人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

井上道義+大阪フィルのショスタコーヴィチ「交響曲第11番,第12番」のチケットを買う/佐藤正午「事の次第」を読む

2016年12月21日 08時01分07秒 | 日記

21日(水).わが家に来てから今日で813日目を迎え,ベルリン中心部で19日午後8時頃,大型トラックが買い物客で賑わうクリスマス市に突っ込み,少なくとも12人が死亡,48人が重軽傷を負ったというニュースを見て 感想を述べるモコタロです

 

          

             いつ どこで なにが起こるか分からない 世界は怖い!  日本は高齢ドライバーか?

 

  閑話休題  

 

昨日は,勝浦在住の大学時代の友人S君が送ってくれたサンマを焼きました あとは「トン汁」と「生野菜とサーモンのサラダ」です.サンマは本当に美味しかったです.持つべきものは友だちです

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

来年2月22日(水)午後7時から東京芸術劇場コンサートホールで開かれる「大阪フィル  第50回東京定期演奏会」のチケットを買いました プログラムは①ショスタコーヴィチ「交響曲第11番ト短調”1905年”」,②同「交響曲第12番ニ短調”1917年”」です 指揮は首席指揮者の井上道義です 先日,井上+N響で第11番を聴いて,意外に良かったので12番ともども聴いてみようかと思いました

 

          

 

  最後の,閑話休題  

 

佐藤正午著「事の次第」(小学館文庫)を読み終わりました 佐藤正午は1955年 長崎県生まれ.1983年に「永遠の1/2」で第7回すばる文学賞を受賞して作家デビュー,「身の上話」でブレイクしました

 

          

 

この本は,「寝るかもしれない」「そのとき」「オール・アット・ワンス」「姉の悲しみ」「事の次第」「言い残したこと」「七分間」の7つの物語による連作小説ですが,1997年に刊行された「バニシングポイント」を改題して文庫本として出された作品です

中年のタクシー運転手が抱える3つの秘密を巡る「寝るかもしれない」,妹のせいで結婚できない35歳の美容師の恋を描いた「姉の悲しみ」,妻の浮気相手と対峙するため新聞記者が拳銃を手に入れる「事の次第」など,夫婦間,恋人間など,それぞれの事情を抱えた男女の行方を描いています

「おやっ?」と思ったのは,巻末の「解説」を,先日当ブログでご紹介した「書くインタビュー(① ②)」で,メールのやり取りだけで佐藤正午氏にインタビューした東根ユミさんが書いているのです その中で,東根さんは実際 会ったこともない佐藤正午氏にメールで「正午さん」と呼びかけたことに対し,「気安く呼びかけるのはやめてもらえないでしょうかね.気味が悪い」「正午さんと呼ぶな」と罵倒されたことを書いています.メールのやり取りをしているうちに,鋭い質問を浴びせて佐藤氏に黙認されるまでに至るわけですが,彼女のどこまでも食らいついていく根性がそれを可能にしたのだと思います さらに彼女は書きます

「毎日まいにち一人で原稿と向き合う孤独,小説家の悲しみを,私はここで考えずにはいられません 小説家はありえたかもしれないもう一つの人生を書いています.いくつものモチーフをずっと大切に抱え続けて書く手間と向き合い,いくつもの人生を過ごすに等しい時間を間違いなく送っています.つまりは登場人物たちの人生に潜んでいるいくつもの秘密をもまた,小説家は長い時間をかけて一身に背負っていることにもなります

「書くインタビュー」を読んだことのある人なら分かると思いますが,佐藤正午という小説家は小説を書くことに対して極めて厳格で真面目です 東根さんの言葉を借りると「書く手間と向き合う」ということで,ひと言でいえば「一字一句について,推敲に推敲を重ねる」小説家です そうしたことを踏まえて,東根さんは「一人で原稿に向き合う孤独,小説家の悲しみ」と表現したのだと思います

そういう意味では,この「事に次第」と「書くインタビュー」の両方を時間を置かずに読んだ方が,佐藤正午の小説を理解するには役立つかもしれません

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朝日「回顧2016クラシック」掲載される/映画「セルフ レス 覚醒した記憶」「ハイ・ライズ」を観る~なぜかブランデンブルク協奏曲が

2016年12月20日 08時02分07秒 | 日記

20日(火).吉田秀和氏亡き後,朝日の年末「回顧 クラシック」を担うのは朝日 編集委員・吉田純子さんです 昨日の朝日夕刊に「回顧2016クラシック」が載りました.まず最初に彼女が選んだのは「既存の型を壊し,聴衆との接点を模索する挑戦がオペラ界で相次いだ」として挙げたクリスティによるバロックから古典までの作曲家のアリアを集めた公演です 次いで,北とぴあ国際音楽祭「ドン・ジョバン二」を挙げています ピアニストとして挙げたのは小菅優,プレトニョフ,野平一郎,ポゴレリッチ,ホロディンコです.指揮者+オケでは,ヤンソンス+バイエルン放送響,ブロムシュテット+バンベルク響,ノット+東京交響楽団,ラザレフ+日本フィルです 紙面のスペースの大小の違いもありますが,先に発表された日経の「回顧」がワーグナーのオペラに重点を置いていたのに対し,ワーグナーの「ワ」の字もなく,幅広いジャンルを紹介しているのが特徴です

ということで,わが家に来てから今日で812日目を迎え,沖縄県名護市沿岸で米軍輸送機オスプレイが着水を試み大破した事故で,米海兵隊が19日,事故以来やめていたオスプレイの飛行を全面再開すると発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

               オスプレイはプレイ・ボタンを押すと動くって?

                 プレイって言ったって遊びじゃないんだからさ!

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「豚こま生姜焼き」と「生野菜とアボガドのサラダ」を作りました 「豚こま~」は玉ねぎを使います

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,池袋の新文芸坐で「セルフレス  覚醒した記憶」と「ハイ・ライズ」の2本立てを観ました

「セルフレス」は,ターセム・シン監督による2015年アメリカ映画(117分)です

 

          

 

68歳の大富豪の建築家ダミアン・ヘイルは余命半年と宣告されたが,一人娘のクレアとの仲を修復できないまま死を迎える瀬戸際に立たされていた そんな彼に,天才科学者オルブライトは,遺伝子操作で造った若い肉体へダミアンの頭脳を転送することを持ちかける 莫大な料金と引き換えに新しい肉体を手に入れたダミアンだったが,その肉体は遺伝子操作で造られたものではなく,妻子ある特殊部隊の軍人マークの肉体であることが分かる 真実を知ったダミアンは,フラッシュバックで現れた脳の中の残像をもとにマークの妻の行方を突き止める.ところが,秘密が外部に漏れては困るオルブライトの秘密組織に命を狙われる羽目に陥る

この映画を観ていて思ったのは,遺伝子操作であるにしても他の方法にしても,数年後 あるいは数十年後はあり得ない話ではないな,ということです 生体医学はどこまで”進歩”するのだろうか,と

ダミアンは他人の肉体を借りて一人娘のクレアに会い,自分の本当の気持ちを表した手紙を届けることができ,マークの妻子の命も救うことが出来て,めでたしめでたしと思っていたら,最後の最後にどんでん返しがあり「あれ~,どうなってんの?」と唸ってしまいました 見ごたえのあるSFアクションでした

