TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」24

2015年03月31日 | 物語「夢幻章伝」

「とりあえず、一度宿に戻るか」
「そうね、夕食までゆっくりして
 その後はお宿のお風呂も楽しまなきゃ」

売店のお土産を両手に2人は浴場を出る。
完全に観光モードである。

「あんた、買ったわね~」
「あぁ、夜に宿で食べるお菓子に
 飲み物も買っておけば宿の高い飲み物飲まなくていいし」

片手には入浴前に買ったお土産、
片手には入浴後に買ったお菓子。

ざわざわ。ざわざわ。

「そういうお前も思い切ったな-、それ」
「まぁね、こういうのは勢いよ」

マツバが持つ袋には、
売店にあった、
かなりいいお値段の刺繍入りの織物が。

「買わないと後からもずっと気になるし。
 それなら私は買って後悔するわ!!」

支払いはへび呼ロイドのカードからですが。

ざわざわ。ざわざわ。

「じゃあ、2人ともまた来てくれよ」

タツキは番台なので入り口で2人を見送る。

ざわざわ、ざわざわ。

と、その時。

「2人とも-!!!!」

「お」
「へび呼ロイドじゃない」

数話ぶりの登場で
お忘れの方もいらっしゃるかと思いますが、
アヅチとマツバの旅立ちのきっかけ。
同僚を助けて欲しいと依頼してきた今回の旅の

お財布&案内&ツッコミ役です。

「よかった!!
 この2人にツッコミを入れるの大変だったんだ」

アマキが胸をなで下ろす横で
俺も風呂場で頑張ったぜ、と
タツキは親指をぐっと立てる。

「やっと機嫌直したのか。
 今度へび呼ロイドも一緒に風呂に行こうぜ」
「そうよ、コーヒー美味しかったわ」

一呼吸置いて、マツバはカードを差し出す。

「あとこれ、ありがとう」
「おいらのカードぅおおおおお!!!」

ざわざわ。ざわざわ。

「っちょ。何に使ったの。
 マツバ!!その異様に高そうな織物どうしたの!!」

「さすがへびさん(へび呼ロイドの事らしい)
 ツッコミもキレッキレだな」

アマキは感心のため息を漏らす。

「って違うんだよ!!
 それも大事だけど、今は!!!」

ざわざわ。ざわざわ。

そこでへび呼ロイド以外の4人は
へび呼ロイドを追ってやって来た、
物音の正体に気がつく。

「同僚達が-!!!」

角から現れたのは、へび呼ロイドの同僚達。
白い、ふわふわとした、小さな丸いいくつもの塊が
こちらに向かってやって来る。

ぎしゃぎしゃー(鳴き声)!!!

「ふっ!!」

アヅチがキメ顔でへび呼ロイドの前に立つ。

「やっと、俺の出番の様だな!!!」

海一族の村ではフライングをかまして
活躍の場が無かった得意の針術なのか、
それとも、マツバと同じく南一族独特の魔法か。

「あ、アヅチぃ~」
「たまには活躍しないとな
 下がっていろよ、へび呼ロイド」

「いや、そうじゃなくて」

「え?なんだよ?」

はぁ?とアヅチが振り返ると

「あ、またか、はいはい」
「兄さん姉さん、そしてへびさん
 ちょっと下がっててね」

ずいっと、アマキとタツキが2人の前に立つ。

「えええ?」

ちなみにマツバは
コーヒー牛乳飲みながら
事の展開を見守っているよ。



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「夢幻章伝」23

2015年03月27日 | 物語「夢幻章伝」

「あんたら、うっさいのよ!!」

先に上がっていたマツバが、番台のところで出迎える。

「そして、歌が微妙!!」
アヅチの歌声は、女子風呂まで筒抜けだった。
「歌詞と云い、音程と云い!!」
「どこがどう、微妙なんだよ!」
「・・・姉さん、そのくだりは、もうやったから」
「はあ!?」

せっかくの風呂上がりなのに、アヅチとマツバは、もう汗をかきそうだ!

