TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「続・夢幻章伝」24

2021年02月26日 | 物語「続・夢幻章伝」
「待たせたなあ、マツバー!!!」

どーん、と、タクトが店に入ってくる。

が、

みんな旅立ったあと。

店内には誰もいない。

いるのは、暇そうにしている、ひとりの店員。

「あれ? あれあれ? マツバは!?」
「いってしまったよ」

店員はグラスを拭いて並べる。
先ほどまでの客が使っていたもの。
短い時間。
ずいぶんと賑やかだった。
そう、まるで、盆正月に親戚が集まったときのように。
あっという間に過ぎた時間。

「えぇ?!? マツバはどこにいったの!!」

「さあ?」

店員は首を傾げる。

「俺も追っていかなきゃ!」

人の店で、タクトは準備を整える。

「って、帰るんだろ、お前は」

入ってくる、もうひとりの客。
タクトの父親。

「でも親父!! 俺はマツバを追わなきゃいけないんだ!」
「なんでやねん」

「そうか、君もマツバの友だちなのか」
店員は、どこか遠くを見る。
「違う! 友だち以上恋人未満だ!!」
「えぇえ!!?」

タクト父親は、タクトの口を塞ぎ、

「もう行ったあとだったんだな」

そう、店員に話しかける。

「・・・ああ」
「お前こそ、追わなくてよかったのか」

店員は首を振る。

「後を追ったって・・・、そして、そのあとどうしたらいいのか」
「・・・・・・」
「俺には判らない」
「ふが!ふがふがふが!!」

口を塞がれたタクトが何か云っていますが、スルー。

「いいんじゃないのか」

タクトの父親は云う。

「一緒に帰ろう。で」
「・・・・・・」
「俺はそれでいいと思うが」
「俺も思うよ、親父! 一緒に帰りたい!!」
「なんでやねん」

そして

日が暮れそうで、やばいんですけど。

「あんたさぁ、ドラ●もんのポケット的なものなかった?」

アヅチとマツバは、弁当箱(×3セット?)(+パンの詰め合わせ)を抱え
へび呼ロイドをちらりと見る。

「ええっと、オイラそんな機能あった?」

へび呼ロイドは前作を確認する。

「ありがたいんだけど、中身が入ってるものもあるし」
「重たいんだよ!!」
「ちょっ、ちょっと待って!!」

キコキコしながら、前作夢幻章伝を、めくるが
その機能はないらしい。

「食べちまうか?」
「もう日も暮れるわ!」

食べものも大切だが
そろそろ寝床も確保したい。

「何でこっちなのよ~」
「でも、スタンプラリー山一族のスタンプも必要だよキコキコ」
「山道ってすごいんだな!!」
「オイラも疲れてきたー」
「あんた飛んでるんじゃない!!」

西一族の村から、山一族の村へ。

当然

険しい山道が続いて行く。

夕暮れ。
もうすぐ、真っ暗。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「なんか、獣とか出そうなんですけど」
「やな予感しかしない」
「もしかしてオイラ狙われてる??」





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「続・夢幻章伝」23

2021年02月23日 | 物語「続・夢幻章伝」
なんや、かんや、と
色々な事はあったけれど。

ポン!!

