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明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(274)除染活動を通じて見えてきたこと(細川弘明さん)

2011年09月29日 22時00分00秒 | 明日に向けて(251)~(300)
守田です。(20110929 22:00)

明日に向けて(251)で「避難と除染についての考察」という一文を書きました。
9月4日のことです。もともと放射能除染活動は、一部の方たちが止むにやまれず
に始めたものですが、その後に福島県などの行政が着目し、住民に避難を思い
留まらせる手段としても取り組み始めた面があります。

これをどう考えるのか、どのように線引きをするのか、自分ではよく見えない
ものがある中での考察だったのですが、このとき、誰よりも早く除染活動に
着手してきた京都精華大学の細川弘明さんが、ご自分が書いて、雑誌に投稿中
の原稿を送ってきて下さいました。非常に明快に論旨が整理されていました。

そのときはまだ雑誌が発行されていないので、公表は控えて欲しいとのこと
だったのですが、先程、ご自身のブログでも紹介したので、公表可能ですとの
ご連絡をいただけました。みなさんにご紹介しますのでぜひ読んでいただきた
いと思います。


なお、9月22日と昨日28日に信楽を訪れましたが、僕の持っているRADEX RD
1503というガイガーカウンターで計測したところ、、信楽小学校校庭真ん中
1mで0.17マイクロシーベルト(毎時)、10㎝で0.20マイクロシーベルト(同)
という値が出ました。またある方の庭で、10㎝で0.23マイクロシーベルト
(同)が出ました。

RD1503はこれぐらいの数値だと高めに計測されると言われているので、確実
な値とは言えません。この機械をもっと性能の高い機種と一緒に測って、
大まかにでも誤差の目安を把握すべきことを痛感しましたが、それでも京都
の僕の自宅では0.12~14ぐらいの値のなのでやや高いのは間違いない。

それで細川さんたちが行っている除染活動の紹介などから得てきた知識と
して、まずは庭の雑草を刈ってみることをお勧めしました。それで昨日、計測
しなおしたところ、庭の10㎝の値が0.14ぐらいにまで下がっていました。
実際の値がどうであれ、草刈が効果があったのは間違いないと思います。

しかしその庭に面している部屋の中が0.22マイクロシーベルト(毎時)ぐらい
あり、その値はこまめな掃除や、屋根の上の雨トイの泥をのぞくなどした
ものの、あまり下がりませんでした。それで続いて、壁際に生えている雑草
も刈ることを提案しています。

福島での値を考えるならば、RADEX RD1503でのこの計測値で除染を行うことを
大げさという方もいるかもしれない。しかし放射線を浴びることは可能な
限り避けるに越したことはないし、何より、値が高ければ、可能であれば
下げたいと思うのが当然の心情です。

そのために細川さんたちの実践知を援用してみたのですが、効果があることが
部分的にせよ証明できたように思います。この方法なら手軽に行えるので、
もっと多くのところで実践可能だと思います。それで多くの方の被曝を少し
でも軽減させることができる。

そのためには、この実践について、僕自身がもっと実地で教えていただく
必要を強く感じています。それで細川さんにお願いして、次回の福島での除染
活動に参加させていただくことにしました。実践知を得て、それをまた多くの
地域に伝搬させていきたいと思います。

ただしそれで避難すべきものをマスクしてはいけない。あくまでもこの点を
明確にしながらの除染活動に取り組んでいかねばなりません。その上で、
細川さんの書かれている「除染活動を通じて見えてきたこと」という文章は
非常に重要です。以下、お読みください。

*****************

【Nuke】除染活動を通じて見えてきたこと 
京都精華大学 細川弘明
http://itacim.blogspot.com/2011/09/nuke_29.html

月刊『解放』11月号(10月中旬発行予定)の巻頭コラムに寄せた文章
(8月末執筆)をもとに、若干手を加えたものを以下、公開します。

----------------------------------------------
2011年3月11日の原発震災(東電事故)により、政府が住民の避難や避難準備を
指示した区域からさらに数十キロ離れた地域でも法定の「放射線管理区域」を
はるかに上回るような汚染が生じている。本来、ただちに避難(最低限でも
小児と妊婦の退避)がなされるべきだが、事故をなるたけ小さく見せかけたい
政府は消極的な対応に終始し、「ただちに健康に影響しないので心配するな」
との大本営発表が繰り返された。小さな子供や胎児を抱える親たちの中には
意を決して自主的に避難した人も少なくないが、住居・仕事・学校・介護など
様々な制約のある中で汚染地に住み続けざるをえない人々も多い。安心情報を
鵜呑みにして危機感をもたず「普通の日々」を送る人もまた多い。

