明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(2063)黒い雨訴訟控訴審でも勝利!「科学的証明」を求める国の見解が退けられた(連載 黒い雨訴訟高裁判決の意義―1)

2021年07月17日 21時00分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210717 21:00)

黒い雨訴訟高裁判決を取材するために広島市に行って、素晴らしい場を共有してきました。
お伝えしたいことがたくさんあります。記事を連投します!

黒い雨訴訟、控訴審も勝利!

7月14日、広島高裁において黒い雨訴訟控訴審判決が言い渡されました。
国および広島県、広島市による一審判決の取り消しを求める控訴を棄却。原告84人(うち14人はすでに死去、家族が訴訟を引き継いでいる)の被爆を再び認め、被爆者健康手帳の交付を命じるものでした。
再び黒い雨が降った地域が、従来の国の認識よりも大幅に広かったこと、そこにいた人々が内部被曝の被害を受けたことが認められました。


15時の判決言い渡しの直後に「全面勝訴」の旗が。真ん中は喜んで手を上げられた原告団事務局次長の高東征二さん。広島高裁前にて 守田撮影

しかも高裁判決は、一審より大きく前進したものでした。というのは一審で黒い雨降雨地域にいた人が、「健康管理手当」の支給対象となる「11種類の障害を伴う疾病に罹患したこと」を被爆者と認める要件としていた点を退けたのです。
黒い雨が降った地域にいた人々は、ただそれだけで原爆の放射能の影響を受ける事情の下にあったのだから、被爆者健康手帳が出されるべきだとしたのです。画期的です。

この勝利は原告の方たちの積年の頑張りを中心に、弁護団や支援者のみなさんの奮闘によって勝ち取られたものです。素晴らしい。心から拍手を送ります。
またこの勝利は、すべての放射線被曝被害者に灯をもたらすものでもあります。この点も素晴らしい。心からの感謝を届けたいです。




報告集会の場で「頑張って長生きして黒い雨を見届けるぞ」とこぶしをあげられた原告団・弁護団のみなさん。守田撮影

以下、少々、ややこしくもある高裁判決の画期的内容について、できるだけ分かりやすく説明したいと思います。そのために幾つかの言葉の意味するものもご紹介します。


健康被害に対する「科学的証明の必要性」を主張してきた国の見解が退けられた

控訴審のポイントは、一審で「11種類の障害を伴う疾病に罹患したこと」を被爆者として認め、被爆者健康手帳を交付する要件とされたことに対し、国が「科学的根拠に欠けている」と主張した点にありました。
11種類の疾病とは「造血機能障害を伴う疾病」「肝臓機能障害を伴う疾病」などを指します。国はそれらに罹ったことと、放射線被曝の因果関係の科学的な証明が必要だと主張したのです。この11の疾病ついての国の説明を見ておきましょう。

健康管理手当 (厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/genbaku06/02.html


健康管理手当の支給対象となる11の「障害を伴う疾病」 厚労省HPより

このように、病との因果関係の「科学的証明」を求める国に対して、実は高裁は、裁判の過程で次のように国に迫っていたのでした。
「この裁判は原告たちが『原子爆弾が投下された歳又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者』に該当するかどうかが争点である」「このことが分かっているのか?」と。
つまり一つ一つの病の科学的証明など争点ではないと指摘していたのです。しかも「それを分かった上でなおこの主張を押し通すつもりなのか?」とも厳しく追究していたのですが、判決でもこの姿勢が貫かれました。

そもそも「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」をも、援護対象にせよと規定しているのが被爆者援護法1条3号であって、国の主張は、この点をもまったく理解しないものでした。
繰り返しますが「放射能の影響を受けるような事情の下にあった」ら、ただそれだけで援護されるべきで、一つひとつの疾病の、被爆との因果関係の「科学的証明」など必要ないのです。

続く

#黒い雨訴訟 #広島高裁判決 #控訴審勝利 #健康管理手帳 #11種類の障害を伴う疾病 #被爆者 #広島原爆

*****

原発や放射線被曝の危険性の暴露など、取材・執筆活動のためのカンパを訴えます。
どうか支えてください。よろしくお願いします。

振込先 ゆうちょ銀行 なまえ モリタトシヤ 記号14490 番号22666151
Paypalからもカンパができます。自由に金額設定できます。
https://www.paypal.me/toshikyoto/500

