TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「続・夢幻章伝」40

2021年05月28日 | 物語「続・夢幻章伝」
「アヅチの!!」
「お父上!!!」

ゴウンゴウンご運

「ここは、俺の出番のようだな!!(2回目)」

ドゥルルルルルン
ゴウンゴウンゴウン

そしてやっと、みんなの元へとたどり着く。

「こ、これは!」

山一族の族長は、思わず持っていた杖を鳴らす。

「今流行のゴウンゴウン畑耕し機!!」
「耕運機ゴウンゴウンな!!」
「某衣をゴウンゴウンまといし者、荒れ果てた地にゴウンゴウン降り立つべし」
「事情は判らんゴウンゴウンが、出番だとゴウンゴウン云うことは判る!!」

「親父! いったいゴウンゴウンいくらしたんだよ!」
「それは訊ゴウンゴウンくな! 予算内だ!」
「これで畑仕事が楽になゴウンゴウンるのか。はたまたさらにゴウンゴウン規模を広げちゃうのか!!」
「畑仕事に終わゴウンゴウンりはない!!」

「はあああぁ、音がうるさくて聞き取れないキコキコ!」

エンジンストップ。

アヅチの親父はさっそうと耕運機を降り、その耕運機を愛でる。
まるで、愛馬のやうに。

「新品だわ」
「すげぇ」

改めて、その姿(耕運機)を見て、
アヅチとマツバは目を輝かせる。

「改めましてご機嫌よう。南一族のアスカだ」

「私は、山一族族長フタミ」

ふたりは堅い握手を結ぶ。

「実は耕運機を買いに行きがてら、スタンプラリーをやっていてだな!」

アスカ声でかい。

「しかし本職は農民!! お困りのようなら、この農地整備させていただく!!」

族長は頷く。

アヅチとマツバも頷く。

「判るけど、話がまとまってないな」
「相変わらずすごいわ、あんたの親父さん」

「この荒らされた農地」

族長が云う。

「荒らされたままでいいのだが、よくはない」

「だろうな!」

「この荒らされてる感で、観光の資源」

「だろうな!!」

「害虫駆除体験出来る程度に荒らされ感残しつつ、整備していただけないだろうか!」

「だろうな!!!」

伝わるだろうか、族長が云いたいこと。

まあ、判るけど、と、ユウマとヤイノは頷く。

「カモン!!」

アスカは耕運機に飛び乗る。


ブロロロロロォオン!!

エンジンリスタート

その畑へと乗り入れる。

「すごい!」
「すごいわ、耕運機!!」
「うん、すごいキコキコ!!」

でも

「遅い上に地味キコキコ」

「・・・・・・」
「・・・・・・」

「お茶でも行くか」
「そうね」

アヅチとマツバ、へび呼ロイドは歩き出す。




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「続・夢幻章伝」39

2021年05月25日 | 物語「続・夢幻章伝」
「懐かしい事だ………」

ふ、とロ=フタミさんは
なぜか空中を見つめる。

「え?なに?」
「どこ見てるの空虚???」

「異民族の友と一族の厄災を鎮めたあの時。
 終わってみれば一瞬だったが
 あの時しか出来ないかけがえの無い出会い、旅、冒険の日々」

「ここら辺?」
「いや、違うわよ。
 視線を追うとこのあたりじゃない?」
「小さな子とか、飼ってる動物とかが
 急に部屋の一部をじっと見つめ出すと
 なんか怖いとなるあの感じ、キコキコ」

「若さと勢い、それも良いだろう。
 ―――だが」

キリっと皆を見渡す。

「お前達。
 牢を壊そうなんてバカな事
 止めておいた方がいい」

「まさか、この牢にも
 対魔法の術が仕掛けてる、と」
「それは、やってみないと分からないわよ」
「例え髪の毛ボーン、となろうが!!」
「下手したらロ=フタミさんも
 巻き添えボーン、キコキコ!!」

「いいや、そう言う事では無い」

ロ=フタミさんは首を横に振り
真剣な眼差しで三人を見つめる。

「いくらすると思っているんだ」

「「「え?」」」

「内装、設備、建具の修理。
 材料代、人件費、手数料、そして諸経費」

「「「修理代!!?」」」

「しかも牢は公共施設。
 つまり、村の予算。村人の税金!!!」

「う!!!」
「資金面に訴えるとは!!」
「そんな時は、へび呼ロイドの
 この魔法のタダになるカードで」
「だから!!それはおいらのクレジットカードで
 決してタダとかそう言うわけではなく
 後日オイラの口座から引き落とされるわけでキコキコ!!」

ガチャリ、と明けられる牢の扉。

「え?」
「ロ=フタミさん?」
「これってキコキコ」

「こっちだ、ついて来い」

言われるまま後に続く三人。

「もしかして、逃がしてくれる?」
「なんて、いい人キコキコ」
「ありがたいな、な、お前達」
「「「ぴぎゃぴぎゃ」」」(同僚。居た)
「待ってよ、逃げたらスタンプ貰えないじゃない」

そして、狭い道は開け、
目の前に大きな広場が。

中央にはいかにも偉い立場の人が
それなりに立派な格好で
それなりに良い椅子に座り、
そして沢山の人々がその周りに付き従っている。

「連れてきました、族長!!」

あ――――――――!!!

