23日(金)その2.昨日、シャルル・デュトワ ✕ 新日本フィルの「幻想交響曲」の公開リハーサル(その1.参照)に次いで、午後7時からサントリーホールでNHK交響楽団6月度Bプログラム2日目公演を聴きました プログラムは①バッハ(レスピーギ編)「3つのコラール」、②レスピーギ「グレゴリオ風協奏曲」、③ラフマニノフ「交響曲第1番ニ短調作品13」です 演奏は②のヴァイオリン独奏=庄司紗矢香、指揮=ジャナンドレア・ノセダです
ノセダは1964年イタリア・ミラノ生まれ。現在、米国のナショナル交響楽団音楽監督とチューリヒ歌劇場音楽総監督を務めています
N響Bプロ2日目公演は、毎回のように補聴器によるハウリング事件が起こっていることから、開演前や休憩時間のアナウンスは言うまでもなく、ホールのレセプショニスト達が耳のイラストが描かれたボードを掲げて「音の出る機器をお持ちの方はスイッチをお切りください。補聴器を使用している方は正しく装着されているかお確かめください」と注意を呼び掛けていました
オケは16型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつものN響の並び。コンマスは郷古廉です
1曲目はバッハ(レスピーギ編)「3つのコラール」です この曲はJ.S.バッハ(1685-1750)の作曲したコラール前奏曲を、レスピーギがオーケストラ用に編曲したもので、第1曲「きたれ、異教徒の救い主よ」、第2曲「私の魂は主をあがめ」、第3曲「目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ」の3曲から成ります 第1曲と第3曲は耳馴染みの曲で、大学時代に喫茶店「白十字」でストコフスキーの編曲版で聴いたことがあるような気がします とても良い曲です。懐かしく聴きました
2曲目はレスピーギ「グレゴリオ風協奏曲」です この曲はオットリーノ・レスピーギ(1879-1936)が1921年に作曲、翌1922年にローマで初演された「ヴァイオリン協奏曲」です 第1楽章「アンダンテ・トランクイロ」、第2楽章「アンダンテ・エスプレッシーヴォ・エ・ソステヌート」、第3楽章「終曲(アレルヤ):アレグロ・エネルジコ」の3楽章から成ります
ヴァイオリン独奏の庄司紗矢香は1999年ジェノヴァで開催された「第36回パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクール」で史上最年少で優勝しました
ノセダの指揮で第1楽章が開始され、庄司の独奏ヴァイオリンが入ってきますが、厳かで宗教的な感じがします この楽章に限らず、独奏ヴァイオリンは超絶技巧を発揮するヴィルトゥオーゾ的なものではなく、オケにすっかり溶け込んで演奏している印象を受けます オーボエの吉村結実の演奏が素晴らしい 庄司のカデンツァは聴きごたえがありました 面白かったのは第3楽章でのティンパニと独奏ヴァイオリンの丁々発止のやり取りです。とても楽しく聴けました
満場の拍手に庄司はアンコールに、バルトーク「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ BB124/Sz117」より第3楽章「メロディア」を繊細な表現力で演奏し、再び大きな拍手を浴びました
プログラム後半はラフマニノフ「交響曲第1番ニ短調 作品13」です この曲はセルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)が1895年に作曲、1897年3月5日にサンクトペテルブルクでグラズノフの指揮で初演されました 作曲家キュイから厳しい評価を受けるなど、大失敗に終わりました その後総譜が失われ、作曲者の死後、パート譜から復刻された版により1945年10月17日になってやっと再演されました 第1楽章「グラーヴェ ~ アレグロ・マ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アレグロ・アニマート」、第3楽章「ラルゲット」、第4楽章「アレグロ・コン・フォーコ」の4楽章から成ります
ノセダの指揮で第1楽章が重低音による序奏で開始され、次いで躍動感溢れるアグレッシブな演奏が展開します 第2楽章を経て、甘美さを感じる第3楽章が演奏されます 第4楽章は冒頭のファンファーレに続き、オケの総力を挙げてのスケールの大きな演奏が繰り広げられます 終盤でタムタム(銅鑼)がゴーンと鳴り響き、これで終わりかと思いきや、再び演奏が続けられ、フィナーレに向けて同じメロディーの執拗な繰り返しが展開、最後に大きな音の塊が客席に押し寄せてきました
ノセダ ✕ N響の熱演にヤンヤヤンヤの喝さいが送られますが、正直言って私は「この曲、名曲だろうか? 失敗に終わったのも分かるような気がする」と不遜にも思ってしまいました ラフマニノフの強い意欲を感じさせる力作だとは思いますが、どうも全体的に荒っぽい印象があります この後の名曲「交響曲第2番」と比べてしまうからそう感じるのかもしれません
この日の公演はノセダの最終公演ということで、楽団員を代表して打楽器奏者の黒田英実さんから花束が贈呈されました