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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」175

2019年10月29日 | 物語「約束の夜」

京子はお茶を一口啜っては置き、
また持ち上げては飲む。
喉も渇いていないのに。

「お兄ちゃん
 ひさしぶり、ね」
「ああ」

なんか。

なんだか、緊張する。

一年ぶりに会う耀は、
自分の知っている兄ではないような。
知らない人の様な。
ちょっと大人びて見えるというか。

距離感どんなだったっけ。

「ええっと、その、怪我とかしてない?」
「大丈夫だ。
 なんともないよ」

と、京子を見る。

「京子も元気そうでなによりだ。
 西一族の皆は、
 母さんはどうしている」
「今は村に。
 でも、何回も私と一緒に北一族の村に来たり
 あちこち探し回って」

なんの手がかりも無くて。
藁にもすがる思いで
必死に情報を集めたけれど何も見つからなくて。

諦めたくは無かったけれど、
もしかしたら、と
最悪の事態を考えた事は何度もある。

「………心配、したのよ」
「うん」
「どうして、連絡くれなかったの」
「事情があったんだ」
「わた、わたし」

思わず、声が震える。

「お兄ちゃん、死んじゃったのかもって」

「そう思うよな」

耀は困った顔で布を差し出す。

「まいったな。
 泣くなよ。京子」

「だってぇえ」

「お前には西一族の村で
 何も知らずに過ごして欲しかったんだ」

裏一族の事だと京子は理解する。

「俺を捜して村を出た、と、聞いて驚いた。
 お前に何かあったらと肝が冷えたよ」

ほら、と耀が言う。

「京子はおっちょこちょいだろ」
「なによ、それ」

ふふ、と
やっと京子に笑顔が浮かぶ。

「なあ京子。
 これから色々と話すけれど、
 最初に言っておく」
「うん?」

「俺にとって、大切な兄妹は
 お前ひとりだけだ」

「えええ?
 なんか、照れるな」

急にどうしたのよ、と言う京子に
耀は真剣な表情で言う。

「長くなるけれど、
 まずは最後まで聞いてくれ」

耀は静かに語り出す。

とても長い話だった。
京子にとっては
初めて聞く話ばかり。

そして、耳を疑うような事が並ぶ。

お茶はとうの昔に覚めている。

「…………」
「…………」

どれだけ長く話していたのだろう、と
店の時計を見てみると
一時間も経っていない。

全てを聞き終えて
京子は頭を抱える。

「………私達のお父さんって
 なんとなく、まあ、
 普通の人じゃないのかもって思っていたけれど」

家族を置いてどこかに出掛け、
京子は顔すら見たことがない。

ふと、手のひらのアザを見る。
これはきっと何かの共通点。
裏一族に狙われる訳があると
それを探していたけれど。

「え?え?え?
 満樹も、ツイナも、
 ヨシノも、おまけにあのマサシって人も
 みんな兄妹なの!???」

「父親が同じという意味ではな」

「ちょっと、フラフラしすぎじゃない!!」

「ちなみに、顔つきは
 うん、あのマサシっていうのによく似ている」
「え!?
 あの、その、その!!!!」

京子の中の父親のイメージが
マサシが年を重ねた感じに固定される。

「顔だけだ、顔!!」
「………あ、そうそれは」

なんとなく、胸をなで下ろす京子。
それにしても。

「うわーん、頭ぐちゃぐちゃする」
「だろうな」

耀は立ち上がる。

「今日は一旦宿に戻ろうか。
 みんな待っているだろうし、
 そこでまた整理したら良い」

京子は慌てて顔を上げる。

「お兄ちゃんも一緒よね!!」
「ああ」
「………よかった」

会計を済ませ店を出る2人。

「もう皆宿に向かっているだろうか」
「夕飯買っていてくれると
 助かるなあ」

満樹達と合流、と考え
京子は思わず立ち止まる。

「んんん。
 それにしても、みんなとこれからどうしよう」
「どう、って?」
「満樹が兄とか
 ツイナが弟とか」

急にお互い距離感考えてしまう。
