南一族式の祈りが、牢の中に響き
そして
「食べたー!!」
アヅチとマツバは、カレーを一気に口へと運ぶ。
「た、たたた、食べたー!!」
ふたりのお皿は、あっという間に空っぽに。
「ちょっ、ふたりとも、どんだけお腹すいてるのー!!」
・・・先ほどから叫んでいるのは、へび呼ロイドです。
「あなたたち、一口でよかったのに~♪」
そう云いつつも、フワはうれしそうだ。
「そんなに食べてくれるなんて、いいお客さんねぇ」
シマもうれしそうだ。
「それで!」
ガッ、と音を立てて、マツバは空っぽの皿を置く。
「いったい、このカレーには、どういう毒が入っているのよ!」
「そうだ!」
アヅチが云う。
「とりあえず、水くれ!!」
「あんた、黙ってなさい!」
「何の毒かは、実験に支障が出るから、云わないわよ~」
フワとシマは、じろじろとふたりを見る。
「あんたら、はっきりと実験と云ったわね」
判っちゃいるけど、腹立つわー、のマツバ。
「あなたたち身体に変化は?」
「効くまでに時間がかかるのかしらぁ」
アヅチとマツバは顔を見合わせる。
「今のところ」
「変化は、」
・・・ない。
「そう。」
フワが頷く。
「じゃあ。シマ、あれを持ってきて」
「わかったぁ!」
シマはそそくさと外に出て、そしてすぐに戻ってくる。
「はい、フワ!」
「ありがとう♪」
「それは」
「いったい、何」
にこにこと、フワは、それをふたりに見せる。
「感動の絵本です!!」
じゃーーーーん!!
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・それは、どういう関係があるのよ」
「とっても哀しい、お・は・な・し♪」
「お・は・な・しぃ♪♪」
「あんたたちが云うと、とてもそうは思えないけど」
フワは構わず、にこにことする。
「まあ、坐って♪」
絵本を開く。
「今から、読んであげる♪」
昔々
あるところに
とっても争っている、ふたつの一族がいたわけで。
でも、
いかんせん、争いが長く、両一族とも疲弊していたので
争いを、一度、お休みすることにしたのでした。
「南一族では、聞いたことない話っぽいな」
「でも、ありがちな出だしね」
お休みの証として
片方の一族は、もうひとつの一族に
ひとりのお嫁さんを送り出しました。
迎える側の一族は、そのお嫁さんを大切にします、と約束をして。
「そんなことをしていた時代があるのかー」
「口約束じゃ、信用が足りなかったのよ」
そのお嫁さんには不思議な力がありました。
この世では珍しい、動物と話すことの出来る力、です。
敵の一族であるお嫁さんに、見向きもしないお婿さんだったので、
お嫁さんは、淋しさのあまり、鳥と話していました。
「動物と話せる、と云うと」
「東一族ね・・・」
ところが
その様子を見てしまった、その一族は
お嫁さんが、情報を流していると思い込み
とても怒って、暗い牢の中にお嫁さんを閉じ込めてしまいました。
お嫁さんは、ひとりぼっちで牢の中。
誰も話してくれる人はいません。
「なんだよなー・・・」
「・・・そうね」
お嫁さんは、牢の中で子どもを生みましたが、
子どももすぐに、取り上げられてしまいました。
「それは、ひどすぎだろ!!」
「・・・・・・」
そこで、さすがに、お婿さんが登場。
お嫁さんに会いに、牢へと赴きます。
けれども
お嫁さんには、さらに、
話せないよう、魔法が掛けられていたのです。
「動物と話しちゃまずいから?」
「・・・・・・」
そこから、いろいろあったけど
はしょるとして
「はしょるのかよ!!」
「・・・・・・」
お嫁さんは、ついに、食事に毒を盛られ、殺されてしまいました。
お婿さんは、ボロボロと泣きました。
「はしょりすぎて、気持ちがつながらなっっ!!」
「・・・・・・」
お婿さんは、せめても、と
遺骨を持って、相手の一族に謝りに行きました。
申し訳ありません。
お嫁さんを大切にすることが出来ませんでした。
自分の責任です。
お婿さんは、
それから、
自分の一族のもとへ、戻ることはありませんでした。
めでたしめでたし
おしまい。
「どう?」
絵本を閉じて、フワが云う。
「とっても哀しいような、笑えるような話♪」
「詳しくは、(カヤと祝子)を読んでねぇ」
「宣伝かよ!」
アヅチが云う。
「いや、てか、少なくとも笑えないだろうが!」
しかも
「めでたくないし!!」
そして
「途中、はしょりすぎて、結局はわけわかんねぇよ!!」
アヅチはひとりでツッコみまくる。
「うふふ」
「そうねぇ」
フワとシマは、にこにことマツバを見る。
「そうだろ、マツバ!」
「・・・・・・」
「何か云ってやれよ!!」
「・・・・・・」
「マツ、バ??」
「・・・・・・」
「・・・・??」
アヅチは、マツバを見る。
「おまっ!!?」
アヅチは固まる。
「うふふ♪」
「その子には、毒が効いたみたいねぇ」
「南一族には、効く人と効かない人がいるのかしら」
マツバが、
ボロボロと泣いている!!
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