TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」129

2019年02月26日 | 物語「約束の夜」

「………」

ふむ、とチドリは何かを考え込むように、
少し遠くを見つめる。

「ごめんなさい。黙っていて」
「何かを隠していたのは知っていた」
「え?」
「突き詰めて尋ねていると、
 返答に困っている所があっただろ」
「………うう」
「出会って間もないし、
 それぞれ隠しておきたい事もある。
 仕方無いとは思っていたが」

重くため息を付く。

「裏一族とは
 随分物騒だな」

「えぇ」
「つまり、君の兄は裏一族、なのか?」
「……それは、分からない」

違うと京子は信じたい。
自分と同様に裏一族に狙われているのだと。

「ただ、美和子は
 お兄ちゃんの事を何か知っているみたいなの」

「耀は、裏一族に何か関わりがある、か」

よし、とチドリは言う。

「美和子に接近してみよう」
「あ、あの、チドリ!!」

京子は驚いて問いかける。

「裏一族は、危険よ」
「そうだな、気をつけて行こう。
 京子は俺の後ろに」

「ありがと」

怒って、立ち去っても
仕方無い事だったのに。

「み、わこ!!」

意を決して
京子は美和子に声をかける。

あら、と振り返り、
一緒に居るチドリに気付く。

「京子、久しぶりね。
 ……その人は?」
「この村で知り合った人」

ふうん、と
美和子がチドリの手に視線を向ける。

掌のアザを確認しているのだと
京子は気付く。

やはり、印になるのはアザ。

だが、チドリの掌にはアザがない。
違うと分かったのか、
残念そうに京子に向き直る。

「他の2人はどうしたの?」

「今、ここには居ない」
「まあ良いわ、
 一緒に来る気になったって事?」
「いいえ。
 お兄ちゃんの事を聞きに来たのよ!!」

うーん、と美和子はチドリに言う。

「ねぇ、あなた。北一族さん?
 私、京子と2人きりで話しがしたいのだけど」

だが、チドリも笑顔で
美和子に返す。

「残念だけど。
 俺、京子の守り役なんだ。
 一緒に聞かせてもらう」

「あら、それじゃあ話は聴いてるのね。
 京子、彼まで巻き込んだの?可哀想に」

裏一族を敵に回すなんて、と。

う。と
その言葉に京子は罪悪感を覚える。
チドリを危険な目に合わせているのは間違い無い。

「何度も言うけど、裏に来なさい。
 そうすれば全部教えてあげるわ」



大丈夫、とチドリが京子の肩に触れる。
京子も頷き、美和子に言う。

「行かない!!」

まったく、と美和子が呆れる。
この会話も何度目かの繰り返しだ。

「交渉ならもっと上手にやりなさいよ」

何かの合図なのだろうか、
美和子が腕を上げる。

「私1人ならどうにか出来ると思ったのかしら。
 北一族の村は裏の縄張りだって、分かっている?」

美和子がチドリを見る。

「東一族が居ないなら好都合。1人連れてきた所で同じよ。
 彼を危険な目にあわせたくなければ
 大人しくしなさい」

「ずいぶんと舐められたものだ」

トン。

同時に、チドリが杖を地面に立てる。

ぐん、と周りの景色が変わる。
何か薄い膜のような物に3人が包まれる。

「………紋章術?
 これ、東一族の術じゃない!?」

どういう事、と
美和子が身を翻す、が

「ああ。
 転送の術を応用して、転送手前で止めている。
 俺達は今、周りから見えていない。
 もちろん、術を解除するまで誰もここから出られない」
「デタラメだわ」
「北一族は水辺最高位の魔術の一族。
 俺はそうじゃないと思ったのか?」
「それでも、
 こんな術使いなんて、そうそう居るわけ」

あれ、チドリって凄い人?