 

  最後の,閑話休題  

 

「ハイ・ライズ」はベン・クィートリー監督による2015年イギリス映画(119分)です

 

          

 

舞台は1975年のイギリス.ロンドン郊外の富裕層向けタワーマンションは,タワー内にスーパーマーケット,プールをはじめ あらゆる設備が揃った理想的な居住空間だった 医師のラングは単身で25階に引っ越してきた.入居者たちは俳優,モデル,アーティスト,TVプロデューサーなど,一流のセレブばかりで,毎晩のように派手なパーティーを開いて,自分たちの成功に酔いしれ人生を謳歌していた ラングもいつしかこの狂乱のパーティーの参加者となっていく.ある時ラングは,ワイルダーという住民と出会い,フロアの高低に基づく階級間格差があることを知る.そして,ある日突然起こった停電を境に,住民たちの不満・怒りが爆発する

観ていて感じたのは,アメリカだったらこういう映画は作らないだろう,いかにも階級社会のイギリスらしいな,ということです 内容は全体的に面白いというよりも かなり過激です.心して観た方がよいと思います

驚いたのは,映画の冒頭,LPレコードに針が落とされるシーンが映し出されるのですが,流れて来たのはJ.S.バッハの「ブランデンブルク協奏曲第4番BWV1049」の第1楽章「アレグロ」だったのです フルートにより あまりにも明るく希望に満ちた音楽が流れてきたので,どんなに楽しい映画が始まるのだろう,と期待を抱かせます しかし,内容は 前述のとおり期待に反して過激そのものです.映画の最後にもう一度同じメロディーが流れますが,「セレブの人生なんてこんなもの」とおちょくっているかのようです

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「がんばろう日本!スーパーオーケストラ」のチケットを買う/水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」を読む

2016年12月19日 07時55分09秒 | 日記

19日(月).わが家に来てから今日で811日目を迎え,久々にリラックスしてリビングでくつろいでいるモコタロです

 

          

               ぼくが耳を寝かせているときは 警戒心がないときなんだよ

 

  閑話休題  

 

来年3月24日(金)午後7時から東京オペラシティコンサートホールで開かれる「がんばろう日本!スーパーオーケストラ」公演のチケットを買いました オール・ベートーヴェン・プログラムで,①劇音楽「エグモント」序曲,②ピアノ協奏曲第5番”皇帝”,③交響曲第5番ハ短調”運命”です ②のピアノ独奏は仲道郁代,指揮は海老原光です.チケット代は全席指定3,800円です

「がんばろう日本!スーパーオーケストラ」は,全国各地のオケの団員や個人演奏家の有志が集まって構成する臨時編成オーケストラで,読響のコンマス 小森谷巧がコンサートマスターを務めています

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」(集英社新書)を読み終わりました 水野和夫氏は1953年,愛知県生まれ.埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了.三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミスト,内閣府大臣官房審議官等を経て,現在 日本大学国際関係学部教授を務めています

 

          

 

著者は,「長期にわたるゼロ金利が示すものは,資本を投資しても利潤の出ない”資本主義の死”である」とし,「16世紀以降,世界を規定してきた資本主義というシステムがついに終焉に向かい,混沌を極めていく”歴史の危機”を迎えている」と主張します

また,「これまでバブルが崩壊するたびに,世界は大混乱に陥ってきた.しかし,バブルが崩壊して起こることは,皮肉なことに,さらなる『成長信仰』だった」として「こうした動向は,脱成長の時代に逆行する悪あがきのようにしか思えない」と述べます

そして「2001年の9.11(アメリカ同時多発テロ),2008年の9.15(リーマン・ショック),2011年の3.11(東京電力福島第一原発事故)はまさに近代を強化しようとして,反近代,すなわちデフレ,経済の収縮を引き起こした象徴だ」と述べています

そして「現代の世界で起きている『帝国』化とは『蒐集』の最終地点だ」として,「9.11は,アメリカ金融帝国が第三世界から富を『蒐集』することに対する反抗で,9.15は過剰にマネーを『蒐集』しようとした『電子・金融空間』が,自らのレバレッジの重みに耐えきれず自滅した結果 起きたことで,3.11は,資源の高騰に対して,安価なエネルギーを『蒐集』しようとして起きた出来事だ」と説明します

さらに「それでも,資本主義は資本が自己増殖するプロセスなので,利潤を求めて新たなる『周辺』を生み出そうとする.しかし,現代の先進国はもう海外に『周辺』はない.そこで資本は,国内に無理やり『周辺』をつくりだし,利潤を確保しようとする アメリカのサブプライム・ローンであり,日本の労働規制の緩和である.今や世界のあらゆる国で格差が拡大しているのは,グローバル資本主義が必然的にもたらす状況だと言える」と述べています

著者は最後に「成長至上主義から脱却しない限り,日本の沈没は避けることができない」とし,「『より速く,より遠くへ,より合理的に』という近代資本主義を駆動させてきた理念を逆回転させ,『よりゆっくり,より近くへ,より曖昧に』と転じなければならない」と結論づけています.

最近の安倍首相の経済政策を見ていると,「株価を上昇させるためなら何でもやる」といった”イケイケどんどん”の強硬姿勢が目立ちます 「アベノミクス失速」あるいは「アベノミクス失敗」と言われるのを何とか押しとどめようと躍起になっているような気がします その一つが国の2017年度予算案(枠組み)で,一般会計の総額は97.5兆円程度となり,今年度当初予算より7千億円強増え,5年連続で過去最大を更新するというものです.もちろん増大する社会保障費の問題があることは分かっていますが,いつまでも「成長路線」を続けていってよいものか,経済の専門家・水野和夫氏でなくても心配になります ちょっと話が重くなりましたか? いい重い出になればと思って

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山本真希+鷲尾麻衣で「パイプオルガン・クリスマス・コンサート」を聴く~トリフォニーホール

2016年12月18日 10時15分20秒 | 日記

18日(日).わが家に来てから今日で810日目を迎え,南シナ海のフィリピン沖の公海で,米海軍海洋調査船の無人潜水機を 中国が奪ったというニュースを見て 感想を述べるモコタロです

 

          

           公海で米国の物を奪うのは中国にとって後悔のもとだ 情報が公開されてるし

 

  閑話休題  

 

昨日,すみだトリフォニーホールで「パイプオルガン クリスマス・コンサート2016」を聴きました プログラムは①アレフレッド・ホリンズ「トランペット・メヌエット」,②ジョン・ブル「御子がわれらに生まれたもう」,③チャイコフスキー「バレエ:くるみ割り人形」より「花のワルツ」,④ランドルフ・キュリ「みんなのためのオルガン・ガイド」,⑤バッハ/グノ―「アヴェ・マリア」,⑥ヘンデル「私を泣かせてください」,⑦バッハ「主よ,人の望みの喜びを」,⑧プッチーニ「オペラ:ラ・ボエーム」より「私が街を歩くと」,⑨J.S.バッハ「小フーガト短調BWV578」,⑩同「前奏曲とフーガ イ短調BWV543」,⑪クリスマス・メドレーです 出演はパイプオルガン=山本真希,⑤⑥⑧のソプラノ=鷲尾麻衣です

