TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」234

2020年07月31日 | 物語「約束の夜」
「同じ力?」

満樹は、ふたりのやりとりを見る。

「魔法を無力化すると云う?」

マサシもその様子を見る。

この世界は、魔法を使える者とそうでない者がいる。
強い力を持てば、簡単に相手を服従させることが出来る。

けれども

そう、簡単にはいかなかった。

魔法が使えない者も
使えない、と思われていただけ。

一部の者は
魔法を無力化する魔法を身につけている、と云う。

それにより、とれている世界の均衡。

確かにその力なら、チドリに対抗出来る。

「魔法を使う者と同じだ」

チドリが云う。

「その力にも、強いか弱いかがある」

つまり

チドリの力が上か。
耀の力が上か。

それでも

「やってみないとわからないな」

そう、耀が云っている。

「本当なら、こちらにもチャンスがあると云うことね」
「耀、頼む」

「さぁて」

センの声。

「どうする? こちらは余興が終わってからにするのか?」

満樹とマサシ、翼はセンに向く。
京子も隣にいる。

「京子」

満樹が云う。

「下がっていろ」
「いやよ」
「京子ちゃん」
「私だって、戦える」

せめて、ツイナが動けるようになるまでは。

「ふふ、」

センが云う。

「1対4じゃないか」

「・・・・・・」

「ずるくないか?」

「今は多少ずるくても、お前を倒す」

京子は自身の武器に触れる。
狩りの道具。
それでも、もしものときにと、身に付けておいたものだ。

武器はいつもの場所にある。

動かせる。

「作戦、立てられなかったからねぇ」

マサシは汗をかく。

緊張。

「お前たちはそれぞれの一族で学んできたんだろう」
翼は云う。
「それぞれの力と、あとは血のつながりだ」

「血のつながり?」
「それで、チームワークはいけると?」

マサシは苦笑い。

「それ、あなたが云う?」

それでも
この圧倒的な力の前に、少し肩の力が抜ける。

動く。

センが坐っている場所へ。

満樹は剣を抜く。
そのまま、センの身体を

いや

センが坐っていた椅子。

それに

刀が刺さる。

「おい!!」

マサシは別の方向へ。
センはすでに移動している。

京子は短刀を投げる。

「すばしっこいのね!!」

センはいない。

「お前らよく見ろ」

翼の声。

「魔法じゃない。動きは読める!」




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「約束の夜」233

2020年07月28日 | 物語「約束の夜」

「移転魔術?」

まさか、とセンは眉をひそめる。

「東一族でもほんの僅かしか使えない術だぞ」

それが、海一族の
しかも西一族の血を引くツイナに?

