「マッキーがピンチ!!」
何かの信号を受信するかのように、戒院は立ち上がる。
「・・・・・・」
「いったい何が?」
一緒に入っている者たちが、何だ何だと、戒院を見上げる。
In 東一族公衆浴場 男風呂。
「だから、マッキーがピンチ!!」
「マッキーってなんだ」
タオルを浴槽の水面に広げ、ふわっと風船を作る、俊樹。
(タオルを浴槽に入れてよいかは、各浴場に従いましょう)
「判るだろう、そんな受信だ!」
「判らん! って、あぁああぁあ!!」
ぶっしゅー
戒院は、俊樹のタオル風船をつぶす。
「戒院っ!!」
「お前ら、もっと、マッキーのピンチを感じろよ!!」
「マッキー!!」
はいっ!
と、水樹が手を上げる。
「おお。いたのか、水樹」
「いたよ、おっさん!!」
「おっっ!!?」
「もしかして、満樹兄さんのこと!?」
「正解!」
浴場がざわつく。
「満樹?」
「マッキー?」
「まさか・・・」
「確かに、愛称を付けるなら、そうなるのか」
「夢の国的な」
それはミッ●ー。
「もし、もしだぞ。お前ら」
戒院が、ゴクリと云う。
「満樹が、不覚にも、ホテルに連れ込まれそうになったら??」
「満樹が、」
「ホテル・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「それは、」
「おめでとうってことじゃないのか??」
何かの、大爆笑。
「違う!!」
戒院が云う。
「男にだよ!」
「男に!?」
「何で!?」
何も受信出来ないみんなは、むしろ、戒院を心配する。
戒院、何かあったのかなー。
晴子と、か。
「とりあえずさ」
俊樹が、もう一度、タオル風船を作る。
「お前。前隠せよ」
そして、谷一族の村。
「はあぁああ。驚いた」
「マッキーは早とちりだねぇ」
マサシが笑う。
「いらっしゃいませ~。谷一族のお宿へようこそ~」
フロントの者が、にこりと営業スマイル。
「何か、いろいろ・・・」
慣れないことが多い。
「ふふ。ホテル=やらしい、じゃないから」
おもしろそうに、マサシは笑っている。
つまりは、普通の宿泊施設。
普通の、ホテル。
「いつも、お客さんを連れてきてくれて、ありがとうマーシ」
「いえいえ」
マサシとフロントのものは親しげに話す。
「こちらもお困りだったから」
「・・・そうだったっけ?」
「あらあら、東一族のお客様。マーシはいいひとよ~」
「まあ、それはそれで」
まだ、動悸が納まらない。
「じゃあ、空いてるかな?」
「ええ。よかったら使って~」
「空いてるって?」
「ワタシと話すことがあるんだろう?」
マサシは、満樹の肩を叩く。
「よかったら、向こうの部屋使って~」
マサシは歩き出す。
満樹はそれに続く。
「さあさ」
隅の部屋。
今日は、宿泊客はいないと云うことだろうか。
なぜだか、ダブルベットが、ひとつ(汗)
「何から話す?」
ふう、と坐りながら、マサシが云う。
「ワタシのこと?」
それとも
「満樹のこと?」
もしくは、
「父親のこと?」
「父親・・・?」
「あ、仕事上がりで喉乾いたから、アルコール飲んでいい?」
「何かが怖いからやめて!!!」
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