今までは
旅の仲間だったのに。兄妹。

「それは、今まで通りで
 いいんじゃないのか」
「今まで通り、ねえ」

それでも、
顔を合わせるときは戸惑うだろうな、と
思いながら京子はとぼとぼと歩く。

色々覚悟していたつもりだったけれど
結構重い事実だった。

そんな京子に気付いたのか

「京子、誕生日は
 ………少し過ぎたな」
「あ。そうね」

そうだった。
ここ最近のバタバタとした急展開で
すっかり忘れていたけれど。

「じゃーん」

と、小箱を取り出す耀。

「まさか、お兄ちゃん」
「一年越しになったけどな、
 村を出るときに言ってただろう。
 谷一族のネックレスが欲しいって」

それを受け取り、
恐る恐る箱を開ける京子。
谷一族で発掘される珍しい鉱石のネックレス。

こんな状況の中で
何気ない京子の言葉を覚えていてくれた。

「ありがと、お兄ちゃん」

大事にするね、と
涙ぐむ京子にほら、と手を伸ばす。

「早速付けてやるから
 貸してみろ」
「えへへ、やった」

はい、と京子が耀にネックレスを預ける。

思えば、
再会してから、耀に直接触れるのはそれが初めて。

「「っつ!!」」

バチッと火花のような物が走り、
ネックレスが地面に落ちる。

「わ、静電気かな。
 ネックレスも、大丈夫、壊れてないわ」

よかった、と拾い上げながら
京子は耀を見る。

「おにいちゃ」

耀の指先が
火傷をした時のように赤くなっている。

「お兄ちゃん、それ?」

どうしたの、大丈夫、と
詰め寄る京子は耀の呟きを聞く。

「………加護の魔法か」

その瞬間、ツイナの魔法のことを思い出す。
京子の無事を祈って
ツイナがかけてくれていた魔法だ。

それが、なぜ、今。

この魔法は京子に敵意を持つ者が触れたときに
発動するはず。

「お兄ちゃん?」




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「約束の夜」174

2019年10月25日 | 物語「約束の夜」


満樹とマサシは、チドリの手のひらをのぞき込む。

そこに、

「アザは、」
「ないのね」

「何だ?」

チドリも自身で、手のひらを見る。

「アザ?」

「ええ、まあ。こっちの話」
「京子だったか。誰かも、手のひらにアザとか云っていたな」

マサシは、満樹を見る。
少し考えて、手のひらを見せる。

「こんな感じの」
「これは、生まれつきか?」
「そう」

マサシが云う。

「満樹にもあるのよ、ね」

満樹は頷く。

ふうん、と、チドリは云う。

「これは、西一族によく見られるアザだな」
「ああ。やっぱり」
「やっぱり?」

首を傾げながら、チドリは云う。

「狩りで使う弓矢のくせだ」
「弓の」
「つがえるときに、手のひらに出来るらしい」

で、と、チドリは訊く。

「やっぱりとは?」

「ああ、それはね」

マサシが答える。

「アタシの父親は西一族なのよ」
「西一族?」
「そう」
「谷との混血なのか」
「そう云うこと」

チドリは息を吐く。

「まあ。そのくせが、子どもに遺伝するとはおかしな話だ」

それでも、そのアザは、今集まっているメンバーにはあるのだ。

「不思議だな」
「ああ」
「同じアザが、マサシに満樹、京子、ツイナやヨシノにもあるとは」

「だから、アタシたち、きょうだいじゃないかって、話」

「おい、マサシ」
「何よ、満樹。まだ認められないの?」

チドリは、満樹を見る。

「云いたいことは判った」

云う。

「お前たちは父親が同じで、何かの理由で集まっている、と」
「集まっている、と云うか」
「ひょっとして、集められている、かもな」
「・・・・・・」
「何それ、怖い」

マサシは笑う。

「だが、満樹は、アザを持つ者同士血がつながっているとは思えない?」
「当たり前だ」

満樹は頷く。
チドリを見る。

「俺には東一族の父親がいる」
「普通はそうだ」
「ああ」
「突然、父親が別の一族の人間だ、なんて云われてもな」
「確証がない」
「もし、確証があれば?」
「確証?」

