人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ギヨーム・ミュッソ著「ブルックリンの少女」を読む ~ アンソニー・ホロヴィッツ著「カササギ殺人事件」以来の傑作ミステリー / 鈴木清順監督「ツィゴイネルワイゼン」、大島渚監督「儀式」を観ざるの記

2019年07月15日 07時16分47秒 | 日記

15日(月・祝)。昨日も風邪が抜けず絶不調が続いていたので、観たい映画を諦めて 今週コンサートで演奏される楽曲のCDを聴きながら読書をして過ごしました

ということで、わが家に来てから今日で1746日目を迎え、吉本興行の芸人らが会社を通さない「闇営業」で振り込め詐欺グループや暴力団幹部らの宴会に参加した問題で、グループトップの大崎洋・吉本興行ホールディングス会長が朝日新聞の取材に応え、「業務上のことではなく、会社外のこと。(経営責任は)考えていない」と明確に否定した という記事を見て感想を述べるモコタロです

 

     

       安い給料でこき使ってるからアルバイトに走るんじゃないの? 闇上がり決死隊も

 

         

 

ギヨーム・ミュッソ著「ブルックリンの少女」(集英社文庫)を読み終わりました ギヨーム・ミュッソは1974年フランスのアンティーブ生まれ。高校卒業後にニューヨークに渡りアイスクリーム売りのアルバイトなどを経験。ニースとモンペリエの大学で経済学と社会学を学んだ後、2003年まで高校教師を務める。2004年に発表された「Et apres・・・」が大ヒットし、ベストセラー作家となり、これまでに刊行した作品は42の言語に翻訳され、その総売り上げは3000万部を超えるとのこと

 

     

     

フランスの人気小説家のラファエル・バルテレミは、婚約者で小児科研修医アンナ・ベッケルと南フランスの貸別荘で休暇を楽しんでいた なぜか過去をひた隠しにするアンナに、結婚式を挙げる前に本当の過去を教えて欲しいと迫ると、観念したアンナは「これが、私がやったこと」と言い 1枚の衝撃的な写真を差し出した   ラファエルがその悲惨な写真に呆気にとられえているうち、アンナは別荘を飛び出して、そのまま行方不明になってしまう ラファエルは、友人の元警部マルク・カラデックに捜索の協力を求め、調査を進める   すると、アンナが実は別の名前の女性であり、過去に起きた少女誘拐事件の被害者であることが分かる   さらに、その当時、彼女の母親がニューヨークである事件に巻き込まれ、殺されていたことが判明する 事件の裏にはアメリカ大統領選の候補者が絡んでいた。ラファエルとマルクはそれぞれ手分けをして過去の事件を掘り返していくが、その間にアンナは何者かに誘拐され幽閉されていることが分かる 果たして二人はアンナを救い出すことが出来るのか? そして、そもそもアンナとはいったい何者なのか 最後にどんでん返しが待っている

この作品は、昨年の「マイベスト」に挙げたアンソニー・ホロヴィッツ著「カササギ殺人事件」以来の傑作ミステリーでした たった3日間のことしか書かれていないのに、過去へのワープなど複層的にストーリーが展開していくので、まるで何年も経っているように錯覚します

読み終わった後に感じたのは、この物語にはまだ続きがあるのではないか、ということです 中でも一番の関心事は、アメリカ大統領選の共和党候補者タッド・コープランドと選挙参謀のゾラー・ゾアキンはどうなってしまうのだろう、ということです

同じフランスのベストセラー作家ピエール・ルメートルの作品(「その女アレックス」「悲しみのイレーヌ」など)と比べると、ルメートルの小説が残虐な行為がこれでもか、と続くのに対し、ミュッソの小説はそういう描写はほとんどありません それだけに眉を顰めて読み進めることはありません。それと、何より感心したのは、非常に読みやすいということです これは吉田恒雄さんの翻訳が優れていることが大きいとは思いますが、全体的にストーリー展開に無理がなく、過去にワープしてもまた現在に戻るのに違和感がほとんどありません 多分、ミュッソは文章が巧いのだと思います

吉田恒雄氏は「訳者のあとがき」で、「冒頭の恋人同士の諍いの場面から凄まじいスピードで絶えず何かが起こっているので、私たちはページから目を上げるタイミングを見つけられない 読者各位に、ぜひとも金曜日の夕方から読み始めるようお勧めする所以である」と書いていますが、まったくその通りです 470ページを超える大作ですが、私はあまりの面白さに一気読みしました

 

         

 

冒頭に書いた通り、昨日は映画を観る予定でしたが、風邪の悪化を恐れて、自宅で大人しく過ごしました 観ようと思った映画は池袋の新文芸坐で上映中の「ツィゴイネルワイゼン」と「儀式」です せっかく作品を予習しておいたので、昨日同様、内容をご紹介しておきます