 

          

 

山本真希は神戸女学院大学音楽学部,同大学専攻科卒業後,渡独しフライブルク,シュトゥットガルト他で学び,日本では井上圭子らに師事しました 第1回ドイツ・レンドゥスベルク国際オルガンコンクールで第3位に入賞しています 大阪の相愛大学音楽学部オルガン科の非常勤講師を務めているほか,2006年4月からりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館専属オルガニストを務めています

一方,鷲尾麻衣は東京藝大卒業後,新国立劇場オペラ研修所第7期生を修了し,文化庁派遣芸術家研修員としてニューヨークに留学しています.二期会会員で,来年1月の新国立オペラ「カルメン」でフラスキータを歌うことになっています

自席は1階16列11番,左ブロック右から2つ入った席です.会場はかなりの人が入っています チケット代1,500円は魅力です

山本真希が登場しパイプオルガンに向かい,最初にホリンズ(1865-1942 イギリス)の「トランペット・メヌエット」が演奏されます ステージ奥のスクリーンには,オルガン奏者の手元や足鍵盤の様子が映し出され,3段の手鍵盤と足鍵盤の両方を使って演奏する様子がひと目で分かるようになっています こういうのは良いですね

山本はマイクを持って自己紹介し,トリフォニーホールのパイプオルガンは4,735本のパイプと66個のストップ(音色や音の高さを変える装置)から成り立っていると解説します

次いでブル(1562-1628 イギリス)の「御子がわれらに生まれたもう」と,お馴染みのチャイコフスキー「バレエ:くるみ割り人形」から「花のワルツ」を演奏しました そして,キュリ(1943- アメリカ)の「みんなのためのオルガン・ガイド」の演奏に入りました.山本がオルガンを演奏し,その合間にアシスタントの女性がいろいろな演奏法と音色を解説する形をとりました これはわれわれ素人にはとても参考になりました

ここで,淡いピンクのドレスに身を包まれたソプラノの鷲尾麻衣が登場し,パイプオルガンの伴奏により2曲歌いました J.S.バッハ/グノ―「アヴェ・マリア」と,ヘンデルのオペラ「リナルド」から「私を泣かせてください」を美しくも力のある声で歌い上げました

再びパイプオルガンの独奏でバッハの「主よ,人の望みの喜びよ」が演奏されました そして再度,鷲尾麻衣が登場しプッチーニの歌劇「ラ・ボエーム」からムゼッタのアリア「私が街を歩くと」を鮮やかに歌い上げました この曲は先週の「ラ・ボエーム」公演でムゼッタ役として歌ったばかり(注:11日・和光市文化センター)とのことで,堂々たる歌いぶりでした

山本が鷲尾にインタビューし

「歌手は身体が楽器だと思いますが,普段,体調管理をどうされていますか?」

と訊くと,鷲尾は

「寝る時もマスクをしたりして喉を守っています 歌手によっては,歌う何時間前からは一切飲食しないという人もいますが,私の場合は比較的平気で,普通に飲食します 激辛の食べ物も平気です.チョコレートやオレンジジュースは食べたり飲んだりしないという人もいますが,私はそんなことはありません

と答えていました.人それぞれなのでしょうけど,身体が丈夫な人なのでしょうね

次にオルガン独奏でJ.S.バッハの「小フーガ  ト短調 BWV578」が,次いで「前奏曲とフーガ イ短調 BWV543」が演奏されました これを聴きながら,バッハと言う人は凄い人だったんだな,と感心していました 数多くのカンタータ,チェンバロ曲,様々な協奏曲,組曲,宗教曲・・・・すべてが素晴らしい音楽です バッハは本当に一人しかいなかったのか,と不思議なくらいです

最後はクリスマス・キャロルのメドレーです もろびとこぞりて 荒野の果てに ああ ベツレヘムよ 神の御子は今宵しも ひらぎかざろう ジングルベル 赤鼻のトナカイ きよしこの夜 いざ歌え いざ祝え がパイプオルガンの様々な音色で演奏されました

二人はアンコールにバッハの「カンタータ第140番」から第4曲「コラール:シオンは物見らの歌うを聞けり」を演奏し,大きな拍手の中コンサートを閉じました

最後に気が付いたことをひとつ.演奏者自身がマイクを持って挨拶したりインタビューしたりする時,早口で何を言っているのかよく聞き取れないケースが多いのですが,山本真希さんは常に落ち着いてゆっくり話すので,とてもよく話の内容が伝わってきました とくに”楽器の王様”パイプオルガン奏者の場合は,”会場全体が楽器”であるという認識があるため,マイクを通して話す際の残響音がどういう影響を及ぼすのかが十分に理解できているのだと思います 他の演奏家の皆さんにも是非見習ってほしいと思います 

休憩なし80分のコンサートでしたが,コストパフォーマンスが高く 十分に楽しむことが出来ました

 

          

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デュトワ+レーピン+N響でプロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第1番」,ラヴェル「ラ・ヴァルス」他を聴く

2016年12月17日 08時17分30秒 | 日記

17日(土).わが家に来てから今日で809日目を迎え,安倍首相が来日中のロシアのプーチン大統領と 長門市に次いで東京で会談し,日本側の経済協力の総額を3000億円とすることで合意した というニュースを見て 感想を述べるモコタロです

 

          

           経済協力だけで北方領土返還交渉は進展なし? 恐ロシア  プーチン大統領!

 

  閑話休題  

 

昨日,NHKホールでNHK交響楽団 第1852回定期演奏会を聴きました プログラムは①ブリテン「歌劇”ピーターグライムズ”~4つの海の間奏曲」,②プロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調」,③ラヴェル「チガーヌ」,④オネゲル「交響曲第2番」,⑤ラヴェル「バレエ音楽”ラ・ヴァルス”」です ②と③のヴァイオリン独奏はワディム・レーピン,指揮はN響名誉音楽監督シャルル・デュトワです

 

          

 

オケの態勢は,左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,その後ろにコントラバスという並び,コンマスは伊藤亮太郎です

1曲目はブリテンの歌劇「ピーター・グライムズ~4つの海の間奏曲」です  歌劇「ピーター・グライムズ」は北海沿いのある漁村を舞台に 粗野な漁師のピーターと料簡の狭い村人たちとの軋轢を描いた悲劇ですが,幕間に置かれた間奏曲にタイトルを付けて管弦楽曲として出版したものです 第1曲「夜明け」,第2曲「日曜の朝」,第3曲「月の光」,第4曲「嵐」の4曲から構成されています.私が一番印象に残ったのは第1楽章「夜明け」の冒頭で,ヴァイオリンとヴィオラが煌めくように対話する場面です 聴いているうちに,かつて新国立オペラで観た「ピーター・グライムズ」の各場面を思い出していました

2曲目はプロコフィエフの「ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調」です 1916年~17年にかけて作曲されましたが,第一次世界大戦のため初演は1923年10月になりました 第1楽章「アンダンティーノ」,第2楽章「スケルツォ:ヴィヴァチッシモ」,第3楽章「モデラート」の3つの楽章から成ります

