ぼちぼち日記

大切な日々のこと

『たのしいムーミン一家』

2006-11-30 05:09:49 | 息子と読んだ本のこと・児童書

『たのしいムーミン一家』
トーベ・ヤンソン作・絵 山室静 訳  


ようやく、読み終わりました!
長かったなあ~。本当に、長い道のりだったあ~

一巻では、全編を通して、彗星を巡る冒険が描かれていたのですが、今回は、[飛行おに]の魔法の帽子を拾ったところから始まり、ニョロニョロの島を探検したり、幻の魚を釣りに出かけたり、妙な言葉を使う夫婦・トフスランとビフスランが登場したりと、様々な冒険と大騒動が詰まった本でした。

それでも、最後には、しっかり!飛行おにも登場して、「飛行おにって、どんなヤツなの?」という謎も無事にとけ、一安心。
とても優しい人で、ちょっとビックリ。息子は一言「鬼じゃないじゃん!」と
でも、ムーミンだからね。鬼が鬼らしくなくても、仕方ないと諦めたようです(笑)
(原語では、どんな単語なのかなあ?それとも、鬼の定義が違うのかしら?)

だいたい、最後の最後に、他人のモノを盗んでしまう癖のある、トフスラン・ビフスラン夫婦が、英雄となって、パーティの主役になってしまうのだから、ムーミン谷の人々の人の良さったら・・・・・。
夫婦は、ママのハンドバックを見つけてくれた英雄として、パーティの主役になるのですが、実は、盗ってしまったバックをママに返しただけなんです。悲しむママを見て、可哀想になってね。
この事実を知っているのは、この夫婦と、作者と、読者のみ!

最初は、ムーミン谷の人々の「人の良さ」に呆れてしまった私。
最高のブラックユーモア?なんて、ひねくれた見方をしてみたのですが、たぶん、違うのでしょうね。
ここでは、何をしたって、何をされたって、許してしまう何かがあるのです。決して、良い人ばかりが出てくる訳じゃない、ムーミン作品。
うぬぼれ屋さんもいるし、議論したがりもいるし、人を不快にさせるような事ばかり言う人もいる。でも、何やかや言って、結局のところ、楽しく暮らしているのです。こんな世の中だったら、さぞかし、素晴らしいだろうなあ。

さあ、トフスラン・ビフスラン語パニックは、これで一段落するでしょう!
次は、図書館に予約していた「名探偵シリーズ」の続巻の予定です。何冊か絵本を読んでからね。


『カポーティ』

2006-11-28 20:15:58 | 映画

日曜日、映画『カポーティ』を観てきました。
もちろん、派手な演出もないし、盛り上がりもない。不気味な程、静かに物語が進んでいきます。そして、トルーマン・カポーティが、一家4人惨殺事件を小説に書くという作業を通して、次第に崩れていく様が、淡々と・・・本当に淡々と、描かれていきます。
正直に言って、
面白かった?と、きかれたら・・・・・?Yesとは、言えない。
でも、つまらなかった?と、きかれたら・・・ きっぱり、NO!と答えたい。
そんな、映画でした。

とにかく、痛烈に感じたのは、
映画を観に行くという目的のために、読了したといっ て言い『冷血』だけれど、映画は、『冷血』の描きたかった深 い所までは、描けなかったんだな・・・と、いうこと。
ある意味、『冷血』の深さ、凄さに、気づかせてくれた映画 だったかもしれません。
まあ、この映画は、『冷血』を映画化したものではないので、それは、求めてはいけないのかもしれないけれど・・・。

小説『冷血』の中には、カーポティの影は、ほんの少しも見つけられません。
それなのに、彼が、深く、深く、この作品に入り込んでいたことが読み取れる。映画を観て、物足りなさを感じ・・・なおさら、そのことに気がつきました。
事件の取材過程は、もっと丁寧に描くべきだったのではないか?それに、犯人の一人に、必要以上に自分を投影していくカポーティを、もっともっと、丁寧に描いて欲しかった・・・そんな感想を持ちました。でなければ、あんな作品は、書けないはずだもの!
あらおかしい。映画を観て、ただ、読んだはずの『冷血』が愛おしくなった。不思議。

映画は、決して、つまらなくはなかったのです。
特に、カポーティの揺れ動く心理を、その表情や仕草だけで魅せてしまう俳優・ホフマンには、もう、脱帽です(彼は、この作品で、ゴールデン・グローブ賞主演男優賞を受賞したとか)。どんどん、崩れていく様とか。もう、すごかった。
彼の演技を見ているだけで、カポーティって、ものすごく寂しくて、孤独で、悲しい人だったんだなあ・・・ということが、ヒシヒシと伝わってきました。