マサシが云う。

「例えば、父親が現れるとか?」
「てっとり早いな」

チドリが云う。

「とにかく、あのふたりの話が終わったら、もう一度今後のことを決めようじゃないか」

満樹とマサシは頷く。

「それに、」
「それに?」
「あの海一族と山一族」
「ツイナとヨシノか?」

「遅くないか?」




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「約束の夜」173

2019年10月22日 | 物語「約束の夜」

「は~、落ち着く」

ハーブティーを一口啜り
ふはー、と息を吐く京子。

「女子ってハーブ好きだよな」
「アロマ、とか」
「加湿器とかにいれるやつ?」
「俺、普通の茶を飲みたい」
「クセがあるからな」

俺の知り合いにも苦手な奴がいる、と
頷く満樹。

「そういうの、
 このお店で言うのどうかと思うわ」

ちくり、とマサシ。

女子向けの、行列ができる、
パンケーキとかの
スウィーツなお店。

「ま、京子ちゃんと耀は
 久しぶりの再会でしょう。
 二人っきりで積もり積もる話しをしたらどう?」

ね、と
席を立つマサシ。
そうでしょう、と満樹とチドリにも目配せをする。

「そうだな、先に出ておくよ」
「兄が一緒なら大丈夫だろうし」

続いて立ち上がる満樹とチドリに
気を使わせて申し訳無い、と
京子がお礼を言う。

「2人ともありがとう。
 えっと、マサシも」
「どういたしまして」

ばちん、とウインク。

「…………、ちょっと、満樹」

満樹の腕を引いて、
いったん、店の端に移動する京子。

「あの、マサシって人は
 なんなの!?」

なぜ、当然のようにメンバーに居るのか、と
そりゃそうだ、な質問をする京子。

「なんかどこかで見た様な顔立ちだけど」
「うん、そうだな」

本人はあまり気付いていないが
京子とマサシ、
並んでみると確かに似ている。

「マサシにも手のひらにアザがある」
「ええっ!?」

そうなの!?と
驚く京子。

「マサシもアザ―ズだったのね」
「なんだアザ―ズって」
「アザを持つ私達の事よ」
「アザ―ズって」

ネーミングセンス。

「と言うことは
 マサシも裏一族に狙われているのね」

なんだか、凄いわ、と
京子が言う。

「私達って
 それぞれの一族に1人ずついるのかしら」
「………」
「満樹、ちょっと、満樹!?」
「あ、いや、なんでもない。
 耀とちゃんと話しをしてこい。宿で待ってるから」
「うん、ありがとう。
 行ってくるね」

耀の言うことを信じるのならば、
京子は妹で、
手のひらにアザを持つ者達は
皆同じ父親。

「ねえねえ、
 元気ないわよ満樹、どうしたの?」

煮え切らない満樹を心配して
マサシが声をかける。

「耀はどこまで京子に話すのだろう」
「それは、お兄ちゃん任せね。
 兄妹の事だもの。
 隠し通すってのなら、話しを合わせましょう」
「京子、は」

裏一族と戦いたい訳じゃない。
兄を捜していただけだ。
そして、
その兄もこうやって見つかった。

「俺は京子を西一族の村に
 返してやるべきだと思う」

「争いには巻き込みたくない、と」

満樹は頷く。

「ここからは、
 俺達だけで対応すべきだ」

「そう言う訳にはいかないな」

黙って2人の後を付いてきていたチドリが
話しを遮る。

「どういう意味だ」

なに、単純なことだ、と
チドリは言う。

「京子がそれで納得するかな。
 もっと京子の気持ちも考えてやれよ」
「危ない目に会うかもしれないのに」
「俺達が守ってやればよい。
 だいたい、耀を置いて
 京子が1人帰ると思うのか」
「そうねえ」

絶対納得しなさそう。

「無理にでも、だな」
「まあそう急に兄貴ぶるなよ。
 ツイナやヨシノもまだ帰って来てないのだから」

仮に京子を帰すとしても
2人に挨拶も無しにとは行かないだろう。

「まあ、そうだけど」

「あなたはあなたで
 京子ちゃんの事考えてるのね」
「ああ、本気で考えているよ」
「ラブ、かしら」
「ラブだね」

いいわ~、素敵だわ~、と
しばしマサシがうっとりした後

「おおっと、ちょい待ち!!」
「うお、声、低っ!!」
「ワタシの地声のことはいいのよ」

マサシはチドリに問いかける。

「あなた、手のひらにアザとか
 無いでしょうね!?」

「?」

「いいから、見せて!!」

そうだ、と満樹もハッとする。
手のひらにアザを持つ者は
同じ父親だと言う。

つまり、チドリも京子とは。

「なんだ、急に、ほら」

チドリが手のひらを見せる。






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「約束の夜」172

2019年10月18日 | 物語「約束の夜」


「嘘・・・」

京子の手から、スプーンがポロリと落ちる。

「まさか、・・・お兄ちゃん??」
「そうだ」
「嘘よ、嘘・・・」
「嘘じゃない」
「そんな、だって。今まで見つからなかったのに?」
「ああ」

耀は頭をかく。

「すまなかった」
「お兄ちゃん・・・」

京子は立ち上がる。

「今までどこに行っていたのよ!!」

In 北一族のおしゃれなスイーツカフェ

えー何それ
ひとりの女子を囲むように、西・北・東・谷の男子。
ん?
待って。
あの・・・。特殊なひとりって、男子なの??
そして、これは撮影??

