TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」102

2018年09月28日 | 物語「約束の夜」

「司祭様の話によると」

と、ツイナ。

「俺の母親は、
 父親の名前を
 明かさないまま死んだそうで」
「「…………」」
「つまりそれは
 言えない相手だったのではという」

朝からヘビーな話し。

「それが、他一族なのかもって事よね」
「そうそう、
 もしくは一族内の禁じられた相手とか」

朝と言っても
もう10時。
連泊とは言えそろそろチェックアウトしなければいけない時間。

まだ食堂で朝食バイキング中の3人。

「って、満樹。
 ちゃんと聞いてるの?」

朝がゆ片手に
箸が止まっている満樹は訴える。

「おま、寝る直前にその話しを聞かされた俺は。
 色々考え込んで眠れなかったんだぞ」

なぜ、入眠直前に言うのか。

「それは、
 ねぇ、ツイナだってこんな話し
 本当は人には言いたくないでしょうよ」

つまりは望まれない生まれだったかも、なんて。

「………そう、だが」

「そうでもないよ」

「「そうなの!??」」

いやいや、と手を振るツイナ。

「昨日今日知った事実なら
 ちょっとは落ち込むかもだけど、
 割と俺の中では解決してる事だし」

それは前から知ってて
今回新情報として
他一族説が濃厚となり、と

山盛りイクラご飯を食べるツイナ。

無理はするな、と
ツイナの心情やら何やらを1人考え込み
寝不足の満樹が言う。

「強がらなくて良いんだぞ」
「平気っす!!」

「う~ん、うーーん。
 となると、複雑な家族環境だと
 狙われるとか???」

ツイナはそんなだし、
京子は父&兄失踪中。

「満樹、何か
 そういうこと無いの??」

「家庭崩壊を要求するな。
 何も無いぞ!!」

あ、いや、でも兄がな。
いやいや、それはまた違うだろうし。

頭が回りきっていない満樹。

「理由をあれこれ推測するより
 裏一族に直接聞き出すのが一番よ。
 今日は、やつらの手がかりを探すのよ!!」
「結局はそうなるよね」
「行くわよ!!」
「俺は、正直、
 睡眠を取りたい」

朝食を食べて頭が回ってきた京子とツイナ。
元気も出てきて
さて、行くぞと立ち上がる。

「ごちそうさま」
「それでは、出発――」
「お、お~」

おー!!

「わっ!?」

と、振り上げた拳が
人に当たりそうになり京子は振り返る。

「あ、ごめんなさ」
「ん?」
「あれ?」

おや、とその人が声を上げる。

「君、は」
「あなた、おとといの!?」

盗賊から荷物を取り戻してくれた青年が
やぁ、と手を振る。

「仲間に会えたんだ。
 良かったな、京子」



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「約束の夜」101

2018年09月25日 | 物語「約束の夜」


「いやぁ、食べたね!!」

満腹満腹、とツイナ。

「暫くは、お肉遠慮してよいかも」

うぷっと、京子。

「西一族の京子がそれ程まで」
「ほら、バイキングで
 元を取り戻すぞってついつい
 お皿に盛り過ぎちゃうやつに似ている」
「次は食べられるだけって
 思いつつも繰り返す」
「バイキングあるある」

「そうだな、腹は八分で止めるべきだな」

「え?」
「え?」
「え??」

食べてない満樹がそれ言う、という
目線を京子とツイナが送る。

「いや、京子はデザートに
 アイスクリーム食べてただろ」
「あれは別腹枠」

入っていく所が違うんです、と
京子が言いつつ腰掛けたのは
本日のホテルのソファ。

「それで」

男子部屋に京子がお邪魔して
本日の会議。

「みんな、何か情報はあった?」

「……………」
「……あ、マーケッツ!!」

「そうよね、特に
 めぼしい情報はない、か」

「マーケッツ!!!」

「…………」
「満樹、何かあった?」
「いや」

「マーケッツ!!!」

「そう、気になることがあったら
 ちゃんと言ってね」
「そういう京子はどうなんだ?
 出自を調べろと言っただろ」
「うーん」

「マッツ」

「山一族の与篠の事で
 もしかしたら、皆
 他一族との混血、なのかなって思ったのだけど」

「マ」

「行方知れずの私の父親。調べたら西一族だったわ。
 だから、この予想はハズレなのかも」
「京子の父親は、西一族、か」
「え、何か引っかかる?」
「いや、うーん」
「翼って名前なのだけど」
「………翼」