「てか、遅い!」
・・・女子のマツバの方が、先に上がっていたと云うこと。

「一日の疲れを取るには、ゆっくり浸からなきゃ~、姉さん」
アヅチもタツキも、顔がゆでだこだ。

「姉さんの云う通り、長風呂過ぎだよ・・・」
マツバとアマキは、湯上りのコーヒー牛乳を飲んでいたところだった。
(アマキは入ってないけど)

「なんだ、お前、入らないから帰ったのかと思ってたよ」
「待ってるって、云ったし。・・・と云っても」

アマキが云う。

「外が、なんとなくざわざわするから、一度外を見に行ったんだけどね」
「ざわざわ?」
アヅチが、コーヒー牛乳を開けながら、首を傾げる。
「ざわざわって、なんだ」
「ざわざわだよ」
「どう、ざわざわなんだよ」
「ざわざわって、ざわざわだよ」
「全然、判らないわ」

アヅチとマツバは、コーヒー牛乳を飲み干す。

「うーーん」
「おいしい!」
「最高だな!」
「そうね、東一族最高!」
「うれしいこと云ってくれるね~」

そう、云いながら、タツキは2本目のコーヒー牛乳を開けている。

「長期滞在なんだよな? 何度でも来てくれよ!」

「「もちろん!!」」

「兄さん、姉さん、お連れさんは・・・」
アマキは、何度も、へび呼ロイドを心配していた!

「そう云えば、・・・」

アヅチが思い出したように、云う。

「妖精さんに、会ったぜ!」
その言葉に、マツバは目を細める。
「あんた、のぼせてるのね」
「はっ!」
アヅチは、ちょっと慌てる。
「違っ! ほら、飛び出せ! 飛び出せ小僧だよ!!」
「なんですって!!」
「これが証拠だ!」

アヅチは先程の収穫物(髪の毛)を、どや顔で差し出す。

「・・・これは」
「髪の毛・・・」

マツバとアマキは、それを見る。

「兄さん。もしや、座敷童の?」
「イエス!!」

「あれ? ちょっと待って」

マツバは、口元に手をやる。
「さっき、誰か慌てて男子風呂から出て、私にぶつかった、失礼なやつがいたわよ」
「・・・いたね」
アマキも、その現場を目撃したらしい。

「一瞬だったけど。もしや・・・」
「お前っ! そいつじゃないか、飛び出せ小僧!」
「あれが・・・?」

マツバは、そいつの顔を思い出す。

「いや、違うわ!」
「え?」
「だって、なんか、泣いてた!」

・・・それは、髪の毛をむしられたせいなのよ。

「それに」

マツバはどーーん、と、云う。

「私の嫌いなタイプの顔だったし!!」

どどーーーん。

幸運の象徴でも、顔が嫌いなタイプなら、きっと、ハッピーになれない!

「だから、断じて、あれは飛び出せ小僧とは違うわ!!」

どどど、どーーーーん。

「とにかく、これ、みんなの分な!」

アヅチは、収穫物(髪の毛)を配分しようとする。



「いらないわ!」
「うん。いらない」
「絶対、いらない」

3人とも、拒否☆

「えっ、これ、飛び出せのだぜ!?」

「少なくとも、俺たち東一族はいらないよ。なあ、タツキ」
うんうん、と、アマキの言葉にタツキが頷く。
「でも、仕合せの!!」
「兄さん。東一族では、それ(白色系の髪)はタブーだから」

詳しくは、「水辺ノ夢」か別館を参照ください。

「私は、気持ち悪いから、いらない」
マツバが云う。
「そんなに、仕合せの象徴なら、あんた持ってなさいよ」
さらに
「少しは、歌がうまくなるんじゃないの?」

どどどどどーーーーーん!!

「兄さん!」

タツキは、アヅチの肩をポンと叩く。

「少なくとも、兄さんは、2回飛び出されたんだ!」
「おお、」

アマキも、アヅチの肩をポンと叩く。

「そうそう。きっと、いいことあるぜ!」
「お、・・・おぉお」

アヅチは、手に持つ飛び出せヘアーを見る。

そして、タツキは、3本目のコーヒー牛乳を開けた!