愛も名声もお金も手に入れ、取り巻きにチヤホヤされながらも、結局は、子どもの頃に受けた悲しみと孤独の穴を、埋めることはできなかった。そして、それに気づかせてしまった、殺人犯。
カポーティにとっては、会わなければ良かった、運命の人だったのかもしれない。
その彼が、自分の目の前で死んでいく(絞首刑で)。彼が、この作品後、何も書けなくなってしまった理由が、言葉ではない何かで、伝わって来た気がしました。
他のカポーティ作品を読んでみたいと、思わせてくれた映画でした。

★トルーマン・カポーティに興味のある人、『冷血』を読んだことがある人・これから読んでみようと思っている人に、おすすめの映画かな。(読まないで観たら、どう感じただろう?という興味があります。読んじゃったから、その感想を得ることは、もう出来ないけれど)
また、ホフマンのファンの方は、必見!


『たのしいムーミン一家』

2006-11-27 18:35:04 | 息子と読んだ本のこと・児童書
『たのしいムーミン一家』
トーベ・ヤンソン作・絵 山室静 訳  

遅々として進まない、ムーミン2巻。サッカー中継があったり、お友達との突然の約束が入ったりと、30分読めない日が続いてしまいました。でも、飽きることなく読んでいます!そして、とうとう!!
昨夜、あと2章という所まで進みました。ところが・・・

トフスランとビフスランという夫婦が、ムーミン家に現れたのです。
この二人の言葉が、実に、妙!
「けむりのあるところにゃ、あべものが、たるものよ。」
なんだこりゃ?
私は、読むのに精一杯。ところが、息子が隣で「わかった!」と口を挟んできた。
「これさあ、『けむりのあるところにゃ、たべものが、あるものよ。』だよ、きっと!」

へえ!なんて感心していたら、すぐに、訳者の注意書きがあった。
訳者注---ふたりのことばをとくひみつは、ある文字をいれかえることです。それだけいっておきますから、あとは自分で考えてみてください。
う~ん、気づかなかったなあ。たしかに、母には、注意書きが必要だぁ。
でも、息子には、必要なかったみたい。子どもって、すごい。ぶしつけに出てきた二人の台詞に、簡単に順応できるんだから!!改めて感心しちゃいます。
ただ・・・おかげで、この後の二人の台詞には、すべて息子の通訳が入り始めました。

「だいっていって、はいじょうぶかしら?」
「だけど、もしおかられても、しじけちゃだめよ。」
「だけど、どわい人がでてきて、こなったらどうしよう。」

この台詞、間違えずに読むだけでも大変なのに、その後に、息子の通訳。
一向に、物語は進まず・・・。今日も、最後の章には、行き着きませんでした。
それでも、この台詞の追いかけっこをしているうちに、なんだか楽しくなってきて、本を閉じてからも、トフスランとビフスラン言葉ごっこ。

「ふやくトイレに行って、はとんに入りなさい!」
「はしたは、あれるといいね。」
息子は、喜んで訳します。
ところが、この言葉、文字として書かれていないと、文を作るのも、訳するのも大変!・・・・・ということに、やり始めてから気づきました。
途中まで言って、あれ、どの言葉の一文字と交換しようとしたんだっけ?と、頭をかしげる母。待ち遠しい息子。
なんだか、大変な作業になってきて・・・すっかり、疲れ果てて眠った母子
ああ、今晩も、トフスランとビフスラン夫婦が待ってるんだなあ。。。

『冷血』

2006-11-24 16:43:37 | わたしの読書

『冷血』 トルーマン・カポーティ

隣町の映画館には、ときに、びっくりするような映画がやってくる。東京の小さな映画館でしかやらないような、そんな映画が。
『フラガール』を観に行ったときに、その映画・『カポーティ』が、やってくることを知った。

トルーマン・カポーティ。
私にとっては、村上春樹が訳さなければ、読むことは、
なかったかもしれない作家。
村上春樹の訳した、〈クリスマス三部作〉と呼ばれる作品の中で、彼は、繊細で、壊れてしまいそうな少年を描いている(私は、この作品が大好きなのです)。
きっと、この少年はカポーティだ。作品を読んでいる間中、ずっと感じていた。映画は、まさに、そのカポーティ、その人を描いた作品らしい。
あの繊細な少年が、再び、私の心を惹き付けた。よし!絶対に映画を観に行くぞ!!

