑を掘削し マントル層に到達させ,マントルの熱を利用する」というのは,発想は出来ても現実味がないというのが正直な感想です   しかし,筆者が京都大学大学院工学研究科を修了し,現在 建設会社に勤務していることを考え併せると,地球物理学や土木建設に関する知見に長けていて,その知識を生かして小説に取り組んでいることは十分に理解できます   そういう意味では,あり得ない話ではない,かな とも思います

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「キングコング:髑髏(どくろ)島の巨神」「GODZILLA ゴジラ」を観る~いかにもヒーロー好きなアメリカ映画

2017年08月17日 08時06分18秒 | 日記

17日(木).わが家に来てから今日で1051日目を迎え,米東部バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義を掲げる団体と反対派が衝突した事件で,トランプ大統領は,その直後に白人至上主義団体を名指しで非難しなかったことで世論の批判を浴びたが,15日「両者に非がある」と語ったというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

       極右思想の「オルト・ライト」に対して反対派を「オルト・レフト」と呼んだって

 

                                           

 

昨日,夕食に「牛肉と玉ねぎの甘辛炒め」「ニラ玉」「生野菜とアボカドのサラダ」「冷奴」を作りました   「牛肉~」は初挑戦ですが,醤油を入れ過ぎて若干辛くなってしまいました   次回に向けて自戒しようと思います

 

     

 

                                           

 

昨日,池袋の新文芸坐で「キングコング:髑髏島の巨神」と「GODZILLA  ゴジラ」の2本立てを観ました

「キングコング:髑髏島の巨神」はジョーダン・ボート=ロバーツ監督による2017年 アメリカ映画(118分)です

 

     

 

神話の中だけに存在すると言われてきた髑髏島(どくろとう)が実在することが判明し,未知の生物の探索を目的とする調査隊が派遣される   島内に足を踏み入れた隊員たちは散在する骸骨を発見する   やがて彼らの前に巨大なコングが現れ,隊員たちは銃で攻撃する   しかし,コングは別の巨大生物から先住民を護る神の存在だった

調査隊に同行した女性カメラマンが危機に陥った時,コングが救ってくれるというストーリーはオリジナルの「キング・コング」に似ています   約2時間の映画の後の長いエンドロールが終わったので腰を上げると,映画の続きが始まりました   これだから最近の映画は油断できないのです   昔の映画はシンプルでした.日本映画であれば「終」の一文字が,アメリカ映画であれば「The  end」が出てきておしまいでした   エンドロールが長いということで言えば,今の映画は それだけ制作に関わっている人や団体が多いという事でしょうが,それにしても長すぎるのではないかと思います

 

                                           

 

2本目の「GODZILLA  ゴジラ」はギャレス・エドワーズ監督による2014年 ハリウッド映画です

 

     

 

舞台は1999年の日本.原子力発電所で働くジョーは,突如として発生した異様な振動に危機を感じて運転停止を決意する   しかし,振動は想定外の大きさで発電所は崩壊し,一緒に働いていた妻サンドラを亡くしてしまう   それから15年後,アメリカ軍爆発物処理班の隊員となった,ジョーの息子フォードは,日本で働く父を訪ねる   原発崩壊の原因を調べようと侵入禁止区域に足を踏み入れた二人は,見たこともない巨大生物を目にする   空を飛ぶことのできる2頭の凶暴な生物(雄と雌)が現れ,街を破壊し始める   そこにゴジラが現れ2頭と死闘を繰り広げる

いかにもハリウッド映画といった感じのCGをふんだんに使ったド迫力の作品です   私は映像よりもドルビーシステムによる重低音にシビレました   ゴジラが登場するシーン,巨大生物と闘うシーンなどでは,大音響が床を振動させ,座席を揺るがして身体が震えるほどです

「キングコング」にしても「ゴジラ」にしても,いくら人を殺そうとも,街を破壊しようとも,結局は「正義の味方」で終わっているところは共通しています   いかにもヒーローが好きなアメリカ映画です

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松田華音ピアノ・リサイタル(10/30)のチケットを取る / 誉田哲也著「プラージュ」を読む~WOWOWでテレビドラマ始まる

2017年08月16日 07時54分42秒 | 日記

16日(水).昨日,小雨が降る中,埼玉県S市の菩提寺にお墓参りに行ってきました   15日とは言え,雨天ということもあって,さすがにお参りの人は少なかったです   帰りに実家に寄ってきましたが,猫のミラが巨体を引きずって歩いていました   初めての人に説明すると,「ミラ」というのは「未来」の省略形ではなく「ミラクル・デブ」の省略形です.何しろ7キロもあります

 

     

 

ということで,わが家に来てから今日で1050日目を迎え,夏休み中のトランプ米大統領が,かつて住んでいたニューヨークのトランプタワーに 大統領の就任後初めて戻ったが,タワー周辺には「ノー・トランプ ノー・ファシスト」などと書かれたプラカードを持って抗議する大勢の市民が集結した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                夏休み中の里帰りなのに 大勢の人が押しかけるなんて 人気者だな いよっ 大統領!

