TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」154

2019年06月28日 | 物語「約束の夜」


「マッキーがピンチ!!」

何かの信号を受信するかのように、戒院は立ち上がる。

「・・・・・・」
「いったい何が?」

一緒に入っている者たちが、何だ何だと、戒院を見上げる。

In 東一族公衆浴場 男風呂。

「だから、マッキーがピンチ!!」

「マッキーってなんだ」

タオルを浴槽の水面に広げ、ふわっと風船を作る、俊樹。
(タオルを浴槽に入れてよいかは、各浴場に従いましょう)

「判るだろう、そんな受信だ!」
「判らん! って、あぁああぁあ!!」

ぶっしゅー

戒院は、俊樹のタオル風船をつぶす。

「戒院っ!!」
「お前ら、もっと、マッキーのピンチを感じろよ!!」
「マッキー!!」

はいっ!

と、水樹が手を上げる。

「おお。いたのか、水樹」
「いたよ、おっさん!!」
「おっっ!!?」
「もしかして、満樹兄さんのこと!?」
「正解!」

浴場がざわつく。

「満樹?」
「マッキー?」
「まさか・・・」
「確かに、愛称を付けるなら、そうなるのか」
「夢の国的な」

それはミッ●ー。

「もし、もしだぞ。お前ら」

戒院が、ゴクリと云う。

「満樹が、不覚にも、ホテルに連れ込まれそうになったら??」

「満樹が、」
「ホテル・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「それは、」
「おめでとうってことじゃないのか??」

何かの、大爆笑。

「違う!!」

戒院が云う。

「男にだよ!」

「男に!?」
「何で!?」

何も受信出来ないみんなは、むしろ、戒院を心配する。

戒院、何かあったのかなー。
晴子と、か。

「とりあえずさ」

俊樹が、もう一度、タオル風船を作る。

「お前。前隠せよ」


そして、谷一族の村。


「はあぁああ。驚いた」
「マッキーは早とちりだねぇ」

マサシが笑う。

「いらっしゃいませ~。谷一族のお宿へようこそ~」

フロントの者が、にこりと営業スマイル。

「何か、いろいろ・・・」
慣れないことが多い。
「ふふ。ホテル=やらしい、じゃないから」

おもしろそうに、マサシは笑っている。

つまりは、普通の宿泊施設。
普通の、ホテル。

「いつも、お客さんを連れてきてくれて、ありがとうマーシ」
「いえいえ」
マサシとフロントのものは親しげに話す。
「こちらもお困りだったから」
「・・・そうだったっけ?」
「あらあら、東一族のお客様。マーシはいいひとよ~」
「まあ、それはそれで」

まだ、動悸が納まらない。

「じゃあ、空いてるかな?」
「ええ。よかったら使って~」
「空いてるって?」
「ワタシと話すことがあるんだろう?」
マサシは、満樹の肩を叩く。
「よかったら、向こうの部屋使って~」

マサシは歩き出す。

満樹はそれに続く。

「さあさ」

隅の部屋。
今日は、宿泊客はいないと云うことだろうか。

なぜだか、ダブルベットが、ひとつ(汗)

「何から話す?」

ふう、と坐りながら、マサシが云う。
「ワタシのこと?」
それとも
「満樹のこと?」
もしくは、
「父親のこと?」

「父親・・・?」

「あ、仕事上がりで喉乾いたから、アルコール飲んでいい?」

「何かが怖いからやめて!!!」



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「約束の夜」153

2019年06月25日 | 物語「約束の夜」

「お待たせ」

着替えて、店の外に出る店員と満樹。

「さぁ、行こうか」

おいで、と
手招きする店員。

「………いや、あんた」
「なんだい?」
「………」

うっすらメイクしているよね、とか
少し高い声とか。
格好は谷一族の男性の格好だが
ストールとかアクセとか
どちらとも言えないような
装飾品とか。

聞きたいことは諸々あるけれど
そう言うのってやっぱり
個人の自由ですし。

「俺はあなたのことをよく知らない」

着いていく以前に、
彼は何を知っていて、
満樹をどうするつもりなのだろう。
 
「お互いの事をよく知ろうって事?」

いいねぇ、と店員。

「名乗ってないのは君も同じだけど」
「ああ」

それは、そうだと満樹は手を差し出す。

「東一族の満樹だ」
「満樹、ね。
 ワタシはマサシ、ご覧の通り谷一族さ」
「よろしく、マサシ」
「親しい人はマーシって呼ぶよ。
 マッキーもそう呼んで」
「マッキーっ!!?」
「嫌かい?」