ざわざわと、カフェ中の女子たちが注目する。

「ずっと、ずっと、探したんだからね!!」
「判っている」
「北で、スリに会って・・・」

それきっかけで、満樹に会い、
飛鳥に会い、
ツイナに会い、
ヨシノに会い、
チドリに会い、・・・。

「ざっくりとメンバー回想が」
「いや、飛鳥って誰だ」
「あ。うん。そこはスルーして大丈夫」

ぽふりと、満樹は耀の肩に手を載せる。

「私、いろんな一族の人たちに助けられて、」
「うん」
「仲間が出来て」
「・・・・・・」
「やっと、ここでお兄ちゃんに会えて・・・」
「京子・・・」
「うぅううぅう・・・」

「おいおい。京子大丈夫か?」

チドリが、京子を覗きこむ。

「パフェも解けてきちゃったし・・・」

パフェェエエエエエ!!?

「お兄ちゃん!!」
「えぇえ??」
「パフェー!!」
「えぇえええ!?」

「ふふ。安心したのよね」

長女?なマサシが、飲みものを運んでくる。

「まあまあ。みんな、これを飲んで落ち着こうか」

リラックス効果がある、ハーブティ。
いい香り。

飲みものを置くと、マサシはパンパンと、手を叩く。

「さあさ! みんなも素敵なスイーツタイムに戻って!!」

そのかけ声で注目がとけたように、普通のカフェへと戻る。

「はぁああ」
「さ。飲んでよ、京子ちゃん」
「ありがとう」
「落ち着きましょう」
「・・・・・・」
「・・・どうかした?」
「毒とか入ってないわよね?」
「毒?」

あはは、と、マサシが笑う。

「毒? 何で?? これ、ここのお店のだから!」
「ちょっと、思い当たることが・・・、ごめんなさい」

By ヨシノ

「いいわよ。気にしないで」
「ところで・・・」

京子は、満樹を見る。

「この人はいったい」
「ああ」
「自己紹介がまだだったわね!」

バチーン、と、ウインク。

「私は、谷一族のマサシ!」
「マサシ!?」
「はじめまして!」
「男、で、いいの!?」
「そして、なつかしくもあり!!」
「どう云うこと!?」

「本当に、どう云うことだよ」

チドリはため息をつく。

「ふふ」

マサシは京子を見る。

「早く全員揃う日が来るといいわねぇ」




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「約束の夜」171

2019年10月15日 | 物語「約束の夜」

「……女の、勘」

満樹と耀はざわざわする。

「一番アテにならないやつ」
「ちょっと女の勘をなめないでよ」

いやそもそも、
マサシ男だし。

「まあ、とりあえず、
 マサシの意見を聞こうじゃないか」
「うふふ、ありがと」

ワタシが考えるに、と
マサシは歩きながら語り出す。


「多分、パフェとか食べてるわ」


バチーン!!

「え!?ぶった!!
 無言でぶったよこの人!!」
「俺は冗談は嫌いだ」
「すごい、人を見下すようなこの視線!!」
「落ち着け耀。マサシも。
 今のは、俺も、ちょっとモヤっと来た」

