人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「METライブビューイング アンコール2017」でモーツアルト「ドン・ジョバン二」を観る~粒ぞろいの歌手陣,シンプルな演出

2017年08月30日 07時59分29秒 | 日記

30日(水).昨日の日経夕刊・くらし面のコラム「それでも親子」でピアニストの上原彩子さん(1980年香川県生まれ)が取り上げられていました   それによると,

「高校3年生のとき一度,チャイコフスキー国際コンクールを受けたが,途中で落選した   その後,もっと練習したいと高校を休学したが,両親は『好きにすれば』と自由にさせてくれた.ありがたかった   結局,先生たちに『高校は卒業したほうがいい』と説得されて20歳で卒業した   初回のコンクールの時は見に来てくれたが,2002年,2度目の出場となったチャイコフスキー国際コンクールで優勝した時は,ロシアまで旅費もかかるしプレッシャーにもなるので,両親に『来ないで』とお願いした

とのことです   また「ご自身も3人の子育ての真っ最中ですね」と訊かれると,

「母のように子供にうるさく言いたくなる気持ちが分かるようになりました   いまだに親には世話になっています.頭が上がりません

と答えています  それはそうでしょう.コンサートで弾く曲は暗譜できるまで練習に次ぐ練習でしょうから,そのための練習時間の確保は最低限必要でしょう  親の世話になりながらも,演奏活動を続けるのは,彼女自身のアイデンティティー存続の問題です.頑張って欲しいと思います   ところで,彼女のチャイコフスキー国際コンクール優勝が2度目の挑戦の結果だったということは初めて知りました   

ということで,わが家に来てから今日で1064日目を迎え,北朝鮮が29日午前5時58分ごろ弾道ミサイルを発射,約2700キロメートル飛行して北海道の襟裳岬上空を通過,午前6時12分ごろ襟裳岬の東約1180キロメートルの太平洋上に落下した というニュースを見て森進一の名曲をアレンジするモコタロです

 

     

       その昔「襟裳の春は 何もない 春です」 現在「襟裳の夏は ミサイル飛ぶ 夏です」

 

                                           

 

昨日,夕食に「 鶏のトマト煮」「生野菜とアボカドとサーモンのサラダ」「冷奴」「キャベツとウィンナのスープ」を作りました   「鶏の~」は娘の大好物です.娘は明日 健康診断があるため今夜夕食が食べられないので,昨夜は娘中心のメニューにしたのでした

 

     

 

                                           

 

昨日,東銀座の東劇で「METライブビューイング  アンコール2017」でモーツアルト「ドン・ジョバン二」を観ました   これは2016年10月22日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です   キャストは,ドン・ジョバンニ=サイモン・キーンリーサイド,ドンナ・アンナ=ヒブラ・ゲルツマ―ヴァ,ドンナ・エルヴィーラ=マリン・ビストラム,ドン・オッタ―ヴィオ=ポール・アップルビー,ツェルリーナ=セレーナ・マルフィ,レポレッロ=アダム・プラヘトカ,騎士長=クワンチュル・ユン,管弦楽・合唱=メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団,指揮=ファビオ・ルイージ,演出=マイケル・グランデージです

 

     

 

大きな拍手の中,ファビオ・ルイージがオーケストラ・ピットの指揮台に上がり,モーツアルトが一晩で書いたと言われる「序曲」の演奏に入ります   カメラはオーケストラ・ピットの中も映しますが,弦はヴァイオリン・セクションが左右に分かれる対向配置をとっていることが分かります   冒頭のデモーニッシュな音楽から軽快な曲想に変化し,序曲だけでオペラのエッセンスを表出します  こういうところにもモーツアルトの天才を感じます

「ドン・ジョバン二」を観た後,私が必ずブログに書くのは第1幕冒頭のシーンの素晴らしさです   幕が開いて,レポレッロが「もうこんなひどいご主人に仕えるのは嫌だ  おれも貴族になりたい」とこぼしていると,建物の部屋の中からドン・ジョヴァンニとドンナ・アンナの言い争う声が聞こえてきます.ドン・ジョヴァンニはドンナ・アンナの部屋に夜這いをかけて彼女に気付かれて失敗,彼女が助けを求めると父親が剣を持って登場し,ドン・ジョヴァンニと決闘になり,父親は刺殺されてしまいます.この一連のノンストップ・ミュージックが正味約3時間のオペラの中で一番好きなところです

ドン・ジョバンニは世界各国でモノにした女性のリストを従者レポレッロに作らせ,「スペインでは1003人」といった具合に記録の更新を狙っている稀代の女たらしですが,彼はあくまでも貴族です   したがって,歌と演技にノーブルなところがなければなりません   その点,タイトルロールを歌ったイギリス生まれのサイモン・キーンリーサイドはピッタリのはまり役です  セクシーであってもどこか品があります   第1幕の二重唱で村娘のツェルリーナを口説き落とすのに3分しかかからないのも説得力を持ちます

ドン・ジョバンニに3分で口説き落とされたツェルリーナを歌ったイタリア出身のセレーナ・マルフィは出演者の中では一番魅力のある歌手です   通常ツェルリーナはソプラノが歌う役柄ですが,なぜメゾ・ソプラノの彼女が歌うことになったのか分かるような気がします   ちょっとコケティッシュだけれど,したたかさも持ち合わせた美しい村娘にピッタリです

ドンナ・アンナを歌ったロシア出身のヒブラ・ゲルツマ―ヴァは透明感のあるソプラノで,歌はドラマティックです   その婚約者ドン・オッタ―ヴォを歌ったシカゴ生まれのポール・アップルビーはどこまでもドンナ・アンナに寄り添う真面目で一途な青年を見事に歌い演じました   「性格俳優」とでも呼びたくなったのはドンナ・エルヴィーラを歌ったスウェーデン出身のマリン・ビストラムです   歌が抜群に上手いだけでなく顔で演技の出来る人で,見ていて飽きませんでした   レポレッロを歌ったプラハ出身のアダム・プラヘトカはコミカルな役柄にピッタリです

最適のテンポ設定のもと,歌手陣をしっかり支えたファビオ・ルイージ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団と合唱団の活躍を忘れるわけにはいきません

また,イギリス出身のマイケル・グランデージの極めてオーソドックスな演出・舞台作りも特筆に値します   これが,「まず演出ありき」のような「舞台を現代に置き換えてみました」みたいな演出だと本当にがっかりします  モーツアルトは「まずは音楽,次に演出」でなければなりません

モーツアルトのオペラはどれもが,アリアに次ぐアリアで飽きることがありません   また各幕のフィナーレで主役級の出演者が総出で歌う重唱も大きな魅力です   生きてモーツアルトを聴けるのは どれほど幸せなことでしょうか

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