このような異常な事態を憂慮した私たち(いくつかの大学の教員と福島住民の
協働チーム)は《放射能除染・回復プロジェクト》を立ち上げ、5月中旬の第1
回調査を始めとして、福島市(おもに北東部のホットエリア、すなわち放射能
汚染濃度の高い区域:渡利地区、御山地区、大波地区など)に通って、通学路
や公園や駐車場などの放射線測定、家屋や農園の除染実験、企業との話し合い、
記者会見などを展開してきた(プロジェクトの基本的な考え方や進行状況は7月
19日の記者会見資料を参照されたい)。

事態のあまりの深刻さとスケールの大きさ故、私どもたかだか十数人の活動は
ドンキホーテの如き混乱と滑稽さを伴う。しかし、活動を毎月重ねるにつれ、
少し見えてきたこともある。

当初、国も県も市も、汚染は心配ないレベルだから避難も除染も必要ないとの
姿勢だった。5月頃は「じょせん」という言葉を聞いても一般の人には何のこと
か分からないのが普通だったろう。しかし、私たちのグループ以外にも放射能
除染を試みる動きは日々増えていき、それらが報道されたり、土壌汚染濃度に
ついてのデータが次々と明らかになるにつれ、「このまま住み続けてよいのか」
という問題意識を明確にする住民も増えた。行政の側からすれば「住民の不安」
が放置できないレベルに達したのである。

7月中旬あたりを境に、行政側は突如「除染計画」に積極的になり、そこに
ビジネスチャンスを嗅ぎつけた企業や原子力業界団体の動きもにわかに活発化
した。だが、行政主導の除染は「住民を安心させる」ことが目的化しており、
「避難させない」ための口実にされている。

継続居住が可能な地域の除染は急ぐべきだが、そもそも「継続居住が可能かど
うか」の判断ができるほど綿密で徹底した線量測定を行政が怠ってきた(ある
いは測定結果を公開しないできた)というのが実情である。除染作業では、
ホットスポットの確認や高線量の要因(たとえば児童公園であれば芝地や滑り
台着地点の土など)の特定と除去を優先しておこなうが、地域全体として線量
が高すぎるところでは、まず立入禁止にしたり住民を避難させたりして、そこ
の除染は後回しにするという判断も時には必要となる。

除染の可能性だけを強調して、食品による内部被曝を過小評価するのも大きな
間違いだ。校庭の土を削って放射線量が下がったのでもう大丈夫、さぁ「地産
地消給食」を、といった倒錯した押しつけは受け入れがたい。

私たちのプロジェクトでは、「避難させないための除染」という考え方をとら
ず、除染と避難は「放射線被曝低減」のための総合対応の一環として連携して
実践されるべきもの、との考え方に立つ。また、放射能を拡散させないための
配慮として、できる限り水を用いず、固めて剥ぎ取る方式を追求している
(詳細は前掲ウェブサイトを参照)。

福島県やいくつかの市町村では、圧力水洗浄、つまり放射性物質を含む汚れを
高圧ポンプで洗い流す方法を提唱している。この方法だと、除染現場から汚染
を移動させることはできても回収することができない。汚染水の行き先を考え
ずに「洗え、洗え」では、放射能を拡散させ二次的な汚染(たとえば下流での
ホットスポット形成や農業用水への混入)を招く。現時点でも下水処理場の
労働者の放射線被曝は深刻な問題であるが、それがさらに悪化する恐れも高い。

洗い流すことによる一時的効果は、住民にひとときの「安心」を与えるかも
知れないが、落ち着いて考えれば、人々がたがいに汚染を押しつけ合う結果と
なる。自らを守るために放射能を洗い流そうとする人も、下流でそれを押し
つけられる人も、ともに原発事故の被害者なのである。被害者どうしを分断し、
被害を押しつけ合うような「除染」であってはならない。行政主導の除染事業
では東京電力の責任と義務が不問に付されているが、加害者企業の「汚染物
引き取り責任」と賠償責任を見過ごすわけにはいかない。

原発震災によって脅かされているのは人々の健康であり、経済の基盤である
土地と水であるが、同時に、避難や移住のための正当な支援を受ける権利の
著しい侵害でもあり、被害者が加害者になる状況を強いられるという悲劇で
もある。原発震災は人災であると同時に「人権災害」でもあるということを
銘記したい。
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明日に向けて(273)福島・郡山市土壌汚染濃度 チェルノブイリ被害地匹敵