そんな訳で、映画のHPやブログを検索して、ちょっとだけ予習!
ううむ。カポーティは、この『冷血』という本を出版してから、作品を出していないとか(精神も病んでしまったらしい)。。。
映画は、その問題作『冷血』を執筆するカーポティを、描いているのだそうだ。
『冷血』。実際にアメリカで起きた、一家四人の惨殺事件を取材した作品。

そんなに、のめり込んで取材した題材って、何だろう?
取材の中で、執筆の中で、彼の中に、何が起きたんだろう?

そんな興味がムクムクと湧いてきて、映画を観る前に、是非とも、問題作『冷血』を読まなくては、と心に決めた。
図書館からやってきたのは、ちょうど2週間前。開いた瞬間、メマイを起こしそうになった。なんて小さい字!溢れる文字!うわあ。こんな本を開いたのは、何年ぶりだろう・・・

正直に言うと、何度もくじけそうになった。小説と違って、こういった作品は、くじけそうになる落とし穴が一杯ある。おまけに、題材が殺人事件なんだもの。。。憂鬱な気持ちになる。
犯人の屈折した心理状態は、私にとっては、全く理解不能。それなのに、読んでいて、同情しそうになる瞬間が襲ってくる。
淡々と綴られていく中で、事件そのものの残虐性が失われているからなのか?
犯人の一人の身の上に、自分を重ねてしまったというカポーティの想いが、伝わってくるんだろうか?
なんとも言いがたい、不思議な本だった。

それでも、映画の興行期間内に読み終わらないといけない!という脅迫観念が、私を、いくつもの落とし穴から助け出してくれた様で・・・終わってみれば、きっかり2週間で読了!
こんなに、長い時間を本に割いたのは、本当に久しぶりだ!!

それにしても、インタビューした人々を、上手にパッチワークしていく手法は、まさに、巧妙!さすが、天才だなあと唸ってしまう。
ますます、興味が湧いてきた。さあ、どんな人だったのだ?カポーティ。

読了したことだけで、燃え尽きた感もありますが・・・
映画、今週末には、行ってきたいと思います。
ただ、予告編をちらっと見たところによると、カポーティと犯人とのやりとりのシーンもあるような・・・。「羊たちの沈黙」が頭に浮かんできて、ちょっと腰がひけてます(笑)。
サスペンスじゃないって、と、自分に言い聞かせる毎日です!
(そこまでして観たいのかっ、私!と、自分自身に突っ込んだりして


朝焼け

2006-11-21 08:10:14 | つぶやき

 『朝焼け』♪

朝、シャッター(雨戸)を開けるのは、息子のお仕事。
「うわあ!すごいよ、お母さん!!」
息子の大声につられて覗いてみると・・・

お気に入りの(我が家の)シンボルツリーの向こうに、素晴らしい「朝焼け」。
雲がスジ状になっていたので、空には、なんとも不思議な絵が描かれていました。しばし、二人でうっとり。
「これ、写真にとっておこうよ!」
息子にそそのかされ、パチリ。朝早くから、何やってるんでしょうねえ。

この後、日がのぼるにつれ、今度は、霧がたちこめてきました。
まばゆいお日様の光に照らされて、これまた、なんとも言えない不思議な光景。
「今日の空は、まるで、魔法がかかってるみたいだね。」
「すごい、幻覚だあ。」
・・・・・。息子くん、ちょっと違うような・・・。


『たのしいムーミン一家』

2006-11-18 06:31:04 | 息子と読んだ本のこと・児童書
『ムーミン童話全集〈2〉たのしいムーミン一家』
山室 静(翻訳)   トーベ・ヤンソン (著)

いよいよ、二巻目です!
一巻は、彗星を巡る大冒険でした。そして、二巻は・・・

冬眠から目覚めたムーミン・トロールが見つけたのは、黒いシルクハット。なんと、この帽子、中に入れたものを、たちまち、別の姿に変えてしまうという魔法の帽子だったのです。

昨夜は、この帽子の魔法に気づいたムーミンたちが、「ありじごく(という名の生き物)」を帽子に入れて、実験するというものでした。
母としては、
いくら、嫌われ者の「ありじごく」でも、騙して連れてきて、実験に使うなんて、ひどいよ!ムーミン!
なのですが、息子は、とにかく大喜び!うん。息子の方が、正しい楽しみ方なんだろうな。。。なにしろ、恐ろしい姿の「ありじごく」が、弱々しい「はりねずみ」に変わってしまうのですから。
そして、「ありじごく」が逃げないように、帽子の上に重しとして載せた外国の辞書までもが・・・!帽子からあふれ出す、外国の文字たち。
息子にとっては、衝撃のファンタジーだったようです。

アマゾンでこの本のレビューを読んでいたら、この本で人生が変わった!という方がおられました。
なんでも、小学3年生の時に、この本に出合い、そして今、夢を叶えてフィンランドに留学中だとか!そんな人がいるのですね!
本ってスゴイ!子どもの心ってスゴイ!

