ぼちぼち日記

大切な日々のこと

『風の靴』

2009-06-26 13:16:49 | わたしの読書

『風の靴』 朽木祥

中学生になった息子が、
「中学生になっても、感想文の宿題があるんだって~」と、ウンザリ顔で言った。
「ルパンもランサムも、書きにくそうだから、何か良い本ない?」
あー。入学式が終わったと思ったら、もう夏休みなんだねー。早い、早い。

本の相談をされて、正直、嬉しい母。
でもね、感想文が書きやすそうな本って、どんなのだろう?
逆に、ルパンとかの方が、書きやすいかも?なんて思ったりもする。
だけど、自分の好みの本以外を読むチャンス
是非、是非、紹介させて頂きましょう

そんな訳で、借りてきたのは『風の靴』。ずっと読みたかった本。
中学受験に失敗した、中学一年生の男の子の家出の話。。。
これが、ちっとも暗くなくて、清清しいのです。
主人公の悩みが、もっと身近に感じられるであろう、同じ中学一年生が読んだら、
そんな風には、思えないかもしれないけれど・・・。
そんな頃を懐かしく思い返すことができる大人には、その悩みさえが、まぶしく感じられました。

良かった。とても良かった。
読んでいる間中、そして、本を閉じてからもずっと、清清しい風を感じることができる
そんな物語でした。ラストは、涙、涙。
感想文を書きやすいか?と、問われたら、?????
逆に、主人公が近すぎて書きにくいかもしれない。
でも、おじいちゃんの残してくれた言葉が、どれも素敵で、これを読んだ夏は、
特別な夏になるような、そんな気がしました。それに・・・
まだ、裸足のままの風を感じることが出来る人が読んだら、どんな風に感じるのだろう?
そんな想いもあって、一冊目、決定デス。

あと、二、三冊読んでみたいと思っている本があるのだけれど、その前に、予約が
まわってきた『殺人者の涙』を読んでしまわなくては。
いくら待ってもまわってこない予約が、こういう時に限って、まわってくるのです(笑)
この勢いで、読了できると良いのだけれど。

息子の中学校は、今日で期末テスト終了。
昨晩、息子は「もう、頭が爆発するー!」と、闇に向かって叫んでいました。
ああ、頭が爆発する前に終わって、良かった、良かった。
中学生のみなさん、お疲れ様でした。これからの方は、頑張って下さいね。

そして、テストが終わった途端、部活です。
今日からお弁当。明日、あさっては、出稽古で、6時30分に集合だとか。
せっかくテストが終わったのに、のんびりできない中学生。
若くなければ、やってられないねー。頑張れ、中学生!
明日、5時起きの母も、頑張ります


『そこまでの空』

2009-06-24 15:43:51 | わたしの読書

『そこまでの空』 安野光雅 俵万智

俵万智さんの短歌が好き。
31文字の中に、ドキッとするような輝きがかくれている。
ハッとさせられるたび、ああ、この人の短歌は素敵だなあと思う。
正直、安野さんの絵は、イメージじゃなかった。
安野さんの絵は、もちろん好きだけれど、
俵万智さんの短歌は、写真とか、原色がパッと目にとびこんでくるような
ポップアートのようなものをイメージしていたから・・・
でも、そんな思い込みは、思い込みで終わりました。とても良かった。

『あい』という言葉で始まる五十音だから傷つくつくつくぼうし

一首目から、ガツンとやられてしまった。
さりげなく添えられた安野さんの絵が、また、良い。
そしてやっぱり思うのは、やっぱり俵万智さんの短歌が好き♪
子どもの頃からの趣味で、未だに、詩や短歌を書くのだけれど
一生のうちで、一首でも、彼女のような短歌が作れたら、どんなに幸せかなあと思う。
その短歌を一首もって、天国に渡るのになあ。(・・・行けますよね?)

