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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」184

2019年11月29日 | 物語「約束の夜」


「おにい、」
「ちゃん!!?」

何だって!? と、慌てる満樹をよそ目に、
きゃっきゃと楽しむふたり。

「きょうだいがたくさんで」
「うれしいね~」

「えっ? 本当にか!?」
「あなたたちも!?」
「あたしは、お姉ちゃんでもOKよ」

京子は呟く。

「アザーズがこんなにいたなんて・・・」
「まさか本当に、8一族に手のひらにアザがある者が?」
「父、すごすぎ」

「みんな気を付けて!」
「てか、助けて!」

牢屋の中から by ツイナ&ヨシノ

「助けて?」

耀が首を傾げる。

「みんな、客人みたいなものだ」

「客人って!」
満樹が云う。
「なら、ふたりを牢から出せ!」
「もちろん」
耀は頷く。
「俺たちは、兄妹だ」
「そう」
チドリも頷く。
「だが、いきさつが判らず、父親を知らない」
「同じ父親であることを信じられない」

なあ? と、チドリが云う。

「みんなでテーブルを囲んで、お茶でもするか?」

くくっ、と耀が笑う。

「お兄ちゃんっ!」
「そうよ! お茶なら私が淹れるわよ!」
「みんなでハーブクッキー焼いたりとか?」
「いや、ヨシノ。ハーブじゃないだろ?」

・・・かちゃん

音がして、牢の扉が開く。

ぎぎぎ、と動く扉を、ツイナとヨシノは見つめる。

「さあ、出てこい」

「・・・余裕だな」

満樹が云う。

「一応、こちらは5人だ」
「だが、ここは裏の砦だ」

裏一族の守り。
見えない何かが、この場所を覆っている。
何かの、魔法。

「裏一族である、こちらの云う通りにしてもらう」

耀は云う。

「お前たちに伝えておくことがあるからな」

「伝えておくこと??」

耀は頷く。

ツイナとヨシノもそろう。
皆の立ち位置が、ちょうど、円を描くように。

「谷一族のマサシ」

「何よ」
「おそらく、ここでは一番、年上だ」
「おねぇちゃん、て、呼んでよくってよ!」

「北一族のチドリ」

「はいよ」
「兄妹の中で、一番、魔法を使える」
「だな」

「東一族の満樹」

「・・・・・・」
「いまだに、兄妹だと信じていない」
「・・・・・・」

「山一族のヨシノ」

「私?」
「山一族としてなじめず、今に至る」
「違うわよ! 私は薬がね!!(以下略)」

「西一族の京子」

「お兄ちゃん・・・」
「お前は俺の代わりだ」
「えっ!!?」

「南一族のオトミ」

「はーい」
「初登場」
「だよねぇ」

「海一族のツイナ」

「俺!!」
「二番目に魔法を使える」
「微妙なとこ!! 二番じゃダメなんですか!!」

「砂一族のノギ」

「末っ子!」
「そもそも、砂一族はほとんど父親が判らない」
「です!!」

「と、云うことで」

耀が云う。

「まだ、話していないことは何かな?」




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「約束の夜」183

2019年11月26日 | 物語「約束の夜」

「ツイナ!!ヨシノ!!」

駆け寄ろうとする京子だが、
何かを感じ立ち止まる。

「???」

「おお、よく気付いたねおねえさん。
 近寄らない方がいいよ」

危ないからさ、と
砂一族の少年が現れる。

「びりっと来ちゃうわよ」

もうひとり、南一族の少女。
あくまで外見のみの判断だけれども。

ツイナとヨシノは部屋の中に居て
その窓には格子が掛かっている。

「これって、まるで」
「………牢屋ね」

「俺達、閉じ込められているんだ」

悔しそうにツイナが言う。

そうそう、と
その様子を眺めながら
砂一族の少年が言う。

「そして俺達は
 その見張り役って事」
「2人が逃げ出さないようにね」

そうでしょう、と
南一族の少女がチドリに振り返る。

「ああ、お役目ご苦労サマ」
「チドリもね」

「お前の役目は
 俺達を連れてくる事か、チドリ?」

そのやりとりを見ていた満樹が
チドリに問いかける。

「そのために、俺達に近づいた。
 そういう事だな」

「人聞きの悪い。
 もう一度言うが、お前達は大切な客人だ」

だが、と釘を刺す。

「なかなか俺達の誘いに応じてくれないから
 こうやって案内するしか無かった訳だ」

ああ、と
京子は思い出す。

初めてチドリに会った時。
ひったくりから助けて貰ったあの時。
チドリはいつの間にか京子の名を呼んでいた。

名乗った覚えもないのに。

「最初から、ぜんぶ」

「で、この2人も
 同じ様に誘い出したって訳?」

砂一族の村に行ったって聞いたけれど、と
マサシが問いかける。

「「…………」」

この人誰だろ、と
一瞬動きが止まるツイナとヨシノだが
そうなのよ、とヨシノが訴える。

「私達、砂一族の村で
 同じアザを持つノギと会って
 彼が裏一族に攫われたものだから
 助けに向かっていたの」
「それもこれも、
 全部罠だったって事だけど!!」