さあ、この帽子。これから先、どうなるのでしょうか?
これは、恐ろしい帽子だと、ママとパパが帽子を川に捨ててしまうのですが、川の中で、大変なことが始まってしまいます(なにしろ、中に入ったものは、何でも姿を変えてしまうのですから)!
それを知ったスナフキンとムーミン。帽子を拾って、こっそりと隠しました。
始めて、大好きなママとパパに秘密を持つムーミン。そのドキドキ感が、ヤンソン独特のクールな文体の中で、不思議な光を放っています。

そこで、2章終了。ほぅ。とタメイキの母。
私が、親に秘密を持ったのは、いつだっただろう?何だっただろう?
そして息子は?ちらりと息子を見やりながら、そんなことを考えてしまいました。
きっと、私とは違うことを考えているんだろうね。息子くん

山本丘人展

2006-11-16 13:41:39 | つぶやき

先日、知人から、手紙が届きました。彼女は、私に、日本画の美しさを教えてくれた人(彼女は、絵画鑑賞が趣味なのです)。
引越ししてから、なかなか、お話する機会がないのですが、たまに、絵の展覧会のお知らせを下さるのです。これは、もしかして?と思って開いたら、やっぱり!

平塚市美術館で開催中の「山本丘人展」を観に行きましたか?
素晴らしいから、是非、行っていらっしゃい。

平塚市美術館なら、私のドライブコース!
おまけに、この美術館。観客も少なく、ゆったり鑑賞できるのです。(これは、美術館的には、あまり良いことではないかな?)
今日は、仕事がお休み。彼女の手紙に誘われて、早速、行ってきました。

日本画の巨匠、山本丘人。丘人が、東京美術学校在学中に出品した作品から、晩年の作品までが、展示されていたのですが、どれも、素晴らしいものばかりでした。
うん。やっぱり、(知人とは)同じ感性だなあ~と、再確認。

まず、色。
丁寧に作られた丘人の色には、タメイキが出てしまいます。とにかく、私は、色に惹かれるのです。気に入った色を見つけては、何回も巡ってしまいました。
そして、その柔らかな筆使い。
やはり、私は、こういう筆遣いが好きだなあ。ど素人の私が言うのは、おかしいのだけれど・・・。画面から、あふれる温かさ、柔らかさ。斬新とは言いがたいのかもしれないけれど、私は、やっぱり、この日本画独特の温かさが好きです。
丘人には、剛健な筆使いの時代があるのですが、私は、この詩的な、柔らかい時代が好き。もう、うっとりしてしまいます。
もちろん、力強い作品も魅力的です。
「絵は人なり」―丘人氏が言うように、力強い作品群たちもまた、彼の人生、人間性を感じさせてくれるものでしたから。
何度も、気に入った絵を巡って帰ってきました

それにしても、
知人の手紙にもあった通り、この展覧会は、NHKの美術番組で取り上げられたらしく、平塚市美術館らしからぬ盛況ぶり!
私にとっては、この美術館で見る、始めての観客数でした!!(東京の美術館と比べたら、足元・・・いや、爪の先にも及びませんが)
丘人は、大磯に住んでいたとのことですから(そして、平塚の病院で亡くなられたとか)、なおさらなのでしょう。
テレビの力って、すごいのですね。
私も観たかったなあ。再放送、するかなあ。。。?


『おばけえいがのひみつ』

2006-11-15 09:39:57 | 息子と読んだ本のこと・児童書

『おばけえいがのひみつ』
ディビッド・A・アドラー作 かんどり のぶお訳 たるいし まこ絵

謎解きは、いつもに比べると・・・やや、無理がある感じがしましたが、息子は、何も気にならないらしく、大いに楽しんでいたようです。
事件が起こる舞台が映画館ということで、ちょっと大人っぽい雰囲気だったのが、いつもと違ってドキドキしたのかもしれないなあ。
私も、子どものとき、映画に行くってだけで、気分が高揚したものです

さて、息子くん。読み終わった後、背表紙のシリーズの紹介を読みながら、「ああ、あと3冊で、カメラちゃんも終わりだなあ~」とボヤイテいました。
(ミルキー杉山の名探偵シリーズは、残すところ、あと一巻)
他にも、子ども向けの探偵ものってあるのでしょうか?
ちょっと、探してみようかと思います。
さあ、カメラちゃんの残りを予約するまで、ムーミンの2巻に突入です