白髪のワディム・レーピンが登場します.私はレーピンというと太ったイメージがありましたが,ホンモノは長身でスマートでした 1971年 シベリア生まれで,17歳の時に史上最年少でエリーザベト王妃国際コンクールで優勝しています

この曲で一番プロコフィエフらしいと思うのは第2楽章です この楽章はプロコフィエフ自身が「スケルツォの中のスケルツォ」と呼んだそうですが,まさに超絶技巧を凝らした聴き応えのある音楽です レーピンは1733年製ストラディヴァリウス『ロード』を駆使して超難曲に挑み,美しい音色で色彩感豊かにプロコフィエフの世界を描き上げました

3曲目はラヴェル「チガーヌ」です ラヴェルは演奏旅行中の1922年7月にハンガリーのヴァイオリン奏者イェリー・ダラー二に出会い,彼女のために演奏会用狂詩曲である「チガーヌ」を作ることを構想し,2年後に完成しました

再度レーピンがステージに登場しましたが,会場の拍手が止まないうちに序奏部の演奏に入りました カデンツァ風の唸るような音楽に続いて主要テーマが奏でられます しばらくレーピンのヴァイオリン独奏が続きますが,中盤で早川りさこのハープが加わり幻想的な雰囲気を醸し出します その後は様々な超絶技巧が駆使され,時にハンガリーの民族楽器ツィンバロンのような音色を表出し,「果たしてこれが1本のヴァイオリンで弾かれているのだろうか」と疑問に思うほどのテクニックで見事に弾き切りました それも,さも大変そうに弾くのでなく,あっけないほどアッサリと弾くので呆気にとられます

この曲はチョン・キョンファのヴァイオリン独奏,アンドレ・プレヴィン指揮ロン同交響楽団によるCD(1975年10月録音)で予習しておきました

 

          

 

休憩時間はロビーに出ましたが,相変わらず男性用トイレは長蛇の列でした まだ列が続いているのに後半の開始のチャイム(電子音)が鳴っていました 最近,各オケのコンサートの休憩時間が20分から15分に短縮されたようですが,こうした実態を見ると,短すぎるように思います

後半の最初はオネゲル「交響曲第2番」です ステージを見て驚きました.管楽器はトランペット一人だけ,あとは弦楽セクションのみです この曲はオネゲルが1940年に作曲した作品ですが,ちょうど第2次世界大戦と重なったため,曲の中に戦争の光と影が現れています 第1楽章「モルト・モデラートーアレグロ」,第2楽章「アダージョ・メスト」,第3楽章「ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポープレスト」の3つの楽章から成ります

聴いていて一番印象の残ったのは第2楽章のコントラバスのうねりです トランペットは全体を通して演奏されるものとばかり思っていたら,最後の最後に”勝利のファンファーレ”のように吹かれただけでした 演奏後,デュトワは曲の中で独奏を担当したコンマスの伊藤亮太郎,ヴィオラ首席の佐々木亮,チェロ首席の藤森亮一に握手を求め,さらにコントラバス首席の吉田秀にも握手を求めました デュトワからみて弦楽セクションは会心の演奏だったのでしょう

最後の曲はラヴェルのバレエ音楽「ラ・ヴァルス」です この曲はロシアのバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)の主宰者セルゲイ・ディアギレフの依頼により1919~20年に作曲されましたが,ディアギレフは「傑作だがバレエではない」と拒否したため,この曲は管弦楽曲として初演されることになりました 本人が述べているように「ウィンナ・ワルツへの一種の賛歌」という曲想で,8つのワルツが現れます この曲と「ボレロ」との大きな共通点を挙げると,全体が大きなクレッシェンドの中に組み込まれているということです この”仕掛け”は聴く側に大きな興奮を呼び起こします

管楽器も,弦楽器も,打楽器も,すべてひっくるめて熱狂的な演奏の中で曲を閉じます 会場いっぱいの拍手とブラボーです デュトワの指揮で聴くのは本当に久しぶりですが,さすがに”フランスもの”は色彩感豊かに,しかもダイナミックに表現します.そんなデュトワの指揮にN響のメンバーはよく応えていました

 

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「リトル・ボーイ 小さなボクと戦争」「帰ってきたヒトラー」を観る~ギンレイホール

2016年12月16日 07時55分05秒 | 日記

16日(金).わが家に来てから今日で808日目を迎え,米連邦準備理事会(FRB:イエレン議長)が 1年ぶりの政策金利の利上げを決めたというニュースを見て 感想を述べるモコタロです

 

          

                                  イエレンさんの影響力で 日本の銀行預金の金利も上げてくれないかなぁ

 

          

              「日本国内のことまでは 言えれん」って 大阪弁の ら抜き言葉 で答えたってさ

 

  閑話休題  

 

昨日,神楽坂のギンレイホールで「リトル・ボーイ  小さなボクと戦争」と「帰ってきたヒトラー」の2本立てを観ました

「リトル・ボーイ  小さなボクと戦争」は,アレハンドロ・モンテヴェルデ監督による2014年アメリカ映画(106分)です

舞台は第二次世界大戦下のアメリカ西海岸の小さな町.8歳の少年ペッパーは町で一番背が低く”リトル・ボーイ”と呼ばれてからかわれていた ペッパーは大好きな父親を”相棒”と呼び 楽しい毎日を過ごしていた  ある日,徴兵検査に不合格となった兄の代わりに父親が戦場に駆り出されることになり,何とか無事に帰ってくるように大作戦を始める 一方,町に日系人のハシモトが住んでいたが,戦争下のアメリカで肩身の狭い生活を強いられていた.神父から 父親に帰ってほしかったらハシモトと友だちになるようにと言われ,彼に近づいて交流を始める 「”ジャップ”と友だちなのか」と批判されながらも,信念を持って日系人と交流し,成長していく少年の姿を描いたヒューマンドラマ

 

          

 

ペッパーはハンドパワーで山を動かしたとして町のヒーローになりますが,これはその時たまたま起きた地震のため地面が揺れたのでした ある日,新聞を手にした町の人々から口々に「リトル・ボーイ やったね」と賞賛されます 新聞の見出しには「リトル・ボーイが広島を攻撃した」とありました.つまり,「リトル・ボーイ」とは広島に落とされた原子爆弾の愛称だったのです これを町の人々が喜ぶシーンは,この映画を観ている日本人としては気持ちの良いものではありませんでした また,日系人であることだけで「ここから出ていけ」と非難されるハシモトの姿を見ると,やはりいい気持ちはしませんでした しかし,それが戦争の実態なのでしょう.逆のことだってあったでしょうから さて,リトル・ボーイは本当の奇跡を起こして父親と再会することが出来るのか?  それは見てのお楽しみ

 

  も一度,閑話休題  

 

2本目の「帰ってきたヒトラー」は,デヴィッド・ヴェンド監督による2015年ドイツ映画(116分)です

死んだはずのアドルフ・ヒトラーが目を覚ましたのは,現代のベルリンだった ドイツではタブーのヒトラーを模した不謹慎なコスプレ男がモノマネ芸人になったと勘違いされ,テレビをクビになったディレクターに発掘されテレビ出演することになる テレビに出演して「テレビは技術革新で薄くなったが,放映される番組はくだらないものばかりで堕落している」と批判する テレビ・タレントとして人気絶頂となった彼は,各地で民衆の不満を聞き歩き,テレビで現行の政治批判の演説をぶつ.いつの間にか彼は民衆の本音をつかみはじめ,再び権力を握ろうとする

