ぼちぼち日記

大切な日々のこと

『トリツカレ男』

2006-06-21 08:52:22 | わたしの読書
トリツカレ男』 いしいしんじ

以前、『おりの中の秘密』を読んだときに、初めてその存在を知った、図書館の隅のヤングアダルトコーナー。家庭の本棚程もない小さな、小さなコーナー。どうして、こんなに良い本が、こんな隅、漫画や視聴用のCDコーナーの向こう側に置かれているのか?については、今も納得いかないのだが・・・・・おかげで、いつでも在庫が揃っているというのが、ちょっと嬉しい。そんな訳で、その中で多くの部分を占める「いしいしんじ」氏の作品。

主人公ジュゼッペのあだ名は「トリツカレ男」という。その名の通り、何かに「トリツカレ」てしまうと、すべてを忘れてしまう男だ。オペラ、三段跳び、サングラス集め、語学の通信教育・・・
ときたところで、どきっとした。あら、私もかなりのトリツカレ女だわ。
英会話、読書、書道、これは、今。昔、ダイエット、一人旅、自転車、水泳にトリツカレていたときもある。英会話教室に通いつめたっけなあ。7万円もする自転車を買ったっけなあ。ああ、奇異な主人公が、一気に身近に思えてきた。
さてさて、その主人公が、ある日、恋に落ちた。恋にトリツカレてしまったのだ。
恋にトリツカレたトリツカレ男。彼女のことだけを考え、彼女のためだけに行動するトリツカレ男の片思いは壮絶だ。トリツカレ男は、彼女のために、彼女の理想の男になっていく。その一途な想いは、痛々しい程だ。けれど、最後に待っていたのは・・・

一風変わった、トリツカレ男の恋愛物語。
人は、こんなにも、自分以外の人のために犠牲になれるものだろうか?決して、見返りを求めない愛。切ないけれど、愛って、トリツカレルって、なんだか素敵なことなんだなって思う。