『誠実な詐欺師』

2006-11-12 14:38:38 | わたしの読書

『誠実な詐欺師』 トーベ・ヤンソン

なんて、静かで、冷たい文体なんだろう。
それは、読んでいる者を、静かで、冷たいフィンランドの森へと誘う。深い深い森。そして、暗雲漂う長い冬。文章から漂う雰囲気で、これだけ魅せる作家がいるだろうか?もう、タメイキしか出ない。
図書館から借りてきた文庫本の背表紙には、この作品は、ポスト・ムーミンの作品の中でも、No.1の傑作と謳われているが、まさに、その言葉通りだった。

冷静で、数字に強いカトリ・クリング。彼女は、決して嘘をつかない。その代わり、ヒトカケラの融通さも持ち合わせず、愛想もなく、誰かに、媚を売ることも追従することもない。
村の人々は、そんな彼女を恐れ、軽蔑し、けれど、ある意味で一目置いている。
カトリは、一つの夢を持っていた。知恵遅れの弟・マッツに、彼が設計したボートを持たせてあげること。その望みを叶えるために、カトリは、ある女性に近づく。
目をつけたのは、兎屋敷に住む老画家アンナ・アエメリン。
お金に不自由することなく、穏やかに暮らしてきたアンナ。自然を愛し、空想を愛する彼女は、世の中の醜さのようなものに目をふせて、生きていた。お人よし、純粋無垢。しかし、言い換えれば、おめでたい人間。曖昧でルーズな人間。

そんなアンナに近づき、まんまと共同生活をすることになったカトリ。そして、彼女の財産を管理し、利益をあげていく。その利益は、カトリの正当な配分となるはずだった。決して嘘はつかず、騙さず、いたって誠実に、カトリは、夢の実現にむけて着実に進んでいくのだ。
ところが、そうは上手く運ばない。数字しか信用しないカトリとの生活の中で、アンナの精神が徐々に破壊されていくのだ。
曖昧さが排除されることにより、明らかになっていく、今まで見えなかった人々の醜さ。自分の愚かさ。アンナは、誰も、何もかも、信じることが出来なくなってしまうのだ。そして、今まで見えていた自然の美しさ、彼女しか描けなかった北欧の森の土壌を失ってしまう。

一方、カトリもまた、冷静さを保つことが出来なくなっていく。壊れていく二人の女性。

淡々と語られるその文体が、恐ろしさをひきたてる。私は、その恐ろしさに何度も息を飲み、物語の中の張り詰めた空気に耐え切れず、何度も本を閉じた。
物語の舞台は、北欧の冬。厳しく、深く・・・すべてを飲み込んでしまうような冬が、二人を象徴している。
しかし、冬は、いつまでも続かない。すべてを失ってしまったような不気味な静けさの下で、確実に、生命は育まれているのだ。息をひそめ、それでも確実に息づいている。

花柄の兎に象徴されるアンナの心。いつもカトリの隣にいる狼犬に象徴されるカトリの心。
アンナの中で、何が起こったのか?カトリの中で何が起こったのか?
アンナは、トーべ・ヤンソンその人を象徴しているのだとか。
彼女の中で、何が起こったのか?
ムーミン大作の途中頃から、大人を主人公にした作品が目立つようになったという、彼女の執筆の歴史。そんな、「あとがき」を読んでいたら、ますます、トーベ・ヤンソンという作家に興味が湧いてきた。他の作品も、いつか是非、手にとってみたい。
そして、この本。またまた、いつか購入したい一冊になった。


宿題バトン

2006-11-11 14:34:31 | つぶやき

今日は、息子の学校のPTA主催のお祭り。
私は、午前中限定のサポーターとして(午前と午後とわかれてサポーターが手伝います)少しだけお手伝い。息子は、朝から、近所の友だちと遊びに行ったまま。楽しいんでしょうね~帰ってきません
まあ、お小遣いは渡してあるし(学校主催なので、なんでも100円!)、大人の目がたくさんあって安心だし、こんな土曜日があっても良いですね。そんな訳で、バトンに挑戦してみることにしました。


先日、「ポッケにいつも絵本」のsinさんから、宿題バトンをいただきました。
このバトンのルールは
・回してくれた人から貰った『指定』を、【 】の中に入れて答える。
・また、次に回す人に『指定』をすること。
・そのお題は、貰った『指定』から、一文字を変えること。
なんだそうで、私がいただいた お題は【名物】。え?名物?
名物といえば、東京の「ひよこ」?ということで、どうやら、私の発想は、食べ物限定になりそう。基本が食いしん坊・・・しかも、先日、産婦人科のお医者さまに「やんわりと」体重を注意されたばかりなので、今の私、食べものへの思いが、普通の人と違うかもしれません。
胸焼けがした時点で、読むのをおやめ下さい。