 

                                           

 

昨日,夕食に「クリームシチュー」「生野菜とサーモンとツナのサラダ」を作りました   ここ数日 涼しい日が続いているので,温かい料理が食べたくなりました

 

     

 

                                            

  

10月30日(月)午後7時から東京オペラシティコンサートホールで開かれる「松田華音  ピアノ・リサイタル」のチケットを取りました   プログラムは①チャイコフスキー/リスト編「歌劇『エフゲニー・オネーギン』からポロネーズ」,②プロコフィエフ「ロメオとジュリエット」より,③ムソルグスキー「展覧会の絵」です   彼女の演奏を聴くのはデビュー・リサイタル以来2回目です

松田華音(まつだ かのん)は1996年高松市生まれ.6歳の時にロシアに渡り,2013年9月 モスクワ音楽院に日本人初となるロシア政府特別奨学生として入学,2014年11月にドイツ・グラモフォンからCDデビューを果たしています   ワレリー・ゲルギエフ+マリインスキー歌劇場管弦楽団とラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」を日本国内で演奏するというニュースをどこかで見ましたが,登り坂のピアニストです

 

     

 

                                             

 

誉田哲也著「プラージュ」を読み終わりました   誉田哲也氏の作品はこのブログでも数多くご紹介してきました   念のため略歴をご紹介すると,1969年東京生まれ.2002年に「妖の華」で第2回「ムー伝奇ノベル大賞」優秀賞を受賞しデビュー   「ストロベリーナイト」「ジウ」「ケモノの城」など多くの作品で話題を呼んでいます

 

     

 

「ブラージュ」は大田区南六郷にあるカフェの名前です   1階がカフェで2階に住民が住んでいます.「家賃5万円,バス・トイレは共用,掃除交代制,部屋にドアなし・仕切りはカーテンのみ,ただし美味しい食事つき」というシェアハウスのオーナーは朝田潤子.7人の住人は,それぞれが過去に何らかの犯罪歴を持つ前科者ばかりです   一度だけ覚せい剤を使用して逮捕され現在執行猶予中の吉村貴生をはじめ,友樹,通彦,彰,紫織,美羽といった個性的な面々が暮らしています.実は,この中に本名を偽って「プラージュ」に潜入し,そこに住むある人物を社会的に抹殺しようと企てているフリーの記者がいますが,最後に明かされます   この小説は,これらの主人公たちが交代で語り部になってミステリー・タッチでストーリーを進めていくスタイルを取っています   本の帯に書かれているように,この作品はテレビドラマ化されるようですが,テレビドラマにしやすいストーリーだと思います

「プラージュ」というのはフランス語で「海辺」という意味です   筆者の言葉によると「海と陸との境界.それは,常に揺らいでいる」ということです.一般市民と犯罪者の境界のことを言っているように思われます  ごく普通の一般市民だっていつ犯罪者として事件に巻き込まれるか分からない世の中です.一度犯罪歴が刻印されるとなかなか許してくれない不寛容な世の中で,うまく共存できる社会が実現すると良いと思います

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まるでミュージカル!レハールのオペレッタ「メリー・ウィドウ」を観る~ METライブビューイング アンコール2017

2017年08月15日 07時50分54秒 | 日記

15日(火).わが家に来てから今日で1049日目を迎え,全米ゴルフ選手権 男子ゴルフの最終戦で,第2位につけていた松山英樹が3連続ボギーをたたき,涙の第5位に終わったというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      松山君 惜しかったぁ  ところでボギーって何?  沢田研二の歌に出てくるボギー?