「まあ、俺じゃないんだけど、ね」

に、とツイナは笑う。

「ちょっとは動揺したかな。
 足止めになったなら」

よかった、と
ツイナはその場に座り込む。

「ツイナ!?」

大丈夫か、と満樹が声を掛ける。
元々力を吸われていた所に
使い慣れない術を立て続けに使っている。
体力はほとんど残って居ないはず。

「俺はいいから」

ツイナは膝を立てながら唸る。

「後は、頼んだ」

満樹とそして、マサシは頷く。

「あれ、の厄介な所は
 魔術を無効化する力だ」

だが、と翼は言う。

「術師にとっては厄介だが
 なに、元より俺達は魔法を主力にはしていない」

「数で攻めていくしかないな」

「でも、それを補うように
 チドリが厄介な所ね」

高度な術使いが多い北一族の中でも
飛び抜けた力を持つ、チドリ。

「かといって、
 今を逃すと後がない」

なにより、ここは裏一族のアジト。
他の者達が駆けつければ
もう逆転の手立てが無い。

「俺達は、センに集中しよう」

満樹はちらり、と視線を送る。

「チドリの相手は
 あちらに頼むしかないな」

「………」

京子は言葉を飲み込む。
気がつけば魔方陣の外に移動している。
ヨシノやノギ、オトミも同じ。

ツイナが光の魔法を使ったときに
京子達を引き上げてくれた。

「………っ」

ふう、とため息が聞こえる。

「もう少し粘りたかったんだが、
 このあたりが潮時か」

耀がチドリの対面に立つ。

「お兄ちゃん」

チドリは残念そうに笑う。

「そんな気はしていたんだが、
 いつからだ?」
「いつから?」
「ああ、いつから翼と手を組んでいた?」

「お前の過去を見せる術。
 使い手のお前は他人の過去も見えていただろう?」

「なんの話を?」

答えながらもチドリは記憶を振り返る。

「その記憶の中で、
 あいつが直接迎えに来たのは誰だ?」

アザを持つ子供達の中で
唯一、
翼が声を掛けに来たのは、

『お前を迎えに来た』
『俺と共に
 来るつもりは無いか?』

「耀、お前!?」

そうだ、と耀は答える。

「いつからだって?
 最初からだよ」

自ら失踪したのも。
京子を疎い、裏一族側に着いていたのも。

「この時のためだ」

耀は振り返らず告げる。

「京子」
「お、にいちゃ」
「ここは俺だけでいい。
 お前は戦力になる、あちらにいけ」
「でも」
「俺の妹だろ。
 こんな所で膝をつくな」
「!!」

こくり、と京子は頷き立ち上がる。

「わかった、すぐに片付けて戻ってくる」

「さすが京子だ。
 ヨシノ、お前はノギとオトミを」

その言葉にヨシノは頷く。

チドリは杖を握り直す。

「耀、お前の戦いの腕は知っている。
 けれど、俺の術に一人でどうするつもりだ」

チドリの忠告を
耀はさらり、と流す。

「お前はセンには敵わない。
 恩義の服従もあるが、
 センの力とは相性が悪いからだ」

術を無効化する力。

魔法を消すことが出来る
魔法のような力。

「………まさか」

なぜ翼はこの時の切り札として
耀を選んだのか。

それは。

「センは本来西一族だ。
 この力は西一族に出やすいのかも知れないな」

そう。

「俺も同じ力があるとしたら、
 ―――どうする?」





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「約束の夜」232

2020年07月24日 | 物語「約束の夜」
気付けば、その力は弱まっている。

チドリが使っている魔法が。

「・・・・・・??」

「どうした?」

「・・・いや、」

「チドリ」

「・・・・・・」

「もっと力を込めろ」

こんなことで時間を使うことじゃない、と
センは目を細める。

笑っているのか
イラついているのか

「なんだ」

チドリは呟く。

「何が起きている?」
「何?」

「まだよ」

「・・・・・・?」

「私たちは、まだ」

マサシが云う。

「命を渡すわけにはいかない」

「!!?」

はじけ飛ぶ光。
消え去る重い空気。

「何!!」

チドリは後ろへ飛ぶ。

「立てるか?」

満樹の言葉に、ツイナは立ち上がる。
マサシも。

京子とヨシノは、倒れたままのノギとオトミに寄り添う。

翼を先頭に、皆、センを見る。

「まあ、相手が変わっただけで状況は変わってないけど」

マサシは満樹を見る。
満樹は頷く。

「おい」

センが云う。

「早く取り押さえろ」
「まさか」

翼が答える。

「いったん、敵はお前の方だ」

判っている。
ここは、翼と協力するしかない。

生き延びられるか。

生き延びられたとしても、そのあとはどうなるか。

「状況は変わってない、だと?」

翼が云う。

「変わっているぞ、お前を倒すために」

弾け飛ぶ、見えない何か。
足下が光り出す。

「これは?」

センは足下を見る。

「何? 魔法?」

「そう」

ツイナは手を振りかざす。

「俺の、ね」

光が、センを捕らえる。

「お前には無駄かもしれない。それでも、一瞬でも効果があれば」

こちらの体制を少しでも整えることが出来る。

「皆、準備はいい!?」

ツイナの言葉に散り散りに動く。

「くっ・・・!!」

あまりのまぶしさに、センは目を閉じる。

続けて

「京子! ヨシノ!」

ツイナは、手をそちらの方へかざす。

そこにいた4人の姿は見えなくなる。





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「約束の夜」231

