TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「続・夢幻章伝」102

2022年02月22日 | 物語「続・夢幻章伝」
「ねえ、これであっているのよね?(小声)」
「ここの人が云ったんだから間違いないだろ(小声)」
「ふたりとも、静かにするキコ(小声)」

変顔 なう。

こほんと咳払いをする東一族の宗主様。
まとっているオーラが違いすぎる。

でも、変顔をするべきだ、と
そう云う結論に至った。

「どうでひょう!!」
「これで笑えまふか!?」

動かない空気。

宗主様の顔は若干上半分が青ざめている。

「まあまあまあ、お客様!!」

慌てて出て来る付き人は、お茶を持っている。

「宗主様はとりあえずお茶でもどうぞ!と!!」

「えっ!!」
「何も云ってないけど!!」
「さすが、普段から身近にいる人は何でも以心伝心キコ!」

3人は縁側に腰掛け、お茶をすする。

広い庭。
手入れされた庭。

かっぽーーーーん

どこからか、ししおどしの音。

聞こえるのはそう、自然の音のみ。

大都会の喧噪を離れ、ゆったりと流れる時間。
おいしい空気。茶菓子。

「何しに来たんだっけ?」
「そうね」
「お茶を飲みに来たキコ?」

もうどれくらい時間が流れたんだろうってぐらい、まったりしちゃう。
そういや宗主様はいないし、
本当に何しに来たんだけ?

「ほら、お客様にお茶を追加して!」

先ほどの付き人が手をパンパンする。

「あら、至れり尽くせり」
「高級旅館か、ここは」
「おしぼりもほしいキコ~」

「はぁい。ただいまです、キコ~」

キコ?