 

                                           

 

昨日,夕食に「豚バラとにんにくの芽のスタミナ炒め」「生野菜とアボカドのサラダ」「冷奴」を作りました   「豚バラ~」は初挑戦でしたが,美味しくできました

 

     

 

                                           

 

昨日,東銀座の東劇で「 METライブビューイング  アンコール2017」のレハール「メリー・ウィドウ」を観ました   これは2015年1月17日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です   キャストは,ハンナ=ルネ・フレミング,ダニロ=ネイサン・ガン,ヴァランシエンヌ=ケリー・オハラ,カミーユ=アレック・シュレイダー,ツェータ男爵=トーマス・アレン,管弦楽=メトロポリタン歌劇場管弦楽団,指揮=アンドリュー・デイヴィス,演出=スーザン・ストローマンです 

 

     

 

ワルツ王,ヨハン・シュトラウスの活躍した時代は,ウィンナ・オペレッタ(「小さなオペラ」の意味)の「黄金時代」と呼ばれましたが,1899年6月3日,彼の死とともに終焉を迎えました   それはまさに19世紀の終焉でもありました.新しいオペレッタの幕開けは1905年12月28日,フランツ・レハーレの「メリー・ウィドウ」とともに始まりました   20世紀の新しいオペレッタの時代は「白銀時代」と呼ばれています

フランツ・レハール(1870-1948)はプラハ音楽院でドヴォルザークに学び,生涯に14作のオペレッタを作曲しました   「メリー・ウィドウ」はレハールが35歳の時の作品で,レハール自身の指揮で上演されたアン・デア・ウィーン劇場での初演は大成功に終わり,500回以上の連続上演を記録する大ヒット作になり,レハールは一躍大人気作曲家になりました

オペレッタ「メリー・ウィドウ」のあらすじは次の通りです

ボンテヴェドロ(架空の国)国王の誕生記念パーティーがパリの公使公邸で開かれている.主催者のツェータ男爵は,未亡人になったばかりのハンナがパリの男になびき,莫大な遺産がボンテヴェドロからフランスに流出するのを恐れ,書記官のダニロ(ハンナの元彼)に「国を守るためハンナと結婚せよ」と指令する   一方,ツェータ男爵の妻ヴァランシエンヌは,パリの伊達男 カミーユから熱烈な求愛を受けているが,夫は気付いていない   パーティーにハンナが登場すると,男たちは争ってダンスを申し込むが,財産目当てと知るハンナは不機嫌のままだ(以上,第1幕)

ハンナはパリの別邸でパーティーを開く   昨晩の参列者たちをもてなし,『ヴィリアの歌』で恋の魔法について歌う   ヴァランシエンヌはカミーユの誘惑に負け,庭の小屋の中で忍び合うが,その様子を覗き見してしまったツェータ男爵は腰を抜かす   機転を利かせたハンナはヴァランシエンヌとうまく入れ替わり,危機を救うが,成り行き上,自分とカミーユは婚約するのだと公言してしまい,ダニロは大いに動揺する(以上,第2幕)

ダニロはハンナの結婚を阻止しようとするので,ハンナはダニロが本当は自分を愛していると確信する   それでもダニロは財産目当てと思われたくないので意地でもハンナに求婚しようとしない   そこで,ハンナは「再婚すれば彼女は全財産を失う」と亡き夫の遺言を読み上げる   ダニロが即座に求婚すると,ハンナは「彼女の失った全財産は,再婚相手に与える」と遺言の続きを読み上げる(以上,第3幕)

 

     

 

第1幕で歌われる歌を聴いて「おやっ?」と思いました   レハールのオペレッタはドイツ語で歌われるはず.それが英語で歌われているのです   さらに,ツェータ男爵の妻ヴァランシエンヌ役のケリー・オハラが歌い出すと,「これはミュージカルじゃないか」と叫びそうになりました   オペラというよりもミュージカルの歌い方なのです   それもそのはず,ケリー・オハラはトニー賞に5度ノミネートされた輝かしい経歴を持つブロードウェイのトップスターなのです   ついでに言えば,ブロードウェイで上演されたミュージカル「王様と私」で彼女と共演した渡辺謙は,最近プライベート面での失態を暴露され,日本の週刊誌やテレビのワイドショーの恰好の餌食になりました.共演したオハラからもオハラい箱になったことでしょうね

この公演が「まるでミュージカルのようだ」というのは,出演者の出身地を見れば理解できます   つまり,ハンナを歌ったルネ・フレミングをはじめ,ツェータ男爵役のトーマス・アレン(イギリス出身)を除くすべての主役級の歌手がアメリカ出身者なのです   その仕掛人はMET演出家デビューのスーザン・ストローンです   彼女はブロードウェイで活躍するミュージカルの人気演出家・振付家なのです