2011年09月29日 13時00分00秒 | 明日に向けて(251)~(300)
守田です。(20110929 13:00)

琉球新報に、「福島・郡山市土壌汚染濃度 チェルノブイリ被害地匹敵」
というタイトルで、矢ヶ崎さんの分析を紹介した記事が載りました。
矢ヶ崎さんはこの内容を、9月16日に行われた神戸講演でも話されており、
すでに「明日に向けて(263)」で紹介していますが、新聞記事はその要約
になっていますので、ポイントをつかむのに便利です。ご活用ください。

ただ記事のタイトルは、必ずしも最も重要な点を表現しているとはいえま
せん。福島・郡山の土壌汚染が、チェルノブイリ被害地に匹敵している
・・・確かに間違ってはいませんが、矢ヶ崎さんがここで強調されている
のは、ウクライナのルギヌイ地区が、国際放射線防護委員会(ICRP)の
もともとの基準である年間放射線許容量を1ミリシーベルトにというライン
を厳格に守ったのに、深刻な健康被害が出たという点です。

つまり年間被曝1ミリシーベルトという基準を守っていても健康にかなりの
害がでるのであり、ICRPの被害想定が大きく間違っていることが明らかに
なっているのです。にもかかわらず日本では1ミリシーベルトすら守らず、
20ミリシーベルトという新たな許容値を出し、健康被害は出ないように
言っている。「棄民政策そのものだ」と矢ヶ崎さんは批判しています。

この点にポイントがあることを踏まえて、以下、琉球新報の報道をお読み
下さい。また参考までに、「明日に向けて(263)」より、当該個所を抜粋
して貼り付けておきましたので、さらに読み進んでいただければと思います。
こうした現実をしっかり把握して、政府の安全キャンペーンに惑わされず、
被曝の脅威を伝えて、放射線からの最大防御をしていきましょう。

************

福島・郡山市土壌汚染濃度 チェルノブイリ被害地匹敵

琉球新報 2011年9月28日
福島第1原発事故で放射能に汚染された福島県内の土壌は、1986年の
チェルノブイリ原発事故で健康被害が続出したウクライナ・ルギヌイ地区
に匹敵する汚染濃度であることが矢ヶ崎克馬琉球大名誉教授の分析で
分かった。同地区は事故後5~6年で甲状腺疾病と甲状腺腫が急増。9年
後、子どもは10%の割合で甲状腺疾病が現れた。通常10万人中数人し
か出ない子どもの甲状腺がんは千人中13人程度まで増えた。矢ヶ崎氏は
「福島で同じような健康被害が出る恐れがある。子どもの遠方避難を含む
被ばく軽減策に全力を挙げるべきだ」と訴えている。

福島県内の土地について文部科学省が8月30日に発表した詳細な汚染度
(放射性セシウムの濃度)調査の結果を基に、ルギヌイ地区の汚染状況と
郡山、福島両市の汚染濃度を比較した。

ルギヌイ地区はチェルノブイリ原発から西へ110~150キロ離れた場
所で、強く汚染された地域。ウクライナの汚染度区分は三つのゾーンに分か
れている。移住の判断基準は国際放射線防護委員会(ICRP)基準を原則
的に適用し「年間自然放射能を除いた1ミリシーベルト以上の被ばく」と
設定されている。1平方メートル当たりで、55万5千ベクレル以上が
「移住義務」、55万5千ベクレル未満~18万5千ベクレルが「移住権利」、
18万5千ベクレル未満~3万7千ベクレルが「管理強化」となっている。

ルギヌイ地区の汚染程度は「移住義務」と「移住権利」を合わせた地点数の
割合は13・3%に対し、郡山は14・4%、福島市は33・0%。両市の
方が汚染度の高い地域が多い。汚染の少ない「無管理地域」の割合はルギ
ヌイ地区が1・5%で、郡山市27・1%、福島市10・6%と両市の方が
多い。濃淡分布の幅の違いはあるが平均値などをみると「汚染度はほぼ
同程度とみなせる」という。

ルギヌイ地区では、子どもの甲状腺疾病の罹患率が上がったほか、同地区全
病院全ての患者に免疫力の低下や感染症の増加・長期化などが確認された。
90~92年の死亡率を事故前の85年と比べると、死期は男性で約15年、
女性で5~8年早まっていた。