 

          

 

この映画は,現代にタイムスリップした独裁者ヒトラーが再びアジテーターのとしての本領を発揮するさまを風刺したものです 主役のヒトラーを演じたのは無名の実力派舞台俳優とのこと.面識はありませんが,本人にそっくりです パソコンにハンドル・ネームを登録するのに「アドルフ・ヒトラー」と入力すると,画面に「すでに使われています」と出てきたのには笑ってしまいました

この映画では,クラシック音楽がいくつか使われています 映画の冒頭ではロッシーニのオペラ「泥棒カササギ」序曲が,中盤では同じくロッシーニのオペラ「セヴィリアの理髪師」序曲が流れました この映画がコメディであることを音楽で表しているかのようです.また,ヒトラーが颯爽と登場するシーンでは,お決まりのワーグナー「ワルキューレの騎行」が勇ましく鳴り響きました この曲はベトナム戦争を題材にした「地獄の黙示録」で使われて話題を呼びました.このほか,ヨハン・シュトラウスの「トリッチ・トラッチ・ポルカ」,アントン・カラスのチター演奏による「第三の男」のテーマ音楽などが流れました

それにしても,ヒトラーがタブーのドイツで よくこの映画が公開されたものだ とあらためて驚きます

 

                

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上野耕平サクソフォン・リサイタルを聴く:浜離宮ランチタイムコンサート~ラプソディ・イン・ブルーにブラボー!

2016年12月15日 08時01分05秒 | 日記

15日(木).わが家に来てから今日で807日目を迎え,沖縄県名護市沖で米軍のオスプレイが不時着し,事故機が大破し乗員5人がけがをしたというニュースを見て疑問を呈するモコタロです

 

          

           「不時着」と言うけど どう見たって「墜落」にしか見えないよね

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「鶏もも肉の照り焼き」「生野菜サラダ」「カブの葉のお浸し」を作りました 「鶏もも~」の味付けは醤油と砂糖だけで,レシピより長い時間じっくりと焼きました

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,浜離宮朝日ホールでランチタイムコンサート「上野耕平 サクソフォン・リサイタル」を聴きました プログラムは①J.S.バッハ「G線上のアリア」,②P.モーリス「プロヴァンスの風景」,③R.クレリス「セレナード・ヴァリエ」,④ガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」,⑤N.リムスキーコルサコフ「熊蜂の飛行」,⑥ビゼー「カルメン・ファンタジー for サクソフォン」です 出演はサクソフォン=上野耕平,ピアノ伴奏=山中惇史です

 

          

 

拍手の中,ピアノの山中惇史とともに,上野耕平が大小異なる3つのサクソフォンを一つは首から吊るし,2つを両手に抱えて登場します 小さいのはソプラノ・サックス,中ぐらいのはアルト・サックス,大きめのはテナー・サックスです

1曲目はJ.S.バッハの「G線上のアリア」です この曲はバッハの「管弦楽組曲第3番」の第2曲「エア(アリア)」を,後のヴァイオリニスト,ヴィルヘルミがヴァイオリンの最低音弦G線1本で演奏できるように編曲したことから「G線上のアリア」と呼ばれています 上野はソプラノ・サックスで演奏しましたが,サックスの演奏で聴くのは初めてです ヴァイオリンあるいはトランペットで聴くのと違うサックス特有の優しい音色で,格別な感慨がありました

2曲目は20世紀フランスの女性作曲家ポール・モーリスの「プロヴァンスの風景」です 第1楽章「若い娘たちのファランドール」,第2楽章「いとしい人への歌」,第3楽章「ジプシーの歌」,第4楽章「アリスカンの魂は嘆きて」,第5楽章「カプリダン」から成りますが,急ー緩ー急ー緩ー急のテンポ設定になっています 上野は今度はアルト・サックスを選びました.第1楽章を聴いた時「まるでドビュッシーの音楽のようだ」と感じましたが,彼女がパリ音楽院で師事した先生はドビュッシーの親しい友人で,ドビュッシー作品のオーケストラ編曲にも功績のあった人だったとのことです.なるほど,と思いました

3曲目はロベール・クレリス「セレナード・ヴァリエ」です この人もフランスの作曲家です.演奏前のトークで上野が「時間帯からして昼寝をしたくなるような曲ですが,あとの『ラプソディ・イン・ブルー』で起こしてあげますから」と言っていた通りの,ゆったりした伸びやかな曲をテナー・サックスで歌い上げました

前半最後の曲はジョージ・ガーシュイン(長生淳編曲)「ラプソディ・イン・ブルー」です この曲は作曲者が25歳の時にわずか3週間で書き上げた独奏ピアノとオーケストラのための作品です 上野は再びアルト・サックスを取り上げ,有名な冒頭の”駆け上がる”ような旋律を鮮やかに演奏します その後,ソプラノ・サックスに持ち代え,アルト ⇒ ソプラノ ⇒ アルト ⇒ テナー ときて 最後はアルト・サックスで締めました クラシック,ジャズを問わず,これほど鮮やかな演奏が出来るアーティストはそれほどいないのではないかと思います

 

          

 

休憩後の最初はリムスキーコルサコフ(網守将平編曲)「熊蜂の飛行」です これまで,この曲はヴァイオリン他の「超絶技巧曲」としか認識がなかったのですが,プログラムの解説に「1900年11月2日にモスクワで初演されたオペラ『サルタン皇帝の物語』の第3幕で,主人公のグヴィドン王子が魔法の力で巨大な熊蜂に変身し,邪悪な伯母たちを襲う場面の音楽である」と書かれていて,「ああ そういう曲だったのか」と初めて知りました.上野はこれもアルト・サックスで唖然とする超絶技巧で吹きました

最後の曲はジョルジュ・ビゼーの歌劇「カルメン」を,この日ピアノ伴奏を担当している山中惇史が上野のために編曲し「カルメン・ファンタジー  for  サクソフォン」として作った幻想曲です この編曲で素晴らしいと思ったのは,最初にあの勇ましい前奏曲を持ってこないで,曲の中盤に据えたことです 「闘牛士の歌」「ハバネラ」「セギディーリャ」など有名な旋律が散りばめられていますが,上野はこれもアルト・サックスで鮮やかに演奏しました

上野はアンコールにパサンの「ロマンス」を,まさにロマンティックに演奏し大きな拍手を受け,コンサートを締めくくりました 上野耕平,なかなかやります

 

          

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カエター二+ポゴレリッチ+読売日響でラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」他を聴く

2016年12月14日 08時17分07秒 | 日記

14日(水).2016年・今年の漢字に「金」が選ばれましたね リオ五輪の金メダルラッシュ,舛添知事の「政治と金」問題といろいろありました.一方,安倍首相は「動」を選びました.英国のEC離脱決定,アメリカ大統領選挙でまさかのトランプ氏の当選と,こちらもいろいろありました これに「銀」が加われば「金」「銀」「動」と表彰台独占になるのですが,何かないでしょうか? というわけで,わが家に来てから今日で806日目を迎え,近年ない形のノロウィルスが猛威を振るっているというニュースを見て 注意を促すモコタロです

 

          

             ノロウィルスに気を付けて! 人によってはウスノロウィルスにね!!