男とはふいに煙草をとりだして火をつけるものこういうときに

「もし」という言葉のうつろ人生はあなたに一度わたしに一度

村上さんの小説の余韻に浸っていたくて、しばらくは、何も読まないでいようと思って
いたのだけれど、
息子に、
「夏休みの読書感想文を書くための本を紹介して~。ルパンやツバメ号じゃ、
ちょっと書けそうにないから~。」
とお願いされ、図書館に。そのために行った図書館で、手にしたのがこの本だった。
気持ちの切り替えには、ピッタリの一冊だったな。
特に、好きな歌が、記した3首。何度も、繰り返して読んだ。

さて、息子くんに、何を紹介しようかと頭を巡らせ、読んでみたかった本を何冊か借りてきた。
まずは、一冊目『風の靴』。すでに、スラスラと序盤を読み終わりました。
とても、いいです。


『1Q84』

2009-06-18 14:56:37 | わたしの読書

『1Q84』 村上春樹

なかなか、物語の世界に入り込むことが出来ず、辛いスタートの読書でした。
たぶん、雑念が入りすぎて、物語に入り込めなかったのだと思う。
雑念の訳。まず、性的描写が多すぎる。
(のちに、この物語において、大切な要素であることに気づいたけれど)
社会問題が盛り込まれすぎている。
DV、宗教、正義という名の元での殺人~あまりにも盛り込まれすぎて、何の味を
味わえばよいのか、途方にくれる。

そしてなにより、現実の社会と結びつきすぎている。
ニュースやワイドショーの話題と、あまりにダブってしまい、どうしても落ち着かない。
現存の(あるいは、していた)カルト宗教やコミューン?の名前が、頭から離れない。
あまりに、現存の団体や事件と結びつきすぎていて、そちらに気が散ってしまう。

・・・・・・・・・・。
そんな訳で、最初のうちは、物語に入り込めない自分との戦いのようだった。
もちろん面白いし、本を置こうとは思わなかったけれど、いつものように読めない
もどかしさが、自分を苦しめる。

ところが、突然、全てが、自分の中に上手く取り込まれていった。
そこが、どの場所だったのか?どうしてだったのかわからないけれど、ある地点を
境に、自分の中に取り込まれた物語が、すうっと流れ出したのだ。
そこからは、あっという間だった。そして、タメイキ。タメイキ。涙。

春樹さんの小説を読んで泣いたのは、ものすごく久しぶりのような気がする。
何かが悲しくてとか、辛くて・・・ではない。
ものすごく大切ものを見つけたときの、触れたときのキュンとした胸の痛み。
それが、涙になったような感じだ。
もしかしたら、自分でも忘れてしまっている「心の奥にしまわれた何か」に、一瞬、
触れてしまったのかもしれない。
その涙の瞬間からずっと、「私の心の底に隠れているのは、何だろうか?」
そんなことを、ずっと、考え続けている。
空気の中から、糸を紡ぎだしてみたい衝動にかられる。

性的な行為の扱われ方については、最後まで、やはり、私の価値観の中では、到底
理解できないものだったし、それに対して、違和感がなかったか?といえば、嘘になる。
でも、やっぱり、面白かった。面白かったのだから、仕方がない。

今、もっと読んでいたいという気持ちを持て余しているけれど、でも、これで良いのだと思う。
実質的にも、主婦業に支障をきたし始めていたので、この位で終わってくれないと
困ったことになるし・・・・・・・・・
煮物を少し焦がしてしまったり、平日だというのに、1時半まで読みふけっていたり。
(娘が夜泣きしてくれて、ハッと我にかえったのでした)
これが、あと3日続いていたら、旦那さまに意見されていただろうなアブナイトコロダッタ

村上春樹の小説が、やめられないのは、この麻薬みたいな(やったことないけど)感覚。
終わった後の、この無力感。宙に浮いた感じ。
昔は、読み終わった後が辛くてたまらなかったけれど、最近、実は、それが快感なのだということに気づきました。
今なら、たぶん、月が二つ見える気がするな。


『ながいながい旅』エストニアからのがれた少女

2009-06-13 00:35:58 | わたしの読書


『ながいながい旅』エストニアからのがれた少女
絵・イロン・ヴィークランド 文・ローセ・ラーゲルクランツ 訳・石井桃子

アストリッド・リンドグレーンの写真集と共に借りてきた絵本。
アストリッドの作品の多くにに、イロン・ヴィークランドという画家が挿絵を描いています。
ああ、あのロッタちゃんの頑固で愛らしい顔!
彼女がどうして、絵を書くようになったのか・・・
その訳が、その生い立ちが、この絵本に綴られています。

切なくて、悲しい、少女の物語。
この地球から戦争がなくなる日が、いつか、きっと訪れると信じたいと
願わずにはいられませんでした。
どうかどうか、小さな女の子が(男の子が)、こんな悲しみを背負わず、
平穏に、楽しく、遊んで!暮せますように。