と、そこで、会話を区切りつつ
ツイナを見る2人。

「まぁまぁ落ち着いてツイナ」
「そうだ、
 その呪いをかけようとしている
 道具をそっとしまうんだ」

「だって、
 俺の情報も聞いてよ」

ぶーぶー、と
謎の呪術グッズをしまうツイナ。

「俺の予想では
 裏一族の秘密のアジトがマーケッツ
 つまり北一族のどこかにあるのではと」

うん、それは、と
頷く満樹。

「そうだと噂されているよな」
「そうなの!!?」

周知の事実。

「各一族から集まった
 はぐれ者達の集まり、なら
 一番忍びやすいのはこの北一族の村よね」

だから、集合場所
北一族の村にしようと言った訳で。

「………俺の情報が」

正確には海一族の司祭様。

「私達が狙われている理由は
 まだ、あいまいなままだけど」
「そもそも、
 裏一族とのケリをつける事も
 大事な訳で」
「また、裏一族の捜索ってわけだね」
「そういう事だ」

あふ、と
京子のあくびをみて
満樹が言う。

「よし、今日はそろそろ休もう。
 明日は市場の捜索から、だな」
「そうね、おやすみ」
「おやすみ京子」

それじゃあ、と
京子は自分の部屋に帰っていく。

「いよいよ、眠るぞ俺は」

確か数日寝てない満樹は
そのままフラフラとベッドへと歩いて行く。

「あぁあ、有力な情報は、なし、か」
「まぁ、別の手段で探りを入れていこう」

それぞれのベッドに潜り込み
それじゃおやすみ、
電気消すぞ、と
部屋の灯りが暗くなる。

もう、速攻で睡魔に襲われて
三秒で寝ます、な満樹が
眠りに就かんとしているその時。

そうそう、とツイナが言う。

「そういえば、
 俺の父親って、もしかして他一族かもなんだよね」
「………そうか、うん」

がばーっと起き上がる、満樹。

「そういうことは
 マーケッツより先に言え!!!」



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「約束の夜」100

2018年09月21日 | 物語「約束の夜」

「と、云うわけで~」

口の中いっぱいに肉をほお張り、ツイナはもごもごする。

「まひふぁひふぁひふぉむらふぇひそがふぃかったんだお~」

「ほぼほぼ判らないんだけど」
「ほぼほぼ判らないな」

ごっくん、と、ツイナは肉を飲み込む。

「だから満樹は忙しかったんだって!」
ツイナが云う。
「なんか、東のツトメ、とか。川遊び、とか」
「川遊びですって!?」
「ほぼほぼ寝てないよね?」
「まあ」

息を吐き、満樹は京子を見る。

「実家に帰っても、結局は忙しいと云うか・・・」
満樹は明らかに疲れている!
「でも、京子もだろう?」
「え? 私?」
「京子だって西に帰れば、狩りとか仕事があるんだろう?」
ゆっくり出来ないよな、と満樹の顔が云っている。

京子は、あわてて肉をほお張る。

「ふぇえ、まは、ほうね!!」

「ほぼほぼ判らないんだけど」
「ほぼほぼ判らないな」

京子はもごもご何か云って、

「ほひふぁく、」

肉を飲み込む。

「明日からは真面目に情報を探しましょう!」
「もちろん!」
「明日から!!」

「とりあえずは・・・」

 京子と満樹とツイナは、ちらりと、テーブルの横を見る。

「これ、食べ終わらなきゃだな!」

北一族の露店にて。

京子への詫びと、3人の再会を記念して

大奮発した、注文。

「豚の、」
「丸焼き!!」

1匹買いです!