なあ、ノギ!!と
ツイナは砂一族の少年に言う。

「まんまと来てくれてありがとう」

どうもどうも、と
ノギと呼ばれた砂一族の少年は笑う。

「俺達と一緒にいたケヤはどうしたんだよ」
「ケヤ?
 あいつね、俺が怪しいって気付いていたからさあ」
「………さあ?」

どうなったの、とちょっと青くなるツイナに
ふふふ、と笑う。

「秘密。ここにはいないよ」

「いない!!?」

部屋の、牢の中の奥まで
ヨシノをひっぱって
後ずさりするツイナ。

「……お前達、裏一族なのか」

満樹がノギと
南一族の少女を見る。

「うーん、裏一族でもあるけれど」

ほら、と少女は自分の手のひらを見せる。
ノギと呼ばれた少年も。

「俺達」
「私達」

「「兄妹だよ、お兄ちゃん」」





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「約束の夜」182

2019年11月22日 | 物語「約束の夜」


おぼろげだった景色が、はっきりとしてくる。

けれども、それは

北一族の村ではない。
人々が、生活を送っているような、景色ではない。

「本当に、ここは、・・・」

裏一族の、砦。
暗い、世界。

「君たちは、大切な客人だ」

こちらへ。と、チドリが歩き出す。

「いや、待て」

満樹が云う。

「裏一族、なのか。本当に」

その言葉に、耀とチドリは顔を見合わせる。

「ここにきて、」
「最後の確認、と云うところか?」

「いつから? お兄ちゃんいつからなの!?」

「いつから、とは」
「あの、家を出たときから、・・・?」

耀は、京子に近付く。

「そうだな。家を出たとき、」
「・・・お兄ちゃん」
「いや、違う。最初から、だ」
「・・・・・・最初から?」

耀は頷く。

「ここに、全員揃っていないから云うのもなんだが」

満樹と京子、マサシは息をのむ。

「俺たちはみな、血のつながった兄妹で。」

そして

「父親は、裏一族の主導者のひとりだ」

「しゅ、」
「主導者・・・!?」
「嘘よ!?」

「嘘じゃない」
「はは。満樹はまだ、血がつながっていると、信じられないのだろう」

チドリは改めて、歩き出す。

「全員揃ったら、各自、確認してもらおうか」
「確認?」
「俺たちの父親が間違いなく、同じであると云うことを」

「まさか!?」

「こっちだ」

チドリのあとに、耀も続く。

仕方なく、3人も歩き出す。
おそらく
ツイナとヨシノがいる場所へ。

「満樹・・・」
「京子」

歩きながら、満樹は京子を見る。

「逃げよう」
「・・・・・・」
「無理だ」
「満樹」

「誰もいないように見えて、」

多くが、いる。

裏一族が息をひそめて。

彼らは

想像以上に、強い。

桁違いの魔法。
法外の、体術、を

有無を云わず、使う。

そんな、集団。

「チャンスを待とう」

それしか、ない。

5人は、建物の中へと入る。

しばらく歩いて。

何か、部屋が並ぶ場所。

そこに、

「ツイナ!」
「満樹!? 京子!!」
「ヨシノも!」
「わぁああ。不安だったのよー」
「よかった、本当に。よかった!」

やっと、ふたりとの、再会。




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「約束の夜」181

2019年11月19日 | 物語「約束の夜」
背後から
ふう、と耀のため息が聞こえる。

「いつもの事だが、
 お前の魔法は酔うな」

まあ、そう言うな、と
チドリは軽く笑う。

「相変わらず、この移動には弱いな耀。
 もう少し慣れてくれよ」
「西一族なんだ仕方ない」
「センも西一族だけど」
「あれは別枠」

ねえ、と京子は
震える声で話しかける。

「お兄ちゃんとチドリって
 知り合いだったっけ?」

「うん?」

「だって、いつもの事、とか、
 相変わらずとか」

まるで以前から顔見知りだったような。

「ああ、言い忘れていた」

つかつか、と耀は京子に近づく。

耀の伸ばした指先が
触れるか触れないか、
そんなうちにパリッと静電気の様な
火花が散る。

「っつ!!」

京子は小さく悲鳴をあげる。

「お、にいちゃ」
「こいつの加護の魔法。
 解除しててくれよ」

「忘れてた。ほら」

チドリは杖を振る。

「何を!?」

満樹とマサシが
それぞれに京子の前に出るが
京子は今まで自分を覆っていた
膜のような物が無くなったのを感じる。

「??」

