ぼちぼち日記

大切な日々のこと

『いちばん美しいクモの巣』

2006-05-31 23:26:18 | わたしの読書

『いちばん美しいクモの巣』・詩人が贈る絵本
アーシュラ・K. ル=グウィン作
長田弘訳

主人公は、なんと・・・クモ。ちっぽけなクモ。
リーゼという名前の彼女は、かつて、王様が住んでいた城に暮らしている。
今は、もう誰もいないその場所に、彼女は、自分だけの巣をかけていた。リーゼは、ほかのクモとは違う。新しい結び方、新しい形。工夫をこらし、ようやく作られる美しい巣。ものを創り出す喜び、創造することの素晴らしさを、彼女は知っている。そしてそれは、多くの人々に感動を与えるのだが・・・
皮肉なことに、リーゼの想いとは別に、ハエを捕るための巣は、芸術作品となって、ガラスケースの中へ入れられてしまうのだ。
物語の最後に、リーゼは、これまで知らなかった一番の「美」を見つける。 リーゼの見つけた「美」。それは、私がいつも暮らしている何気ない世界だ。

私は、クモの巣を、ゆっくりと見上げたことがあっただろうか?クモの巣の向こうに見えるお日様の光や、クモの巣に光る露の輝き。ゆっくりと、立ち止まって見たことがあるだろうか?
改めてクモ見る・・・小さなそれが、愛らしい生き物に思えてくる!え!びっくり。
1つの新しい視点が、私にもたらしてくれたもの。
それは、たかがクモの巣。でも、それを知った今と、知らなかった昔とでは、世界は、随分、違うものになる。本って、すごいなと思う。

詩人・長田弘が選んだのであろう、この絵本は、(彼の詩が、いつも、私の心に気付きを与え、新しい風を吹き込み、新しい視点を与えてくれるように)今まで、足を止めることのなかった場所に、私を導いてくれた。


『ピッピ南の島へ』

2006-05-30 05:46:05 | 息子と読んだ本のこと・児童書
『ピッピ南の島へ』 リンドグレーン作
とうとう、ピッピ最後の一冊。三日前から、またまた、ピッピモードに突入しています。昨日は、私のお気に入りの「学校」の物語。
今回、学校にやってきたのは、ルーセンブルムさん。この人は、良く勉強する良い子たちに、下着やお菓子などをプレゼントするのだ。良く勉強する子・・・つまり、良く出きる子たちにだけ。
「貧しい子には、特に慈悲深い」と言いながら、自分の出した問題に答えられない「出来の悪い」子どもには、何もあげないばかりか「端っこで恥ずかしがってなさい!」と言い放つ偽善者っぷりが、皮肉そのもの。もちろん、ピッピがやってきて、ギャフンと言わせてしまいますとも!

「ペールとポールが、ケーキをわけることになりました。ペールが四分の一もらったら、ポールの方は、どうなりますか?」という問い。さあ、答えは・・・!
一巻を読んだ私たちは、ピッピの回答が容易に予想できてしまい・・・。もう、ルーセンブルムさんの問いを読んだだけで、噴出してしまいました。
ピッピの答えは、腹いた!そうなんです。ポールは、腹痛になるんです。ペールより欲張りましたからね!
もちろん、ルーセンブルムさんは、プンプン怒ってしまい、ピッピは、端っこで恥ずかしがっていなくてはならなくなるのですが・・・

どうしても、一巻目の楽しさには負けてしまう、二巻、三巻目。けれど、「大人をギャフン!」といわせる所は、相変わらずのおもしろさです。ルーセンブルムさんほど露骨な偽善者だと、大人の私も冷静に笑っていられるのですが・・・
はっ。子どもにとってみれば・・・ルーセンブルムさんも私も同じかも?うむむ~