無事、西一族の村2個目のスタンプをゲットする二人。

「よっしゃ」
「これで、さらに
 3個目があるよとか言わないでしょうね!?」

ああん?と父親に詰め寄るマツバ。
お年頃。反抗期。

無い無い、と首をふるマツバの父親。

「だが、真都葉。
 折角なんだ、今夜ぐらい泊まっていっ」

「よっしゃ!!
 それじゃあ、心置きなく出発出来るわね。
 行くわよものども!!!」
「ものども、って俺達の事か!?」
「ゴーゴー!!」

勢いよく扉を開けて出て行くマツバ達。
父親の提言はスルーされた。

「うん?」

と、店の入り口付近にカゴが置いてある。
大量に詰め込まれたパン。

なんだこれ、ごんぎつね、か。

「……これは、沢子のパンだな」
「ふうん。ここまで来たけれど、
 中の雰囲気にジャマしちゃ悪いと思ったのかしら」

そうよね、と言うコトハにマツバ父は頷く。

「真都葉」
「………持っていくわよ。
 お礼、言っておいて」
「ああ、必ず」

パンをバックに詰めようとしたマツバは
そうだわ、と袋を取り出す。

「コトハ、これあげる」
「なにこれ?」
「クッキー。伯父さん作よ」

「父さんの!?」

ふん、ふうん、と
しげしげとクッキーを受け取りながら
何とも言えない表情を浮かべるコトハ。

こちらはこちらで
色々複雑な様で。

料理得意なのか、マツバ&コトハの父親ズ兄弟。

「まあ、俺は週末だけの
 雇われ店長だけど」
「急に会話に飛び出さないでくれます!?」

相変わらず父親に厳しめのマツバ。

「あ!!!!!」

思い出した、と
パチーンと指を鳴らすアヅチ。
動作がいちいち古くさい。

「なんなのよ、うるさいわね」
「思い出したぜ、偽飛び出せ小僧だ」
「???」

どうした、どうした、と言う
皆の目線がアヅチに集まる。

「ほら、東一族の浴場ですれ違った
 あの飛び出せ小僧。妖精さんの!!」
「ああ、アヅチが髪の毛引き抜いたやつね、キコキコ」

「何を言ってるんだ君たち」

怖っ、と引き気味のマツバ父。

「だからさ、おっさん!!」
「……おっさん!?」
「おっさんに似てるんだあいつ。
 東一族っていう割には、白髪だったしな」

なんならマツバより親子っぽい。

「似た顔の人も居ると言うが
 俺に東一族の知り合い……なんて」

いやまさか、と首を振るマツバ父。

「そんな事より、さっさと進むわよ。
 日が暮れる前に!!!」
「真都葉っ!!」

待ってくれ、と呼び止める父。

マツバは足を止める。
自分になんというのだろう、
今さらこの村で一緒に暮らそう、と
そう言うのだろうか。

「これを」

「………これ、は」

それは、風呂敷に包まれた三段の重箱。
なおかつフルーツとかのデザート系は
別に二段の重箱に入れてあるという。

「「「運動会の時のお弁当!!!!」」」

「おばあちゃん(マツバ父の母親)と
 同じ事してる!!!!!!」

「また、顔を見にそちらに行く」
「はぁ?」
「…………その時は、ちゃんと話そう」

「考えてあげなくもない」

「真都葉」

父親とコトハに見送られ村を後にするアヅマツ一行。

一歩一歩進む。
大量のパンに、重箱弁当+デザート重。
それをえっちらおっちら抱えて。

「………」
「………」
「………」

ちなみに、
南一族の村でそれぞれの家族が持たせた
弁当の空箱も持っている。

「久々に実家に帰ったら
 大量の野菜を持たされた一人暮らしの学生か!!?」



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「続・夢幻章伝」22

2021年02月19日 | 物語「続・夢幻章伝」
マツバはオムライスが好き。
ピーマンは嫌い。
お肉は好き。

いろいろ忘れていたことを、店番の人(マツバの父親)は思い出す。

マツバに会うのは、何年ぶりか。

幼いころ
もう、この西一族の村では育てていけないと、
南一族に住む自身の家族に託し、

それでも

遠目に、何度も様子を窺いに行った。

対面したこともあるが、
やはり、いたたまれない空気になって
いつも、逃げ出すように去って行った。

そんな、自身の娘。
真都葉。



「はっ。どっちかと云うと肉の方がおいしいわね!」
「だってA5ランクだもん、キコキコ」
「新しい肉と云うのが判るもんだな!」
「そりゃそうよ。うちは狩りの一族だもの」
「その上、焼くだけだしね!! オムライスとは訳が違うわ!」

