TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「続・夢幻章伝」75

2021年09月28日 | 物語「続・夢幻章伝」
どどーん、と
民泊の入り口に卵みたいな形をした
ハンモックチェアが据え置かれる。

「これよ!!!」

まるで幼子に戻ったかのように
嬉しそうに座るマツバ。

「それにしても店主さん?宿主さん?綺麗な人だったな」

やあ、旅人さん。
ワタシと娘の民泊にようこそ!!
我が家のお客様になったからには、
全てに満足して帰っていってもらうつもりだから。
そこの所よろしく!!!!

「顔立ちが整っているというか、
 男とか女とかそういうくくりを超越したなにかキコキコ」
「挨拶と同時に食事の仕込みに入って行ったし」

「ええ!!
 お客様に出す物に一切の妥協はしない。
 それが私のパパよ!!!!」

さぁ、と彼女が立ち上がる。

「そろそろお部屋に案内しましょうか」

「だな、荷物も置いて」
「そして同僚を探しに行くキコキコ」
「………同僚、そうかそうか」
「アヅチ忘れてたでしょキコキコ」
「そんな事はねぇよ!!!
 俺はこのオレンジジュースの美味しさにだな。
 って、そろそろ行くぞマツバ!!」

行くぞ~、と後ろを振り返るアヅチ。

「おい………マツバ?」

そこには、
まるですべてを投げ打って
全力で試合に挑んだ後、
真っ白に燃え尽きたボクサーの様に座るマツバ。

「マツバ、お前!!」
「まさかキコキコ!!!」

「………酔ったわ」

「ほらぁあああああ!!!!」
「はしゃぎすぎるからキコキコ!!!!」

その頃、マツバの父親は
移動中の馬車の中で、予期せぬ危機を感じ取る。

「嫌な予感が、………これは」

そして口元に手を当てる。

「………酔った」

口元に手を当て、
馬車酔いでぐったりしていた。

「さぁて、3人様。
 みなさん同じお部屋で大丈夫?
 それとも各々」
「そうねぇ、たまには個室も」
「うおっとおお、同室で!!お願いしますぅキコキコ」

ずささ、とへび呼ロイドが割って入る。

(ここからの会話は小声で交わされております)

「なによ、たまにはいいじゃない」
「そうだな、一応忘れがちだが俺達男女だし」
「いいや!!!
 いつ何時敵襲があるかもわからない状況で、
 ここは3人同室が適切キコキコ!!」
「敵襲って」
「お前、さては宿代が惜しいんだな」
「ぎくぅうううううう!!!
 そんな事はないキコ。おいら安全を思いキコ。
 こういうお宿絶対高いとか、
 そういう事思ってないキコキコ」
「思ってんだろ!!!」
「いいじゃない、たまには個室で良い雰囲気の
 アロマでオイルで、石鹸とか良い物で、
 お風呂に花びらとか、なんか泡泡のお風呂に入るのよ!!!!
 いい!!?あんた達同室だったら同じ目に合わせるからね。
 フローラルでアロマーな香りに包まれるのよ」
「だから、落ち着けよマツバ」

俺、スウィートジャスミンとかの香りをただよわせるのか、と
思いながらアヅチはお宿のお姉さんの後をついていく。

「うーん、とりあえずお部屋をみて決める?」

さあどうぞ、と
お姉さんが部屋のドアを開ける。

綺麗に掃除された部屋はもちろん、
整えられたリネンのシーツ。
淡く香るアロマの香り。
落ち着いた色合いで整えられているが
邪魔しすぎず部屋を彩るように花が生けられている。