「普通に連れてこられただけだったキコキコ!!」
「どうなるんだ俺達。命の危機!!!」
「こうなりゃ実力行使よ。
 スタンプ下さい!!!!!!!!」

山一族族長は立ち上がる。

「落ち着くのだ、
 西美味弁当の者達よ」

「「「呼び方!!!」」」

「それじゃあ、真犯人達よ」

「「「もっと、駄目なやつ!!!」」」

いやいや、と三人は弁明する。

「犯人って言うか、
 私達は解決に動いていただけで」
「そうキコキコ。
 本来同僚達こんな事はしないキコキコ。
 きっと何者かに操られキコキコ」

「別に俺達がこいつらに命じて
 作物を荒らしていた訳じゃないからな」

最後に念を押すアヅチの周りには
沢山の同僚達がフワフワ浮かんでいる。

「なあ、そうだろう、お前達!!」
「「「ぴぎゃぴぎゃ」」」
「ほら!!
 本来はこんなに素直で純朴で」

アヅチは喋れば喋るほど疑いが強まるので
ちょっと話すの止めておこうか。

「我らとて心苦しいが村の決まりだ。
 罰は受けて貰わねばならぬ、が」

族長はちらりとマツバの方を見る。

「その娘にも多少の縁が有る様だ」

「え?マツバ何したのキコキコ?」
「まだ何もしてないわよ!!」
「あれじゃないか、人は皆遠い親戚」

「幸いにも人への被害は出ていない。
 荒らされた畑を現状復帰すると言う事でどうだ?」

「なるほどな、畑の事ならお任せあれだ。
 俺達は南一族だぜ(キリッ)」
「ぴぎゃぴぎゃ」
「同僚達も手伝うと言っているキコキコ」
「ちょっと不服だけど、それならなんとか
 ………え?なんとか?」

マツバは振り返る。
崖の上から見た、あの光景。
眼前に広がる荒らされた畑を。

「いやいやいや、その間に
 スタンプラリー終わっちゃうじゃない!!!!!」

どうすんのよ!!とあげたマツバの声は
轟音にかき消される。

ドルルルルルル。
ゴウンゴウンゴウン。

「おおっと、その話、
 ちょっと待ったぁああああああ」

「え、この声」

グオングオングオン。
やけに大きなエンジン音。
しかし、音の割にはスピードは遅い。

なぜなら機能性重視だから。

ゆっくり視界の端に
大型の農作業機器が現れる。

「げえええ、マジか!!!」

アヅチがうわあああ、と頭を抱える。

だんだんと近寄る農作業器。
その運転席に乗っているのは。

「ここは俺の出番の様だな!!!!!!」

どーん、と
エンジン音にも負けない大きな声で話すその人は
アヅチの。

「親父!!!!!!」

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「続・夢幻章伝」38

2021年05月21日 | 物語「続・夢幻章伝」
ぼばーん。

山一族の牢に入れられる、3人。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

「前にもこんなことあったねぇキコキコ」
「そうだな。ここより遠く、砂一族の地で」
「そのときも同僚絡みだったわよ」

「た、確かに!! キコキコ!」
「あのときも同僚に包まっていたんだっけなぁ(遠い目)」
「・・・・・・」

「アヅチ。本当に、うちの同僚をありがとうキコキコ」
「なぁに。気にするなって!」
「いや、あんたね」

ドドドドドドドド

「何やってくれてんのよ!!!」

ぼっかーーーーん!!