満樹は全力で首を縦に振る。

嫌、というか
その呼び方知られたら
めっちゃからかいそうな知り合いとかいるから
定着したくない。

具体的には戒院とか。

残念、とマサシは呟く。

「マサ、いや、マーシは」
「どっちでも良いよ。
 呼びやすい方で」

「その名前は、谷一族にしては
 珍しい響きだな」

マサシという名前は
谷一族には珍しい。
どちらかと言えば、南、山、そして西一族にありそうな名前だ。

親しい人がマーシと呼ぶというのも
谷一族の名前に近い響きで呼んでいるからだろう。

「だろうねぇ。
 父がつけた名前らしいから」

「え?」

「ワタシの事はさておき、
 満樹は探し物をしているんだったな。
 探し人、かな!?」

「俺達の何を知っている?」

「何も知らないけれど、
 言ったろう、男の勘?」
「冗談はよしてくれ」
「ふふ、まあ拗ねるなって」

簡単さ、と
マサシは答える。

「それは、ワタシに似ていると言った
 知り合いが関係している?」
「ああ、名前は」

「耀?」

「なぜその名を!!?」
「さっき、もしかして耀かって
 言っただろう」
「そう、だったな」

あんなさらりと流した言葉を。
一瞬の動きを、
言葉の端々を、
よく見ている、聴いている。

ふと、マサシの目線を感じる。

物腰が柔らかいようで
どこか鋭い目。

「その耀という人
 心当たりがあるかもしれない」

まさか、と
満樹は驚く。

あまりに話しが上手く進みすぎていないか。

「なぜ、それを
 会ったばかりの俺に簡単に話すんだ」

にこり、とマサシが笑う。


「なんだろうね。
 困っている満樹を見たら
 助けてあげたくなったって事かな」

ん、と満樹は
共に歩いてきていた先を見る。
どことなく進んでいると思ったが
行く宛があったらしい。

が。

「ここは」

お宿。ホテル。

「さぁ、まずは少し休憩しようか!!」

「休憩ってどういう!!?」




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「約束の夜」152

2019年06月21日 | 物語「約束の夜」


「ちなみになんだけど、」

と、店員。

「もっと大人びて落ち着きがあってキレイ系で男だったらって?」
「ああ」
「それ、ほぼ違う人間だろう!!」

京子がね。

「重ね重ね、すまない」

落ち着け、満樹。
とりあえず、ご飯を食べよう。
そして、
谷一族の村へ来た目的。(確認)
耀の情報を探そう。
ついでに、東一族の務めの件も。(忘れてないよ)