もしかしたら、いま京子は大ピンチかもしれないのに。

「理由だけでも聞いてよ」
「………それなら、まぁ
 言ってみろ」

なんで京子が帰って来なかったのか、
理由は色々考えられるけれど。

「きっと気は張り詰めているかもね。
 それなら、甘い物食べて気分をリセットしたいじゃない。
 今この時期ならちょっと冷たいスィーツとか良いわよね」

「「…………」」

うーん、そうかもしれないし。
そうじゃないかも。

「まだ、この村に居るのならば、だけど」
「もしかしたら、2人とも
 裏一族に襲われたとも考えられるな」

連れ去られたのならば
探しようが無い。

「………満樹はチドリの事
 もっと何か知らないのか」
「あまり詳しくは。
 北一族ってだけで、あ」

そうだ、と満樹は呟く。

「何か思い出したのか」
「そういえば、
 卸しの仕事をしていると言っていたな」
「その店を当たってみよう」
「そうだな、こっちだ!!」

「ちょっと、スイーツのお店は!?」

マサシの女の勘は却下された。


「あぁ、チドリね。今日は来てないよ」

以前チドリと出会ったレストランの店員は
首を振る。

「………そうか」
「ここでもない、となると」

チドリも、姿を見せていない。
これは結構逼迫した状況なのでは。

そう言えば遊郭にも通じていた、
次はそこを当たるか、と
満樹と耀が考えている所に、店員が言う。

「いやいや、そもそも
 ウチの仕入れは3日に一回だからね。
 違う人が来ることもあるし」
「あ、ねえねえ、あそこなら
 毎日来ているんじゃないか」
「そうだね、
 回転が速いから毎日納めないといけないって
 言ってたね」

店員達がそうだそうだ、と口にする。

「「????」」

あそこならば、と言われ辿り着いたのはあるお店の前。
ちょっとおしゃれな、ふわふわのパンケーキとか有名なお店。

行列とかもできていて、男子入りづらいやつ。

「結局スイーツの店に」
「ほらあ、だから言ったじゃない」
「うわぁ、………帰りたい」
「行くわよ、京子ちゃんの情報があるかもなんだから!!」

3人は恥を忍びつつ、女子だけの行列に並ぶ。

男子だけだね、
友達同士で来たのかな、と
回りの女子の会話を心を無にして聞き流しつつ。

「この時間、無駄じゃないのか」

マジ女子信じられない、と
耀が頭を抱える。

「ああ、チドリね」

やっと巡り巡って、
店の中に入った所で、店員に問いかける。

「今日は別の人が納めに来たよ。
 なんでも急にお休みしてるって」
「そうなのか」

これは、いよいよもって。

「まずいんじゃないの?」

「あでも、ほら」

あっちと店員は指差す。

「今日はお客さんとして来てくれてます」

「え?」
「お客?」
「うん?」

すすす、と指差す先を見る3人。

窓際のテーブル席。
外の景色も眺めつつ、角の席だから
ちょっと2人だけの空間も楽しめる、
そんなベストな席に。

「チドリ、と」
「あ、あれって」

あーん、と大きな口でパフェを食べている京子。

「「パフェ食べとる!!!!!」」

「ほらー、だから言ったじゃない!!」
「京子、おま、おまーー!!」
「お客様声が大きいです!!!」

思わず大きな声が出る満樹。
マジか、と、声を無くす耀。

「あ、あれ?満樹!!」

うわーっと京子も驚く。

「どうしたの、予定より随分早い」
「どうしたの、はこっちのセリフだ。
 宿に行ったら戻ってないと言われて
 随分探し回ったんだぞ」

「え、えっと」

京子はスプーンを持ったまま話す。

「先日裏一族に取り囲まれて、
 チドリの魔法も破られちゃうし、
 これ、結構、危ないのかなって」
「京子は宿に1人だろ。
 夜狙われたらいけないと、行動を共にしていたんだが」
「一晩共にしたって事!?」

そこんところに食いつくマサシ。

どちらさま、と戸惑う京子に
チドリがフォローを入れる。

「俺はソファで寝てたよ」
「あの、ベッドはゆずってもらっちゃった」
「ホントに!?ホントに!?」

「今回は襲撃に備えて
 そんなムードでも無かったからな」

はーっとため息をつく満樹。

「京子、とは言え、もうちょっと、
 警戒という物をだな」

「それは、そうなんだけど、
 チドリなら大丈夫かなって」
「おまえ、チドリから花まで貰っておいて
 それはあんまりというか」

もうちょっと汲んであげて
男心という物を。

「そういうのが迂闊だって言うんだ。
 恋人でもないだろ、お前達」

「そそそそ、それは」

そう言う話しは止めてよ、と
赤くなる京子。

「俺は、大歓迎だぜ!!」

ははは、とチドリ。

「京子、男は狼なんだぞって、
 前にも言っただろうが!!」

お気をつけなさい、と満樹。
今日はちょっとおかあさんモード。

いや、これお兄さんモードなのか。

「もう満樹、急にお兄ちゃんみたいな事」

そこで、京子は
満樹の後ろ、マサシの影に隠れていた人に気付く。

「…………うそ」

あ、と言葉を無くす。

色々言おうと思っていたのだろうが、
ふー、とため息をつき
耀が声をかける。

「ひさしぶりだな、京子」






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