主役のメリー・ウィドウ(陽気な未亡人)ハンナを歌ったルネ・フレミングは初挑戦というのが信じられないくらいの”当たり役”で,第2幕で歌う「ヴィリアの歌」,第3幕でダニロとデュエットで歌う「メリー・ウィドウ・ワルツ」をはじめとして,輝くシルキー・ヴォイスで聴衆を魅了しました   また,パーティーで女性談議に花を咲かせる男たちが一斉に踊りながら歌う「女,女,女のマーチ」は,これもまた ミュージカルを観ているようです   大ベテランのトーマス・アレンが喜々として歌って踊っている姿は,見ていて微笑ましいものがありました

演出面では,第3幕の「キャバレー・マキシム」での,ヴァランシエンヌと合唱が披露する「グリセットの歌」と,それに続くカンカン・ダンスの一連のシーンは最高に楽しかった  絢爛豪華な舞台と衣装,所狭しと踊りまくるダンサーたち  最高のエンターテインメントです   ケリー・オハラもカンカンを一緒に踊るのですが,さすがに180度開脚は無理でした

「これほど楽しいオペレッタはあるだろうか」と思うほど,美しい歌や華やかな踊りが披露されました

この作品の中では,ポロネーズ,マズルカ,ポルカなどが踊られますが,レハールは様々な民族音楽・舞踏を取り入れて「タンツ・オペレッタ」を創造しました   それがアメリカに渡り,フレッド・アステア,ジーン・ケリー等の「ダンス・オペレッタ」「ダンス・ミュージカル」の先駆けとなり,やがて「王様と私」「マイ・フェア・レディ」「ウェスト・サイド・ストーリー」などのミュージカルにつながっていったことを考えると,今回の公演は,まさしく「ミュージカル」を明確に意識して演出されたオペレッタ「メリー・ウィドウ」だったと言えるでしょう

「最近 面白いことないんだよね」とか「生きていたって良いことなんか一つもないよ」とか独白している方に特にお薦めします スカッとすること  この上なしです

METライブビューイング「メリー・ウィドウ」は,東銀座の東劇で8月15日,16日,31日,9月1日,27日にも上映されます   開演後上映時間は2時間53分です.観て後悔しません

 

     

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「METライブビューイング アンコール2017」でビゼー「カルメン」を観る~最強のコンビ=ガランチャのカルメン&アラーニャのホセ

2017年08月14日 07時55分41秒 | 日記

14日(月).わが家に来てから今日で1048日目を迎え,安倍晋三首相が12日,地元の山口県長門市で安倍家の墓参りをし,「(内閣改造で)新たなスタートを切り,そして国民のために国政に全力を尽くしていきます,と報告した.初心にかえって,謙虚に誠実に丁寧に,全力を尽くすと誓った」と記者団に話したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      亡父・晋太郎氏に誓ったことは 国民にも誓って欲しいものです そして実行が大事!

 

                                           

 

昨日,東銀座の東劇で「METライブビューイング  アンコール2017」のビゼー「カルメン」を観ました   これは2010年1月16日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です

キャストは,カルメン=エリーナ・ガランチャ,ドン・ホセ=ロベルト・アラーニャ,ミカエラ=バルバラ・フリットリ,エスカミーリョ=テディ―・タフ・ローズほか,管弦楽・合唱=メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団,指揮=ヤニック・ネゼ=セガン,演出=クリストファー・ウィールドンです

私はこの映像が最初に公開された2009-10年シーズンの時は見逃してしまい,2012年のアンコール上演のときに一度観ました   したがって今回は2回目です

 

     

 

指揮者 ヤニック・ネゼ=セガンがオーケストラ・ピットでタクトを振り下ろし,勇ましい前奏曲が演奏されます   彼はこの公演がMETデビューでしたが,生き生きとした指揮ぶりがMETの上層部にアピールしたのか,40年の長きにわたり音楽監督を務めて来たジェイムズ・レヴァインの後を襲い,2016年6月にMETの次期音楽監督に任命されています

今回この映像を観て改めて感じたのは,この当時,ガランチャのカルメンとアラーニャのホセは最強のコンビだったのではないか,ということです   二人ともべらぼうに歌が上手いだけでなく演技力が抜群なのです   とくにリチャード・エアの演出によるカルメンは歌って踊っての激しい動きが求められるので,踊る能力も必要です   そういう意味では,ガランチャは3拍子揃った歌手だと言えます   彼女は2016-17シーズンの「ばらの騎士」でオクタヴィアンを歌いましたが,その時のインタビューで「今回でこの役は卒業したい.体力が続かない」と語っていたので,激しい動きのカルメンは 7年経った今では なおさら歌えないでしょう