写真集で、イロンとその犬の写真を見つけたときは、感激しました。
写真集とともに手にすることが出来て、とても幸せです。


『愛蔵版アルバム アストリッド・リンドグレーン』

2009-06-13 00:27:44 | わたしの読書


『愛蔵版アルバム アストリッド・リンドグレーン』
ヤコブ・フォシェッル 監修
石井登志子 訳
岩波書店

見ごたえのある写真集でした。このボリューム!すごいです。
エーミール、ピッピ、カッレ。私と息子
が読んだアストリッド・リンドグレーンは、
そんなに多くはないけれど、それでも息子は、好きな作家は?と尋ねられれば、
必ず、「リンドグレーン!」と答えます。(たぶん、今も)

私たち親子にとって、大切な宝物・アストリッド・リンドグレーンの作品たち。
ああ、あの作品は、この人でなくては、生み出すことが出来なかったのだなと
大きく納得できる写真集でした。
両親の恋愛から始まって、彼女の生涯を丁寧に綴る写真集。
結婚したいとも思わない男性の子どもを身ごもったことや、優秀なキャリアウーマン
だったこと、政治や子どもの人権活動にも力を注いでいたことなど、知らないことが
たくさんあって、アストリッド・リンドグレーンという一人の女性に、すっかり魅了され
てしまいました。

一番心に残ったのは、遊びの章。
冬。息子さんとダンボールで、そり遊びをしていて、なんと、お尻に穴をあけてしまい
帰り道、息子さんは、お母さんの後ろにピッタリくっついて帰らねばならなかった
というエピソードには、思わず、声をあげて笑ってしまいました。
遊んで、遊んで、遊んで!遊ぶことが大好きだったアストリッド・リンドグレーン。
作品の中に登場する遊びも、ほとんどが、彼女が、子どもの頃に実際に遊んでいた
ことそのものなのだそうです。
現実の聖像争奪戦。なんて、楽しそうなんでしょう!!

「今までの人生はずっと、かなり面白かったと思うの。でも、一番面白かったのは、
子どもの頃。それは否定できません。」
そしてこの子ども時代を、横路媚やインスピレーションの泉としてアストリッドは
いつもそばに携えていた。この国のほとんどの読者は、ピッピの“生命の丸薬”
になんの疑いも持たない。
高齢になったアストリッドは、満足そうに打ち明けたそうである。
「何度も危ない目にあったわ。」

彼女の作品すべてに流れているメッセージ。それは、たった一つなのかもしれない。
子どもたちよ、たくさん遊びなさい!
豊かな子ども時代が、豊かな心を育み、それは、豊かな智恵と想像を生み出す。
そして、様々な困難に立ち向かう盾となり、槍となる。
私たち大人にできることは、そんな子どもたちを、ただ、見守ってあげることだけ。
いつでも、どんなときでも、安心して帰ることができる場所であること。
ただただ、胸に深く刻みました。

自分では、とても手が出ない高価な写真集。
貸して下さった図書館に感謝。
でも、この内容でこの値段は、かなりのお値打ちだと思うのでした。


雨・雨・あめ

2009-06-09 13:34:06 | つぶやき



雨、雨、あめ。
大好きなお散歩が、お預けになる日が多いので、コーギーの
大くんは、少し、欲求不満気味。娘も、なんだか、イライラです。
わかりやすい人たち。

今日は、長女の命日で、やっぱり、どんよりお天気でした。
あの日から、もう、何年もたつというのに、変わらず覚えていてくれる友人たち。
家の中が、素敵なお花でイッパイです。嬉しい。

一年、また一年と過ぎ行く日々。
あの時の痛みは、まだ、変わらずにここ(心の中)にあるのに、
少しずつ、悲みが、薄れているようです。
あの小さな愛しい人がいない日々に、慣れてしまったという事実。

そんな自分に腹を立て、キリキリと心が、きしむときがあります。
でも、この日に変わらずに届けられる花たちが、
「大丈夫。あの子は、確かに、この場所にいたよ。」と、そっと、ささやいてくれる。
そして、涙がこぼれる。ああ、良かったと、心から思う。