置かれているアメニティも
こだわり抜いた一品。

「あら、見て。
 パジャマもおしゃれな」

置いてある衣類を手に取り広げつつも
くるりと後ろに振り返るマツバ
が、くる~り、と振り返るその時に
ふと視界の端に移る白い何か。

ふわふわと浮かぶそれは
あら、なにかしら
こじゃれたリースのカーテンかな、と
目を向ける。

そこには。

くえくえくえくえ。

「ふあああああああ!!!」
「同僚!!!!」
「出たぁああああああキコキコ!!!!」

窓いっぱいに張り付く
それはへび呼ロイドの同僚達。

「あらあ」

谷一族のお姉さんがハエたたきを取り出す。

「もう、毎日これなのよ。
 光に呼び寄せられるのかしら」

そんな秋に発生するカメムシみたいな。


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「続・夢幻章伝」74

2021年09月24日 | 物語「続・夢幻章伝」
「とにもかくにも、」

マツバは立ち上がる。

「まずはウェルカムドリンクをいただきましょう!」
「あわわ、マツバ!」

へび呼ロイドはキコキコする。

「それはお客様用だよキコキコ!」
「ええ、私はお客様よ!」
「えっ、だってここに泊まるかどうかはまだ、!! キコキコ!」
「泊まらないでどうするのよ!」

マツバは、素敵ドリンクを手にする。

ドリンクだけじゃない。
グラスにもこだわってあって、オシャレ半端ない。

「くっ。グラスまでかわいい!」

そして

「ドリンクおいしい!!」

女子の素敵ポイントは男子には判らない。
アヅチは飲めればいいや、と、オレンジジュースを飲む。

「ちょっと、もうちょっとオシャレを楽しみなさいよ!」
「飲めればいい、ほんと。飲めれば」
「そのオレンジジュースだって、買ってきたペットボトルじゃないわ!」

きっと、この店のオーナーが厳選したオレンジを、自ら絞ったものだろう。

「パパはお客様に喜んでもらうのが好きで」
うんうん、と、女性は頷く。
「それでいて、そもそも多趣味だから、これは本当に天職なのよね」

女性はクッキーを運んでくる。

手作り!!

「これもパパさんキコキコ?」
「もちろんよ!」

原料からこだわってます!!

「このジャムだって手作りよ!」

「「さすが!!」」

「イチゴのために、土からこだわって」

「「そこから!!?」」

オイラ倒れそう(おサイフ的に)と、へび呼ロイドは立ちくらみ。

「とりあえず、そのパパさんが戻ってくるまで、聞きたいことがあるキコキコ!!」

そう、確かに
何か気になるワードを云っていた、この子!!

最近物騒だと云う、谷一族の村。
ギャーズンドコズンドコにまつわる、壁画。
スネークバルーン。
謎の光。

「何のことかしら。私が答えられることなら」

素敵ドリンクを飲みながら、ハンモックに腰掛ける彼女。

「オイラたち、旅をしているキコキコ!」
「そう、スタンプラリーのスタンプはどこにあるのかしら!!」

ボキッ!!!

「話の腰が折れたキコキコ!!」

「折れてないでしょ、この話なんだから」

「キコキコキコキコキコキコキコキコぉおお!!」

「スタンプラリーなら、村の入口にスタンプ台なかった?」

「入口!!」
「谷一族スルー出来る場所に!?」
「気付かなかったキコキコ!」

なら、ゆっくり1日過ごして、帰りに押せばいいか~、のマツバ。

このオレンジジュース、やばっ、うめぇ、のアヅチ。

出来るだけ浪費をしないで、谷一族の村を去りたい、へび呼ロイド。

「でも、そう簡単に押せなくってよ」

揺れるハンモック。
揺れるグラスの氷。

「何!?」

「あなたたち、忘れてないわよねぇ」

「も、もしや!?」

「今、谷一族の村で起きていること」

「起きている、こと??」

「白くてふわふわしたやつらが、この村を侵略しようとしている」

「白くて」
「ふわふわ」
「もしや、」
「「へび呼ロイドの同僚!?」」
「だからそれ! キコキコ!!」
「ちょっとへび呼ロイド黙ってなさい!」
「えぇえ、キコキコぉ~」
「俺たちに何をさせようってたんだ」

「ふふふ。まあとにかく泊まりなさいよ」

「ええ、もちろん!」

「探していたものゲットしたって、パパの喜びを受信したわ」

「「それ!!?」」




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「続・夢幻章伝」73

2021年09月21日 | 物語「続・夢幻章伝」
 
ようこそ民泊へ!!
 
「あったわ!!」
「あるもんだな!!」
「とりあえず入ってみるキコキコ?」
 
いざ行かん!!
 
「みんな、見て!!」
 
玄関にはラベンダーやユーカリーの葉で作られた
グリーンリースが飾られている。
 
「これはポイント高いわよ!!」
「ホントだ!!キコキコ!!」
「得てしてこういう所には八割方飾られているユーカリの葉」
「あと、アイビーとか、な」
「間違い無いわ!!」
 
ドアを開けると、小さなカウンター。
そこにはウエルカムドリンクが。
しかも各種のベリーが入ったフレーバーウォーター。
 
「!!!!」
「これは夕食とかアカシアの木製プレートで出る民泊だぞ」
「ここまで来て、夕飯に漬け物は出ないでしょう」
「分からないキコキコ。
 こんな雰囲気のお宿って天然酵母とか発酵が好きな人が多いから、
 自家製味噌に漬け物、梅干し。~~大自然を感じて~~」
 
