TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」73

2015年10月30日 | 物語「夢幻章伝」

「足が」
「折れている・・・」

アヅチとマツバの視線は、少年の顔から足へ。

そんな少年は、ただいま仁王立ち中。

「拙者は、サッカーに命を懸けておる!」

どーーん、と、少年が云う。

「足は命!!」

「「・・・・・・」」

「さあ、治療費をよこすのだ!!」

えーっと。

「君は谷一族の少年かなぁ??」

へび呼ロイドが容姿を見て、キコキコする。

なるほど
確かに、トウノやミィチカと同じ格好だ。

「迷子なら、パパとママを探してあげようよぅ」
「そうだな」
「そうね」

うんうん、と、頷くアヅチマツバに、少年は地団太を踏む。

「むむむ、拙者を子ども扱いとは!」

許さずまじ!

「いでよ」

少年は、片手を上げる。

「いでよ、弟子!!」

「「弟子!!?」」



ぽーん

ぽーーーん

ぽーーーーーーん

ころころころころ・・・・

ころころころ

・・・ぴたっ

「・・・!?」
「これは
「サッカーボール??」

そう、サッカーボールです。

「これが、拙者の弟子なり!」

「・・・・・・」
「・・・へぇ」
「そりゃあ」
「サッカー少年のお友だちよね」

「くぅう!」

少年は、顔を真っ赤にする。

「なんだ、その、痛い子を見る目は!!」

「だって、なぁ」

と、アヅチ。

「ええ、そろそろ行きましょうか」

と、マツバ。

ふたりは荷物を持つ。

「ええい! 待たれよ!!」

少年は再度、仁王立ち。

「拙者は、高貴な(?)谷一族!」
「!!?」
「父マホ、母チホより、受け継がれし我が名」

「まさか!」

「あ、」

「あ?」

「アホ!!?」

アヅチ云っちゃった。

「ア・リ・ーだ! アリー!!」

アリーはびしりと指をさす。

「何が何でも、治療費を払うなり!」

ぽーーん
ぽーーーーーん

「治療費ってあんた、立ってるじゃない」

ころころころころ

にゅいーーーん

サッカーボールが転がり、

そして

「手と足が生えたーー!!? おぎゃー!!」

へび呼ロイドの絶叫。

「何よ」

マツバが云う。

「あんたの同僚だって、そう変わらないじゃない」
「え? あ、うん。そうだっけ?」

「さあ、弟子よ」

アリーが云う。

「拙者たちの恐ろしさを見せつけようぞ!!」

「了解ナリ」



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「夢幻章伝」72

2015年10月27日 | 物語「夢幻章伝」

「俺は、西一族産の肉料理が食いたい」
「そんなの山一族の村でも食べられるじゃない」

西も山も狩りの一族です。
どちらの村へも続いている道を歩きながら
アヅチとマツバはガイドブックを開いている。

「そんなこと言ったって
 西は香草料理、
 山は炭火焼料理で種類が違うだろう!!」

「アヅチ……意外とグルメなんだね」

ほうほう、とへび呼ロイド。

「俺はこの、西一族の有名な創作料理店
 『けいくんの店』に行きたい!!」
「!!!!!??
 絶対無いわ!!!!!」

マツバはガイドブックを引っ張る。

「こっちの、山一族の秘境にあるという
 幻のジビエ料理店『グルメオブアキラ』がいい!!」

ぐぬぬ、と対立するアヅチとマツバ。

こりゃいかん、と
二人の間をとりもつへび呼ロイド。

「まぁまぁ、二人とも
 とりあえず、ちょっと休憩しようよ
 お茶でも飲んで!!」

「む」
「分かったわ」

だいぶ歩いてきたし、
仕方ない、やれやれ、と
草むらに二人は腰かける。

背負っていた荷物を降ろしながら
ふとアヅチはバックの一番上に入れている箱を取り出す。
谷一族のミィチカから貰った物。

「それにしても
 これ、何が入っているんだろうな」

ガタガタ。

揺すってみる。

「もう開けてみてもいいのじゃないかしら」

問題は解決したし、とマツバ。

結果としてトウノは
ミィチカ達と谷一族の村へ帰って行ったし、対価を得ても良かろう。
特に何かしたつもりはないけど。

「二人とも、
 おいら達の同僚を取り戻すという
 大きな問題が残っていますよ」

へび呼ロイドが言うものの
それはそれ、これはこれ。
今は箱の中身が大事です。

「なんだろうな?」 
「秘宝って言っていたわね」

わくわくわくわく。

「きちんと2で割れるかしら?」
「売買する場合は
 お店を選ばないとな」
「美術品だったらどうしよう
 本物かどうかとか、分からないのよね」
「為替相場もあるだろうから
 手放すタイミングも見計らないとだな」

2人とも売る気満々。

「となると、専門店が多い
 北一族の村で売った方が良いよな
 でも、今更戻れな―――」

ぎゃーん!!!