藤田嗣治展

2006-05-27 19:33:07 | つぶやき
昔から、藤田氏の描く猫は大好きだったけれど、どうしても、人物画が好きになれなかった。なんだか寂しくて、はかなげで。まるで、この世に存在していない様な・・・そんな気がした。
けれど、この展覧会に合わせて放映されたテレビのドキュメンタリーで、彼の生き方に接し、彼の描く人間の寂しさや、はかなさの理由がわかった気がした。そして、どうしても会いたくなった。最終日の5月21日、日曜日。妹を誘って、国立東京近代美術館へ。

隣町の「角に座った係員の方の方が、お客さんより多いような」美術館ばかり行っているので、まずは、恐ろしい数の人にびっくり!30分も並んで、人の頭しか観れないのか~!と、叫びたくなったのですが、徐々に、人混みの中で絵を観るコツもつかめてきて(笑)、絵の美しさにタメイキをつきながら、なんと2時間近くもそこにいました。
たぶん、隣町の美術館だったら、一日中だっていられたと思うな。
だって、ものすごい迫力。以前は、寂し気としか写らなかった人物たちも、全く違うものとして輝きだすから不思議です。やっぱり、絵は、実際に観ないといけないなあ。。。

それにしても、藤田氏は、絵を描くのが大好きで仕方がなかったのだろう。タイルに描かれた絵、ビンに描かれた絵、家の壁に描いた絵(これは写真)を観ていると、そのひたむきな気持ちが、じんじんと心に響いてきて、せつなくなった。日本でなく、フランスで生涯を閉じた彼の人生を想って、せつなくなった。
気持ちが素直に伝わってくる絵。素直で純情で・・・だからこそ、不器用にしか生きられなかったんだろう。心に響く絵。すごい。すごいなあ。
あれから約一週間。すっかり、恋した女の子になっています。NHKさん、あのドキュメンタリーを再放送して下さい・・・。


『うさぎのみみは なぜながい』

2006-05-26 06:40:37 | 息子と読んだ本のこと・絵本

『うさぎのみみは なぜながい』 北川民治 文・絵

久しぶりに、昔話や民話のような絵本が読みたくて、母が借りてきた本。
息子は「ピッピが読みたい」と騒いでいたので、ちょっと強引気味に読み始めた母。けれど、読み始めたとたんに、すっと物語に入ってしまったようでした。メキシコの民話です。

ちっぽけでみすぼらしい身体ゆえ、森の仲間のけものたちに苛められていると言う、うさぎ。そのうちに殺されてしまうでしょうと、うさぎは、神様に訴えます。どうか、私を大きくして下さいと。すると、神様は「とらと、わにと、さるとを、自分の手で殺して、その皮を持っていたら、願いを叶えてやろう」と言うのです。
森中で一番強い、とら。一番むごい、わに。そして、さるは、一番の知恵者でした。
うさぎは知恵を発揮し、見事に、それらの皮をはぐことができるのですが・・・神様の答えは・・・

独特の雰囲気を持った絵は、うさぎの企みに、恐ろしさをアレンジしてくれます。思わず、息をひそめてしまった親子。なんとも言えない迫力がありました。うさぎの「かわいい・弱い」というイメージを、見事に裏切ってくれました!



『チムのいぬタウザー』

2006-05-25 05:17:19 | 息子と読んだ本のこと・絵本

『チムのいぬタウザー』 エドワード・アーディゾーニさく
航海の途中、ボートの中にいる子犬を見つけたチムとジンジャー。
けれど、船長は、大の犬嫌い。船長に見つかったら大変だ!
チムたちが、犬を助けようとついた嘘がもとで、船長は心の病気になり、船は混乱におちいってしまった。そこに、嵐がやってきて・・・

