12日(月)。昨日の日経朝刊・サイエンス面に「異常気象の原因『明言』~温暖化影響、コンピューター計算」という記事が載っていました 超訳すると、
「『猛暑や豪雨は地球温暖化のせい?』『地球が温暖化しているから、異常気象が増えている?』などの問いに対し、研究者が『わからない』と返答するのがこれまでは正しかった ところが最近、猛暑や熱波について『温暖化さえなければ、この異常気象は発生しなかったはず』と明言する研究者が現れた 異常気象と温暖化の関係をコンピューターで読み解く新しい手法が世界中で実を結びつつある 新手法は『イベント・アトリビューション』と呼ぶ。気象庁気象研究所の今田由紀子主任研究員らが18年7月の猛暑の原因について迫っていたとき、埼玉県熊谷市で国内観測史上最高の41.1度を記録した コンピューターでは『温暖化の影響がある現実の地球』と『温暖化の影響がない架空の地球』を再現した 『18年夏』以上の猛暑の発生確率を『温暖化がない』条件で計算すると『ほぼ0%』との結果が出た。一方『現実の地球』の確率は『19.9%』だった。この数値の差こそが猛暑と温暖化の関係を示唆する『証拠』だった 『温暖化がなければ、18年7月の猛暑は起こり得なかった』。今田氏らが19年5月に科学誌で論文を発表すると、大きな反響を呼んだ。世界の研究者も声を上げ始めた。20年のロシア・シベリアの熱波は、温暖化していない地球なら8万年間に1回未満の頻度だったといい、温暖化のために起きたとみられた オーストラリアで19年9月から20年初めにかけて続いた大規模な森林火災は、英国などの研究者らが調べ、温暖化が影響したと発表した」
この記事を読んで 私が驚いたのは、これまで常識だと思っていた『猛暑や豪雨は地球温暖化のせい』『地球が温暖化しているから、異常気象が増えている』という見解は、必ずしも明確ではなかったということです これまで新聞やテレビの報道により、これらの事象は「既定の事実」だと思い込んでいたことになります しかし、超高速コンピューターの出現により、その因果関係が明確になってきたということなので、これからも科学に基づいて世界規模で地球温暖化対策を推進していく必要があるでしょう 11月の米大統領選挙で無知・無能・科学無視のトランプが当選しない限り、地球の環境はより良い方向に改善されていくと思います
ということで、わが家に来てから今日で2202日目を迎え、トランプ大統領の主治医は大統領の最新の健康状態について、他人にウイルスを感染させるおそれはなくなったと発表したが、トランプ氏は12日にもフロリダ州で支持者集会を開くと表明した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
支持者たちは マスクも着けずに密集するから危険だ ということを理解していない
早稲田松竹でテレンス・マリック監督による2019年製作アメリカ・ドイツ合作映画「名もなき生涯」(175分)を観ました
物語の舞台は第2次世界大戦下のドイツに併合されたオーストリア。山と谷に囲まれた美しい村で、フランツ(アウグスト・ディール)は妻ファ二(バレリー・パフナー)と3人の幼い娘と暮らしていた 彼は激化する戦争に狩りだされるが、ヒトラーへの忠誠と兵役を拒否したことから収監される 裁判を待つファ二は手紙で夫を励ますが、彼女自身や子どもたちも地元の村で裏切り者の妻・子どもとして村人たちから酷い仕打ちを受けていた フランツは最後までナチスに加担するよりも自らの信念に殉じる道を選ぶ 遂に運命の日がやってきて、フランツに死刑の判決が下される
この映画は、第2次世界大戦下のドイツに併合されたオーストリアで、ヒトラーへの忠誠と兵役を拒み続け、自分の信念と妻と子供たちへの愛だけに支えられ、36歳で処刑されたフランツ・イェーガーシュテッターという実在の農夫の物語をテレンス・マリックが映画化したヒューマンドラマです
フランツはナチス支配下にある地元の教会の司祭から「祖国への義務がある」と言われ、村人たちからは「裏切り者」と罵られ、妻ファ二の姉からは「これ以上、妹を苦しめないで」と責められます さらに 裁判を前に、弁護士から「これにサインをすれば処刑は免れる。それを拒否することで何かが変わるのかね? サインは形だけのものだ。サインしたからといって生活は何も変わらない。もうすぐ戦争も終わる。家族のためにもサインすべきだ」と説得されますが、彼は頑なに拒否します それは、「神のもとで自分に嘘はつけない」という強い信念があったからであり、妻ファ二が 本当はサインをして自分や子どもたちのもとに無事に帰ってきてほしいという強い気持ちを抑えて「あなたのすることは、そのまま受け入れます」とフランツに伝えたからです ここに、フランツ同様 ファ二の意志の強さを感じます
この作品は、戦争で他国の支配下に置かれると人々はどういう状況に追い込まれるかを見事に描いています 声高に「戦争してはならない」と主張しているわけではありませんが、究極の反戦映画と言えます
この映画の大きな特徴はオーストリア・チロルの山岳地帯の美しい風景と、数々の静謐な音楽が物語にそっと寄り添っていることです 自然の風景ではベートーヴェン「第九」の第3楽章が流れ、フランツが出征するため列車に乗り込むシーンではバッハ「マタイ受難曲」のコラールが流れます このほか、現代音楽家のアルヴォ・ペルトやペンデレツキによる静謐な音楽が随所で流れています エンドロールで流れていたのはドヴォルザークの音楽だったようです あわせて、教会の鐘、鳥のさえずり、牛や羊の鳴き声、カウベル、水車など、自然の音がまるでBGMのように聴こえてきます
この作品は「岩波ホールで上映するような映画」と表現すれば分かってもらえるでしょうか 3時間弱の長尺ですが、観終わった後で「良い映画を観た」という満足感があります
「名もなき生涯」は「1917 命をかけた伝令」と2本立てで、早稲田松竹で23日(金)まで上映中です 私が映画を推薦することは滅多にありませんが、この作品は強くお薦めします