京子は1人会話に置いてけぼりになる。

チドリが美和子に迫る。

「北一族の村は北一族のものだ。
 さぁ、京子の質問に答えろ裏一族」



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「約束の夜」128

2019年02月22日 | 物語「約束の夜」


「京子?」

「・・・・美和子」

「おい、京子」

「あっ」

京子は、慌ててチドリを見る。
けれども
また、その視線は美和子へ。

向こうはこちらにまだ、気が付いていない。
このままでは、見失ってしまう――!

「京子」
「っっ!! チドリ、」
「美和子、か?」
「えっ!?」

京子は、美和子を見たまま、
自然と後を追っている。

気付かれないように。

チドリはその横に続く。
京子は、小声で云う。

「チドリ、なぜその名を?」
「再会したとき、京子たちは、その「美和子」を探していただろう?」
「あ、そうか」

そうだった。

美和子経由で、裏一族に接触しようとしていたのだった。
その美和子が、今、目の前に現れたのだ。

北一族の格好。
人ごみの中、よくは判らないが、耀の姿は見えない。

「声をかけるのか?」
「えーっと」
「北一族の知り合い?」
「と、云うか・・・」
「声をかけてやろう」
「いえ、ちょっと待って。チドリ」

京子は、首を振る。

「あの子はねぇ、その・・・」
「何?」
「危険なの」
「危険?」

チドリが云う。

「それは、君の兄と関係があるのか?」
チドリは首を傾げる。
「君の兄と、美和子と。そのふたりを探しているのだろう?」
「あ、うん。えっと、」
「どうなんだ?」
「うーーーん」

云いながらも、京子は美和子を追う。
とにかく、ここで見失いたくない。

「京子」

チドリが云う。

「そのあたりの話を聞かせてもらえないと、協力にも限界があるぞ」
「ちょっと。怒ってる?」
「違う。情報が欲しいと云っているんだ」

はっ、と、京子は物陰に隠れる。

店の前に、美和子が立ち止まる。

何をしているのか。
店のものを見ている。
誰かと話している。

それは、

ごくごく普通に。

京子は、ちらりとチドリを見る。

「ごめんなさい、チドリ。・・・そうよね」

確かに、協力を求めるなら、
もっとこちらの話もしなければならない。

京子は迷う。

満樹とツイナとも、一応、決めたこと。
裏一族の話は、まだ伏せておこうと。

でも、

それっていつまで?

チドリに、本当に協力を求めるなら、もう話すべき?