最近、図書館での人気が上がったらしく、残念ながら、この一冊しか借りてこれなかったチムシリーズ。けれど、とても楽しい一冊だった。
いつものように、「在りえないだろ!」という発想も、お父さんが息子に語っている様子を思い浮かべれば、自然と納得。お約束の嵐もやってきて、さらに納得(笑)。
今回は、子犬を軸にして物語が展開するので、動物好きの息子としては、今まで以上に楽しめた様だった。我が家では、猫派の母のせいで、未だに、犬を飼う計画は実現していないが(犬のために、日陰になる木も植え、ウッドデッキも広くなって、計画は着々と進行しているけれど・・・一歩が踏み出せない)息子は、夢を膨らませたに違いない。船長さんの足をかんだ犬に、母の一歩は、また遠のいた気がするけれど。


『水のたび』

2006-05-24 05:57:11 | 息子と読んだ本のこと・絵本
フリズル先生のマジック・スクールバス  水のたび
ジョアンナ・コール文  ブルース・ディーギン絵  藤田千枝訳

四年生の社会では、ダムや貯水場について勉強する。
息子の学校では、三年生の終わりに浄水場に校外学習に行き、先日の遠足では、ダム見学。来月には、再び浄水場に校外学習に行くらしい。
楽しくて仕方がなかった遠足で、ちゃんとお勉強出来たのかは??な息子だけれど、bincaさんのブログでおもしろそうな絵本を見つけたので、早速、水について、親子で科学しちゃおう!と借りてきました。

フリズル先生は、「たべのこしのパンに、みどり色のカビをはやしなさい」なんて言う、ちょっと変わった先生。他のクラスが、動物園やサーカスに遠足に行く中、フリズル先生のクラスは、浄水場に見学に行くことになります。おまけに、前もって水の情報を集める宿題まで出てしまい、みんな、がっかり。
でもね、遠足は、とんでもなく素敵なものでした!クラス全員が「水」になって浄水場を見学し、学校の水道を通って帰ってくるのです!

化学も生物も物理も、みんなまとめて苦手だった、根っからの文系人間の私も、絵本の中に、ぐいぐい惹き込まれてしまいました。
「へえ~!へえ~!」と、うなずく母と、「こんなの知ってるよ!」と言っては、得意気の息子。(学校で習っている最中ですからね)最初から最後まで、「へえ~!」と「こんなの知ってるよ!」の合唱でした。
そうかあ~。理科って、こういう身の回りの?から生まれてくるんだよね。
図書館検索によると、フリズル先生シリーズは、他にも色々あるらしい。しかも、全部楽しそうな題名だぁ。探してこよう!

『かいぞくポケット14 とうめい人間ジャン』

2006-05-23 05:52:04 | 息子と読んだ本のこと・児童書

かいぞくポケット14 とうめい人間ジャン
寺内輝夫・作  永井郁子・絵

久しぶりのポケットくん・・・それにしても、14巻かあ。読んだなあ。
と、いつものように、そんなことにシミジミ。3日かけて読了です。

謎のたまごが光り、ジャンが消えてしまったことから物語は始まりました。
ジャンが消えてしまい、大騒ぎのポケット号の前にあらわれたワニのスピードボート。ワニたちは、ポケットたちを捕らえ、王様と仲間と一緒に食べてしまおうと企みます。王様とは?!ポケットたちは、助かるのか!

いつものように、途中までは、最高に良かったのです。ワクワクして、ドキドキして・・・でも、最後の謎ときがねえ・・・おまけに、今回は、『ポケットにもわからない。わからないときは、うたをうたうにかぎる』なんだもん。そりゃないぜ。
けれど、息子は、きっちり楽しんでおりました。どんな無理やりな展開にも、しっかりとついていく柔軟な頭には、本当に驚きます。
娯楽小説のような楽しさ。この本を一人で読んでいたら、夢中になって20巻まで、一気に読んでしまうんだろうなあ。そんなことを考えてた母でした。