「ツィゴイネルワイゼン」は鈴木清順監督による1980年製作映画(144分)です

ドイツ語学者の青地豊二郎(藤田敏八)と友人の中砂糺(原田芳雄)の二人が海辺の町を旅している 二人の周囲を老人と若い男女二人の盲目の乞食が通り過ぎる。老人と若い女は夫婦で、若い男は弟子だという。青地と中砂は宿を取ると、小稲(大谷直子)という芸者を呼んだ。その後、中砂は旅を続け、青地は湘南の家に戻る。歳月が流れ、青地の元へ中砂の結婚の知らせが届く 中砂家を訪れた青地は、新妻・園(大谷直子・二役)を見て驚く。彼女は旅の宿で呼んだ芸者の小稲と瓜二つだったのだ その晩、青地は中砂からサラサーテが自ら演奏している1904年盤の「ツィゴイネルワイゼン」のレコードを聴かされる この盤にはヴァイオリン奏者のサラサーテが伴奏者に喋っているのがそのまま録音されている珍品だという 中砂は青地にサラサーテが何を言っているのかを尋ねるが、青地にも分からなかった 中砂は再び旅に出る。その間に、妻・園は豊子という女の子を生む。中砂は旅の間しばしば青地家を訪ね、青地が留守の時も妻・周子(大楠道代)と談笑していく そして、周子の妹で入院中の妙子を見舞うこともあった。ある日、青地は中砂から、妻・園が死に、うばを雇ったという報せを受ける 中砂家を訪れた青地は、うばを見てまた驚いた。うばは死んだ園にソックリだったのだ うばはあの芸者の小稲その人だった その晩は昔を思い出し、三人は愉快に飲んだ 中砂は盲目の三人の乞食の話などをした。数日後、中砂はまた旅に出たが、麻酔薬のようなものを吸い過ぎて旅の途中で事故死したという連絡が青地の元に入る その後、中砂家と青地家の交流は途絶えがちになっていく。ある晩、小稲が青地を訪ね、生前に中砂が貸した本を返してほしいと言う。2,3日すると、また小稲が別に貸した本を返してほしいとやって来る。それらの書名は難解なドイツ語の原書で、青地は芸者あがりの小稲が何故そんな本の名をスラスラよめるのか訝しがった そして2、3日するとまた小稲がやってきて「ツィゴイネルワイゼン」のレコードを返してほしいと言う 青地にはそれを借りた記憶はなかった。小稲が帰ったあと、妻・周子が中砂ならそのレコードを借りて隠していたこと判明し、数日後、青地はそれを持って小稲を訪ねた。そして、どうして本を貸していたのが分かったのかを尋ねた 小稲が語るには、それは豊子が夢の中で中砂と話すときに出てきた話だという 家を出た青地は豊子に出会った。豊子は「おじさんいらっしゃい。生きている人間は本当は死んでいて、死んでいる人が生きているのよ。おとうさんが待ってるわ。早く、早く・・・」と青地を迎えるのだった

「儀式」は大島渚監督による1971年製作映画(123分)です

 「テルミチシス テルミチ」という奇妙な電報を受け取った桜田満州男(河原崎健三)は立花輝道(中村敦夫)のかつての恋人・律子(賀来敦子)と共に急きょ打電地の南の島に旅立つ。その道行で、満州男は過去に桜田家で行われた数々の冠婚祭の儀式と、その時にだけ会うことのできる親戚の人々のことを想い起こしながら、この電報の意味を考え続けた 昭和8年 満州事変の余波さめやらぬ頃、満州で生まれた満州男が、昭和22年 母親のキクと共に命からがら引き揚げて九州の桜田家に辿り着いた日は、満州男の父・韓一郎の一周忌の日だった。韓一郎は敗戦の年、満州から東京に渡ったが、日本の前途に絶望して自殺した その法事の席には、内務官僚だったため追放中の祖父・桜田一臣(佐藤慶)、祖母・しづ(音羽信子)、曾祖母・富子、祖父の兄嫁・ちよ、ちよと一臣との間に生まれた守、父親の腹違いの弟・勇、もう一人の腹違いの弟・進の子・忠、叔母・節子(小山明子)とその子供・律子、しづが可愛がっている立花輝道などが列席した 幼い弟を満州で失い、これから母と二人で生き抜こうと決心した満州男であったが、祖父の命令で桜田家の跡継ぎとして、この複雑な血縁関係の中に引き込まれていった 昭和27年夏、全国高校野球大会に東京代表チームの投手で4番打者として活躍していた満州男は、準々決勝戦の前夜、母の危篤を知らされた 翌日の試合で満州男が致命的な失投をした頃、母は息を引き取った 追放が解け、ある公団の総裁に就任した祖父の力もあってキクの葬儀は盛大に行われた。その通夜の晩、満州男は節子から父の遺書を手渡されたことにより、父と節子が愛し合っていたこと、そして、二人が祖父によって引き裂かれ、節子は祖父の政治的野望の犠牲になったことを知った その夜 満州男は、自分の憧れの的だった節子が、輝道の愛撫を受けているのを見てしまった。その翌年、輝道が祖父の秘書として上京したのと入れ替わりに、満州男は京大に入学し、再び野球の世界に没頭していった   昭和31年、日共の党員である叔父・勇(小松方正)の結婚式が行われ、その席には中国から戦犯として刑期を終えて帰国した叔父・進(渡辺文雄)の顔があった。その夜、満州男は好きだという自分の気持ちを律子に言い出せず、輝道が律子を抱くのをただ呆然とながめていた。夜明けに節子が死んだ   原因不明のまま自殺として盛大に葬られた節子の死を、満州男は祖父が殺したのだと思った   昭和36年、政財界人を集め祖父の命令で行われた自分の結婚式で、忠(土屋清)は花嫁の失踪を隠した虚飾に満ちた披露宴に怒りをぶつけるが、その忠は事故死する そして輝道は家を出る。その後 満州男は、輝道が自分の父の許婚と祖父との間に出来た子であることを知った そして、偉大な祖父の死など様々な出来事の思い出が満州男の脳裏を横切っていった。南の島への旅の終わりが近づいていた 満州男と律子を乗せた船は、紺碧に輝く南の海を、輝道のいる島へと進んだ。そして、そこで見たものは、全裸で横たわる輝道の死体だった。生きる意志を失った律子は、満州男の目前で自ら手足を縛り薬を含んだ

なお、音楽は武満徹が担当しています

「ツィゴイネルワイゼン」は2度ほど観ましたが、鈴木清順監督の独特の美学が強烈で 忘れられません 大島渚監督の「儀式」は一度も観たことがないので、やっぱり観たかったぁ~

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