自分の手作りオムライスにケチを付けておる。

アヅチとマツバとへび呼ロイドと、コトハ。

アヅチは、コトハの雰囲気も慣れているようで
4人で和気あいあい。

「よかった・・・」

店番の人(マツバの父親)は、呟く。
様子を見守る。
暖かく。

「デザートも付くのよね、叔父さん!」

「はいっ」

厨房へと引っ込む。

「それにしても、久しぶりねぇ、マツバ」
「あんたも相変わらずねぇ」

爪楊枝を探しながら、コトハは云う。

「もっと西に寄ったらいいじゃない」

コトハはへび呼ロイドを見る。

「なんかこんなのと、旅をしているのなら」

「このへび呼ロイドと云う同僚を探す旅だ」
「スタンプラリー、食い倒れ含む」

「ふぅん」

対等に話していますが、コトハの方が3つ年下です。

「西に寄れと云われても、そう云うわけにはいかないのよ」

マツバは、コーヒーに砂糖を入れる。

「そうだよねぇキコキコ。さっきの気絶とか、」
「私も忙しいから」
「豆の収穫とかな」

へび呼ロイドの言葉を遮るマツバに、
現実的なアヅチ。

マツバはコーヒーに砂糖を入れて、混ぜる。

「こっちも暇だからさ」
「コトハはふらふらしてるからでしょ。勉強しなさいよ」
「勉強嫌いだし」
「そんなんで、今後どうするのよ」

ミルクをコーヒーに入れ、砂糖を入れる。

「マツバ砂糖入れすぎキコキコ」

「今後ねえ、どうしようかしら」
「豆の収穫の手伝いに来るとか?」

アヅチの勧誘。

「ゆっくり考えればいい」

デザートをテーブルに並べながら、マツバの父親が云う。

「話に入ってこないでよ。そして、スプーンないじゃない」

反抗期って怖い。

「私はいつの日か永久就職ね」
うんうん、とコトハは頷く。
「はあ。」
「女子の夢キコキコ」
「兄貴みたいな話題になりだしたな」

アヅチの兄、モモヤ。
そんなだったっけ。

「狩りのあとも、清潔にしてる人がいいわ」

コトハの希望。
自分は狩りに行ってないから、そんなこと云っちゃうコトハ。

「とにかく、清潔できれい好きな人がいいわ」
「あんた部屋汚いじゃない」
「だからよ」
「えー。でも、いたな。なんか風呂に入らないやつ」
「ちょっ! 誰よ」
「えぇえ、いたかなぁキコキコ」

待てよ、と、アヅチはシンキングポーズ(考える人)

最近、誰だったっけ、と
頭を巡らせることが多いね、アヅチ。

「なんか、いたよな。風呂に絶対に入らないってやつ」

「そんな話題あったかしら」
「あぁ、うん。前回の旅のとき」

1週間ぐらい前の話。

「思い出しなさいよ、気になる」
「気になるキコキコ」

うんうん頭をひねらせて、アヅチ。

「あっ、思い出した! 東一族の公衆浴場に寄ったときだ!!」
「えっ、東一族にそんな人がキコキコ!!」
「絶対入らないって云ってた。タツキの方じゃなくて、」
「ええっと、誰だったけ?」
「うーん。誰かいたようなキコキコ」