と草薮から何かが飛び出し、

「とう!!」「!!???ぬぐんっ!!!」

アヅチにタックルをかます。

どしーん、と
箱を持ったままアヅチが吹っ飛ぶ。

「ちょっと何やってるのよ大丈夫(箱の中身は)?」
「痛っ……なんだなんだ?」

「なにすんじゃ、われーー!!」

「え?」「ん?」

どーん、と
アヅチ達の目の前に
1人の少年が倒れ込んでいる。

「あいたたたた、あいたたたた
 足がぁああああああ
 拙者の足がぁあああああ」

そのロマニーぐらいの年頃の少年は
地面でバタバタしている。

え?ぶつかってきたのそっちなのに???
と思いつつも
アヅチとマツバ、へび呼ロイドは駆け寄る。

「おいおい、大丈夫か?」
「拙者って、何者?」
「あわわわわわ、
 みんな大丈夫??」

マツバが差し出した手を
バチーンと弾いて
二人を睨み付ける。

「どうしてくれる、
 拙者の足が折れただろうが!!!」

えぇええええーーー!!!?

「お前、おれに「とう!!!」って
 言いながら当たってきたよな」

「知らぬ知らぬ、
 そんな事は言っておらん!!!」

えぇええええーーー!!!?

そして、仁王立ちで立ち上がると
どしーんと大きく構え
二人に手を差し出す。

「さぁ、金払え!!」

えぇええええーーー!!!?


これは、新手の詐欺なのだろうか。



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「夢幻章伝」71

2015年10月23日 | 物語「夢幻章伝」

無事に北一族の村を脱出?し、ふたりは新たなる場所へと向かう。

そう、目指すは

「西一族の村!!」

・・・南一族の村を出て、4日目。
水辺周辺一族を、反時計回りで回っている。

つまり、流れ的に

北一族の村の次は、西一族の村となるわけである。

「そこにも、いるのかなぁ、オイラたちの同僚・・・」
「ギャーズンもどこにいるんだか」

よし、と、アヅチはこぶしを握りしめる。

「行くぞ、西一族の村!!」

「やーよ」

・・・・・・あれ?

「行くぞ、西一族の村!!(2回目)」

「やだったら!!」

「はあ!!?」
「マツバぁ、どうしたのぉ」

思わぬ、マツバの反応。
へび呼ロイドは焦って、キコキコする。

「西はスキップして、山一族の方に向かうべきよ」
「スキップって、何だこらぁ!!」

「ちょ、ちょっ、ふたりとも!」

キコキコへび呼ロイドが云う。

「ケンカはよくないよぅ!」
「ケンカかこらぁ!!」
「西はイヤだって云ってるの!」
「マツバもイヤイヤ云わないの!!」

「とにかく、ここにいたらな!!」

タクトに見つかり
クリミアの料理を食するはめに!!

「うっ・・・」

さすがのマツバのたじろぐ。

「ねっ、マツバ行こうよ!」
「そうだ、行くぞ!!」

「「西一族の村へ!!」」

「てか、あんたたち!」

マツバ説得の途中ですが

この声は

「私を忘れてないでしょうね!!?」

「お前は!」
「あんたは!」
「君は!」

そう、この声は

「えーっと、」
「誰だっけ??」

「ロマニー!」

小さい体で、ロマニーは地団太を踏む。

「まろ」
「にー・・・??」

「ロマニー!!」

今回の水辺、北一族篇は、登場キャラが多くて
いまいち活躍の場がなかった、クリミアの妹です!!

「わたくし目もおりますぞ!」
「うっ・・・!」

まめぴよ、ロンロン。

「何、こっそり出発しているのよ!」
「いや~」
「それはー」

云えない。

「私もここで、出番を稼ぐわよ!」

ロマニーはどーんと構える。

「さあ、手土産に豆乳よ! 持って行きなさい!」

どーーん、とそこに、大量の豆乳。

「いやいやいや!」
「いらないし!!」

「いいの、遠慮なんかしないで!」

ロマニーは、自慢げに腕を組む。

「お礼と云っちゃなんだけど、頼みたいことが、さ」

「いやいやいや!」
「受け取ってないし!!」

「この先にいる、飛び出せ、・・・ってあれ?」

砂ぼこりが舞い、

そこに、アヅチとマツバの姿はなかった。

「・・・・・・」
「・・・えーっと」

へび呼ロイドは、キコキコする。

「オイラも行くねぇ~」

「あっ、ねえ! ちょっとぉお!!」

ひゅるるるるるる~

「なんなのよー!」

ロマニーは、もっかい地団太。

「ロマニー様」
「・・・なによ」
「まあ、あのふたりもお似合い、と云うことですな」
「何の話・・・」

北一族篇、本当に終わり!