こういうお宿を探していたわ、と、期待値が高まるマツバ。
こういうお宿ってご飯の量全体的に少ないんだよなぁ、と
コンビニを探したいアヅチ。
こういうお宿って民泊にしては高いんだよねぇキコキコ、と
お値段を気にするへび呼ロイド。
 
「どんな人が経営しているんだろ」
「あれかな、
 慌ただしい生活に疲れて
 田舎暮らしを始めた都会(北一族あたり)の人かな」
「むしろ都会(北一族あたり)から帰ってきた
 地元出身の若者が実家をリノベーションして」
 
民泊って、ある意味ちょっとしたホームステイ。
お家の人がどんな人か、それも大事である。
 
「やあやあ、お客さんかな」
 
奥からすうっと人が現れる。
 
長い黒髪。
そして、額にある入れ墨と一族独自の衣装。
すらっとした谷一族の若い女性。

「イメージ通り!!」
「こう言うお宿を経営してそう」
「ヨガとかもしますか??」
「オーガニック!!」
「食事に肉は出ますか??」
 
「おや、これは、南一族の方?」

ようこそ、とアヅチ達を笑顔で出迎える。

「ちなみに、今日の夕飯は生姜焼き!!
 お肉もご飯もおかわり自由だよ!!」

親指ぐっ!!!

答える様にアヅチとマツバも親指ぐっ!!
 
 「イメージ通りと言うけれど
 この民泊を経営しているのは私のパパ」

「パパ!!」
「父!!」
「おとん!!」

「このウェルカムウォーターも、
 玄関のリースも、内装も、ちょっとした小物も、全て私のパパが準備したもの!!」
 
そうさ、全てワタシのトータルコーディネート!!!

3人の脳裏にまだ見ぬ店主の声が響く。

「ちなみに、そのパパ上はいずこに?キコキコ」

ああ、と谷一族のお姉さんは言う。

「パパは朝から何か電波を受信してだね」

顧客が求めるものがこの民泊には足りない。
そう、それは
卵みたいな形をしたハンモックチェア。
ワタシはそれを入手しなくては!!!!

「と言って飛び出して行ってしまった」

「「「卵みたいな形のハンモックチェア!!!」」」

「マツバ!!!お前が変なこだわりを言うから!!!」
「店主さんが受信しちゃったキコキコ!!」
「そんなの知らんわよ!!!」

願いは、きっと、叶う。

「でも、まだ帰ってこないんだよね。
 最近変な生き物が出没するから
 ちょっと心配でさぁ」

「「マツバぁああ!!」キコキコ!!」
「知らんわよ知らんわよ!!!!」


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「続・夢幻章伝」72

2021年09月17日 | 物語「続・夢幻章伝」
谷一族の村は、もちろん谷にある。
洞窟の中に建物を構えている。

谷一族独特の灯りがあちこちに灯る。

「早いとこお宿を決めて、そしてスタンプをゲットするわよ!」
マツバは云う。
「スタンプさえ集まれば、すぐにでも出発していいんだから」

「えっと、オイラの同僚キコキコ・・・」

先ほど軽食も出なかったし、お腹空いた。

「懐かしいキコキコ」

スネークバルーンは、谷一族を見回す。

「そんなにここに思い入れが?」
「ここに、ギャーズンを倒すための壁画があったキコキコ」

スネークバルーン的には同僚を助けるための大きな手がかりだった。

もしや、ここに描かれているのは、君!
スネークバルーンじゃないのか!!

ほわんほわんほわん

「てへへキコキコ」

「何、にやにやしてるのよ」
「気持ち悪いぞへび呼ロイド」

壁画に自分が描かれているなんて、

「もしかしてオイラヒーロー!!?キコキコ!」

「ここ(谷)に来るとみんなおかしくなるのかしら」

マツバは首を傾げる。

「とにかくお宿を確保しておきましょう!」
「えーっと、なんだっけ。民泊??」

「そうよ」

マツバは復唱する。

「出来れば、古民家をリノベーションしたシンプルだけどオシャレで、卵みたいな形のハンモックチェアがあり、色合い的には全体的に生成りで、ウエルカムドリンクが果物入りのフレーバーウォーターで、ご飯とか木製プレートに燻製のハムとかオーガニック野菜、の民泊よ!!」

「理想が高すぎるキコキコ」
「これぐらいの要望、たいしたことないわ」
「どんだけだよ」

「さあ、さっそく宿探しとスタンプラリーのスタンプよ!」

3人は再度歩き始める。

北一族と同じく、1度訪れている谷一族の村。

「あ、この道知ってるわ」
「そうそうキコキコ」
「確かにここを曲がって」

谷一族の村も慣れたもの。



「うわぁぁああー!!!」

3人は頭を抱える。
たどり着いたのは、

「「「そう、ここ!! トウノの宿!!!」」キコキコ」

知ってる道って、そうなるよね。

「ちょっ! 誰よここに向かったの!」
「ええ!? マツバじゃないのキコキコ!」
「早くとんずらしないと!」

だばばばばばば。

「やぁ、君たち!!」

ピカァ(謎の光)

「2話ぶりだな!」

飛雨乃!!!