「いやあ、インスタ映えだね!」
と、ツイナ。

「運ばれてきた瞬間、盛り上がったわね!」
と、京子。

「金額もすごい」
と、満樹。

豚の丸焼きには、祝☆約束の夜100回、の旗。

「これ・・・」
「ええ・・・」
「食べきれるのか・・・?」

豚の丸焼きです。
すごいです。
大きいです。
実質食べているのは、ふたりです。

いろいろと調味料をもらい、
味を変えてはいるものの、

ふたりは飽きている&そもそも、お腹いっぱい。

「インスタ映えは間違えないんだけど!」
「ツイナ、そのセリフ2回目!」

「お残しはよくないぞ」

満樹が云う。

「豚の丸焼きと云うと、モンハ●みたいなものを想像するだろう」
「モン●ン!」
「モ●ハン!!」

「だが、生のものから、中まで火を通すまで、ずっと回していられるか!?」
「あの、足をくるくるっとして」
「焚火の上で、ハンドルをぐるぐる回しているやつ!!」

「えらいな時間がかかるぞ!」
「やばい!」
「筋肉痛!!」

「その労力を思えば」

「残すわけには」

「いかない!!」

3人は互いに見る。
頷く。

「「「がんばろう!!」」」

完食を。

「って、満樹は食べていないし!」

満樹は、添えられたミニサラダを食べている。

「仕方ない」
満樹が云う。
「こうなったら、みんなに奮発しよう」

これ、俺達からのおごりです、って
お客さん同士で、和気あいあいと食べきる作戦。



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「約束の夜」99

2018年09月18日 | 物語「約束の夜」

「あれ、かな」
「………あれ、だよね」

北一族の大通りの広場に辿り着く
満樹とツイナ。

北一族で待ち合わせと言えばここ
という地点。

その、広場に隣接する
オープンテラスのカフェに
空になったカップを3っつ程並べて
座っている、京子。

「………」
「………」

どこか遠くを見つめ、
コーヒーのおかわりいります?と
話しかける店員に
首を横に振る形で断っている。

「虚無の目をしている」
「俺でも分かる。
 あれは、なんか、いかんやつ」
「さっきのげんこつは。
 これを知らせる、お告げだったのでは」
「虚無の妖精!!?」

わぁああああ、と
駆け寄る満樹とツイナ。

「京子!!お待たせ!!」
「すまん。
 待ったよな?悪かった!!」
「お土産があるよ、
 キジ馬にごぼうチップスに」

ほらほら、と
お土産の品をテーブルに並べていく
ツイナ。

「………」

「き、京子?」
「あの、お花紙も、あるよ」

とりあえず、と
紙を広げて花を作り出すツイナ。
この空気感居たたまれない。

「最初はね、
 みんなで合流したら
 あの店でお昼ご飯たべようかな、なんて
 お店選んだりしててね」

「う」
「ぐはっつ」

「その後、えーーー、待ってるんだけど
 って、ちょっとモヤモヤ。
 次第に若干イライラしてきたり、うん」

「ごごごご」
「悪かった、ホントに」

「で、最終的に、
 あれ、もしかして途中で事故とかあってる?
 裏一族の襲撃受けた?って、考え始めて」

「「京子ぉおおお」」

「………二人とも。
 生きてたのね。良かったわ」

ニコリ(虚無の笑顔)。

「なにか食べよう京子!!」
「甘い物おごるぞ!!」

大丈夫よ、と制する京子。

「2人を待っている間、
 この店の甘い飲み物はほぼ制覇したから
 もう、暫くはいいわ」

「「ホント、ごめんなさい!!!」」

よし、と
決心を決める満樹。

「肉を食べに行こう!!
 好きな店を選んでくれ京子」

しゃぶしゃぶでも
ステーキでも、焼き肉でも
全部おごってやる、な満樹。

「大丈夫なのか、満樹!!?」

東一族ってと驚くツイナ。

「あぁ、別に見る分は大丈夫だし
 俺は食べな……(ちらっと虚無の京子を見る)
 あ、うん、だし汁ぐらいなら、いや、まぁ、うん。
 いや、うん。
 とりあえず!!俺はお詫びがしたい!!」