1.最近思う【名物】
私の実家は、小さな港町。ここの「ひもの」は、絶品です。
実家といえば、一時期、私は、この人口1万人にも満たない小さな田舎町が嫌で、ずっと、東京に憧れていました。とにかく、町を出てみたかった!(実際は、東京を跳び越して、千葉で一人暮らしでしたが)
でも、40歳を目前にして、その小さな町が、とても愛おしい。とにかく愛おしい。
今は、すぐに実家に帰れる場所に住んでいますが、いつか、故郷に帰りたいなあと、想いはつのる、30代後半なのです。

2.この【名物】には感動!!
北海道に行ったときに食べた「とうもろこし」。
 もう、全然違うんですよね。甘さが!ああ、また食べたいっ
北海道で食べた「ジンギスカン」。
 やわらかさが全然違うんですよね。やわらかさが!
秋田で食べた「きりたんぽ」。
 あの寒さの中で食べると、たまらなくおいしい
飛騨で食べた「ほうば味噌」。
 思わず、おみやげに「ほうば味噌」セットを買ったっけ
京都の「湯豆腐」。
 とにかく、おいしかった!哲学の道のあの店。まだあるかな~?
  ・・・湯豆腐は、名物?ま、いいか。
広島の「カキ」。
 「カキ」は、大嫌いだったんです!
 でも、広島の「カキフライ」を食べてから、大の「カキ」好きに
岩手の「冷麺」。
 帰ってきてから、スーパーで買ってみたけれど、あの味は、再現できませんっ!
台湾で食べた「屋台料理」!
 とにかく、太りました~あのときは!
 中でも、一番おいしかったのは、ビーフン!あの独特の香料は、言葉で表現できませんっ。

思い出せば、他にも色々・・・。ああ、感動の「名物」たち!嫌いなものでも、挑戦してみようという気にさせてくれる「名物」!また、あの場所に行ってみたいと思わせてくれる「名物」!いいですね。おいしいものって
旅行が大好きな私の思い出は、名物料理で彩られております。

3.直感的【名物】
直感的「名物」???
私は、ビールが大好き。大好物!どこに旅行に行っても、酒屋だけは、直感で探し当てます
こんな直感で良いですか?)
それにしても、ご当地ビール。何故か、おいしく感じられます。どうしてでしょうか?

4.好きな【名物】 
こもも家の名物料理を一品。「ジャガイモのコロッケ」!ただの、コロッケ!
自分で作って、自分が、一番よく食べます!
お友だちを呼ぶとき、運動会、誕生会。いつでも「コロッケ」です
味に保障はないけれど。とにかく、いつでも作るので、名物ってことで。

5.こんな【名物】は嫌だ!
名物を食べるのが大好きなので、「こんなの嫌だ!」というのは、ないのですが・・・
これ、もう勘弁!という名物は、ありました・・・
ごめんなさい伊豆の「わさびソフトクリーム」は、嫌いです。ごめんなさい~。
あと、千葉の「みそピー」も・・・。わさびもピーナツも好きなんですが、どうしても・・・。

6.この世に【名物】がなかったら・・・ 
人生の楽しみが半減します。嫌いでも、なんでも、名物は、楽しい!

7.次に廻す人、5人(『指定』付きで)   
これも、ごめんなさい
実は・・・私、意外に内気な性格なので、指定できませんでした。
「ねこ→寝る→ねぎ→鍵→金→ネタ→ 誕生日→時間→絵本→映画→名画→名物」
と、つないでこられたみなさま。本当にごめんなさい

でも、名物の次って、何がくるんでしょうね?「名コンビ」?とかかな?
「名コンビ」で、書いてみても良いとおっしゃられる方がおられたら、お願いいたします。


『名前のない人』

2006-11-10 19:49:53 | 息子と読んだ本のこと・絵本

『名前のない人』
クリス・ヴァン・オールズバーグ作
村上春樹 訳

rucaさんのブログで見つけた本。

夏から秋へと移り変わる、そんなある日のこと。農夫の車にひかれた一人の男。農夫は、男を家に連れて帰るのですが・・・。その日以来、男は、記憶を失ってしまうのです。
男と農夫一家は、どんどん親しくなっていきます。男の記憶は、なかなか戻りませんが、幸せな日々は、それでも良いのでは?と思わせてくれます。
けれど、男は、気づいてしまうのです。
秋が・・・秋の訪れが、農夫の家の手前で止まってしまっていることに


オールズバーグの写実的な絵は、いつ観ても魅力的。特に、人物の表情の豊かさといったら!本当に、絵に惹き込まれてしまいます。
(文字を追わずに、絵を観ているだけでも楽しめるのが、オールズバーグの絵本のすごいところです。)