 

  閑話休題   

 

昨日,勝浦在住の大学時代の友人S君が送ってくれたアジをさっそく焼きました  あとは,「豚肉と大根の炒め煮」と「生野菜とアボガドのサラダ」を作りました.アジはとても美味しかったです

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨夕,サントリーホールで読売日響第565回定期演奏会を聴きました プログラムは①ムソルグスキー「歌劇”ホヴァンシチナ”」から「ペルシャの女奴隷たちの踊り」,②ボロディン「交響曲第2番ロ短調」,③ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」です ③のピアノ独奏はイーヴォ・ポゴレリッチ,指揮はオレグ・カエタ―二です

 

          

 

オケはいつもの読響の編成で,弦は左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという並びです コンマスは小森谷巧.長身のカエタ―二が指揮台に上ります

プログラム冊子のプロフィール欄を見て驚きました.カエタ―二は1956年スイス生まれですが,父親は 何とウクライナ出身の名指揮者イーゴリ・マルケヴィチだったのです マルケヴィッチといえば,ストラヴィンスキー「春の祭典」や,クララ・ハスキルをソリストに迎え,コンセール・ラムルー管弦楽団を振ったモーツアルト「ピアノ協奏曲第20番,第24番」は極め付きの名曲名演奏です その子息が振るのか,と思うと感慨深いものがあります

1曲目はムソルグスキー「歌劇”ホヴァンシチナ”」から「ペルシャの女奴隷たちの踊り」です この歌劇は全5幕からなりますが,「ペルシャ~」は第4幕第1場のために書かれました 冒頭からゆるやかな東洋風のメロディーをイングリッシュホルンが奏でますが,この演奏が素晴らしく,強く印象に残りました

2曲目はボロディン「交響曲第2番ロ短調」です ボロディンは3曲の交響曲を書きましたが,この第2番は1877年に初演されました.4つの楽章から成りますが,全体を通して聴いた印象は,ロシアの広大な大地に根差したスケールの大きな音楽といったところです

読響の演奏を聴いていて思ったのは,全体的に演奏レヴェルが高い中でも,金管楽器,とくにホルンに安定感があるな,ということです これは首席の日橋辰朗の存在が大きいと思います

休憩時間に当ブログの読者Nさんとホワイエでコーヒーを飲んで歓談しました 日露同時通訳者・米原万里の話から入り,今聴いたばかりの曲の感想,指揮者カエタ―二,次に演奏するポゴレリッチ,年末の第九の話まで,15分の短い時間に精力的に話しました ポゴレリッチを今まで聴いたことがあるか,ということについては,Nさんは「セイブ・チュルドレン」という組織のチャリティーコンサートがホテル・オークラで開かれた時にショパンの演奏を聴いたとのことで,会場がホテルだったので音響効果は良くなかったが,演奏は良かったという話でした 私の方は,数年前にラ・フォル・ジュルネ音楽祭でショパンのピアノ協奏曲第2番を演奏したのを聴いた時,超スローテンポだったが,説得力があり素晴らしい演奏だったという話をしました 15分はあまりにも短すぎます.もう少し余裕がほしいものです

 

          

 

休憩後は待ちに待ったポゴレリッチです 演奏するのはラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」です.ポゴレリッチが青い表紙の楽譜を持って登場します.私の知る限り彼は常に楽譜を見て演奏します

第1楽章「モデラート」は鐘の音を模した独奏ピアノの力強い和音から入ります 私は,ポゴレリッチがどのように演奏するかに注目して見ていましたが,彼はかなり頻繁に座る位置を変えながら,つまり,低音部を弾く時には腰を浮かせて左に身体を移し,高音部を弾く時には同じく腰を浮かせて右に移して演奏していました 彼は弾くべき鍵盤が身体の真ん前にくるように身体を移動させていたのです.そうすることによって,打鍵が強くなるのだと思います

ポゴレリッチの演奏は終始「超スローテンポで通す」というイメージが強いと思いますが,この日の演奏はそうではありませんでした 第1楽章では超スローの部分もありましたが,逆に物凄く速いテンポで駆け抜ける部分もありました.つまり,テンポを自由自在に動かして起伏の大きな演奏を展開していたのです これを普通の人がやると,独りよがりのどうしようもない演奏になってしまうのですが,ポゴレリッチが演奏すると説得力を持つのです

第2楽章「アダージョ・ソステヌート」は,これまでのポゴレリッチのイメージに近い,終始ゆったりとしたテンポで進められました とくに最後は一音一音慈しむように丁寧に弾き切りました

第3楽章「アレグロ・スケルツァンド」は再びテンポを大きく動かし,スケールの大きな音楽を構築していきました.フィナーレは圧倒的な迫力でした

会場割れんばかりの拍手とブラボーに,ポゴレリッチは前に,左に,後ろに,右に,深々と一礼し歓声に応えました 驚いたことに,アンコールに 今弾いたばかりのラフマニノフの第2楽章をもう一度演奏したのです これがまた素晴らしい演奏でした

この日のコンサートは今年聴いた200回を超えるコンサートの中で,最も印象に残った演奏の一つになりました

 

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鷲田清一著「人生はいつもちぐはぐ」を読む~「折々のことば」筆者のエッセイ/読売日響2017年度年間会費を支払う

2016年12月13日 08時28分42秒 | 日記

13日(火).昨日,読売日響から一通の封書が届きました  コンサートの案内かと思って封を切ると,恐ろしいものが出てきました 「2017年度年間会費支払方法のお知らせ」でした 今月22日までにコンビニを通じて支払うようにという要請が書かれていました.仕方ありません.申し込んじゃったんですから 早速 最寄りのコンビニで支払いを済ませてきました ということで,わが家に来てから今日で805日目を迎え,トランプ次期米大統領が,中国大陸と台湾がともに「中国」に属するという「一つの中国」原則について「なぜ我々が縛られなければならないのか」と疑問を呈したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

                 トランプさんの言いたいことは分かったけど  どこにいるの?