普段肉を食べない東一族だが
知識として知っている。
エネルギー源として肉は高い効果を持つ。

つまり。

「肉は力。
 力はパワー!!!」



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「約束の夜」98

2018年09月14日 | 物語「約束の夜」


満樹とツイナは、東一族の村を出る。

「やっと約束を果たせるね!」
「そうだな」
「京子待ってろよ!」
「ところで」

満樹が一応の確認。

「忘れ物はないか?」
「えっ」
「忘れ物」
「それなら、大丈夫!」

北一族の村へ向かう道中。

ここから、また長い旅がはじまるのだ。
いつ、自身の村へ帰られるのか、判らない。
自分たちも無事に
はたまた、この先、命あるかどうかも判らない。

「ねえ満樹」
「何だ?」
「ちょっと地の文がぽくないよな」
「そうだな」
「「約束」っぽくするなら、こう!」

ここから、また長い旅がはじまる(かもしれない)。
いつ、自身の村へ帰られるのか、判らない(気もするし)。
(帰って来られるだろうし)
自分たちも無事に
はたまた、この先、命あるかどうかも判らない。
(けど、まあたぶん大丈夫だと思う)
(この先、タライが落ちてくるってドリ●展開でも、いいっかな~)

「こんな感じかな!」
「地の文まで口を出しはじめる、俺たち・・・」
「タライ!」
「痛そう・・・」
「・・・・・・」
「何だった?」
「あっ、荷物の確認!」

共同荷物を特に確認。

「京子へのおみやげだな」
「ちょっと約束の日より遅くなったからね~」
「ごぼうチップスと」
「おばけの金太に」
「きじ馬?」
「するめ」
「何っ」
「たまに食べたくなるからさ~」
「さすが海一族」
「東でするめを出すのは悪いと思って・・・」
「そこは気を遣ってくれたのか」

「あとこれ」

「何その、じゃばら薄い紙」
「これはこう広げて、こう一枚ずつ広げて」
「おお、花に!!」
「お花紙だよ~」

学校行事とかでよく登場する、紙のお花です。

「ほら、海南対抗運動会の」
「準備ってこと?」
「そがん」
「運動会シーズン・・・」
「大切なことなんだよ~」
「でも、それはこの旅として必要なのか・・・」

いえ。まったく必要ありません。

「もし花紙が足りなくなったら、北で買えるのかなぁ」
「北は何でも揃うからな」
「ねえ、満樹」

ツイナは首を傾げる。

「これは何?」
「ああ、これは、」

満樹は、ツイナが取り出したものを受け取る。

「キノコの粉末」
「粉末っ」

たいしたことのないようで
よく考えると、それって何? の単語に
ツイナは焦る。

「えっ、これ何!?」
「だから、キノコの粉末」
「キノコの!?」
「そう」
「対裏一族用とか!?」
「いや?」
「えっ、武器なの!?」
「武器じゃないぞ」
「毒!!?」
「違うって」

ツイナは思わず、持ってしまった手を拭く。

「何のために持って来たの!?」
「いや、ほら、京子が肉好きだから」
「肉好きと何の関係が!?」
「塩みたいな感じで」
「肉にかけるってこと!?」

らしいです。

満樹なりのおみやげ。

「甘いものとか必要だったかなぁ」
「どうだろ?」

「あのさ」

「チョコとか?」
「マシュマロとか?」

「おーい」

「キャンディはどうだ?」
「オンナノコは甘いものにうるさいからな」

「お前らそろそろ京子を探せ!!」

ごちーーーん!!

げんこつ。

「「えっ、誰!!?」」

満樹とツイナは振り返るが、そこには誰もいない。



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