2020年07月21日 | 物語「約束の夜」

もはや、この場を支配しているのは
裏一族の創始者であるセン。

翼も、チドリの魔法により
徐々に力を奪われていく。

「………」

満樹は翼を見る。

自分達を道具として、
必要な犠牲として扱い、
皆の母親に手酷い事をした男。

「なぜだ?」

そんな父親が
センを騙してまで
会いたいという、誰か。

だが、

翼が殺した女。

そう、センは言っていた。

それが、誰のことかは分からない。
この中の誰かの母親なのか、
それとも、
全く違う誰かなのか。

「だったら、
 なぜ、殺したんだ?」

それ程までに、
会いたいと願っているのに。

「子供には関係無い事情だ」

翼は答える。
分かるはずがない、と。

「「「………」」」

「お前にとっては、
 そうなんだろうが」

満樹は言う。

「俺達はいつまでも子供ではない」

「そうね」

マサシも満樹の言葉を継ぐ。

「あなたは知らないでしょうけれど、
 ワタシ達だって、色々な経験をしてきた。
 何も知らない子供じゃ無いわ」

まだ、意識のあるヨシノも
コクリ、と頷く。

「俺はまだ
 背も低し、顔も幼いけど、さ」

ツイナも胸を張る。

「自分の事、
 子供だとは思わないな」

少年ではなく、青年。
ツイナのこだわり。

「いつまでも、と思うでしょうけど」

京子は意識を失っている
ノギやオトミの手を握る。

「何が大人で、何が子供か、なんて
 あなたに決められる事じゃないのよ」

ねえ!!と
京子はチドリに言う。

「………京子」

チドリは答える。

「それでも、俺は
 こうするしかない」

彼の持つ杖がしなる。

「センに拾って貰わなくては
 俺は今、此所には居ない」

だから、

「術を使った。
 今までもたくさん。
 人の命も奪ってきた」

言われるままに。
彼の命ずるままに。

「裏一族に害になる者はそうだし、
 思うように動かない者は
 裏一族であろうと」

そう、とチドリは言う。

「美和子、だっけ、
 あいつも、そう」

「………そんな、美和子」

どこか、この裏一族の砦に
潜んで居るとばかり思っていたのに。

チドリは笑う。
少し、申し訳無さそうに。

「だから、ごめん、京子」

「チ………ドリ」

目の前が霞んでいく。

と、視界が黒くなる。
もう目も見えなくなったのかと
首を振るが、―――違う。

誰かが立っている、目の前に。

センと京子達の間に。

「なぜ、と言ったな」

その影は満樹に言う。

「殺すつもりなんて無かった
 ただ、
 間違えたのだろう、な」

「………」

「許されるつもりは無い。
 ただ、会いたかったもう一度」

「………翼」

父親―――翼は言う。

「身を任せた方が楽だぞ」

なあ、とセンは言う。

「お前が俺に敵うわけがない。
 力の差は分かっているだろう」
「俺だけ、ならば、な」

翼は、振り返る。

満樹達に向けられる視線。
そして。

「お前に刃向かおうって言うんだ。
 何も考えていなかった訳じゃない」






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「約束の夜」230

2020年07月17日 | 物語「約束の夜」
翼の父親。

そして、皆の祖父。

「若返りの魔法・・・」

ツイナが呟く。

何度見ても、彼は若い。
自分たちと変わらないぐらい。

それが、その魔法の力。

「裏一族の今後のため、我々は若返る必要がある」

センが云う。

「裏一族は、私のものだから」

いずれ老いがやってくる。
でも、
その主導権を、誰かに託すことは出来ない、と。

裏一族は自身で
そして
信頼ある身近な者で、固めておきたい。

「この外見で、どの一族の村長どもも、私が主導者とは気付いていない」

センは息を吐く。

「なぜ、術を使わない」
「使わないわけではない」
「お前を見込んで今回の術を譲ったんだぞ」
「だろうな」
「見込みがなければ切り捨てる」
「術なら、また、血を集めればいいだけの話」
「赤の他人が何千と必要になる」

センは笑う。

「今回を逃したら、次はどうする?」

「・・・・・・」

「はぁ、仕方ないなぁ」

センは頭をかく。

「さっきのお前と一緒だ。・・・チドリ」

センの目の合図に、チドリは下を向く。

「いや、」
翼が云う。
「父親の云うことを聞け」

「・・・・・・」

「早く、若返りの術を」
「よみがえらせる術だ」

チドリは動かない。

「ねえ!」

伏せていた京子は、声を出す。

「チドリが困っているじゃない!」
「京子!」

満樹の制止も聞かず、京子は云う。

「私たち、みんな血がつながっているんだもの! なのになぜ!」
「黙れ、京子!」

耀が叫ぶ。

けれども、

何も、聞いていないように。
聴こえていないように。

センは手を出す。
翼を指さす。

「お前は、切り捨てだ」

「・・・・・・」

「チドリ、今回も私が若返りの術を使う」

「・・・はい」

「あいつも使え」

「!!?」

皆、顔を見合わせる。

光。

止まっていたようで

徐々に、動いていた魔法。

奪われている、力。

満樹は、周りを見る。
何人かは、もはや意識がない。

翼は立ったまま。

「使うのは俺だ」

呟く。

「会うために」




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