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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」239

2020年09月22日 | 物語「約束の夜」
「ばかな」

センは無意識に手を伸ばす。
それは何かを求める様に。

「俺が、こんな奴らに」

長い月日を
巻き戻す様に記憶が流れる。

チドリを拾った時の事。

翼が生まれた時の事。

初めて
禁忌とされる術を使った時の事。

今は居ない
共に裏一族を作り上げた者達の事。

遡る。

センがまだ、
ただの西一族であった頃。

血を吐く、一人の東一族。

西一族で秀でた能力があると
言われたセンでも、
かなり手こずった相手。

それならば、と
彼の大切な者を手にかけた。
使える手は使う。

疲れたな、と血を払うセンに
息もまばらな彼はこう呟く。

「いずれ、お前も倒れる時が来る」

悪あがきをと
あざ笑うセンに、
だが、東一族はこう返す。

「お前を……倒すのは!!!」

ぐん、と意識が今に戻る。
目の前に迫るのは
あの時の東一族。

「いや、違う」

満樹が眼前に迫る。

「俺、は!!」

再び、センの体を剣が貫く。
それは
確実に致命傷となる傷。

倒れ落ちたセンに
目をくれることも無く、
満樹や京子達は
傷を負ったマサシに駆け寄る。

「………」

「セン!!」

ツイナ達の足止めを振り切ったチドリが
横たわるセンに駆け寄る。

「今、治癒術を」

チドリが術を発動する、が。

「クソッ!!
 血が、止まらない。」
「チドリ」

センは呟く。

「無駄だ。
 術で治る範囲を超えている」
「それなら」

杖を握りチドリは言う。

「禁術を、」

人を若返らせ、蘇らせるという
その術を。

「いや」

無理だ、と答える。
チドリも分かっている。
生け贄にするべき数が足りない。

「なら、数を揃える
 このアジトに居る人を集めれば」
「チドリ」
「大丈夫だ、すぐにこの傷を癒す」

「チドリ……もういい」

その声に、
チドリは杖を下ろす。

「ああ」

センは横たわったまま上を見上げる。
見えるのは星空ではなく、
暗い天井。

何時までも無限の命があると
思っていた訳では無い。
いつか終わりが来ることは分かっていた、が。

「こんな、幕引きか」

その様子を満樹達は見守る。
もう命を終えようとしている、
裏一族の創始者。

「俺には似合いの最期という事か」

すう、と長く息を吐き
センは瞼を落とす。


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