「旅人よ、谷一族の村にようこそお越し下さいました。
 私たち谷一族は坑道から採石を行い
 それを主な収入源として暮らしています。
 鉱物を加工して売る産業も栄えています!!」

「わあぁあ、それ、前作でも聞いたやつ!」
「早く撤収しましょう!」
「やばいよやばいよキコキコ!」

「あれ? お客様~!!?」

3人はここいちばんの走りで逃げる!!

走って
走って
走り着いた先は、

――――いらっしゃいませ、観光客。ようこそ民泊へ。

の、文字。

「み、」
「「民泊あった!!」」



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「続・夢幻章伝」71

2021年09月14日 | 物語「続・夢幻章伝」

「なんか、展開が濃ゆいのよ!!」

とりあえず去り行く
トウノの後ろ姿を見てマツバは思う。

「そうだな、
 唐揚げは美味しいけど
 毎日はちょっと胃がもたれる的な」

同意。とばかりにアヅチも頷く。

「つまり、キコキコ?」

「何も起こらない回?ってのも
 あって良いんじゃない!!」

「ああ。たまにはお粥とか食べたい的な」

「普通にスタンプを貰いその後は、名所を観光し、ホテルのお部屋でゴロゴロして過ごし、美味しいものを食べ、露天風呂とか入って、自然の雄大さを感じて、足ツボマッサージとかしながらゆっくりと何もしない時間を過ごして、旅館のバーで美味しいお酒とおつまみで一杯ひっかけたりして、フカフカの布団で寝た後に、朝は遅めに起きて、個室で食べる朝ごはんを終えて、お土産沢山買って、谷一族の女将とかにお見送りさられながら、さぁ、次の村へとかそう言う事!!」

長っ!!!

「シンプルな塩おにぎりこそ
 素材の味が分かる的な」

例えが分かるようで分からないアヅチは
少し黙っておこうか。

「もーうマツバはまた、
 そんな仕事に疲れたオフィスレディ的な事を言ってからにキコキコ!!」

あと、アヅチも
30代後半の胃のもたれ具合みたいな事を。

「だいたいそう言う事言うと、
 真逆の事が起きる前フリみたいになるから
 気をつけるキコキコ」

「まぁ、言うたって
 俺たち泊まるのトウノん家のお宿じゃない?」
「………」

そうだった、
と温泉旅館の夢が砕け散るマツバ。
まぁ、温泉なら東一族の村で探そう。

「はぁ〜、泊まるの2回目だから
 リピーター割引とか無いのかしら」
「そうだな、2回………目、うん?」
「なによ2回目がどうしたって………はっ!?」

あああ!!!と
顔を見合わせるアヅチとマツバ。

前回(夢幻章伝44〜50話あたり)で
お宿代ばっくれていたのだった。

「ままままずいわ!!」
「今から払いにいくしか無いだろ。
 えええ、遅延料どんだけかかるんだ」

2人は知らない。
なんやかんやで、お宿代チャラになっている事を。

「払いにいくのは勿論だ!!」
「ええ、当然の義務よ!!」
「しかし、その後また同じ所に泊まるって気まずい!!」
「この人達、
 今回はきちんと払うんでしょうね?
 という目線」
「つらい!!」
「でも、谷一族のお宿って
 トウノの家だけらしいし」

「いや、2人とも
 なんやかんや言ってるけど
 払うのってオイラだよね?キコキコ」

マツバはかぶりを振る。

「仕方ないわ、こうなったら」

「「なったら?」」

「探すわよ!!民泊!!!!!」

民泊、それは旅館やホテル等ではない
一般の民家に泊まる事。

「出来れば、古民家をリノベーションしたシンプルだけどオシャレで、卵みたいな形のハンモックチェアがあり、色合い的には全体的に生成りで、ウエルカムドリンクが果物入りのフレーバーウォーターで、ご飯とか木製プレートに燻製のハムとかオーガニック野菜で」

「それは民泊なのか?」
「マツバ、ちょっと落ち着くキコキコ」

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