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「夢幻章伝」70

2015年10月20日 | 物語「夢幻章伝」

「さて、祭りも終わったことだし」

モモヤは荷物をまとめる。

祭りの翌日、燃え尽きた感がある実行委員会によって
ステージは片付けられているが
清々しい天候の元
北一族の村は何も無かったかのようにいつも通りだ。

「……俺は、南一族の村に帰るけど」

南一族名産の豆も程よい売れ行きで
なんだかんだあったけど
祭りも満喫、北一族の村に一泊して馬車で帰路につく。

「けど!!!」

「あ、俺達もう少しここにいるから」
「アヅチのお兄さん、また今度」

ホテルの一室でぐーたら、ゴロゴロ。
遅めの朝食を部屋でとりつつ。

「なんだかんだで
 北一族の料理って豊富だよな」
「多村籍料理が食べられるし、満足」
(多国籍的なノリで)
「市場のある村は違うよな」

ソファにもたれかかりながら
観光パンフレットを広げる二人。

「どこ回ろうかしら?
 これは『まめぴよ牧場1日体験コース』」
「それ鳥が居るだろ、嫌みかお前!!
 俺はこっちの『山羊に乗って北一族の史跡巡りコース』が」
「でも市場で買い物もしたいのよね。
 昨日はあんまり見れなかったし」

「お前ら、どれだけ滞在する気だ!!!!」

へび呼ロイド達の
同僚を救う旅はどうした??

「アヅチのお兄さんナイス!!」

もうつっこむ気力もなかったへび呼ロイドが
感動の涙を流す。

「だって兄貴!!」

アヅチは反論に出る。

「そもそも、最初にこの旅一週間で
 終わるかどうか、と言われていたんだぜ!!」

そうよ、とマツバはカレンダーを指さす!!

「まだ、旅は4日目なのよ。
 途中のお宿でのんびりできたのって東ぐらいだし
 私たち少しはゆっくり旅を満喫したいわ!!」

「そんな事言ったってお前ら」

もうへび呼ロイド
モモヤと旅に出た方が良いんじゃないかな。

と、その時。

「マツバー!!」
「アヅチさぁああん!!」

どーん、どんどん、と
勢いよく部屋のドアをノックする音。

「おはようございますぅ♪」
「良い天気だぞ★」

「げっ!!この声は」
「タクトとクリミア!!」

他の一族は祭りを終え
朝から各地元に帰っていったが
この二人は北一族なのだった。

「そう言えば
 お前らあの二人とはどうなったんだ?」

「どうもなにも」

ふふふ、ははは、と
周りに花が飛び交うような会話が
ドアの向こうから聞こえてくる。

「俺達気づかなかったんだ
 今までの恋はいっときの気の迷いだって」
「それは
 ちょっと~振り向いて~みただけの~♪」
「他の~村の人~♪」
「本当に大事な人はすぐそばの
 同じ村に居たんだなって、きゃっ!!」
「クリミア、呼んでくれよ、
 その人の名を」
「言わずとも分かっているでしょう、タ・ク・ト」

…………。
…………。

「兄貴、つまりそういう事だ」
「ほ、ほう」

ええっと、本人達がそれで良いなら。

「私たちを出会わせてくれた二人には
 ぜひともお礼をしたくて」
「村を救ってくれたってのもあるし」

え?お礼?
ドアに聞き耳を立てるアヅチとマツバだったが


「どうぞ、お昼にお呼ばれして下さい。
 私の手料理を振る舞いますよ♪」


クリミアの甘いささやきに
二人はすぐさま立ち上がる。

「今すぐ」(小声)
「荷作りを」(小声)
「一刻も早く」(小声)
「脱出を!!」(小声)

どんどんどん、と
ドアのノックは止まらない。

「おかしいな?寝ているのかな?」
「タクト、もしかして中で倒れてるんじゃ。
 早く合い鍵を!!」
「そうだな、フロントから借りてこよう」

バタバタと2人の足音が
ドアの前から離れる。

「今だ、へび呼ロイド、
 さっさと行くぞ」
「ええええ?」
「見つかったら面倒なのよ!!
 精算は前払いで済んでるわよね」
「そそそそうだけど」
「じゃあな、兄貴」
「さようならアヅチのお兄さん」

うおおおおお、と
駆けていく2人(と1匹?)。

「お、おう
 気をつけて、な」

1人残されるモモヤ。
いや、別にいいんだけど。

「若さゆえ、か」

びくーーんっ!!!???

