明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(250)福島原発作業員死亡・・・白血病は今回の被曝が原因ではないのでは?

2011年09月02日 23時00分00秒 | 明日に向けて8月1~31日
守田です。(20110902 23:00)

8月30日に、福島第一原発で8月上旬に1週間働いていて作業員が、
白血病で死亡したというニュースが流れました。ちょうどこのころ、
原子炉1号機近くの排気筒や、建屋から、10シーベルトとか、5シー
ベルト超の放射線量が観測されていたことなどに踏まえて、僕は
この白血病が、被曝によってもたらされたのではと推論しました。

しかしこれを書いた「明日に向けて(249)」を読んだ方から、被曝
が高線量だったとしても、死亡報告が16日と働いていた時期から
間近であり、この短期間で白血病が発症したとは考えにくい。白
血病検査は難しく、見逃されることもあるため、この方はもともと
白血病で、被曝で病態が悪化したのでは、という指摘がありました。

ただしその場合でも、まれにこうしたケースはあるにせよ、事前に
白血球数と血小板数に異常が無かった人が、16日までに亡くなるの
も早すぎる。この辺が不可解だといいます。またより高い線量の被
曝が疑われるが、そもそも0.5シーベルトでも年間許容量の半分で
高い被曝量だということを忘れてはいけないという指摘も。

読んでいて、なるほどと思いました。さらに、作業された方は高
線量で被曝し、急性症状でも亡くなったのではないか。白血病
も患っていたため、いわば合併症を起して亡くなり、「白血病」
とのみ診断されたのではないか、いや0.5ミリでも白血病を悪化させ
るために十分だったのでは、とさらなる推論が走ります。

この点で、もっと正確な情報が必要であり、そのためにも継続的
な調査が求められます。何よりそれを早々に打ち切ったことに
隠された何かの存在が疑われるからです。こうした点を自ら学び
つつ探っていくことに作業員の方々や、私たちの安全を守ってい
くカギがあります。

しかしなにはともあれ、僕の白血病に関する理解が浅いために、
間違った推論をしてしまった可能性があります。まだ僕には確信
を持った判断ができるまでに、放射線被曝と白血病発症の関連、
とくに時間的流れがつかめていませんが、とても大切な指摘だと
思いますので、みなさんにご紹介しておきます。

なおこのアドバイスを下さったのは、明日に向けて(224)でご紹介
した「子供の白血病を乗り越えてきたお母さん」です。さすがに
白血病へのご見識があついです。また作業員の方たちや被曝された
方を守っていくために、少なくとも僕はもっと、被曝と病の関係の
学習を深めなければと痛感しました。

・・・ありがとうございました。

*****************************

「子供の白血病を乗り越えてきたお母さん」より

原発作業員の白血病で死亡したというニュースについて,「今回の
被曝と白血病の発症との因果関係」という一点についてだけ取り急
ぎ考えを述べさせてもらいます.私は素人ですから当てにはならな
いかもしれませんが,報道されていることが事実ならおそらく担当
した医師の言うとおり今回の被曝と白血病の因果関係はないと思い
ます.

白血病細胞が一つ生まれてから発症するまでには(症状がでるまで,
または採血検査でひっかかるまで)何ヶ月もかかります.もしこの
方が大量の被曝をしたのなら,放射線による急性障害で亡くなるこ
とはあっても,8月初旬に7日間作業して16日に白血病にで死亡
するということはまずあり得ないことだと思います.

事前の健康診断では末梢血の検査(普通の採血)はしていたと思いま
すが,血液像の検査はしていないと思いますし,まして骨髄の検査
をしているとは考えにくいです.(血液像というのは顕微鏡で白血
球を構成する好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球などの比率
を確認するもので,その比率の増減によって体にどんな異常が起こっ
ているかの見当を付ける検査です.白血病細胞である芽球が見つかる
こともあります.骨髄検査というのは胸骨または腸骨(腰の横にある
骨)に太い針を刺して骨髄を採取する検査で,主に白血病の確定診断
に使われます.両者は白血病など,何らかの疾病が疑われなければ
行われません.

ということは実際には白血病であったけれどもまだ末梢血の白血球数
と血小板数に異常がが見られなかった,ということは大いにあり得る
ことです.実際,末梢血には異常がみられなかったけれど骨髄を検査
して白血病であることがわかるという方はたくさんいます.

時間がないのでこれ以上書けませんが,以前の被曝が原因で発症した
ということはあり得ることですが,少なくとも8月初旬の被曝によっ
て「発症」したということは考えにくいと思います.ただ,8月初旬
に白血球数と血小板数に異常がなかったのに16日に白血病で亡くな
るというのは早すぎるとは思います.でもこれも多くはないけれど実
際にあるようです.この方の場合には被曝が影響しているのでしょう
ね.これまでに原発で働いたことはなかったという報道もありますが,
その辺のところも知りたいところです.

死因についても担当医師が言ったように白血病なのだと思います.被
曝が引き金になって急に悪化したと考えるのが妥当だと思います.

被曝量については本当に0.5ミリシーベルトなのか,本当はもっと
多いのか,知りたいですね.もともと私たち日本人の年間被曝限度は
1ミリシーベルト.今,私たちは感覚が麻痺していて,0.5ミリ
シーベルトと聞くと「その程度!?」と思ってしまいがちかもしれない
けれど,実は年間限度の半分に相当するんだということも忘れてはい
けないと思います.実際の被曝量がもっと多かったということも大い
にあり得るわけですが,ずさんな管理ももっと問題にしないといけな
いですね.

そういえば6月に小林圭二さんの講演を聞いた後,少しお話をしたの
ですが,その時小林さんが原発作業員の被曝がとても心配だから,私
たちは取材が来たときには必ずその話をするようにしていると言って
いました.

7月末に,原子力安全保安院が4月1日に,このままでは作業員が不
足するから、一生の間に、1シーベルト(1000ミリシーベルト)を限界値
とするということを厚生労働省に要請していたというニュースがあり
ましたが,これはあまり問題にされていなかったように思います.
1シーベルトを我慢しろなんて言う人が真っ先に現場で働け!と怒り
がこみ上げます.

コメント (1)
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