『すてきなあまやどり』

2006-05-20 05:45:53 | 息子と読んだ本のこと・絵本

すてきなあまやどり 』  バレリー・ゴルバチョフ 作

花摘みの途中、通り雨にあったブタくんは、びしょびしょ。大きな木の下で、雨宿りをしたと言うけれど・・・どうして、ぬれてしまったのかな?
木の下に、次々に、とびこんでくる動物たちの様子が、最高にユーモラス。バッファローやら、ワニやら、意外な動物がやってくるのも愉快。最後に用意された、びっくりなしかけにも、大いに楽しませてもらった。
こひつじ文庫さんで見つけ、梅雨の間のお話し会で読めたらと借りてきたのですが・・・小学4年生でも、しっかり楽しめました。一番、おかしかったのは・・・バッファローの団体さまが走ってくる様子を見た息子が、思わず口にした言葉。
「いくらなんでも、ホラふきすぎだろ!」
ホラじゃないっつぅの!突っ込みたいところをグッと我慢。

その時は、もうおかしくておかしくて・・・笑いをこらえるのに必至だった母。
けれど、ふと考えた。小学生にもなると、ファンタジーやナンセンスを「実際には、在りえない」と理解してくる。けれど、想像力が豊かな彼らは、「在りえない」話を、素直に楽しむ心を持っている。存在していたら、いいな。いや、本当に存在してるかも?在りえない話を信じる柔軟な心も、まだ、十分備えている子どもたち。

「みんな騙されておもしれ~」と言った息子も、果たして、「騙すこと」だけを楽しんでたんだろうか?きっと違う。ピッピも違う。たぶん。
うまく言葉に出来なかったけれど、息子の「ドラえもんの学校」ごときのホラは、子どもたちなら、難なく、想像力で受け止めているのかもしれない・・・表紙の中をかけていく、ブタくんの楽し気な顔を見つめながら、ぼんやりと考えた母なのでした。


『ピッピ船にのる』

2006-05-18 05:37:58 | 息子と読んだ本のこと・児童書

リンドグレーン作 大塚 勇三訳 

お父さんとの再会は、すなわち、ピッピが海にもどることを指していました。
悲しみに打ちひしがれるトミーとアンニカ。
盛大に開かれたお別れパーティの翌日、ピッピは、意気揚々と海に向かいます。けれど、トミーとアンニカは、そういう訳にはいきません。
いよいよ、ピッピが船に乗り込もうというとき、とうとう、アンニカは声をあげて泣き出し、涙を我慢していたトミーまでもが、こらえきれずに涙をこぼしました。
さあ、その様子を見ていたピッピは・・・

もらい泣きした母でしたが、なんの、用意されていたのはハッピーエンド。良かったね。息子は、大塚氏の書いた「あとがき」まで、神妙にきいておりました。これだけ、読み込んでいくと、例えハッピーエンドであろうと、そういう気持ちになるものですね。
「あとがき」で、次回作の題名も、しっかりチェックした息子。あまりに「早く借りてこようね~」と、感慨深そうに言うものですから、意地悪して、こんなことを言ってみました。
「ピッピの真似して、お母さんの事を『オマエ』なんて言うから、もう、読みたくないなあ。」
すると、ニコニコ顔の息子が、とんでもないことを言い出したのです。

「それだけじゃないよ!今日なんてね、アメリカでは、ドラえもんのことしか勉強しない学校があるって、友だちを騙したんだから。」
!!!
「も、もちろん、最後に『うそだよ。』って教えてあげたよね?」
「まさか!二人ともね、信じちゃってんの!おかし~」
!!!
動揺を隠せない母。こんなことばかり言っていたら、「ほら吹き」なんて言って、仲間はずれにされるようになるんじゃ・・・
「最後に、ちゃんと言わなくちゃ駄目!」
あまりに真剣な顔の母に、息子は、ビックリした様子・・・。だって、だって。すると、息子は、訳がわからないという顔で一言。
「どうしていけないの?」
ど、どうして?・・・どうして、いけないんでしょう?