ふふふ、と
現れるヘイマスター。居たのか。
そう言えば海一族と南一族行きの馬車は同じだった。

「旅が終われば
 二人で居る理由が無くなってしまう。
 今を終わらせるのが名残惜しいのかもしれないな」

大人の意見。

はわわわわ、と
モモヤがときめく。

「何それラブじゃん、ステキじゃん」

どうした、モモヤ。
疲れているのか?


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「夢幻章伝」69

2015年10月16日 | 物語「夢幻章伝」

北一族の村では、
何事もなかったかのように、祭りが再開されている。

「肉焼きー! 肉焼き食べてねー!!」
「豆乳プリンあるよ~」
「ゆでたジャガイモー!!」
「甘栗はこっちだよー」

祭りが中断していた分の稼ぎのために、売る側も必死だ!

ぐぎゅるるるるるるるる

アヅチとマツバのお腹が、盛大に鳴る。

「肉焼きをっ」
「食べたいっ!!」

だが

アヅチは、クリミアに
マツバは、タクトに

ぐいぐい引っ張られている。

「肉」
「焼きー!!」

「「うんまー!!」」

肉焼き屋台の横で、フワとシマが焼き立ての肉をほお張っている。

「さすが、山一族の肉ね~」
「こんなにおいしい肉、砂じゃ食べられないわー」

東一族から奪おうにも、東一族は肉を食べない。

「ちょっとちょっと!」

肉焼きの少年と少女が、びしりと云う。

「「これ、西一族の肉だから!!」」

「くっ、あいつら!」

焼き立ての肉を見て、よだれが出る。

「肉を分けなさいよー!!」

しかし、タクトとクリミアの勢いは止まらない。
このままでは、踊りの輪に入れられてしまう。

「せめて!!」
「何か一口!」

「お客さん!」

次の屋台は

「山一族の甘栗どう!!?」

今回、やたら登場する甘栗。
山一族の屋台だったのか。

「このさい、何でもいいから、食わせろー!」
「ダメです、アヅチさん!」
クリミア、すごい力。
「しっかり踊って、ベストカップル賞ですよvV」
「おぉおおおおお」

「アヅチ~!」

甘栗屋台の横に、モモヤとヘイマスター。

「がんばって踊って来いよ!(ラブ旋風が足りないからな!)」
「兄貴! なんだ、その()は!!」
「うむ。頑張りたまえ」
ヘイマスターも頷く。
「ナギサとシオリも輪の中にいるぞ」

音楽にあえば、踊りは何でもよいのか。
ナギサとシオリは、ハイヤを踊っている。

「負けてられないぞ、マツバ!」
「私だって、負けません! ね、アヅチさんvV」

北一族の軽快な音楽が響く。
踊りの輪では、いろんな一族が踊っている。

「アヅチはどこかなー??」

モモヤは、ホット豆乳で温まりながら、弟を探す。

「やっぱり、旅に出たからには、ドキドキも必要であって・・・」

ふふふと微笑みながら、モモヤは弟を想う。
たくさん心配もしたけれど、
アヅチとマツバには、そう云う意味でも成長してほしい。とな。

そして

その横で

「ちょっと、この海鮮焼き最高じゃない!?」
「お前、ここは肉だろうが!!」

「・・・・・・」

「揚げ立てのフライドポテトもおいしいわね!」
「この、肉まんじゅうも、うまいけどな!!」

・・・あれ?

「へび呼ロイド、次はこっちの屋台よ!」
「ひーぃいいい!!」
「こっちも、頼むぜ!」
「ひぃいいいいいいいいい!!」

「って、お前らぁあああ!!」

「あ、兄さん姉さん、ここの野菜包みうまいよ!」

「ちょっと、東の少年は黙っててくれるかなー!!」

モモヤは、ふたりを、がしっと掴む。

「どうした!」
「「ん?」」
「どうした、ラブは!!」
「ラブ・・・?」

えーっ
と、
アヅチとマツバは白い目で、モモヤを見る。

「それより、今は、腹ごしらえだろ!」
「そんなんだから、ロリコン(弟)とか云われるのよ」

「お前らぁあああああ!!」

ふたりを心配するが故の、愛情です(byモモヤ)

ちなみに、

なんか、よくわからないが、会場ではタクトとクリミアが踊っている。

なんだろう。
この数分の間に、いったい何があったのか。



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