「でも、云えることがあるわね」

コトハが云う。

「それ、きったな(汚い)!!」




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「続・夢幻章伝」21

2021年02月16日 | 物語「続・夢幻章伝」
「マツバの!?」
「父親ぁああああ!?」

えええええ?と
驚くアヅチ&へび呼ロイド。

「私じゃないわよ」

あっちあっち、と店番の人を指差すコトハ。

「私は、いとこ」

いとこかぁ。

納得。
だってコトハ雰囲気もだけれど
言動がマツバにとても良く似ている。

でも。

「このおっさんが、
 マツバの親父さん……」

まじまじと店番の人を見るアヅチ。
ふふふ、と笑うコトハ。

「似てるでしょう」

白色系の髪に瞳。
顔立ちや雰囲気も
マツバとは全く違う。

「似て、うん?うーん?」
「目もととか」
「目もと、め、もと、……言われれば
 似て、似てる????」

「この子は、母親似だから」

ぽつり、と呟く店番の人こと
マツバの父親(多分)。

「叔父さん、そんな事より
 A5ランク、ステーキ定食4人前よろしく!!
 ちなみに私のお肉はミディアムレアで!!」

しっかり、ちゃっかり
自分の分を数にカウントするコトハ。

「コトハ、食べるのはいいけど
 自分の分は自分で払いなさい」

一応たしなめるマツバ父。
めっちゃ渋い表情を浮かべたコトハに
まぁまぁ、とへび呼ロイドは助け船を出す。

「いいよ、マツバの関係者なら
 この際オイラが払いますキコキコ」
「……そういうことなら」

うーんと厨房に引っ込んでいくマツバ父
去り際に、この店で一番高いメニューだけど、と
呟いたのでへび呼ロイドは急いで手持ちを確認した。

「初日からクレジットカードかな、
 アヅチ、カード使えるのかなこの店、
 ってどうしたのキコキコ?」

う~ん?と首を傾げるアヅチ。

「マツバの親父さん?
 なんか、誰かと似ているような?」
「マツバと?キコキコ」
「いや、もっと違う所で」

ここまで出てきてるんだけど、と
アヅチは喉元を押さえる。

「………アヅチ、物忘れには早くない?キコキコ」
「ばっかやろう、物忘れをバカにするな。
 歳をとるとすぐ人の名前と顔が出て来なくなるって
 ばあちゃんも言っていた」

「それ、南一族の村に住んでる私の父さんか、
 お爺ちゃんじゃない?」

兄弟親子だしというコトハに
そんなもんか、と
納得できるようなそうでないように頷くアヅチ。

「って、
 お前イズミさんの娘!???」

マツバの家の隣に住んでいるという
マツバの伯父さん。

「そうよ」

「待てよ、マツバの親父さんが西一族の村に居て
 おまえの親父さんは南一族の村に居て
 なおかつお互いの娘を育てていて????」

「色々複雑なのよウチの家系」

そんな事より、と
コトハはナイフとフォークを構える。

ちょうどのタイミングで運ばれてくる
A5ランクステーキ定食。4人前。

「いい匂い、キコキコ」
「これは、詳しくない俺でもよく分かる
 良い肉だ!!」

「お口に合うと良いけど」

そう言ってレシートを置くマツバ父。
へび呼ロイドはちらりと見えた額にひえっとなる。

は、さておき。

「こいつ、なかなか起きないな」

おーい、とアヅチが声をかけるが
マツバは眠ったまま。
このままではほかほかご飯が冷えてしまう。

「仕方無い、先に食べ」
「そこは、待っときなさいよ!!」
「うわあああ、びっくりしたマツバぁああ。キコキコ」

むくり。と
起き上がるマツバ。

「……真都葉」

遠慮がちに話しかけるマツバ父と
目の前のステーキ定食を見つめるマツバ。

「昔っから、そう」
「?」
「私の事なんて全然分かってない」
「………そう、か」

静かに厨房に戻るマツバ父。

「おい、マツバ」
「ちょっと、言い過ぎなのでは、キコキコ」
「いいのよ」
「いいのかよ」

え、俺ちょっと、
こういうシリアスな空気苦手なんですけれど、と
戸惑うアヅチにへび呼ロイド。

そして、遠慮することなく
ステーキ定食をぱくぱくと食べるコトハ。

「冷めちゃうわよ」

「ええっと」
「それじゃあ、頂きま」

「真都葉」

再び厨房から姿を現したマツバ父。
ことり、とテーブルに置かれたのは。

「オムライス」

そうか、マツバ、
オムライスが食べたかったんだ。

「という意味ではなく!!!!!
 食べたい物が分かってないという意味ではなく!!!」

こういう所がダメなのよ、と
イライラ気味のマツバ。

「まぁいいわ。
 食べ物に罪は無いんだし」

ふん、とスプーンを持つマツバ。

父親の方は向かずに、
ぽつり、とこう尋ねる。

「ちゃんと、ピーマン抜いてるんでしょうね」

そう、マツバの苦手な物。

「あ」

皆の視線がマツバ父に集まる。
あ、て。
今「あ」って言ったぞ。

ええっと、と泳ぐ視線。

「ほんっと、こういう所よ!!!!!!」


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「続・夢幻章伝」20

2021年02月12日 | 物語「続・夢幻章伝」
「強制睡眠モード!! キコキコ!!」
「ちょっ! マツバ起きろ!!」
「この感覚、直近どこかでキコキコ!」
「はぁあああ、あのチナツとかがやっていたわぃ!!」
「でもこれたぶん、気絶に近いんじゃないかしら」