 

          

             あれま ぼくが踏んづけてたんだね ぼくが中国でトランプさんが台湾みたい

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「豚肉と鳥肉のスペアリブ」「生野菜とサーモンのサラダ」「カブのお浸し」を作りました 「カブ~」は味噌汁の具にカブを入れたので葉っぱを刻んで削り節とポン酢をかけました.美味しくて栄養満点です

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

千葉県勝浦市在住の大学時代の友人S君から海産物セットが届きました サンマ,アジ,カマス,アコウダイ,カレイが所狭しと詰まっています.奥さまの実家が海鮮問屋を営んでいるとのことで,たくさんの魚を送ってくれたのです S君夫妻には7月29日に内幸町に出てきてもらいランチをご一緒しましたが,その時「今度は是非,勝浦にお出かけください」というお誘いを受けていたのに,当方のスケジュールが過密で未だに実現していないままなのです わが家では子どもたちが肉類が好きなので,夕食に魚料理を用意することがあまりありません その点,こうして送ってもらうと ある程度 規則的に食卓に載ることになるので とてもありがたいのです あらためて S君ありがとうございました 持つべきものは友だちです

 

          

 

  最後の,閑話休題  

 

鷲田清一著「人生はいつもちぐはぐ」(角川ソフィア文庫)を読み終わりました 鷲田清一は1949年,京都生まれ.哲学者で,大阪大学総長などを経て現在,京都市立芸術大学学長,大阪大学名誉教授を務めています.今日が605回目を迎える朝日朝刊第1面のコラム「折々のことば」の著者としてお馴染みです

 

          

 

この本は,2008年12月から2013年4月まで,京都新聞,神戸新聞,中日新聞,北海道新聞,毎日新聞などに掲載されたエッセイを2013年9月に「おとなの背中」というタイトルで角川出版社から単行本として出されたものを,改題して文庫化したものです

著者は「まえがき『これで死ねる』と言えるとき」で次のように書いています

「昔の人は,死に際して,『これで死ねる』という言い方をした.これは,みずからの死に覚悟ができたというよりもむしろ,みずからの死によって起こりうるすべてのことに,できるかぎりの手が打てたという納得を言っているのだろう 人の矜持というものがここにある.そういう矜持を,政治家のみならずこの時代に生きる者として,わたしたちもいつかもてるだろうか.わたしたちは,わたしたちの世代を宛先として丹念になされた過去の職人さんたちの仕事に支えられて,無事,家の切り盛りをどうにかできてきた.おなじことを,今日,明日ではなく明後日の世代に向けておこなうこと,それがわたしたちの義務である

このエッセイ集は,便宜的に7つの章から構成されています

1.伝えること/応えること

2.おとなの背中

3.人生はいつもちぐはぐ

4.ぐずぐずする権利

5.言葉についておもうこと

6.贈りあうこと

7.東日本大震災後

この中から,いくつか印象に残ったエッセイを取り上げてみます 最初は第3章「人生はいつもちぐはぐ」の最初に出てくる「幸福への問い」です

「『しあわせ』というのは不思議な感覚で,傍目にはずいぶん幸福な生活をしているようにみえても,本人はそうと感じていないことが多い なんの不満もないだろうと人が羨むような生活にも,さまざまの悩みや不安が小さな棘のようにちくちく刺している.念願の試験に合格したとか愛する人と結婚したとか,そのときは幸福の絶頂にいるように感じられても,なぜかしばらくするとごくふつうの日常の感覚に戻ってしまう 幸福感というのはどうもそのままでは持続しえないものらしい.これを裏返していうと,幸福は失ってはじめてそれと気づかれるということだろうか

このエッセイは次のように結んでいます

「『ひとりで幸福になろうとしてもそれは無理よ』.これは寺山修司が年配の風俗嬢の言葉として紹介しているものだが,なかなかに味わい深い」

そう,人間は人と人の間で生きるものです

同じく「人生はいつもちぐはぐ」の中の「あえて口喧嘩」にはこう書かれています

「元フライ級の日本チャンピオンとして敵を叩きのめし,引退してからこんどはお笑いタレントとして叩かれ役になり,飲みつぶれたすえに暁の海に消えたあの,たこ八郎 その墓には『めいわくかけてありがとう』と刻まれている.酔いつぶれ,くだを巻き,悪態をつくばかりだったのに,あきれながらも最後までつきあってくれた,つまり『時間をくれた』,そのことに たこは 心底『ありがとう』と言いたかったのだろう

身の回りに何人かいませんか,こういう人 「あ~,どうしようもないんだから~」と言いたくなるのに,「あの人じゃあしょうがないや」と許してしまう愛すべき人が

第7章「東日本大震災後」の最後に「支え合うことの意味~十代の人たちに」というエッセイがあります

「生きてゆくうえで一つたりとも欠かせぬことの大半を,わたしたちはいま社会の公共的なサーヴィスに委託して暮らしています たがいのいのちの世話を,病院や学校,保育園,介護施設,外食産業,クリーニング店,警察署・消防署などにそっくり任せて生活しています.これは福祉の充実,あるいは『安心・安全』と世間では言われていますが,裏を返していえば,各人が自活能力を一つ一つ失ってゆく過程でもある わたしたちは社会のこのサーヴィスが事故や故障で止まったり,劣化したり,停滞したりしたとき,それに文句(クレーム)をつけることしかできなくなっています 自分たちで解決策を提案したり,あるいは行政やサーヴィス業から仕事を取り返して自分たちでやりますということが出来なくなっています.それほどわたしたちは市民として,地域社会の住民として,無能力になっているのです ふだんはそうしたサーヴィス業務にあるていど任せておくとしても,いざというときのために,いつでもそれらが自前でできる準備だけはしておかなければ,非常時に復興を担えない,とても壊れやすい存在に一人ひとりがなってしまいます

「わたしたちは,人生で見舞われるさまざまの困難,社会で直面するさまざまな問題に対して受け身でいるのではなく,それらを引き受ける強さというものが必要です 市民としての強さのことをいまの社会では『自立』と言います.けれども誤解してはならないのは,『自立』とは『独立』のことではないということです.『独立』は英語でいえば  independence  つまりだれにも依存していない状態のことです.でも,人はだれ一人,独りでは生きられません 『自立』とは independence  ではなくて,むしろ  interdependence  (支えあい,頼りあい)のことなのです」

筆者は3.11東日本大震災の経験を通じて,上のことを強く感じるようになったようです.それは,われわれ一般の市民にも同様に当てはまることだと思います

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ジョナサン・ノット+東京交響楽団でモーツアルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」を聴く~アンサンブル・オペラの傑作を堪能

2016年12月12日 08時04分07秒 | 日記

12日(月).わが家に来てから今日で804日目を迎え,オペラ「コジ・ファン・トゥッテ」のCDの解説書を前にして,何やらつぶやいているモコタロです

 

          

            「女はみんなこうしたもの」だってさ 男はどうなのかな?

 

  閑話休題  

 

朝日カルチャーセンター新宿で「生誕260年 モーツアルト最後の4年」というテーマの講座が12月28日午後1時から開かれるという新聞広告が載りました 講師はクリストフ・ヴォルフ著「モーツアルト 最後の4年」の訳者である国立音楽大学招聘教授・礒山雅氏です.どうやら,モーツアルトの「貧困にして不遇な生涯」という広く流布された俗説を覆す内容のようです 興味があるので,さっそく同センターにウェブサイトから申し込みました.受講料の決済がクレジットカードのみというのが融通の利かないところですが,仕方ありません 会員登録をせず1講座単発で申し込みました.受講料は会員3,024円,一般3,672円となっています.この料金ならヴォルフの本を買っておつりがきます(2,500円+税)が,直接話を聞くことによる付加価値に期待します

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,池袋の東京芸術劇場コンサートホールでモーツアルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」(演奏会形式)を聴きました 出演はフィオルディリージ=ヴィクトリア・カミンスカイテ(ミア・パーションの代演),グリエルモ=マルクス・ウェルバ,フェルランド=アレック・シュレイダー(ショーン・マゼイの代演),ドラベッラ=マイテ・ボーモン,デスピーナ=ヴァレンティナ・ファルカス,ドン・アルフォンソ・舞台監修=サー・トーマス・アレン,合唱=新国立劇場合唱団,管弦楽=東京交響楽団,指揮とハンマーフリューゲル=ジョナサン・ノットです