ミカエラを歌ったフリットリは,か弱い女性ではなく自分の考えをしっかり持った現代女性としてのヒロインを演じていました

驚くべきはエスカミーリョを歌ったテディ―・タフ・ローズです   エスカミーリョ役は当初マリウーシュ・クフィエチェンが歌う予定だったのですが,急病で降板となり,METは急きょ代役を立てることになり,彼に白羽の矢が立ったのです   幕間のインタビューで ルネ・フレミングから,「いつ,代役の依頼を受けたの?」と訊かれ,「歌う当日の午前10時でした.リビングで新聞を読んでいたら電話がきて,午後1時からの本番に出て欲しいということでした」と答えていました.ルネ・フレミングもフリットリも同じような経験があるそうです.それにしても,プロの歌手は凄いと思います   いつどんなオファーがあっても,応えなければならないので,普段からあらゆる役柄を歌えるように準備しておかなければならないのですから   しかし,とくに名前が知られていない歌手にとっては,大きな飛躍のチャンスにもなるわけです   そういうチャンスを生かすも殺すも普段の努力次第ということでしょう

なお,この公演では幕間で男女二人によるバレエが踊られましたが,次幕でのカルメンとホセの行方を占うような動きを表現していました   とくに第3幕への幕間でフルートによる美しいメロディーに合わせて踊られたバレエはとても美しく感動的でした

この日は演目がポピュラーな「カルメン」で,日曜日ということもあってか,かなりの人が入っていました  女子トイレに長蛇の列ができるほど,女性客が多かったようです  

METライブビューイング「カルメン」は開演後演奏時間3時間24分で,今後は下記の通り8月31日,9月1日,24日にも上映されます

 

     

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超おもしろい!下野竜也のレクチャー・コンサート~新日本フィル「『新世界より』徹底大解剖~オーケストラ付レクチャー」を聴く

2017年08月13日 08時26分57秒 | 日記

13日(日).わが家に来てから今日で1047日目を迎え,トランプ米大統領が11日,北朝鮮が米領グアム沖に弾道ミサイルを発射する計画を表明したことを受け,北朝鮮に追加経済制裁を科す考えを表明した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                 トランプ大統領は「非常に強力な」制裁を科すと言ってるけど問題は中国の動きだ

 

     

                   中国は米朝双方に「緊張を高めるな」と自制を求めているからなあ

 

     

      経済制裁が効かず 軍事力に頼ることになると 日本も無関係でいられなくなるぞ!

 

     

                 米朝とも 先が読めない人物がリーダーだから まともに見ちゃいられないよ

      

                                             

 

昨日,すみだトリフォニーホールで下野竜也指揮新日本フィルによる「『新世界より』徹底大解剖~オーケストラ付レクチャー」公演を聴きました これは「下野竜也プレゼンツ!音楽の魅力発見プロジェクト」の第4回目の公演で,ドヴォルザークの「交響曲第9番ホ短調『新世界より』」の隠れた魅力を発見しようという試みです

自席は1階11列26番,センターブロック右通路側席です.会場はほぼ満席といっても良いでしょう.よく入りました   オケの面々が入場し配置に着きます.弦楽器の配置は左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスといったいつもの編成です   コンマスは西江王子です.第2ヴァイオリンを見ると,トークの天才・篠原英和氏の姿を,そして入団以来応援している松崎千鶴さんの姿を発見しました   メンバーは夏らしく,全員が上が白,下が黒の衣装で統一しています.ステージ後方の壁には巨大スクリーンが掲げられ,ドヴォルザークらしき顔写真が客席を見下しています

楽員とは逆に上が黒,下が白の衣装の下野竜也が登場,指揮台に上がり演奏が開始されます   ところが,出て来たメロディーは「新世界より」第1楽章ではなく第2楽章「ラルゴ」でした   しかも,弦楽器奏者が「遠き空に陽は落ちて・・・」と歌い始めたではありませんか   第2ヴァイオリン首席の吉村知子さんなどは,ほとんど笑いながら歌っています

第2楽章の演奏が終わると,下野氏がマイクを持ちます

「皆さん,帰らないでください   今日は新日本フィルのコンサートにお出でいただきありがとうございます.私,指揮も出来る司会者・下野竜也です(会場・笑い).『音楽の魅力発見プロフェクト』も今年で4回目を迎えることになりました   ところで,ステージ後方のスクリーンをご覧になって私の仕掛けに気が付いた方はいらっしゃいますか?(客席:シーン).実は,この写真の人物はドヴォルザークではなく,ノーベルなのです.よく似ているでしょう   この写真を見た時,ドヴォルザークにそっくりだと思って,いつかネタに使ってやろうと思ってました   それでは本当のドヴォルザークの写真をご紹介しましょう