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「夢幻章伝」22

2015年03月24日 | 物語「夢幻章伝」

「おお、空いてるなぁ」

人が少ない時間に入れてくれたと言うこともあり
広い湯船にはアヅチ、タツキ、にもう1人居るのかどうかという所だ。

「ん~、しみるぜ~」

ざぽーん、と、
アヅチは湯船につかる。

「どう、兄さん、ウチの村の温泉は」
「いいな、これ」

芯から温もる。
すべすべのお湯。
そして、温泉独特の香り。

これが、憧れの、温泉。

「んふんふ、ふんふんふ♪
 ん~ふ湯だな、んふふ」

アヅチは自然と歌い出す。
うろ覚えのあのソングを。

「桶が~天井から、んふふふ、ふんふふ~」
 ん?……桶?桶だっけな?」

「……」

「兄さん湯気だよ」
「湯気か、そうか!!
 湯気がんーふふんふん。
 ふふふふ、ふんふふん♪」

「……っ!!」

「歯ぁみがっっぐっしゃう!!!!?ぶっくしゅ!!」

「……っっつ!!」

「うわぁ、兄さん
 そのくしゃみおっさんくさいよ」

「歯ぁ、みがけよ!!!!!!!!」

どーん、と奥にいた1人の東一族が立ち上がる。

「なんだ!!その!!歌い方ぁあああ!!
 もやもやすんねん。なおかつ版権に引っかからない程度に歌いやがって」

アヅチの歌える様で歌いきれない
絶妙なお風呂ソングに
ついに我慢できずに立ち上がったらしい。

「あと、ところどころ
 音程ずれとるんじゃー!!」

その東一族の叫びに、
タツキも思わず頷く。

そう、なんかずれてんだよ。

その時、その東一族が頭に巻いていたタオルが
ポロリと落ちる。

タツキは思わず声を上げる。

「はい!!ポロリ頂きました!!」

「あぁ!!」
「あん?」

タオルが落ちて、出てきた頭髪に
アヅチはハッとする

「おま!!その髪!!」

白い!!

これは、さっきの飛び出せ小僧。
アヅチは一度飛び出されている。間違いない。

「こいつだー!!」

「はい、下ろした前髪にドキっ!!頂きました!!」

しまった!!

アヅチは思う。
マツバはこの飛び出せに飛び出されない限り
この村を動かないと宣言していた。

この状況でどうにかマツバにぶつかるというのは
結構至難の技である。

なにか、こう、
別の事で、マツバが納得するような、なにか!!

「はっ!!?」

飛び出せ小僧は、座敷童みたいなもんだ、と
アマキが言っていた。
つまり、妖精みたいなものだ。

「とうっ!!!」

ぶちぃいい

「痛い!!!」

アヅチは、小僧の髪の毛をむしる(2~3本)。
「に、兄さん何を!!」
突然の事態にタツキはついて行けない。

「お守りだ!!!」
「お守り!!?????」

「まぁ、(宝くじ)一等は俺のものだが
 これで、あいつ(マツバ)も
 二等ぐらいは当たるんじゃないのか」

「斬新な考え方すぎて
 俺には全くついて行けないよ!!!!」

「おまっ何すんじゃー!!」

小僧が反抗しようとするが
アヅチはさらに続く。

「妖精さんすまない!!」

ぶちぃいい

「ぎゃー!!」
「今度は、案内のアマちゃんの分!!」

「えぇえええ」

「そして、お前(タツキ)の分!!」
ぶちぃいい
「……いや、正直、俺はいらないです」

「あと、えーっと
 そうだ、へび呼ロイドの分!!!」

ぶちぃいいい。

へび呼ロイドは完全についで扱いだった。

「う、うわぁああああああん!!!
 バカヤロー!!呪われろー!!」

小僧はついに耐えかねて
銭湯を飛び出していく。

「ありがとう、妖精さん!!」

呟くアヅチを見て、南一族怖い、と
心の底からタツキは思った。

「ちょっと、あんた達、うるさいわよ!!!」

そこに、女湯に居るであろうマツバの怒鳴り声が響く。

「あ!!」

タツキが言う。

「男湯女湯間での会話、頂きましたー!!」



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「夢幻章伝」21

2015年03月20日 | 物語「夢幻章伝」

「おみやげ、何買おうかしら」

マツバは立ち止まり、売店を眺める。
売店には、もちろん、南一族の村では見られないものが、並ぶ。
「マツバ・・・、これ」
「何よ!!」
話しかけるな、と、マツバは目を細める。