突然落ちた雷に山一族たちは驚く。
山の天気は変わりやすい。

「何云ってるんだよ! 魔法をぶっ放された同僚の気持ちを考えろ!!」
「そっちこそ何云ってるのよ!! 取り憑かれてるわよ本当に!」

「ま、まあまあ、ふたりとも!」

へび呼ロイドはふたりの間に割って入る。

「今回は毒の実験とかないだろうから安心しようよ!」
「そこじゃないでしょ!!」
「いや。何か、毒が毒がって云ってるやついたけど」
「はぁ! 砂一族のときの話と変わらないわ!!」

マツバは、牢の扉を見る。

小さな鉄格子の窓が取り付けられている。

「やるしかないわ」

マツバは立ち上がる。

「判ってるの。ここで逃げ出したら、スタンプもらえないって」
云う。
「でも逃げ出さなきゃどうなる?」
さらに
「スタンプか命か!!」
結論としては
「逃げ出して、力尽くでスタンプもらう!!」

「マツバ、」
「さん・・・」

「逃げるのか」
「ええ」

そして、スタンプもらう。

「でも、前回を思い出せ」
「判ってる」

何度もお伝えしていますが、
砂一族で同じように捕まって、牢に入れられたとき。
力尽くで逃げようと魔法を使った。
牢を壊そうと。

だが

まだ幼かったからか、魔法が未熟だったからか
(1週間前の話です)

牢は壊れず
爆風でダメージを受けるはめに。

「頭、ぼーんってなったよな」
「ええ」

マンガあるある。
爆風で頭(髪の毛)がぼーんとなったことは記憶に新しい。

「繰り返すのか、あのときを」
「やるしかないわ」

「アヅチ・・・マツバ・・・」

3人は頷く。

手の平を重ねる。

「行くわよ」
「「おう!!」」
「逃げ出すのよ!!」
「「おう!!!」」
「見よ、我らが魔法!!」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「「「誰ー!!!?」」」

見られていた。
いつの間にか。
窓の格子から覗く顔。

「ロ=フタミさん!!」

「青春なんだな、お前ら」

はずーい。



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「続・夢幻章伝」37

2021年05月18日 | 物語「続・夢幻章伝」
「これが」
「噂に聴く、南一族の魔法」

どう、と言われると、

凄まじい威力だ。
豊かな大地と温厚な人柄の南一族。
彼らが敵に回ろうものであれば
どの一族もかなり手こずるであろう。

でも、

なんで害虫(同僚)に効いているのか意味が分からない。
呪文も、意味が分からない。
ポーズとか、
心打たれる年代と、
別の意味で過去の自分とか思い出して
うわぁああああってなる年代と
様々であろう。

ユウマ、ヤイノ、
ロ=フタミさんは頷く。

そんな感想を
可もなく不可もなくやり過ごす
素敵な呪文がこちら。

「「「凄いなあ」」」

「あ!!ずるい!!」
「いっそ正直に言ってくれよ!!」
「思った事をすぐに口に出さず
 一度考えることも大事キコキコ」

「いや、それにしても」

無力状態となった害虫(同僚)の様子に
山一族ズは目を見張る。

「お前達は、災いの元凶じゃなくて
 災いを解決する者という事だったんだな」

疑って悪かった、と詫びるユウマ。

「いいのよ、
 こういう道中人助けも悪くないわ。
 水戸黄門みたいで!!!」
「マツバ、今はBSとかでしか放送あってないから
 分からない世代もいるかもキコキコ」

個人的には、やっぱり初代がオススメ。

「ええ~、それじゃあ私のスペシャルブレンド
 “なんか、いい感じの毒”の出番は!?
 これじゃあ、ただの出てきただけの人もごもご」
「ヤイノ頼むから黙っててくれよ!!!」

「毒って言ったわね……今」
「言ったねぇ、キコキコ」

「違うんだよ、俺はもしもの時の………うん?」
「もしもの、何よ………うん?」
「あれぇ、キコキコ」

ユウマの視線を追い、後ろを振り返るマツバ。
そこには。

「お前達、大丈夫か!?」

同僚達に走り寄り、
そして手を差し伸べるアヅチ。

「動きを止めるためとは言え、手荒な真似を」
「びぎぃ」
「………え、分かっている?
 止めてくれてありがとう、だって?」
「「「ぴぎゃぴぎゃ!!」」」
「お、お前達!!!!」

ぶわあああ、と同僚達に囲まれるアヅチ。
らん、らんらら。

「ははは、
 やめろって、くすぐったいぜ」

あはは、うふふ。

「………」
「………」
「………」

「こほん!!」

マツバは大きな咳払いをする。

「あ~、あれね。
 取り憑かれてるおるわ、虫に」

らん、らんらら。
ちょっと厳しい。

「ええっと、アヅチ、だったよな」

歩み寄るユウマ・ヤイノ。
ぽん、とアヅチの肩を叩く。
そして、笑顔で縄を取り出す。

「逮捕ぉおおおお!!!!!」
「実験んんんんん!!!!!」

「え?なんだよ」

「お縄だ!!
 お縄を頂戴するぜ!!」
「これね、最初は苦いけれど
 後から甘みがくるから、ぐいっと一息に」
「それはまだだヤイノ。
 とりあえず族長の所に連れて行くぞ」