そして物語。
表紙の色が深い緑色だったこともあり、物語が交通事故の場面から始まることもあり、最初は、恐い話かと思っていたのですが・・・。読み終わると、何故か、温かい気持ちになり・・・そして、ちょっぴり切なくなる。そんな物語でした。
何の答えもない物語なので、きっと、読んだ人それぞれの解釈が、あるのだろうだろうと思います。男は、秋の妖精だった?北風だった?
そんなことを色々考えてみたのですが、1つの結論に達しました。そう。何の解釈もせず、この物語の余韻に浸るのが一番良いのでは?
何も考えない。ただ、この切ない想いを感じたままでいる。
私の頭の中の、美しい秋の風景を思い描いてみる。そして、想像してみる。白く曇った窓ガラスに、いつか・・・そっと、メッセージが書かれているかもしれないってことを。

息子は、この物語の余韻を、楽しむことが出来ただろうか?
まだ、この本を楽しむには、早すぎたかもしれない?
熱心に本を覗き込んでいた息子は、「意味がわからない」とも、いつものような自分の解釈も、一言も発せず。
意味がわからなすぎて、何も言えなかったという可能性もあり。
・・・・・でも、息子なりに何かを感じたのかもしれない。そんな気もするのです。


『大あたりコインゲームのなぞ』

2006-11-09 17:02:55 | 息子と読んだ本のこと・児童書
『大あたりコインゲームのなぞ』
ディビッド・アドラー作
かんどり のぶお 訳 たるいし まこ 絵

カメラちゃんシリーズ再び。
今回も、子どものための推理小説としては、もう、言うことなし!
学校のバザーのゲームコーナーで、大当たりが続出。どうも何かがおかしいぞ?
カメラちゃんの推理が始まります。これが、何が起こっているのか?かなり読み進めないとわからない展開。
大人の私には、何が起こっているのかも、犯人が誰なのかも、最初から、わかってしまうのですが、息子は、全くわからないらしく、真剣に聞き入っていました。
30分、30分の読み聞かせで、二日間。あっという間に読了です。

またもや、失敗

2006-11-08 19:21:11 | つぶやき

昨日、今月の産科検診に行ってきました!
今日こそは、早く終わらせるぞ!と意気込んで、息子よりも早く家を出発!
病院には、8時前に到着・・・・・が、なんと、採血の整理番号、すでに625番!採血室は、椅子に座れない人で溢れかえっていて、まあ、すごい状態でした。
お、お、おそるべし大学病院

それでも、なんとか採血とエコーを9時に終わらせ、ようやく、産科受付!すぐに、名前を呼んでもらったのですが・・・
主治医の先生は、今日も、真面目にきっちり問診をしてくれ(これは、嬉しいことではあります)、おまけに、やっぱりカルテやパソコンへの入力が遅く・・・エコーを受けるために寝た診察台の上で、待ちきれない状態の私。エコーの後は、内診もするということになったのですが、ここで、ちょっとしたトラブル発生で、また時間がプラス・・・。

看護婦さんは、エコーのベットの上でも、内診台の上でも、そのあとの保健指導のときにも、ずっと「ごめんなさいね。」「ごめんなさいね。」の言いっぱなし。
ああ~!やめて~
私のリスクが高いから、診察に時間がかかるのだと、信じようとしてるんだから、そんなに謝られたら、先生のこと、信頼できなくなっちゃうじゃないの~!!
心の中で、大きく叫んでしまいました。。。

が、前回よりも余裕が出てきた私は、今回も、赤ちゃんのことを「赤ちゃんについては、何の問題所見もありません」としか言ってくれなかった先生に、大きさを質問することに成功!
ただ今、頭部が4センチで、月齢どおりの大きさなんですって。・・・・でも、それしか言ってくれなかった。
(他の病院では、聞かなくたって、頭からお尻までが何センチって教えてくれたんだけどなあ。ああ、比べちゃ駄目!ここは、リスク専門病院なんだから!)
そうそう、看護婦さんを笑わせることにも成功しました。前回よりもベテランだったからかな。看護婦さんも、最後には、毒舌で返してくれて、二人で、ツッコミ入れあいながら
の入院説明となりました
やっぱり、産婦人科なんだから、笑顔は必要ですよ~

ただし、残念ながら、真面目な若先生(主治医)を笑わせることは、今日も失敗。
「残念ながら、前置胎盤です。早産の恐れがあります。」
と、この世の終わりのような言い方をした先生に、
「あら~。紀子さまと同じですねっ
と、笑顔で返したのですが、ニコリともしてくれませんでした。
当たり前と言っては当たり前?でも、前回、その恐れについては、散々説明されたから、もう、覚悟できてたんだもの。死ぬ覚悟さえ、しちゃったんだからね。前回。