「お客様お待たせいたしましたキコ。新しいお茶に茶菓子、おしぼりをお持ちしましたキコ」

やけに大きなお盆を持ってきたのは、白くて丸い物体。

「ふわぁあああぁああ!? コロイドキコぉおおお!!」
「えっちょっ!?」
「コロイドお前か!?」

「あっ、アヅチにマツバ! へび呼もぉ!! キコ」

ふりっふりのエプロンをたなびかせ、そこにコロイドが立って(?)いる。

「コロイドぉ!!!!!」
「いや、お前何やってるんだ!?」
「ええ、なんか、その格好は」

「へへっ、似合うキコ?」

下に手を付け、ぺこりとコロイド。
お茶ですぅ~と、これまた美しい手でさささと並べる。

「コロイド・・・」
「・・・・・・」
「・・・キコ」

「おいら、いったい何をしていたんだろうなぁ」

「いや、むしろ今何をしているんだ?」

みんな「???」でコロイドの次の言葉を待つ。

荒れた日々があった気がする。
そう、自分はヒトではなく、所詮は何か生き物に近い、と。

けれども、

春が来た。

かたくなだった心が解け、春が来た。

「東一族の宗主様が獣のオイラを解放したキコ」

「「「・・・・・・」」」

「うれしくって、鼻水も出ちゃうキコ」

ずずっと鼻水をすすり、涙目のコロイド。

うん。

まあ、元に戻ってよかったよ、コロイド。
あと、それは花粉症じゃないのか説。



NEXT


「続・夢幻章伝」101

2022年02月15日 | 物語「続・夢幻章伝」
そこは東一族の村長的ポジション
一族を束ねる宗主様。―――のお屋敷。

一族で一番偉い人。
命とか狙われたら大変なので
門の前にも棒を持った見張りの人が立っていたりする。

「んん~、かといって、
 敵対する輩が、村の入り口をかいくぐり
 なおかつ屋敷まで忍び込むとかめったに無い。
 つまり、門番、ヒマ~」

棒を持つ暇な大人がすること。
それはエアーゴルフスイング。
もしくは野球のバットの素振り。

「チャッチャラチャッチャ
 ふんふふふんふ~♪
 アウト!!セーフ!!よよいの~」

途中から、なぜだか野球拳的になりつつ

「よ~い!!!!」

ご機嫌で棒をフルスイングした門番の人。

「「「………」」」

の前に立つ、アヅチ、マツバ、へび呼。

「ファァアアアア―――!!!??
 なんだ、お前達!!!」

「それはこちらのセリフだ」
「私達人(?)を探しているのよ」
「ここにいるかも、と
 探しに来たキコ」

「………はっ!!」

ぴーんと来た門番の人。

「南一族の旅人、
 人を探して宗主様の屋敷に来る
 ………そういう事か」

この人達、
スタンプラリーイベントの一つ。
“宗主様を笑わせてみせよ!!”に
チャレンジしに来た人達だ。

「こういう丸いやつ(コロイド)を探していて」

マツバが手で丸のジェスチャーをする。

「こういう丸いやつ(スタンプラリーのスタンプ)だな」

門番は“間違い無い”と頷く。

「俺が言うのはなんだが、
 お前達、ここに立ち入るのはなかなか難しいぞ
(あの宗主様を笑わせるなんて的な意味)」

「それは分かっているんだが」
「でもここだと聞いて来たのよ」
「一刻も早く会いたいキコ」
(やっぱりこのお屋敷に入るの難しいんだろうな、
 的なニュアンスで)

「それでも(チャレンジしに)行くと言うのか」

「ああ!!
(ここにはコロイド居なくて)無駄かもしれないが!!」

「何か(コロイドの情報が)
 得られるものがあるかもしれないキコ」

「そんなに………(やる気に満ちあふれているなんて)
 よし、俺が責任持って案内しようじゃないか」

来いよ、と進む門番の人の後に続く面々。

「行くぞ、宗主様の所へ!!」

ずんどこ進む門番に
後に続くアヅチマツバへび呼。

「宗主様、か。
 ちょっと緊張しちゃうぜ」
「ねぇねぇ門番の人。
 宗主様に会うとき(失礼にならないような)
 ここを気をつけたら良いというポイントあるキコ?」

「(笑いのツボを押さえる)ポイントかぁ」

そうだな、門番は思いを巡らせる。

「変顔で登場、とか?」

「「何でーーーー!!!????」キコ」

むう、とマツバは呟く。

「なんか
 アンジャッシュ状態になっている気がするけれど
 まあいいわ」

そして、通される来客の間。
すでに廊下から恭しい雰囲気が漂っている。

「宗主様」
「なんだ、水樹」

は、と門番の人は膝をつき
あらたまった礼をする。

「この者達を
 宗主様に引き合わせたく」
「構わない、どうぞ、お客人」

恭しく礼をしながら、変顔で入場する
アヅチマツバへび呼。

「………」

え、なにこれ。
南一族、なにこれ。

そういえば数日前も
南一族の夫婦が同じ感じで登場してきたな。
そういうしきたりなの?南一族的礼儀?
なにこれ。

宗主様は自分の後ろに控えている付き人に目線を送る。

付き人は
まじかよ門番。やりやがったあいつ
という絶妙な表情を浮かべている。

門番の人は、商工会青年部で
冗談半分でスタンプラリーのおもしろ企画立てたら
審査通っちゃった、企画者本人です。

そして、宗主様はスタンプラリーの事については
オフレコになっている。
(今から笑わせますとかいうと笑いのハードル上がるから)

「ごほん。
 南の地からよくぞおいでになった」


「「「どうもこんにちは!!!」」キコ」(変顔)


なんだこれ。


NEXT


「続・夢幻章伝」100

2022年02月11日 | 物語「続・夢幻章伝」
「まあ、とにもかくにも」
「コロイドはさておき、だな」

アヅチとマツバは頷く。

キョトンとするトキ。
まだ這いつくばるトキ父。
キコキコするへび呼。
クラッカーを持つ、アヅチとマツバ。

「行くわよ」
「せーのっ」

ぱぁぁぁぁんんん!!

「「祝!! 100話目!!!」」

そう
今回が「続・夢幻章伝」100話目だよっ☆

現れるマイクスタンド。

「昨今、外での飲食におきましては自粛を求められる世の中ではございますが」
「一度だけ、乾杯を行いたいと思います」

グラスを掲げ

「かんぱーーーい!!」

祝杯!