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明日に向けて(2063)黒い雨訴訟控訴審でも勝利!「科学的証明」を求める国の見解が退けられた(連載 黒い雨訴訟高裁判決の意義―1)

2021年07月17日 21時00分00秒 | 明日に向けて(2001~2200)

守田です(20210717 21:00)

黒い雨訴訟高裁判決を取材するために広島市に行って、素晴らしい場を共有してきました。
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黒い雨訴訟、控訴審も勝利!

7月14日、広島高裁において黒い雨訴訟控訴審判決が言い渡されました。
国および広島県、広島市による一審判決の取り消しを求める控訴を棄却。原告84人(うち14人はすでに死去、家族が訴訟を引き継いでいる)の被爆を再び認め、被爆者健康手帳の交付を命じるものでした。
再び黒い雨が降った地域が、従来の国の認識よりも大幅に広かったこと、そこにいた人々が内部被曝の被害を受けたことが認められました。


15時の判決言い渡しの直後に「全面勝訴」の旗が。真ん中は喜んで手を上げられた原告団事務局次長の高東征二さん。広島高裁前にて 守田撮影

しかも高裁判決は、一審より大きく前進したものでした。というのは一審で黒い雨降雨地域にいた人が、「健康管理手当」の支給対象となる「11種類の障害を伴う疾病に罹患したこと」を被爆者と認める要件としていた点を退けたのです。
黒い雨が降った地域にいた人々は、ただそれだけで原爆の放射能の影響を受ける事情の下にあったのだから、被爆者健康手帳が出されるべきだとしたのです。画期的です。

この勝利は原告の方たちの積年の頑張りを中心に、弁護団や支援者のみなさんの奮闘によって勝ち取られたものです。素晴らしい。心から拍手を送ります。
またこの勝利は、すべての放射線被曝被害者に灯をもたらすものでもあります。この点も素晴らしい。心からの感謝を届けたいです。




報告集会の場で「頑張って長生きして黒い雨を見届けるぞ」とこぶしをあげられた原告団・弁護団のみなさん。守田撮影

以下、少々、ややこしくもある高裁判決の画期的内容について、できるだけ分かりやすく説明したいと思います。そのために幾つかの言葉の意味するものもご紹介します。


健康被害に対する「科学的証明の必要性」を主張してきた国の見解が退けられた

控訴審のポイントは、一審で「11種類の障害を伴う疾病に罹患したこと」を被爆者として認め、被爆者健康手帳を交付する要件とされたことに対し、国が「科学的根拠に欠けている」と主張した点にありました。
11種類の疾病とは「造血機能障害を伴う疾病」「肝臓機能障害を伴う疾病」などを指します。国はそれらに罹ったことと、放射線被曝の因果関係の科学的な証明が必要だと主張したのです。この11の疾病ついての国の説明を見ておきましょう。

健康管理手当 (厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/genbaku06/02.html


健康管理手当の支給対象となる11の「障害を伴う疾病」 厚労省HPより

このように、病との因果関係の「科学的証明」を求める国に対して、実は高裁は、裁判の過程で次のように国に迫っていたのでした。
「この裁判は原告たちが『原子爆弾が投下された歳又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者』に該当するかどうかが争点である」「このことが分かっているのか?」と。
つまり一つ一つの病の科学的証明など争点ではないと指摘していたのです。しかも「それを分かった上でなおこの主張を押し通すつもりなのか?」とも厳しく追究していたのですが、判決でもこの姿勢が貫かれました。

そもそも「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」をも、援護対象にせよと規定しているのが被爆者援護法1条3号であって、国の主張は、この点をもまったく理解しないものでした。
繰り返しますが「放射能の影響を受けるような事情の下にあった」ら、ただそれだけで援護されるべきで、一つひとつの疾病の、被爆との因果関係の「科学的証明」など必要ないのです。

続く

#黒い雨訴訟 #広島高裁判決 #控訴審勝利 #健康管理手当 #11種類の障害を伴う疾病 #被爆者 #広島原爆

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