人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

METライブビューイングでモーツアルト「ドン・ジョバンニ」を観る~セクシーなキーンリーサイドのドン・ジョバンニ

2016年12月07日 07時53分43秒 | 日記

7日(水).最近どうも身体が重いな,と思って久しぶりに体重計に乗ったら2キロ増えていました 原因は明らかで,1日8,000歩のノルマは辛うじてクリアしているものの,右肩の痛みのため ここ1か月ほど いつもの軽い運動(ストレッチと腹筋運動などの組み合わせ:15分程度)を休止していたからです 幸い整骨院通いで ほぼ回復したので そろそろ再開しようかと思います

ということで,わが家に来てから今日で799日目を迎え,政府が今年度の税収不足を穴埋めするため 赤字国債を1.9兆円追加で発行する方針を固めた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

            たしか日本は世界一の借金大国だよね 大丈夫なの?

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「大根とひき肉の煮物」と「生野菜とアボガドのサラダ」を作りました 初めてサラダにアボガドを入れてみましたが,子供たちにも好評だったので,これからは頻繁に登場します

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,新宿ピカデリーでMETライブビューイング,モーツアルト「ドン・ジョバンニ」を観ました これは今年10月22日に米メトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です

キャストは,ドン=ジョバン二=サイモン・キーンリーサイド(バリトン),ドンナ・アンナ=ヒブラ・ゲルツマーヴァ(ソプラノ),ドン・オッターヴォ=ポール・アップルビー(テノール),ツェルリーナ=セレーナ・マルフィ(メゾソプラノ),マゼット=マシュー・ローズ(バス),ドンナ・エルヴィーラ=マリン・ビストラム(ソプラノ),レポレッロ=アダム・プラヘトカ(バスバリトン),騎士長=クワンチュル・ユン(バス).演出=マイケル・グランデージ,演奏はファビオ・ルイージ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団・合唱団です

 

          

 

ファビオ・ルイージがオーケストラ・ピットに入って,序曲の演奏に入ります カメラはピット内も映し出しますが,オケはヴァイオリン・セクションが左右に分かれる対向配置をとっています.舞台は極めてトラディショナルでオーソドックスです 現代的に奇をてらった舞台作りよりずっと好ましいと思います

私は「ドン・ジョバンニ」では第1幕の冒頭10分間が一番好きです まずレポレッロが「旦那の召使いは もうまっぴらだ」と歌っていると,騎士長の館からドン・ジョバンニがドンナ・アンナに追われて出てきて,「悪党」「正体がばれてたまるか」「うちの旦那が またやらかした」と三重唱が歌われます テンポ感の良いこのアンサンブルを聴くと,いよいよドン・ジョバンニが始まった とワクワクします

イギリス生まれのキーンリーサイドのドン・ジョバンニは精力的でセクシーです 第1幕で村娘のツェルリーナを誘惑する有名なシーンは,「カタログ」のリストが増えるのは時間の問題と思わせるほど魅惑に満ちています マゼットと結婚したばかりのツェルリーナがほんの3分で貴族のドン・ジョバンニに口説かれて”落ちる”のはいかに何でも早過ぎだと思いますが,この時のツェルリーナを演じたイタリア出身のセレーナ・マルフィは 揺れ動く女心を見事に歌い 演じていました.彼女のメゾの声は魅力的です

キーンリーサイドで言えば,第2幕終盤でドンナ・エルヴィーラがドン・ジョバンニの館に改心するよう最後の説得に来た時,食卓のテーブルに両足飛びで飛び乗ったのにはビックリしました 何という身軽さ,運動神経の俊敏なこと

ドンナ・アンナを歌ったヒブラ・ゲルツマ―ヴァはロシア出身のソプラノですが,透明感のある美しい声が特徴です このオペラでのアリアは 恵まれた豊かな身体を生かして,どれもが力があり美しく響きました

驚いたのはドンナ・エルヴィーラを歌ったマリン・ビストラムです スウェーデン出身のソプラノですが,申し分のない歌唱力に加え,顔の表情で演技ができる才能を持っています エルヴィーラはドン・ジョバンニに裏切られたことから,怒っているか 泣いているかというシーンが多いのですが,彼女が歌うと説得力を持ちます

ドン・オッターヴォを歌ったポール・アップルビーはシカゴ生まれのテノールですが,澄み切った声の持ち主で豊かな歌唱力を持っています

レポレッロを歌ったアダム・プラヘトカはプラハ出身のバスバリトンですが,喜劇的なこの役柄にピッタリです 「カタログの歌」は聴きごたえがありました

ところで,オペラ「ドン・ジョバンニ」を観て いつも思うのは,自分を襲ったドン・ジョバンニが死んだ後,ドンナ・アンナが なぜ許嫁のドン・オッターヴォに「(結婚を)あと1年待って欲しい」と申し出たのかということです 1年間父親の死に対して喪に服すため,あるいは,ロレンツォ・ダ・ポンテの台本がそうなっているから,と言えばそれまでですが,本当は,彼女はドン・ジョバンニを愛していたのではないか,という疑問が頭をかすめます 1年間 父親と同時にドン・ジョバン二の死に対しても喪に服し 心の整理をするためではないか,と もっともこれは個人的な推論に過ぎませんが

もう一つ思うのは,モーツアルトはこのオペラの楽譜に「ドラマ・ジョコーソ(こっけいな劇)」と書き,作品カタログでは「オペラ・ブッファ」としているのですが,ドンナ・アンナやドンナ・エルヴィーラをはじめとする”被害者”の女性たちからすれば,あるいは無茶苦茶な主人からこき使われるレポレッロからすれば,喜劇どころか悲劇でないのか,という疑問が湧いてきます また「フィガロの結婚」にしても「コジ・ファン・トゥッテ」にしても,登場人物は誰も死なずにハッピーエンドを迎えるのに,このオペラは主人公のドン・ジョバン二が死んでしまいます.これも悲劇と言えば悲劇です もっとも,悪者が死ぬわけですから喜劇でも良いかも知れませんが

いずれにしても「ドン・ジョバン二」は,オペラ・セリアを特徴づける悲劇性とオペラ・ブッファの喜劇性が見事に融合した傑作中の傑作オペラと言えるでしょう

 

          

 

第1幕93分,第2幕87分,インタビュー,シーズン作品予告,休憩等を含めて3時間31分の上映でした ウィークデーの昼間にも関わらず,シニア層を中心にかなりの観客が鑑賞していました.数年前のライブビューイングでは空席が目立っていたのが信じられないくらいです 数万円もするオペラはそう簡単には観られないけれど,映画であっても3600円で超一流のオペラが観られるのなら ということで 年を追うごとに観客が増えているようです 私としては「風が吹けば桶屋が儲かる」式に,チケット代が高い現状 ⇒ 観客が増える ⇒ チケット代を高くしないでもペイするようになる ⇒ チケット代が下がる,となることを期待するばかりです

 

          

コメント
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