リンドグレーンに、宿題を一杯もらった気がするなあ。これは、困った。

 


『ぼくのうちに波がきた』

2006-05-17 14:36:49 | わたしの読書
  ぼくのうちに波がきた
キャサリン・コーワン文、マーク・ブエナー絵、中村邦生訳
今日は、お話し会のサークルの定例会。その中で、好きな本・気になる本を持ち寄って、紹介しあう勉強会がある。今日は、私が、絵本を紹介をする当番の日。
紹介した絵本は、『ぼくのうちに波がきた』。岩波書店から出版されている、スケールの大きい、不思議な魅力たっぷりの本だ。
仲間(といっても、先輩ばかり)も、すっかり、この不思議な世界に惹き込まれたようだったが、紹介した私自身も、久しぶりに読み返して感動してしまった。

海水浴に行き、波を家に連れて帰ることにした少年。少年は、すっかり、波に夢中になってしまう。しかし、そんな楽しい生活は、長くは続かない。
潮の満ち引きのように、気分の変わりやすい波が、荒れ狂い始めたのだ。とうとう手に負えなくなって、少年と家族は、家を出ていくことに。さあ、少年と波は・・・!?

海育ちの私にとって、海は、とても身近な存在だ。
この本を読む度に、海と共に過ごした素晴らしい日々を思い出す。自然の中には、楽しいと怖いが裏表のようにして存在している。
そんな、楽しい思い出と、怖かった思い出が、交互に蘇ってきて、こんなナンセンスな話が、何故か、リアルに感じるから不思議だ。
ちょっぴり怖い、不思議ワールド。空想力豊かな子どもたちは、このナンセンスを、私より、もっと身近に感じるかもしれない。さらなる空想に導いてくれるラストシーンは、必見だ。
息子に読んだのは、2・3年前だったかな?うん。息子とも、また読んでみよう!

『ピッピ船にのる』

2006-05-16 05:51:28 | 息子と読んだ本のこと・児童書

ようやく、終わりが見えてきたピッピ。
前回の反省「おもしろさに負けて、かなり、寝る時間を削って読んでしまった」を考慮し、今回は、時間をくぎって読むことにしています。章の途中でも、容赦なくやめる。息子は、納得できずに暴れまわりますが、仕方ありません。だって、やめられないんだもの

さて、昨晩、ごたごた荘に、大変な大事件が起こりました。
ピッピのお父さんが帰ってきたのです!
知りませんでした~。たぶん、この本までは、読んでいなかったんだな。私。
はじめは、ピッピのホラ話かと思いましたが、いえいえ、ちゃんとお父さんでした。

嬉しさのあまり、お父さんとレスリングをやっちゃうピッピに、息子は、大喜び。
あ~あ。遅咲きの息子は、今が、プロレスごっこ大好きの時期に入っているので(他の男の子は、幼稚園の頃に、よくやっているのを見かけましたが、息子は、その当時、工作・折り紙・泥団子にしか興味がなかった)これは、明日からが大変だと、青ざめてしまいました。
しかも、ピッピに放り投げられて、お父さんが薪箱に頭から突っ込んだりするんですもの。こりゃ、大変だ。
おまけに、これより恐れていた場面も登場。

「ピッピ、おまえ、いまでもしょっちゅう、うそついてるのかな?」とお父さん。
「ええ、ひまがあったらね。それより、じぶんのほうは、どうなの?うそつきにかけては、おとうさんだって、そうとうなもんだったわよ。」とピッピ。
そのやりとりをきていた友だち・アンニカが「嘘をつくのは、いけないことよ。おかあさんがそういったわ。」と、きいてみたところ・・・
同じく友だちのトミーが、「なんだ、ばかだなあ。アンニカ。ピッピは、うそをついてるんじゃない。じぶんのおもいついたことを、うそみたいにしてしゃべってるだけさ。こんなの、わからないとは、おばかさんだぜ。」と・・・。

はい、私、おばかさんです。そうかあ、トミーくん。目からウロコの母でございますよ。けれど、目からウロコが落ちたとはいえ、息子のホラ吹きが、パワーアップしたときに、叱らないでいられる自信は、全くもってない母なのでした。