谷一族の村の、店。

賑わっている。

満樹は、耳を澄ます。

慣れない土地。
地元民の会話で得られるものは、大きい。

あの坑道は採石しやすい、とか。
鉱石がかなりの収入減になっている、とか。
谷一族では、鉱石の細工は日常品だが
他一族にはおみやげとして、いい、とか。

一族の特徴は、白色~茶色系の髪色&瞳。
黒系の服。
額の入れ墨。
は、三つ目が祖先由来。

食料は他一族から仕入れているが、
保存食や加工品の技術はあり、それが、名物。
ハムとか。

ほか。

谷一族の坑道の壁画。
とのにいさん

云々。

うむうむ。

谷一族の基本情報。
特に、真新しいことはないようだ。

満樹は食事を終え、一息つく。

先ほどの店員が、飲みものを運んでくる。

「ずいぶんと、悩んでいるねぇ」
店員が笑う。
「何か、探し物かな?」

満樹は店員を見る。

「探し物を谷に?」
「そう思う?」

満樹は、云う。

「何か知っている?」
「ふふ」

店員が、辺りを見る。
周りは何も気付かずに、食事を楽しんでいる。

「そうだねぇ」
「・・・・・・」
「男の・・・」
「・・・・・・」
「勘?」

「怖っ!!」

満樹は額に手を当てる。

「いったん確認なんだが」
「何?」
「あなたは男で間違いない?」
「失礼なやつ!」

店員は再度笑う。

「それって、きれいってこと?」

自身を指さす。

「いや、うーんと、えっと」
「やっぱり、ナンパ?」
「違う!!」
「じゃあ、行くか」
「どこに!?」
「ちょっと待ってろ。もうすぐあがるから」
「話を聞け!!」




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「約束の夜」151

2019年06月18日 | 物語「約束の夜」

谷一族の村は
それはそこで、辺境の地。

緑が少ない荒野の地で
鉱物を糧に生活している一族。

彼らの村の入り口は
そんな鉱山の一部であったかも知れない
洞窟の中。

に、辿り着いた、満樹。

薄暗いと思っていた洞窟の中は
あちこちに照明が灯り
祭りの夜のような華やかさがある。

「谷一族は、灯りの魔法に特化していたな」

谷一族の村で掘り出される鉱物は
加工され、装飾品として好まれる。
北一族の村ほどではないが
買い付けに来た商人達で賑わっている。

その合間を抜けるように村の中心地へ向かう。

「スムーズだ」

そう、ここまでの道のりが、

「凄く順調。快適。予定通り。むしろ早い」

うんうん、とひとり旅を噛みしめる。

元々、身の回りに起きた異変を探りたい、と
東一族の村を出たのが始まりだった。

それが、京子、ツイナと出会い、
今ではヨシノ、チドリも合流する大所帯。

自分ひとりでは無い分
夜がけの移動も出来ないし、
携帯食で済まさず、食事もきちんとした物をと思う。

「ひとりって、楽!!」

情報収集がてら店に入り、
軽食を頼む。

ぱっと食べてぱっと動ける。
なにもかも自分のペース。

久々のお一人様に、
足取りも軽い。

軽いけれど。

「…………」

ツイナとヨシノは
砂一族の村に向かうと言っていたが
本当に大丈夫なのか。

早く、谷一族の村に居るかも知れないという
京子の兄・耀の手がかりを掴み
ツイナ達と合流すべきなのでは。

「それに」

京子とチドリ。

満樹はまだチドリのことを
信用できていない。

京子と二人っきりで
北一族の村に置いてきて良かったのだろうか。
自分が、京子の友好関係を
どうこう言う立場ではないけれど。

「なんだが、こう
 モヤモヤするな」

1人は楽だけど、
早く戻らないと、
自分が近くに居ないと、
見ていないと不安だという、
この気持ち。

これは、

そう。

「………母性!!」

子ども達が心配な
母親の気持ち。

「俺は、遂に、その領域に!?」

「どうかした、お客さん?」

いつの間にか、注文していた軽食が運ばれてくる。

「ああ、いや、
 うるさくしてすまない………」

満樹は、テーブルに置かれた食事から
視線をあげて驚く。

「………」
「お客さん?」
「き!!」
「え?ちょっと?なに?」

その店員の腕を掴む。

「………京子?」

「はあ?」
「あ、いや」

違う。
違うのだけど。

「俺の知り合いが、もっと大人びて、
 落ち着きがあって、キレイ系で