コトハが口を挟む。

もう何が何やらであるが、とりあえずマツバは眠っている。

「真都葉!!!」

スタンプを投げ出し、店番の人が駆け寄る。

「いやいやおっさん。寝てるだけだから」
「生きてはいるよキコキコ」

やれやれと、アヅチとへび呼ロイドはおっさんを退けて
マツバを椅子へと運ぶ。

(ノーわっしょい)

それでもなお、おっさんは真都葉を心配し
急いで奥から濡れたタオルを持ってくる。

「大丈夫か、真都葉!?」
「寝かせておいてやれよ、おっさん」
「スタンプちょうだいキコキコ」
「慣れてるわねぇ」

この空気感に。

「叔父さんおかわりくださいな」
「真都葉!!」
「ちょっと、店番の人!!」
「よ、喜んでー!」

叔父さんと姪っ子っぽいようであるが
店番と客、と云う状況は覆さないコトハ。

(但し、遊びに来ている=ただ飲み)

「ほら、君たちも」

運ばれてきたお茶を、アヅチとへび呼ロイドは受け取る。

「スタンプ押してもらえば次に進めるな」
「マツバ、この村嫌がってたもんねぇキコキコ」
「起きたら、飯でも食って出発するか」
「同僚も忘れないでキコキコ」

「・・・・・・」

ただ、ふたりを見つめる店番の人。

「君たちは・・・」

「何キコキコ?」

「その・・・」

アヅチとへび呼ロイドは顔を見合わせる。
なんか、歯切れが悪くて、面倒くさい感。

「真都葉と、」
「あんたたち何をしてるの?」
「マツバが豪華高級賞品ほしいと云うから、スタンプラリーの旅」
「同僚を助ける旅キコキコ!」
「ふぅん。立派なのねえ!」

もじもじしている、おっさん。

「とりあえず何か食べたら?」

おすすめはお肉よ、と、コトハはメニューを渡す。

「やっぱ肉かぁ!」
「高級すぎない?キコキコ」
「私も肉好きなのよねぇ!」
「ちょっと下のランクでキコキコ」
「あんたねぇ!!」
コトハびしり。
「やっぱりあとで食べればよかったって後悔するぐらいなら食べておきなさいよ!」
「確かに!!」
「確かにじゃないよ、アヅチぃキコキコ!!」
「私はA5ランクで行くわ、よろしく!」
「きっ君のも!?キコキコ!?」
「ええっと」

アヅチは頷く。

「なんか似てるな、マツバに」

「まあ、そうでしょうね」

コトハは云う。

「この人、マツバの父親だから」



西一族の村長、サトルは空を見上げる。

その様子をヨツバ(村長の妻)は見守る。

「さっきの南一族は、南一族じゃないな」
「そうね。あの顔立ち」
「思い出した」
「えぇ」
「忘れもしない」
「どっちなのよ」

昔、この西一族の村にいたことがある。

「あの東一族」

ヨツバは頷く。

「その娘、ね」

母親の東一族がいなくなってから
しばらくは西一族の村にいたものの、
やがて、南一族の村へと移された。

「そんなこともあったな」
「ええ」
「それとも、夢だったのか」
「だから、どっちなのよ」

サトルは空を仰ぐ。

「西一族の村に戻ってくるとは、何かが起ころうとしているのか」
「まあ、スタンプラリーだけど」
「南一族になった東一族に、幸あれ」

ヨツバは云う。

「見上げても空ないわよ」

ここ、家の中だから。




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