『対岸の彼女』

2006-05-13 05:10:44 | わたしの読書

角田光代

NHKの番組『ようこそ先輩』で観た角田光代は、小さくて、可愛らしい女の子だった。女の子。そう、女の人でなく、彼女は女の子だった。「小説を書いてみよう」そんな題材で進められた授業は、とても楽しいもので、この人の書く小説を読んでみたい!素直にそう思った。しかし、さすが直木賞作家。図書館で予約して、ようやく我が手元へやってきた時には、放送から、かなりの時間がたっていた。しかも「次に予約が入っていますから」との注文つき(笑)。

主人公の小夜子は、娘を持つ母親。女独特の人間関係が嫌で、結婚と同時に仕事をやめてしまった。けれど、今は、公園での人間関係にストレスを感じる毎日。公園ジプシーとして公園を転々と歩き、雨の日には、公園に行くことから開放され、ほっとする。その娘もまた、友だち関係を作ることが苦手だ。
そんな毎日をリセットするために、まるで、公園を代えるのと同じように、小夜子は仕事を探す。採用されたのは、同年齢の女社長の旅行会社。まかされる仕事は、新規参入するという掃除代行部門だった。
「お掃除おばさん」「君じゃなくても 出きる仕事」旦那にそう言われ、自分自身でも、これが、私の探していたものだったのか?と自問自答する小夜子。けれど、次第に、そこに大切なものを見つけていく。それは、幼い頃から、人間関係を上手に成立させることばかりに悩み、見失っていた自分。

女独特の社会。女独特の悩み。・・・たぶん、そうなんじゃないかと思う。自分と重ねあわさる言葉が、いくつもあって、どきっとする言葉が、いくつもあって。もう何年かしたら40歳に手が届いてしまうという私が、まるで少女みたいな気持ちになっていった。笑ってしまう位に。
「なんのために私たちは歳を重ねるんだろう」小夜子の心の叫びが、大きくコダマする。いつの間にか、少女にもどってしまった私は、自分でも驚くほどに、ぼろぼろと涙を流していた。自分が、小夜子のようだった気もするし、違った気もする。けれど、たぶん・・・背負ってきたもの、見てきたものは同じだ。そうやって、生きてる。女って、最低?
いや、女って最高!ラストで魅せる小夜子の素敵な笑顔と汗に、思わず、大きくうなずいた。

追記・
調べてみたら、作者は私と1つしか歳が違わない!素敵なインタヴュー記事を見つけ、さらに、彼女を好きになった。よし、他の作品も読んでみよう!・・・予約に追われるんだろうけど。


『ピッピ船にのる』

2006-05-11 05:30:53 | 息子と読んだ本のこと・児童書

リンドグレーン作 大塚 勇三訳 
母は、他に、読んでみたい本があったのだけれど、息子が、どうしてもピッピを読むときかない。いくら説得しても駄目。・・・交渉決裂。
仕方ない。こうなったら、ピッピを全巻読んでしまうしかないのだ。
そうして読み始めたピッピは、息子の期待を裏切らないハチャメチャぶり、ホラ吹きぶり健在。はあ。リンドグレーンは、よくもまあ、こんなことを思いつくなあ。しかも、いくつもいくつも。
昨日の物語では、学校の友だちと遠足に行ったピッピ。
せっかくの「怪物の森」を、「怪物なんて本当にはいないのよ。」と、言い切った先生に、猛然と抗議したピッピが印象的だった。そうね。大人って、そういう生き物なのよね。

先生といえば、昨日は、息子の家庭訪問の日。
今年度、ベテランの女の先生から、若い、元気な女の先生にかわった。
昨年度の先生は、私がうっとりしてしまうような、素晴らしい授業をする先生だったから、それは、がっかり・・・.。なにしろ、4月の懇談会の印象では、新しい先生は、よく言われる「友だち先生」。キャピキャピと可愛らしく、大丈夫かなあと、ちょっと心配になったのだ。