おみやげ選び(自分用)に、かなり真剣だ!!

「おい、これ見ろって」
「だから、何よ!」

マツバは顔を上げ、アヅチが指差すものを見る。

そこに

<白い物体に注意! 農作物を食い荒らされます!!>

の、ポスター。

「これは・・・」
「・・・だな」
アヅチとマツバは、顔を見合わせる。

「売り物じゃないわね、そのポスター!!」
「だよな!!」

アヅチが云う。

「家の壁の壊れているところに、貼ろうかと思ったんだが」
「あんたんち、いったい何があったのよ」
「いや、姉貴の、真剣打ちが」
「・・・何よそれ」
「お前、俺の姉貴なめんなよ」

こうして、大切な情報はスルーされた!

「こっちの、刺繍入りの織物を飾ればいいじゃない」
「俺は、女子か!」

値札には、結構な金額が書かれている。

「おい。お前、それ買うのかよ!?」
「考えてるのよ!」
「だっ、!! その金額!」
「大丈夫」

ふっ、と、マツバは一枚のカードを取り出す。

「へび呼ロイドから預かったこのカードを出せば、なんでももらえるのよ!」
「まじか!!」

のちに、へび呼ロイドに請求されます。

こうして、いろいろこまごまと、買い物をしてしまったふたり。

「そろそろ、いいかしら」
荷物を抱え、ふたりは売店を出る。

「おっ、兄さん姉さん、そろそろ入る?」

番台にいたタツキは、手を上げる。

「もちろんよ」
「だな!」
「お肌つるつる!」
「かかとすべすべ!」
「ついでに、情報収集のために!」
「だな!!」

情報収集は、はっきりと「ついで」になった!

「じゃあ、」

タツキは、そろばんを取り出す。

「他一族はお会計あるから!」
さささ、と、タツキは暗算で伝票を書く。
「お会計、こちらね!」

(そろばん意味なし!)

アヅチとマツバは、顔を見合わせ、頷く。

「「このカードで!!」」
「あいよ!」

横にいたアマキは、内心、へび呼ロイドを心配した!

タツキは、ふたりに、バスタオルを渡す。
そして
自分も番台から、降りてくる。

「よし、行くか!!」

タツキも入るつもりらしい。
アマキにも、バスタオルを渡す。

「いや、俺は入らないし」
「なんだよ、お前いつも入らないじゃないか!」
「何、あんた、入らないの?」
「みんな一緒に。これが温泉の醍醐味なんだろ!?」
アヅチは、カッと、指をさす。(人を指さしてはいけません)
「そうよ!」
マツバも続く。
「みんなで入るのよ!(男女別だけど)」

「いや、俺はここで待ってるから、ゆっくり入ってきて」

アマキは手を振る。

「そうか?」
「じゃあ、入ってくるわ」

アヅチとマツバは、先に中に入る。

「お前、本当に付き合い悪いなー」
「やめろって」

アマキが云う。

「ところで。今、あいつ入ってる?」
「え?」
「温泉の中に、あいつ」
「あいつって?」
「あいつだよ」
「あー~」
ふむふむ、と、タツキは頷く。
「ちょっと前に中に入って行ったよ」
「そうか」

アマキは、ぐっと親指を立てる。

「何かあったら、よろしく!」

「・・・??」

よくわからないが、タツキも、ぐっと親指を立てる。



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「夢幻章伝」20

2015年03月17日 | 物語「夢幻章伝」

「へび呼ロイドー!!」

アヅチはホテル部屋のドアを叩く。

「その、私たち、調子乗りすぎたわ」

マツバは中に声をかける。

「「おーい」」


へび呼ロイドは引き籠もった!!