 男だったら………こんなかなって」

「新手のナンパだなぁ?」

ったく、と
その店員は満樹の腕を振り払う。

似ているとは少し違う。
顔の系統が同じ。
まるで、そう、兄妹の様に。

「耀!?」

店員は振り返って言う。

「さあ、誰のことだか」



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「約束の夜」150

2019年06月14日 | 物語「約束の夜」


「ノギなら、さらわれちゃったわよ」

ヨシノさらり。

「さらわれっ!!?」
「ヨシノさらっと過ぎる!!」
「でも、もったいぶることでもないでしょう?」

うわぁああああ、と、息を吐くケヤ。

「さらわれちまったか、ついに」

「ついに!?」
「それ、どう云うこと!?」

「だから、俺が心配して見張っていたって!」

ケヤが云う。

「何かありそうだったんだよ」

「何かって」
「いったい何が?」

「だから、何かありそうな予感」

えぇええ。

「ノギは、お嫁さん探しの旅に出ようとしていたじゃない」
ヨシノは首を傾げる。
「それのこと?」
「いや、そうじゃなくてだな」
「砂一族だって、村外に出るのは自由でしょう?」
「それはそうだけど。もっと危険と云うか、さ」
「よく判らないわ」

「だから予感だって!」

同じ一族であるノギに悪いことが起きそうな

「なんだろう、こう。・・・男の勘?」

「キモイ・・・」

「キモイ、とはっ!!」

ケヤくん、カッ!!

「落ち着こう、みんな!!」

ツイナが立ち上がる。

「今からどうするかを、考えなきゃ!!」
「ツイナ!!」

ヨシノのパスペ(パーソナルスペース)ゼロが発動。

「そうよね、ツイナ! かっこいい!!」
「おぉおお、ヨシノ!」
「そうだな、前回の話では、ずいぶんと妄想していたようだが」
「ふふ、やらしい、とかね!」
「その話はめっ!!」

ツイナは立ち上がる。(2回目)

「まずは、今、どうしたらいい、ケヤ!?」

「さっそく、ふったね」

ケヤが云う。

「移動するべきか、野宿するべきか、だろう?」
「そう」
「楽器とか奏でたいわ~」
「いや、ヨシノ。それメインじゃないから」

ケヤはあたりを見る。

「ひとまず、野宿。日が昇り次第、移動」

それが妥当であろう。

「きゃぁ、楽しみ~」

ヨシノは手を握る。

「BBQに、食後のコーヒー、星空を見ながら☆」
「楽器の演奏付きで?」

それ、キャンプじゃん。

「そして、やらしいことがぁああああ!」

「おいおい、大丈夫かよ、海一族」

ツイナ、本当にどうした。

「ちょっとほっておくか」

ケヤは自分の荷物を取り出し、手際よく、火を起こす。

小さいフライパンで、目玉焼き。
食パンを取り出し、ふたりに配る。

「まずは、お腹を満たす」

目玉焼きにはお好みで、と、謎のスパイスも取り出す。

「毒か」
「毒よね」

「失礼だな。元気なる薬と云え」

「元気になるって、いったいどこが」
「今から仮眠するのに、元気になる必要ある?」

3人は食事をとる。

3人の周囲には、ぐるりと、線が引いてある。

簡単な魔法。

「いわゆる、防御線と云うか」
「猛獣から身を守る、とかかしら」
「そう云うこと」

ケヤはスープを飲む。

「この中にいれば、猛獣に気付かれない」
「やっぱり、何かいるのか砂漠には・・・」

ここに来ての、新しい設定なり。

「でも、見回りの東一族には無理だわな」
ケヤが云う。
「東一族からは逃れられないよ」

「東、」
「一族・・・」

「夜の砂漠当番さんには、何も意味ないから、これ」

「なんてこったい」
「でも、なぜ、東一族に狙われるの?」

「ん~。なんでだろうねぇ」

「そして、やらしいことが!!」
「ツイナ、いつまでやらしさを求めているの?」
「だって見て! この男女比!!」
「・・・男女比?」
「2体1だよ!!」
「・・・ツイナ」
「ヨシノは、俺とケヤだったら、!!」
「それは砂先生の、ケヤよね」

ごーーーーーん。

そのやり取りを、ケヤは遠い目で見る。

さっと毛布を取り出す。
ふたりに渡す。

「ほら、冷えるから」

「ありがたいわ~」

3人は、毛布にくるまる。

朝になるのを、待つ。



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