下野氏の合図に,本物のドヴォルザークの顔写真が映し出されました.聴衆は「ああ,見事に騙された」といった反応です.私も含めて   そして,「新世界交響曲」を第1楽章から順に,聴きどころの楽譜を紹介しながら説明していきました   あるメロディーを取り上げ,ドヴォルザークが書いた「超いいねバージョン」と,作曲家に成りたての素人が書いた(と想定した)「残念だねバージョン」を音符で説明の上,オケで演奏し,ドヴォルザークの作曲がいかに優れているかを示しました   第2楽章については,内容が死者を悼むレクイエムであることを説明しました.「弦楽器は弱音器を付けてミュートで演奏するが,ミュートを付けるというのは『死』や『夜』を表す   曲の最後のヴァイオリンが高く上がっていき,チェロとコントラバスが低く静かに奏でるところは,魂が昇華していくのを人が地上で祈っている有様を描いているように思う」と解説しました

第3楽章については「舞踏の音楽です.次いきます」と,早口でスルーしたので,楽員も聴衆も呆気にとられ 次の瞬間は大爆笑でした   第4楽章では,シンバルの一打について説明がありました.かつてフランキー堺が打楽器奏者を演じた映画で,新世界交響曲の第4楽章のシンバルを叩き損なうという映画がありましたが,長い交響曲の中でシンバルはたったの1度だけ鳴らされるのです   これについては,この楽章の冒頭からシンバルが不必要に何度も鳴らされる「ダメ・バージョン」を演奏,いかにうざったいか,1度しか鳴らさないことが如何に意味があるかということを実感させました   そして,最後のフィナーレが「ジャン」と強く終わらないで,長く音を伸ばすことで余韻を残して終わることについて,「ここに この曲が『新世界』ではなく『新世界より』というタイトルが付いている意味がある」と解説しました   つまり,ドヴォルザークは,赴任先のアメリカ・ニューヨークから(=新世界から)故郷ボヘミアへのメッセージを From the New World の「From」という言葉に託し,それを音楽で表したということです

下野氏は最後に,

「これで私のレクチャーは終わります.20分の休憩後にこの教室に集まるように

と大学教授のようなセリフを言い残して舞台袖に引き上げました  ここで付け加えると,下野氏は現在,京都市立芸術大学音楽学部指揮専攻教授を務めています

 

     

 

さて,本番です.第1楽章「アダージョ  ー  アレグロ・モルト」が開始されます   途中からアレグロ・モルトに移ると急速にテンポアップします   下野竜也の真骨頂はメリハリの利いた小気味の良いテンポです   第2楽章では,冒頭の管楽器が揃わなかったのが残念でしたが,森明子のイングリッシュホルンがしみじみと「遠き空に~」を奏でていました   第3楽章では古部賢一のオーボエ,重松希巳江のクラリネット,荒川洋のフルートなど木管楽器群とホルンが素晴らしい演奏を展開していました 第4楽章では,これまで登場したメロディーが回想され,最後はレクチャー通り,余韻を残して静かに曲を閉じました

演奏後,再びマイクを手にした下野氏が

「来年もこの企画をやらせてもらえることが決まりました(会場・拍手) 来年も今年とまったく同じ企画でやろうと思いますが如何でしょうか(会場・エーッ).そういう訳にもいきませんね   別の企画を考えたいと思います

と挨拶し,アンコールにドヴォルザークの歌曲「わが母の教え給えし歌」の管弦楽編曲版を演奏し,大きな拍手を浴びました

 

     

 

実に楽しくためになるレクチャー・コンサートでした   これは下野竜也という類まれなるキャラクターによるところが大きいと思います  第2ヴァイオリン奏者の篠原英和氏が「トークの天才」だとすれば,指揮者の下野竜也氏は「レクチャーの天才」と呼んでも良いでしょう   1年に1度と言わず何度でもやって欲しい企画です.クラシック音楽の普及・拡大を目指すなら,こういうコンサートこそ力を入れて取り組むべきだと思います   何だったら定期演奏会の一つのシリーズを「レクチャー・コンサート・シリーズ」にしても良いかも知れません   私だったら絶対に定期会員になります

 

     

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