「京子」
「あのね、チドリ」

京子が云う。

「あの子、美和子はそもそも西一族で」
「うん」
「でも、西一族を離族したの」
「何?」

「今は、裏一族なんだって・・・」

「裏、一族」

京子が云う。

「お兄ちゃんの行方を知っているはずなの」



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「約束の夜」127

2019年02月19日 | 物語「約束の夜」

遊郭を前にして、
ほう、とチドリが呟く。

「積極的だな、京子」
「違っつ!!
 私はあっちに」
「あっち?」

と、京子が指差した先も。

遊郭。

「わわわわ!!
 違うのよ、そっちじゃなくて」
「じゃあ、こっち?」
「そう、そっち、ってーー!!」

きらきら、ぴかぴか。

「どうして、北一族の村は
 こういうお店が多いのよ」
「華やかな街は
 1つ裏通りに入ればこんなもんだよ」
「それにしたって、
 あっちも、こっちも!!」

仕方無いよね。

うん、とチドリが言う。

「この村は、
 そうでないといけないからさ」
「……?」

「京子は西一族だろう」
「ええ」
「それじゃあ、
 東一族や山一族との恋愛ってどう思う?」
「満樹は違うって!!!」
「一般論として、だよ」

それは、と京子は答える。

「難しいのじゃないかしら。
 反対する人も多いと思う」

敵対している一族だから。

そう。
山と海、砂と東、
他にも一族同士の対立はどこにもある。

「それでも出会いがあれば、
 惹かれ合う事だってある」

チドリは目を細める。

「村に戻れば許されない恋も
 ここでなら、という事だよ」

「…………」

「まぁ、ワンナイトラブっての多いけどね」
「んんんん!!!台無し!!」
「ははは」

「北一族の村にもルールはある。
 けれど、他の村よりも
 少しだけ見逃してくれるのがこの村なんだよ」

もしかして、チドリは、
そういう事があったのだろうか?と
京子は問いかけようとして止める。

誰にも言いたくない事が
1つや2つある。

それに京子も
まだ裏一族の事をチドリに話せていない。
その情報を出すのは控えると
満樹達と決めた事、だけど。

いつまでも
黙ったままで良いのだろうか。

「京子、どうした?」
「あ、なんでもないの」

大丈夫よ、と
隣を歩くチドリに向き直り、
京子は思わず息を呑む。

通りの向こう。

まだ、京子には気付いていない。


そこに、美和子が居る。



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「約束の夜」126

2019年02月15日 | 物語「約束の夜」


北一族の村。

3人を見送って、京子とチドリは歩き出す。

このふたり。
いわゆる、北一族探索メンバー。

谷一族の村へと向かった、満樹。
砂一族の村へ向かった、ツイナと与篠。

それぞれの目的と
共通の目的のために、
チームを分けて、別の場所へと赴くことになった。

2週間後の再会
約束の日へと向けて。

京子は自身の手のひらを見る。

その手には生まれつきのアザ。
何とも思っていなかったけれど。

この手のひらのアザ。

他一族である、満樹とツイナにも、同じものがある。
与篠にも。

そして

この、手のひらにアザがある者が、裏一族に狙われている。

なぜなのだろう。

そもそも

京子は、1年前に失踪した兄を追っているのだ。
なのに裏一族に追われることになるとは。

「判らない・・・」
「・・・・・・?」
「お兄ちゃん・・・」
「京子?」

「ああ、ごめん!」

顔を上げ、京子は、ぱっと笑顔を作る。

「さあ、満樹たちが戻ってくるまで2週間!」
京子は気合いを入れる。
「私も結果を出すわよ!」

「京子」

「何?」

「京子って、やっぱり満樹のこと、」
「えぇえ!?」

その先に続く言葉は云わずもがな

「何もないわよ! 満樹とは何もない、わ、よ!!」
「うーーん」

必死感が、逆に怪しい、が

「何だろうねぇ。本当に、満樹はお兄ちゃんと云うか」
「うんうん」
「お兄ちゃんと云うか、」
「前も聞いたよ、京子」
「小姑?」
「あはは」

よしよし、と、チドリは頷く。

「じゃあ、その小姑のために結果を出すか!」
「もちろん!」

でも、と、京子は首を傾げる。

「何かまだあてはあるの?」
「いろいろとやってみないと、ね。京子」
「そうね・・・。私は足を使うわ!」

体力派なのか。

「いろいろあたってみて、最終的には俺の仲間も紹介出来るし」
「仲間!!」

京子の顔が輝く。

「なんて心強いの!!」
「おお!」
「あっ!」

京子は思わず、チドリの手を握っていた。

「ごごごごめんなさいっ!」
「いいよ。うん。京子なら、うん」
「もう、さっさと行きましょう!!」

「京子! 京子!」

「私、頑張るんだから!!」

「いや、だから、京子待てって!」

「あれ?」

何だか見覚えある景色。

「ゆ、」

前も来た。

「遊郭・・・」

「京子、ここ気に入ったの?」

チドリが笑う。




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今回のらくがき2

2019年02月12日 | イラスト

次回から「約束の夜」再開なのですが

ばしょも、
描き溜めたイラストをどーん!!

東一族多め。



夏樹冬樹家の系列の、人。



↑デザイン中に
意地でも髪留め(?)使わないぞ!!
ってなるかもしれない、と

思ったけど、ただの元気の良い成くんに。




ツイナくん。海一族!!

作品中ではもう少し年齢が上なのですが
作品書きつつのイメージが
だんだん幼くなっていっている。




たまーに、描きたくなる
幼い広司君(圭くんを添えて)

2人が揃ってというのもあまり無いので
子供会の帰りとかだと思います。

冬企画からの年末年始イラストズも終わり、
次回より「約束の夜」再開です~