一人でだって生きていける強い人だと、言われたことがあり、
自分でも、そうだなと感じることもあるけれど、
やっぱり、誰かが傍にいてくれるって、素敵なことなんだなと、心から思える日。
みなさん、どうもありがとう。

 『また あしたね』 きたやまようこ
長女の一番のお気に入りだった絵本。
お古を頂いたので、最初から、ボロボロでしたが、ハカイダーのちゃんが
とうとう、先日、破いてしまいました。
残念ながら、もう、絶版なのだそうです。

みこちゃんは、遊んでいた友だちと、「また あしたねー」と言いながら、別れます。
何度も「また あしたねー」を繰り返し、とうとう、ねこちゃんと二人だけ。
でも、みこちゃんと猫ちゃんは、一緒のおうち。
「ねこちゃんと みこちゃん、いっしょのおうちでよかったね。」
と言う、みこちゃんのページが、大好きでした。

「また あしたねー」と言えることが、どんなに大切なことか。
この絵本を読むたびに、ハッとさせられます。
どうして、オムツがはずれないのかしら?とか、友だちとうまくやってほしいとか、
もう少し、良い成績とってきて欲しいなとか、そんなことでイッパイイッパイになって、
つい、一番大切なことを忘れてしまう、駄目母ちゃんです。

大切なこと、いろいろ。
いつも思い出させてくれる、お姉ちゃんに感謝の日。


『サーカス象に水を』

2009-06-03 12:16:05 | わたしの読書

『サーカス象に水を』 サラ・グルーエン 川副智子・訳

93歳のジェイコブが暮している老人施設の近くに、サーカスがやってくるところ
から、物語は始まります。
若い頃の思い出と、老人施設での生活が、交互に描かれ、進んでいく物語。
切なくて、恐くて・・・・・恐くて、恐くて。
こういう小説、久しぶりに読んだような気がします。

若きジェイコブが、
「両親を亡くしたことで、自暴自棄になって、大学(獣医学科)の最終試験を白紙で提
出、さまよい歩いたあげく、サーカス電車に転がりこむ」
という、最初の最初の展開から、これから、悪いことが起こるのだという不安が、
容赦なく襲いかかってきます。
何と言っても、転がり込んだ先が、サーカス。。。ですから

サーカスの描写が、また、凄いのです。
おかげで、読書をやめて布団にもぐっては、サーカスの怪しい光景が頭に浮かび、
寝付けない夜を、何日も過ごしました。
それはまるで、悪いお酒でも飲んだような感覚。
何か、悪いものを見てしまった、そんな胸がムカムカするような感覚。

老人施設での生活も、また、しかり。
どうにも出来ない腹立たしさ、無力感。これに、叩きのめされるようでした。

正直に言えば、こういうタイプの小説は、嫌いです。
子どもの本でも、大人の本でも、明快なハッピーエンドが好き。できたら、その過程
も、明るく、なんの不安も抱かずに進めるほうが好き。
でも、この本は、読まずにはいられませんでした。
恐いけれど、やめられない。先を知らずには、いられませんでした。

まさに、波乱万丈なジェイコブの人生。
あとがきで、訳者の方が書いておられたのだけれど、この若き日のジェイコブの物語
を「動」とすれば、老人施設での晩年のジェイコブの日々は、「静」。
この「動」と「静」の繰り返しが、物語を、いっそう魅力的に仕上げています。
そして、最後の最後。ラストが、素晴らしいのです。

「静」が、一気に「動」へと変わる瞬間。
あまりにも一瞬の出来ごとだったので、ピエロに化かされたかのような、そんな錯覚
を覚えました。素晴らしい!
頭の中を支配していた、怪しい、よどんだ空気が、一気に晴れた瞬間。
ああ、なんと面白い小説だったのかしら。
何と言っても、途中、楽天ブックスに予約していた「村上春樹」の新刊が届いたにも
関わらず、開けずに我慢できたのだから、これは、すごいことなのです。

ただ一つだけ、不満をあげるとすれば、ジェイコブと友情を育むピエロのウォルターが
死んでしまったこと。
これだけが、不満。大いに、不満!
だって、とても好きだったんだもの。本当に、本当に、悲しかったです

さあ、図書館から借りてきていた本は、すべて延長手続きをし、準備万端。
今日から、例の新刊を読み始めるとしましょうか。
村上春樹さま。この日を、何年も待っていました。