足音。
彼は、小窓から、外を覗く。
西一族の村はずれの建物に、いったい誰が来るのだろう、と。
やがて、補佐役が現れる。
「久しぶりだな、広司」
補佐役は、持ってきた鍵を、見せる。
広司が云う。
「やっと、か」
「何を云う」
補佐役は、ため息をつく。
「あれだけのことをしておいて、短い謹慎だ」
広司は、牢から出ると、辺りを見る。
補佐役以外、誰もいない。
「身体が、なまった」
「そうだろ」
補佐役が云う。
「身体を戻せ」
「はいはい」
広司は、伸びをしながら、訊く。
「近いうちに、狩りにでも出るのか?」
補佐役は頷く。
「頼むぞ」
「身体ならしには、ちょうどいい」
補佐役が歩き出す。
広司は、わずかな荷物を持ち、補佐役に続く。
「あの、東一族の女は?」
ふと、広司が訊く。
「相変わらず、圭のところに?」
補佐役は、振り返らずに云う。
「圭のやつ、東の情報を引き出せやしない」
「・・・使えないやつ」
「そういうのは、お前のほうが適任だったな」
建物の外に出ると、補佐役が振り返る。
云う。
「今度の狩り、頼んだぞ」
「いつも通りやるよ」
補佐役が云う。
「残念だが、お守も頼む」
「・・・お守?」
広司が首を傾げる。
「子どもでも、連れていくのか?」
広司は、面倒くさい、と、顔をしかめる。
「まあ、当日わかるさ」
補佐役は、広司の肩をたたく。
背を向け、先に歩き出す。
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