白いふわふわ(同僚)を纏いしアヅチ。
ずるずると引きずられていく。

「まて、誤解だ。
 こいつらは本当は素直な良いやつで!!
 きっと何者かに操られて」

「やっぱり関係者じゃねぇか!!」

ずるずる引きずられていくアヅチ。

「ちょっと、そこの二人」

ヤイノはこっそり逃げようとしていた
マツバとへび呼ロイドに声をかける。

「もちろんあなた達も一緒よ!!」

「おおおおいらたち別にキコキコ」
「そうよ、アヅチを見捨てて逃げるとか
 そう言う事では無く」

いいのいいの、とヤイノは呟く。

「占いを無しにしても最初から分かっていたというか」
「どういう意味よ!!」
「いやいや、だって」

ヤイノはへび呼ロイドを指差す。

「謎の喋る丸いフワフワ。
 どう見たって、災いの害虫(同僚)の仲間でしょ」

同僚って言ってるしね。

「あわわわわ」
「良いわよ、覚悟決めるわ。
 でも、スタンプラリーは押して下さい!!!」

わいのわいの。

皆が立ち去った畑。
一人残されるロ=フタミさん。

「えっと」

やけくそとは言え
スタンプラリー開催期間中の
山一族メイン観光となるはずだった
害虫駆除体験。もしくは見学ツアー。

それが、今、

「終わって……しまった!????」

まだ、スタンプラリーは始まったばかり。
参加者はまだまだ訪れる予定。

「どう、しよう」

同じ山一族の奥さんとか、
海一族に嫁いだ妹とか、
その旦那である古い友人とか

相談してみたらいいと思う!!!!


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「続・夢幻章伝」36

2021年05月14日 | 物語「続・夢幻章伝」
「ブキヲトリ、テキヲタオシタマヘ」

何もなかった空に、見知った姿が現れる。

白くて丸くて、手のひらぐらいの大きさの

「「「同僚!!!」」」

間違いなかった。
むしろ、当たってた。

同僚。
へび呼ロイドの!!

「俺たち、同僚を探してやるって旅立ったよな!」
「そうだったかしら?」
「そうだよ、キコキコ!」

ふたり(と一匹)は軽快な動きで配置に付く。

「探すのか助けるのか、いまだによく判らんが」
「でもこれで、同僚は発見したってことよね」
「待ってて今助けるキコキコ」

人が見ていても何のその。
同僚たちは、おいしく食い荒らす。

「ところで同僚ってなんでこんなことしてるんだ?」
「確かにそうね」

マツバは頷く。

「うぅ、同僚・・・キコキコ!」

「操られてるとか?」
「何によ??」

アヅチとマツバは、早くも決めポーズをする。
南一族式の魔法と云えば
呪文は中二病のごとく恥ずかしく、
ついでに、ポーズもかっこよさを越えたものを伴う。

それでも

「「今日なら人前で出来る!!」」

光る目。
足下から起こる謎の風。
揺れ動く木々。
たなびく旗。

背景も、こう
異世界風に輝きだす。

「訊くんじゃない! 感じるのだ!!(アヅチ)」

ユウマたちに云いました。

「そう! 感じるだけなら目や耳以外で出来る!!(マツバ)」

つまり、目つぶってて。
あわよくば、耳も塞いでて。

「ここで、使っちまうよ☆」
「イチコロよ★」

「「はぁあああ、ああ」」

我ら夢幻章伝無限大
その輝きは大地超え
天空さえも味方なり
砂糖醤油酒にみりん
各大さじ1小さじ2
鶏そぼろ300グラム
上手く炒めて炒めて
火が通ったら冷ます
白いご飯にかけたら
沢山食べれちゃうよ
ごちそうさまー!!

「こ、これは!?」

輝きに、吹き荒れる風。
そして、いいにおい。

「まさか!?」
「鶏そぼろのレシピ!!!」

ユウマとヤイノは立ち上がり、
ロ=フタミさんは、頷く。

「・・・・・・。」
「・・・・・・。」

え?
いや、そんなんで???

ユウマとヤイノは害虫(同僚)を見る。

先ほどまで、作物を荒らしていた、が、

「く、く苦しい!!!(同僚の声)」

「効いてる!?!?」
「なんでやー!!」

もはや、ツッコむしかないふたり。

その横で、ふふっ、と、へび呼ロイドは笑う。

「山一族さん見てた? これが南一族の魔法だよー!!」


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