中身はもちろん、ジュースです。

「そうキコ。ついに100話キコ・・・」
「ええ、そうよ、へび呼」
「俺たちだけ、ってのも、残念だけどな」

「アヅチ、マツバ・・・」

「「へび呼」」

「なんじゃそりゃぁああああああああキコー!!!!!」

へび呼は高速キコキコするしかない。

「なぁああんんじゃ、そりゃぁあああ!!」
「なんじゃぁあああああそりゃぁああああ!!」

「あれ、へび呼ふたりいる?」
「何をそんなにパニックっているのよ」

「今それじゃないキコ!」

「でもめでたいことなんだぞ」
「そうよ!」

「急がないとコロイドがどこかに行ってしまうキコ!」

「でも、次はバレンタイン企画が、」

「てやんでぃ!!」

へび呼は、スパークリングワインを飲み干す。

「さあ、行くキコ! 付いてくるキコ!!」

急ぐへび呼ロイド。

急いで存在感を出して、トキが云う。

「いくら仲間を追いかけたって云っても、宗主様のところに行くなら気をつけろよ!」

「判ってるキコ!」

さあほら! と、へび呼ロイドは手を振る。
えぇええーこれからバレンタインネタもする予定だったのに~
と、
アヅチとマツバは続く。

「急ぐキコ! 急ぐキコ!!」


そして

その、猛獣と化したコロイド は、


し、しぎゃぁああああああ!!
ガルルルルルルルルー!!!

東一族の地にて

宗主様のお屋敷へと侵略せんとす!

がるるるるるるる!!

だーだん

だーだん

だー~~~

シギャァアアアアアアア!!!

ピンチ!宗主様!!

「シギャァアアアアア!!」

ぽふっ

コロイドの頭に何かが触れる。

「どうした?」

「ゥヴウウウウウギャァアアア!!」

聞く耳ももはや、ない。

「怒りで我を忘れているのだな」

「シギャァアッ!」

「安心しろ、ここに、お前を傷つける者はいない」

(宗主様はコロイドが鳥かごに閉じ込められていたことを知りません)

なでなでなでなで

「シギャッ」

「落ち着くまで、ここにいろ」

シギャッ

シ・・・

・・・・・・。

・・・・・・。

・・・あれ、

「おいらいったい何を・・・キコ?」

コロイド、元に戻る。





NEXT


「続・夢幻章伝」99

2022年02月08日 | 物語「続・夢幻章伝」
「あああああああああ!!」

そこには、空っぽの鳥かご。
トキの父親は言う。

「ここに、なんか
 なんとも形容しがたい生き物が居てな。
 どうやら何者かにこのカゴに閉じ込められていたらしく」

「その何者か、俺ぇ―――――!!!」

え、とトキの父親は一瞬固まる。

「逃したの!?
 父さん逃したの!?」
「いや、聴いてくれ、
 あれは暴れていたが、害のある生き物ではない
 自然に帰せば」
「そう言う問題じゃなくてさ!!」

「あれ、谷のマサシさんから、俺が託されて
 南一族の旅人まで無事届けてって」

プチパニックなトキは
若干涙目で訴える。

「届けてって言われて、……俺。
 ちゃんと渡す相手まで見つけたのに」

これはやばい、と血の気が引くトキ父。

「トキ、父さんが悪かっ………はぁっっ!?」

そして、トキ父は
トキの背後に佇むアヅチ、マツバ、そしてへび呼に気がつく。

「………」
「………」
「………」

無言。

「………」
「………」
「………キコ」

無言の圧力。

「あ。ああ」

「コロイド、
 ………やっと会えると思ったのにキコ」

ぽつり、と呟くへび呼ぶ。

「ぐはああああああ!!!」

見えない力に吹き飛ばされるトキ父。

す、とそのまま姿勢良く地面に座る。正座。

「この度は誠に、不徳の致すところ!!!」
「父さんはさぁ。
 いつも良かれと思って、やがて悪ろうし!!」

トキ親子漫才?はさておき。
さてはて、とアヅチは首を捻る。

「いや、でもぶっちゃけ。
 コロイドってそんなだっけ?」
「そんなとはキコ?」
「言葉と理性を忘れ、暴れる獣的な?」

こんなカゴに入れておかねば
暴れてどうしようもない、そんな存在。
――――だったっけ?

アヅチ達は凶暴コロイドを見ていないので
いまいちピンときていない。

「あら、よくあるパターンじゃない」

マツバはどこか納得している。

「人への執念、恨みつらみ、
 もの●け姫でおっ●と●しさまも祟り神となり言葉を無くし
 そこでモ●のきみが」

「おおっと、アウトだ!!!」
「マツバ、それ以上続けちゃダメキコォオオオ!!!」
「全ては俺が
 あの獣を逃してしまったばっかりに」
「父さんっていっつもそう!!!!!!」