矢ヶ崎氏は「ウクライナの法定放射能定義はICRPの基準に従っているの
に、その基準は健康管理の点ではあまりにも甘すぎたことを示している。
健康被害は年間1ミリシーベルト以下でも深刻だ。だが日本政府は緊急時の
措置として20ミリシーベルトを設定した。許し難い。住民を『被ばく
されっぱなし』の状態に置く『棄民』政策そのものだ。国民の健康管理の
面から、その点は厳しく追及されねばならない」と強調した。(新垣毅)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-182154-storytopic-1.html

****************

明日に向けて(263)内部被曝-怒りを胸に、
楽天性を保って最大防護を-(矢ケ崎さん講演碌)より抜粋

http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/b19e726f856b3d9ac679c9658610e683

それで福島について、文科省がメッシュ測定をおこなって、線を網目にして福島
県だけで2200か所測定したものがあります。それでちょうど福島市と郡山市の
青色のゾーンがありまして、ここが線量が高くなっています。この部分は栃木県
や埼玉県や千葉県にもあります。ホットスポットといわれる地帯です。

これをチェルノブイリと比較しました。チェルノブイリのルギヌイ地区のデータ
があります。それがまず私たちが比較していい汚染内容を持っています。なので
かなり突っ込んで分析しました。

ウクライナの法定汚染ゾーンがあります。1年間にどれだけ被曝するかの数をみて
いきますが、一番高いところは移住義務、次が移住権利、次が管理強化という
ゾーンになります。注目するところは、移住権利のところが、自然の放射線より
1ミリシーベルトだけ高い所とされていることです。この地域はもともと年間0.6
ミリシーベルトで、1.6ミリ以上だと、1ミリ高い場所になるのです。

ウクライナはこの年間被曝許容量1ミリシーベルトという条件をきちんと守って
いるのです。日本はそんなことをやるどころか、20ミリシーベルトと値を上げて、
我慢しなさいといっています。「頑張ろう福島」とかいいますが、「我慢しな
さい福島」と私には聞こえます。その点、ウクライナには1ミリを守ろうとした
誠実さがあります。

ここで強調したいのは、1ミリとはどれぐらいの放射線なのかです。誰もが少ない
値だと思ってしまいます。しかしこれは毎秒1万本の放射線があたる値です。1年
では億になります。けして放射線量が低いなどとは言えたものではないです。
ウクライナの誠実さは厳格に実施されていますが、しかしこれによって住民が救わ
れているかというと、まるっきりそうではないのです。

ルギヌイ地区の分布は大部分が管理区域です。85.2%です。移住権利地区と、
移住義務地区は、14.8%です。それに対して福島市は義務と権利を加えて33%に
もなります。これをみると福島はルギヌイ地区より高い放射線を浴びていること
がわかります。郡山市は、ルギヌイと同じぐらいの線量です。ただし管理地区に
入らないところも福島・郡山の方が多いところにも特徴があります。これは今後
のこれらの地域の健康状態をかなり示すことになります。

ルギヌイ地区の健康状態がどこに乗っているかというと、今中哲二さんが、
「チェルノブイリ事故による放射能災害、国際共同研究報告書」を書いています。
これをみると、100ミリ以下ではデータがないなどというのがいかにでたらめか
分かります。実際には100ミリ以下でいっぱい病気がでてきているのに、いかに
公式記録に載せないかが苦慮されてきたことがわかります。

ルギヌイ地区では、免疫力の低下がまず第一にあげられています。感染症の増加
長期化などさまざまな症状があらわれています。特徴的なのはガンの第3期から
4期にある人の平均余命が、胃がんで60ヶ月だったものが、1992年には8ヶ月に
落ちています。肺ガンでは40ヶ月が、8ヶ月です。さらに1996年には、2.3ヶ月
と2ヶ月にまで落ちています。

新生児の病気にかかる率や、先天性形成障害、精神神経的障害も増えています。
これについてICRPの医師たちは、これらの原因を、放射能を浴びたのではないか
心配するころからくるストレスのせいにしています。

一番ショッキングなのは、老化がもの凄く早まっていることです。年齢別に比較
するとピークの死亡率を一番高くカウントする年齢が10歳若くなってしまった。
平均余命では1985から1990、1992年で男性の死期は15年近く短縮し、女性は5年
から8年短縮しています。女性の方が子孫を残していくために強さがあるのですが、
そこでも5年から8年短くなっている。

子どもの甲状腺の病気と癌については、特徴的に事故から5年経ったときに、突然、
もの凄い数であらわれてきています。1995年で9年後で1000人中100人の子どもが
病気になり、1000人中12、3人が癌になっています。こういう実情があるのに、
政府からたくさんの研究者を派遣して病気の痕跡がないという報告が出ている。
科学をかたっているので余計に怖さが際立ちます。



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