「―――アヅチにもっ、マツバにも」

扉の向こうから、へび呼ロイドの声が聞こえる。

「おいら達がっアアアアゥ、どんな気持ちでっ
 同僚を助けたいとゥウウウウ、思っているかっ」

ぐっと溜め。

「あなた方には、分からないでしょうねっ!!!」

「……へび呼」「……ロイド」

分けて呼んでみた。

「姉さん、兄さん、
 少しへび呼ロイドさんを1人?にしてあげようよ」
アマキに促され、2人は宿を後にする。
「……そうだな」
「また、後から戻ってくるから」

とぼとぼと3人は
再び東一族の市場を歩く。

「へび呼ロイド怒ってたわね」
「若干ネタっぽく聞こえたけどな」
「そうね、号泣会見という言葉が横切ったわ
 よく、分からないけれど」

うーん、とアヅチは頭をかく。

「美味しいご飯も、お宿も
 へび呼ロイドが出した条件だったけど」

「同僚を助けるって言う約束の下だったわね」

マツバも頷く。

「ちょっと、情報探してみましょうか」
「そうだな」

アマキはそんな2人を見ながら
よきかな、と頷く。

「ギャーズンとかよく分からないけど
 俺も協力するよ。
 気になる所とかあったら声かけて」

アマキの言葉に、それじゃあ、と
アヅチは一つの建物を指さす。

「あの建物は何だ?
 人が結構出入りしているけど」

「あぁ、あそこは公衆の浴場だよ。
 ウチの一族は基本的にみんなそこに入るよ」

「「……浴場」」

2人はゴクリとツバを飲む。

「浴場、って」
「つまり」
「「………温泉??」」

「あぁ、そうだよ。
 確か弱アルカリ泉、源泉掛け流しの」

「行こう!!」
「え?でもあそこは別に何も無いと思」
「違うわ!!
 人が集まるところに情報は集まるのよ!!」

南一族の村には温泉がない。

「知っているぞ、ユカタ、とか
 着るんだろ!!」
「そしてユアガリにコーヒー牛乳を飲むのよね」

「いや、それは大きな旅館での事であって
 というか、2人とも目的が」

「「だから情報収集だ(よ)!!」」

「うん、そういう言い方が
 出来ないことも……」

アマキは、へび呼ロイドの気持ちが
ちょっと分かった気がした。

「たのもー!!!」

アヅチ達はのれんをかき分ける。

「おお、いらっしゃい??!」

番台にいた東一族は、驚きを隠せない。
そこで、アマキがすすすっと割って入る。

「タツキ、この人達
 温泉に入った事が無いらしく」
「なるほど分かった!!」

基本的にこの浴場は
一族のみの専用施設らしい。

「ふつう、観光客は宿の風呂に入るんだけどな
 でも、その心意気、気に入ったぜ!!!」

タツキと呼ばれた東一族の少年は
ぐっと親指を立てる。

これ、東一族で流行っているのか!!?

「入るがいい、旅人達よ!!」

こっちが男湯、こっちが女湯ね、と
番台でそれぞれをタツキが案内する。

「でも、基本的には一族専用の風呂だから
 もう少し待ってくれ。
 人が少なくなったら案内するよ」
「ありがとう、助かるぜ」
「じゃあ私たちは売店でも見てこようかしら」

アヅチとマツバが席を外した後
アマキはタツキに声をかける。

「悪いな、無理をさせて」
「まぁ、少し手間はかかるけどアマキの頼みなら」

久々に楽しめるな、と
タツキは良い笑顔を見せる。

「男女の風呂入替に気付かず、湯船でばったり、とか
 男湯女湯間で会話したり、
 湯上がりのいつもと違う下ろした髪にどきっとか
 ポロリもあるよ―――そういう事だろう!!」

「あ……うん」

そうじゃないけど、もう、それでいいか、と
アマキはちょっと、どうでもよくなった。



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