ぜーはー。
肩で息をする一行。

「逃げちゃったものは仕方無い。
 とりあえず追いかけてみるか?」
「追いかけるってどこへよ?」
「コロイドは同僚達を助けようとしているキコ」

でも、その同僚はどこにいるのか分からない。
農作物の被害も最近は起こっていないらしいし。

うーん、どうしよう。

「とりあえず逃げた方向に向かってみる?」
「まあ、それが妥当だろうな」

「父さん、どっちへ行ったか分かる?」

トキ父はやっと役に立てる、と
意気揚々と指をさす。

「ああ、あちらの方向………に、あれ?」
「あっちって」

「よし、あっちか!!」
「とりあえず向かってみましょう!!」
「行くキコ!!GOキコ!!」

お昼ご飯までにはかたをつけたい、と
今日の昼食に思いを馳せるアヅマツヘビの後ろで
トキとトキ父は顔を見合わせる。


「「あっちって宗主様のお屋敷の方角だよな」」


NEXT


「続・夢幻章伝」98

2022年02月04日 | 物語「続・夢幻章伝」
「お前らだろぉおおおおお!!」

まだ響き渡る、リクイン様の声。

「とぅわあああああ!! おいらびっくりキコ」
「お前の叫び方もな」
「えっ、何!? 知り合いの話キコ!?」
「泥にダイブしたら汚れるって話だよ!」
「てぇえいい! 黙れトキ!!」

ぼっかーーん、と立ち上がる、リクイン様。

「違う今違う!」

泥で汚れたのが、今のメインの話違う。

「トキお前が預かった谷一族の謎の生物(鳥かごイン)
 それがこの南一族の連れなんだよ!」
「だからそれで、俺は泥まみれなんだよ!」
「泥から離れろ!」
「まさか、コロイドがここに来ていたとはな」

アヅチはかけ湯をする。

頭を洗う。

「ええっ、アヅチそれ何回目!?」

いや、そんなことより

「コロイドは、やっぱりここに」

「あー、知り合いだったのか」

トキは頷く。

「すんごい獣だから、鳥かごインだけどな!」

コロイドぉおおおお!!

「いくら俺たち東一族でも、あんなにわかり合えない生き物はいないぜ」
「サーカスにでも売りに出しとけ」
「コロイド今行くキコ! 待っててキコ!」

もう一度温まってから、と、へび呼は肩まで浸かる。

「いいゆんふ、だ~~ふふん♪」
「い~~いゆんふだ、ふふん♪」

皆、肩まで浸かり、誰がともなく合唱をはじめる。
伏せ字ギリギリの大合唱。

「いやぁ、中は楽しそうだな、姉さん!」

にこにこするタツキと、もはや湯冷めしているマツバ。

「お風呂の後、女子の方が待たされるってどうなのよ」

頭の中に、これまた別の名曲が流れはじめる。

あなたはもう・・・んふふふふ~
あかい、んふふふ、マフラ~んふふ~
いつも~~~~~待たされた~

「ギリギリアウトだからやめるわ」
「だな、姉さん!」

やっと上がってきたメンズは、一斉に牛乳を飲む。

「ほんっとにさぁ、あんたたち!!」

マイペースすぎだろうがぁああああ!!


そして、ここは

公衆浴場の外。
そんなに目の付かない場所。

そこに

「ぅう゛ううう!! ガルルルルルルルルー!!!」

がんがんがん! と、鳥かごにかじりつき、
かごを、ぐわんぐわんと揺らしている、猛獣(ミニ)。

そう、この生き物こそ、

コロイド!!

「ガルルルルル!! う゛ううう゛うう゛う゛う゛!!」

哀しいかな。
言葉を忘れ
理性を忘れ
今はただ、獣と化するのみ。

「なんてかわいそうに」

東一族の男が近づき、かごをのぞき込む。

「何の生き物かは判らないが、こんなとこに閉じ込められたら凶暴になってしまう」
「う゛ー!!! う゛う゛うー!!」

かちゃん。
開けられる鳥かご。

「さあ、おいで。自由に生きな」
「う゛、う゛、ぅぅぅ」

ぅう、ぅ・・・

ぺこり

あんなにも凶暴だった獣は、頭を下げ

ちょっと振り返りながら、この場を去って行った。


その数分後。

「コロイド!! お待たせキコぉ!」

ほっかほかで、牛乳おなかいっぱい。
みんなやってきたが、後の祭り。

「あれ? 父さん?」

トキは首を傾げる。

「どうしたのさ」

「ああ、実はな、トキ」

その手には空っぽの鳥かごがあったとさ。




NEXT