けれど、息子は、この先生が、この上なく大好きなようで・・・。
何より驚くのは、息子が明るくなったこと。毎日、明らかに変わっていく。どんどん、元気になり、積極的になり、明るくなる。手に取るようにわかるのだ。
友だちとは、一線をおくような所があった息子だが、なんと、春の遠足では、自ら「遠足係」に立候補した!立候補なんて・・・、始めてじゃないか?
先生が変わって、たかが、一ヶ月。一ヶ月で、ここまで変わってしまうのだ。まったく、純粋に影響を受けてしまうものなんだな、子どもって。
良い方向に影響を受けた息子に、頬をゆるませながら、この力は、悪いほうにも働くのだろうなと思うと、ちょっと恐ろしくなったり。
とにかく、子どもの恐るべしパワーには、当てられっぱなしです。


『掘るひと』

2006-05-10 05:37:10 | わたしの読書

岩坂恵子著

素敵な書評ブログで見つけた本。女性を主人公にした、9つの短編で構成されている。
どの話も、ありきたりで、そのへんに掃いて捨てるほど転がっている、どうでもよい日常。しかし、そのどれもに、いいようのない空虚、孤独がひそんでいる。
特に、題となった『掘るひと』は地味な話だ。物語としては、他の短編の方が、よほどおもしろかったのだが・・・不思議と、最後に心に残ったのは、やはり、この作品だった。

姑と二人で生活する主人公。夫は、単身赴任で、家に帰るのは、たまにだ。
彼女は、生ゴミを捨てる穴を掘ることで、自分の中の穴を確認している。
あるいは、深く、深く掘りすすめる先に、答えでも見つけようとしているのか?大きくなる穴に、快感を覚えているのだろうか?いや、もしかしたら・・・掘り返した土を、自らの心の穴に埋め返しているのかもしれない。

埋まることのない深い穴。他の短編でも、女達は、それぞれに空虚を抱えて生きている。それは、マーマレードであり、たまごやきであり、指輪であり・・・流しの穴だ。そして、どの物語にも共通する、日常にひそむ空虚・むなしさ・孤独。
ああ。きっと、どの物語の女たちも、穴を掘っているのだ。そして、彼女たちの多くが、自分の中の穴に気づいたとき、、、なぜか、ほんの小さな、幸せにも似た感情を抱く。不思議だ。

物語の女たちの中に潜む空虚を見つける度に、自分の中の穴を指でたどっている自分がいる。同じ穴なんじゃないか?どっちが深いだろうか?
一つ一つの穴をたどり、確かめ、深さを量っている自分がいる。まるで、自虐的行為だ。そして・・・本を閉じたときに感じたのは、彼女たちと同じ、ほんの少しの幸せだった。
不思議な本。岩坂恵子。他の作品も、是非、読んでみたい!


『カブトくん』

2006-05-08 05:07:49 | 息子と読んだ本のこと・絵本

タダサトシ 作

読み聞かせサークルの仲間から、紹介してもらった本。
森の中で、大きなカブトの幼虫を見つけたこんちゃん。幼虫は、すくすくと大きくなって・・・ある日、巨大なカブトムシに!
そ、それにしても・・・・。でかい!
カブトくんと名づけられたカブトムシとこんちゃんの、なんとも言えない日常と友情。もう、最高~!息子は、もちろん大喜び!母も大喜び!
けれど、意外にリアルな絵・・・ちょっぴり気持ち悪くなりました。(母は虫嫌い)

ラストには、「本当の家は森なんだね」と、カブトくんと別れる場面があり、虫好きな男の子には、ちょっと切ない。。。また会えるという設定なんですけどね。
我が家にも、越冬したカブト虫の幼虫くんたちが入った、大きな水槽があります。
カブトムシを育てることを商売にしている知人が、プレゼントしてくれたものではありますが・・・息子は、どう思ったんだろうな?

とにもかくにも、カブトくんのおとぼけぶりには、幼い子から小学生まで、もう釘付けになること間違いなし!
期待を裏切らない一冊でした。