とにもかくにも、やっぱり、先生をニコリとも、させられなかった。
そして・・・病院を出たのは、11時。診察時間を短縮するという企みも、たった1時間の短縮という結果でした。おまけに、先生の所で滞ってしまったから、読書すら出来なかったし。
あ~あ。初診じゃないのに、3時間かあ。来月から、月に2回になるのに、これじゃあ、先が思いやられるなあ。

ちなみに、今回もらった、赤ちゃんのエコー写真。なんと、赤ちゃん、あかんべ~して映っていました。ほとんど会話もない、緊張のエコー室ですが、さすがに、この「あかんべ~」写真の説明をするときは、検査技師さんも、思わず笑っていました。赤ちゃん、私よりもやり手!?
とにかく、来月も、頑張ろう


『なんだかんだ名探偵』

2006-11-07 13:14:00 | 息子と読んだ本のこと・児童書
『なんだかんだ名探偵』(偕成社)
杉山 亮・作
中川 大輔・絵

隣町の図書館からやってきた、名探偵!
読んでいないと思われる巻をパソコン予約したのだけれど、息子に「これ、読んだことある!」と言われてしまいました。
どうやら、以前、図書館で一人で読んだ巻だったらしい。がっかり・・・
でもね、今日は何読む?と聞いたら、この巻を選んできた。
「俺は、もう読んだからね、答え、知ってるんだけどね。お母さんが当てられるかね、ほら、知りたいからさ。」
だって!言ったな~!全部当ててやる~!

と、大人気ない母は、かなり気合を入れて読み始めました。
おかげで、読んでいる途中で、勝手にページを戻ったりもしました。読み聞かせとしては、あるまじき行為であります。
でも、そのおかげでしょうか?
3話中、2話で、推理がピタリと当たりましたよ!おっほほ~!
ということで、息子は、ニヤニヤするばかりの夜でした。              

『ロスチャイルドのバイオリン』

2006-11-07 13:00:13 | わたしの読書
『ロスチャイルドのバイオリン』
アントン・P・チェーホフ作
イリーナ・ザトゥロフスカヤ絵
児島 宏子 訳

昔、昔。ドストエフスキーに挫折してから、「ロシア文学=暗い・難しい=私には無理」という勝手な方程式が、頭に刻み込まれてしまった。
(『カラマーゾフの兄弟』を、借りては返している姉を許してね、妹よ。)
けれど、いつもおじゃましている書評ブログで、この本を見つけたとき・・・
どうしてか、挑戦してみたくなった。表紙の絵にも、何故か惹かれた。

小さな町で棺桶屋を営むヤーコフ。貧しい彼は、その仕事の傍ら、小さなオーケストラでバイオリンを演奏し、わずかな収入を得ていた。彼は、優秀なバイオリニストだったのだ。
けれど、彼は、凝り固まった偏見と、人生における損失の勘定のおかげで、バイオリニストとしての才能を開花させることもなく、人間としても、最悪の人生を送っていた。
ただ、尽くすだけの妻を思いやることもなく、毎日のように、莫大な損失を計算しては嘆き、オーケストラのフルート奏者・ロスチャイルドを、ユダヤ人だというだけで蔑んだ。
そんなヤーコフが、妻の死をきっかけにして変わっていく。
・・・・そして、訪れる己の死。
憎しみや悪意がなければ、互いに睦み合え、大きな利益を得ることができたであろう。そのことを、死を間近にして、ようやく悟ることができたヤーコフ。
そして、ヤーコフは、変わるのだ。死の直前に変わるのである。

自分にとって本当に大切なものは、何だろうか?
日々の忙しさで見失っているものは、ないか?
マイナスの部分を見つけては、その損失を嘆いてばかりいないか?

どうしようもないもののように映る、ヤーコフの人生。けれど、人は、誰しも、そういう部分を持ってはいないか?
けれど、人は変われるのだ。いくつになっても、どんな状況であっても、必ず、変われる。そして、誰かの中に、明るい未来を残して、死ぬことができるのだ。
絶望と、人の心の醜さを描いたような、この小さな物語は、最後に、明るい希望の光を灯して終わる。

絵本という形をとるこの物語は、まさしく、大人のための絵本。
あっという間に読んでしまったけれど・・・・・何度も何度もかみしめて読んだら、また、新しい何かを見つけられるような気がする。そんな不思議な、小さな物語だった。
返す前に、もう一度読もう。