「なんてことは無い。
 兄妹が触れることも出来ないなんて
 可哀想じゃないか」

「ツイナの魔法を解除した?」
「ちょっとちょっと、
 なんでもありじゃない」

止めてよね、とマサシが唸る。

元々上級の術使いだろうという
認識はあった。

それでも先程の魔法といい
今の術の解除といい
桁が違う。

「にしても耀、敵意向け過ぎじゃないか」

チドリが、からかうように言う。
さっきよりも強く反応していたぞ、と。

「敵意なんて、やめてくれよ」

知っているだろ、と
耀は言う。

「こいつは大切な
 俺の代わりなんだから」

「ねえ、おにいちゃ」

言葉がうまく紡げない。
こんなに近くにいるのに。
どうして耀は京子を飛び越して、チドリと話しているのだろう。

「大丈夫だ。
 俺達がついている」

しっかりしろ、と
満樹が京子を支える。

「……満樹」
「ワタシも居るわよ」
「マサシ」

満樹はチドリと耀を見据える。

「俺達をどうするつもりだ?」

「言っただろう、
 ツイナとヨシノの所に連れて行くと」

「本当だろうな」
「約束するよ。
 2人はここにいる」
「……ここは、どこだ?」

北一族の村のはずなのに、
全く雰囲気が違うその場所。

「北一族の村だよ」
「とてもそうは思えないが」
「少し重なってはいるけどな」
「重なる??」

「普段は隠してあるんだ。
 簡単に辿り着かれては困るからな」

「やっぱり、あなた達」

やっと理解出来たかと
言わんばかりに
耀は笑う。

今まで京子が見たことの無い
そんな笑い方で。

耀とチドリ、2人は並び、
京子達に向かって告げる。


「ようこそ。
 裏一族の砦へ」






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「約束の夜」180

2019年11月15日 | 物語「約束の夜」



その音とともに、ぐにゃりと、空間がゆがむ。

「え!?」
「何これ?!」
「裏一族?!」

「いや、」

満樹は、前方を見る。

「チドリ!!」

その言葉に京子もマサシも、チドリを見る。

「どう云うことだ」

満樹は、武器に手をかける。

「落ち着け」

いたって冷静に、チドリは云う。

「行くんだよ、今から」
「行く?」
「行くのは、ツイナとヨシノのところでしょう!?」

「そう」

チドリは、杖を握り直す。

「彼らのもとだ」

「・・・・!?」

京子の前に、満樹とマサシが立つ。

「こんなに空間をまげて」

マサシが、声を出す。

「ちょっとした魔法じゃ、ないようねぇ」

「当たり前だ」

チドリが云う。

「そう簡単にたどり着かれては、困るからな」

ほら、と、チドリは歩き出す。

ゆがむ空間。

満樹と京子とマサシは、顔を見合わせる。
その後ろに続く、しかない。

それでも、

自身の身体は、まるで自身ではないかのように。

何か、

魔法にかけられたかのように、チドリに続いている。

「ちょっと!」
「何だ、これは、」
「ねえ、チドリ!」

「静かに!」

もはや、身体は云うことを聞いていない。
歩かされている。

ただ、チドリに続く。

何もない、空間。

いるのは

先頭を歩くチドリと
続く、満樹と京子とマサシ。
そして、耀。

「まさか・・・」

マサシは、目を細める。

「チドリ・・・」

満樹は首を振る。

もはや、なすすべもない。

「満樹・・・」
「落ち着け」

満樹は京子を見る。

「この先に、ツイナとヨシノもいるはずだ」
「この先って、どこなのよ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ねえ、満樹、マサシ」

やがて、空間のゆがみが、緩やかになり、
それは、消える。

「さあ」

チドリが立ち止まる。

「ここだ」

「こ、こ・・・?」
「ここは、北一族の村なのか?」

その景色は、北一族の村とは違う。

「チドリ・・・」
「驚かせて、すまなかったな」

チドリ再度、杖を鳴らす。

ふ、・・・と、身体が自由になる。

「あ、動く」
「京子!」

うかつに動くな、と、満樹は京子を掴む。

「チドリ」
「ここは、どこだ?」

チドリは、3人を見る。

「ようこそ、と、云うところかな?」

何だろう、様子がおかしい。

この場所も。
チドリも。

耀、も。




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