 

          

 

自席は2LbーI列ー1番,2階の左サイドのバルコニー席左通路側席です.会場は9割方埋まっている感じでしょうか よく入りました 拍手の中,東京交響楽団のメンバーが入場します.総勢30数名の小編成です.女性陣はいつもの定期演奏会と違い,ほとんどがロングスカートではなくパンツ・ルックです いつも思うのですが,女性奏者はパンツ・ルックで統一した方がずっと機能的でカッコいいと思います これは数年前にアジア・フィルを見たときに女性全員がパンツ・ルックで統一していて颯爽としていたのが新鮮ですごく良いと思いました

コンマスは水谷晃です.舞台中央にはノットが指揮をしながら弾くためのハンマーフリューゲルが置かれています これについては,プログラム・ノートに「チェンバロだとちょっと古めかしい感じがして,ハマーフリューゲルを選んだ」と書かれています.その手前には歌手のための椅子4脚とテーブルが1つ置かれています

舞台上方のスペースに日本語訳テロップが表示されるようになっています.舞台の客席側の3カ所には歌手が見えるようにモニター画面が設置されています.画面には指揮者が映し出され,歌手は画面でノットのタクトを見ながら歌うようになっています

ノットが登場,ハンマーフリューゲルに対峙し,手で指揮をして序曲の演奏に入ります 私は今までこれほど起伏に富んだ”おしゃれ”な序曲を聴いたことがありません.ノット特有の解釈による演奏です 軽快なテンポで楽しい音楽が奏でられますが,荒木奏美のオーボエ,相澤政宏のフルート,福士マリ子のファゴットが冴えわたります よく見ると,トランペットは細長い古楽器を使用しており,またティンパ二も現代の楽器でなく小ぶりの楽器を使用しています 小編成オケのためか透明感のある豊かな音楽が会場いっぱいに広がります

 

          

 

序曲が終わり,男性陣3人が登場しますが,スーツ姿です 一方,女性陣はフィオルディリージ役のカミンスカイテが濃紺の衣装,ドラヴェッラ役のボーモンが緑や赤のギンギラの衣装です また,後で登場するデスピーナ役のファルカスは黒のシンプルな衣装です.あくまでも黒子に徹するという演出でしょうか

客席に背を向ける形でハンマーフリューゲルを弾きながら背中側にいる歌手陣に指示を出すノットは大変です 歌手たちはモニター画面を見ながら歌を歌うとはいえ,指揮者としては彼らの動きを把握しなければなりません.右に左に後ろを振り返りながら指揮をし,また身体を戻してハンマーフリューゲルを演奏します せわしない動きにも関わらずスムーズな音楽の流れを絶えさせることはありません ノットはフランクフルト歌劇場時代にこうした通奏低音の演奏を数多くこなしていたとのことなので,弾き振りは朝飯前なのでしょう

歌手陣は6人とも完璧です まず,ミア・パーションの代演で歌ったヴィクトリア・カミンスカイテですが,リトアニア出身のソプラノで,ライプツィヒ歌劇場,ドレスデン国立歌劇場,バイロイト音楽祭等で活躍中とのことです.美しい声で,とくに高音が良く伸び,素晴らしい歌唱力の持ち主です さらに見栄えのする容姿なのでヒロインのフィオルディリージ役にはピッタリです 第2幕後半のレチタティーボの場面で,楽譜を見ながら歌う(語る)シーンがありましたが,さすがに急きょ代演を依頼されて準備の時間が足りなかったのでしょう しかし,その時間は10分もなかったかと思います.再び楽譜なしで歌いました 第1幕のアリア「嵐にも風にも」,第2幕のロンド「恋よ,どうぞゆるして」をはじめ,強い また 弱い女心の変遷を素晴らしい歌声で聴かせてくれました

ドラベッラを歌ったマイテ・ボーモンはスペイン生まれのメゾソプラノで,ハンブルク音楽大学でハンナ・シュヴァルツに師事しました 2005年にザルツブルク音楽祭で「コジ」のドラベッラ役でデビューしたとのことです.第1幕のアリア「私を苦しめる,やみ難い恋心よ」,第2幕のアリア「恋は小さな泥棒」をはじめ,揺れる女心を見事に歌い上げました

グリエルモ役のマルクス・ウェルバはオーストリア生まれのバリトンですが,ウィーン音楽大学等で学び,スカラ座,英国ロイヤル・オペラ他世界の主要なオペラハウスで歌っているとのことです  力強い歌声で,演技も素晴らしいと思いました

フェルランド役のアレック・シュレイダーは米国クリーブランド生まれのテノールで,2011年ザルツブルク音楽祭で「コジ」のフェルランド役を歌ってデビューを飾っています 気持ちの良いリリック・テノールを聴かせてくれました

ドン・アルフォンソ役のトーマス・アレンはイギリス生まれのバリトンで,2011年に英国ロイヤル・オペラデビュー40周年を迎えたという大ベテランです ちょっと動きが重いな,という場面もありましたが,歌はさすがに貫禄で聴かせます

今回,個人的に一番良かったと思うのはデスピーナ役のヴァレンティナ・ファルカスです ルーマニア生まれですが,ザルツブルク音楽祭には「後宮からの誘拐」ブロンデ役でデビューしたとのことです 第1幕のレチタティーボ「小間使いの生活のひどさときたら!」,第2幕のアリア「女も15になれば」をはじめ,コケティッシュな役柄にピッタリの歌を芝居気たっぷりに聴かせてくれました

このオペラは「アンサンブル・オペラ」の傑作です アリアよりも二重唱以上のアンサンブルが魅力です 第1幕の三重唱「風は穏やかに」(フィオルディリージ,ドラベッラ,アルフォンソ),第1幕フィナーレ「ああ,なんて一瞬のうちに」(フィオルディリージ,ドラベッラ),第1幕の二重唱「やさしい風よ,手を貸しておくれ」(フェランド,グリエルモ)をはじめ,二重唱,三重唱,四重唱,五重唱が惜しげもなく歌われます.いずれも素晴らしいアンサンブルでした

さらに付け加えれば,このオペラは合唱の魅力もあります 新国立劇場合唱団の精鋭16名による第1幕「軍隊生活はすばらしい」,第2幕「二人の花婿と,美しい花嫁に」は,とても16人だけの合唱とは思えないほど迫力に満ちていました

フィナーレを閉じると 会場いっぱいの拍手とブラボーの嵐がステージに押し寄せました   歌手陣はもちろんのこと,ハンマーフリューゲルを弾き振りをしたジョナサン・ノットに,軽快な音楽で歌手陣を支えた東京交響楽団のメンバーにも大きな拍手が送られました

今回の公演を観て 聴いて感じたのは,ハンマーフリューゲルを弾き振りするジョナサン・ノットと 歌手陣と 合唱団と 東京交響楽団が一体となって『モーツアルトのオペラの楽しさを伝えることに徹していた』ということです これはおそらく,ノットの意思が周りのメンバーに十分伝わったからこそ実現したのだと思います 間違いなく今年の「マイベスト5」に入る公演です

 

          

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