TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「夢幻章伝」35

2015年05月29日 | 物語「夢幻章伝」

南一族式の祈りが、牢の中に響き

そして

「食べたー!!」

アヅチとマツバは、カレーを一気に口へと運ぶ。

「た、たたた、食べたー!!」

ふたりのお皿は、あっという間に空っぽに。

「ちょっ、ふたりとも、どんだけお腹すいてるのー!!」

・・・先ほどから叫んでいるのは、へび呼ロイドです。

「あなたたち、一口でよかったのに~♪」

そう云いつつも、フワはうれしそうだ。

「そんなに食べてくれるなんて、いいお客さんねぇ」

シマもうれしそうだ。

「それで!」

ガッ、と音を立てて、マツバは空っぽの皿を置く。

「いったい、このカレーには、どういう毒が入っているのよ!」
「そうだ!」
アヅチが云う。
「とりあえず、水くれ!!」
「あんた、黙ってなさい!」

「何の毒かは、実験に支障が出るから、云わないわよ~」

フワとシマは、じろじろとふたりを見る。

「あんたら、はっきりと実験と云ったわね」

判っちゃいるけど、腹立つわー、のマツバ。

「あなたたち身体に変化は?」
「効くまでに時間がかかるのかしらぁ」

アヅチとマツバは顔を見合わせる。

「今のところ」
「変化は、」

・・・ない。

「そう。」

フワが頷く。

「じゃあ。シマ、あれを持ってきて」
「わかったぁ!」
シマはそそくさと外に出て、そしてすぐに戻ってくる。
「はい、フワ!」
「ありがとう♪」

「それは」
「いったい、何」

にこにこと、フワは、それをふたりに見せる。

「感動の絵本です!!」

じゃーーーーん!!

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・それは、どういう関係があるのよ」
「とっても哀しい、お・は・な・し♪」
「お・は・な・しぃ♪♪」
「あんたたちが云うと、とてもそうは思えないけど」

フワは構わず、にこにことする。

「まあ、坐って♪」

絵本を開く。

「今から、読んであげる♪」

昔々

あるところに

とっても争っている、ふたつの一族がいたわけで。

でも、

いかんせん、争いが長く、両一族とも疲弊していたので
争いを、一度、お休みすることにしたのでした。

「南一族では、聞いたことない話っぽいな」
「でも、ありがちな出だしね」

お休みの証として
片方の一族は、もうひとつの一族に

ひとりのお嫁さんを送り出しました。

迎える側の一族は、そのお嫁さんを大切にします、と約束をして。

「そんなことをしていた時代があるのかー」
「口約束じゃ、信用が足りなかったのよ」

そのお嫁さんには不思議な力がありました。
この世では珍しい、動物と話すことの出来る力、です。

敵の一族であるお嫁さんに、見向きもしないお婿さんだったので、
お嫁さんは、淋しさのあまり、鳥と話していました。

「動物と話せる、と云うと」
「東一族ね・・・」

ところが

その様子を見てしまった、その一族は
お嫁さんが、情報を流していると思い込み

とても怒って、暗い牢の中にお嫁さんを閉じ込めてしまいました。

お嫁さんは、ひとりぼっちで牢の中。

誰も話してくれる人はいません。

「なんだよなー・・・」
「・・・そうね」

お嫁さんは、牢の中で子どもを生みましたが、
子どももすぐに、取り上げられてしまいました。

「それは、ひどすぎだろ!!」
「・・・・・・」

そこで、さすがに、お婿さんが登場。
お嫁さんに会いに、牢へと赴きます。

けれども

お嫁さんには、さらに、
話せないよう、魔法が掛けられていたのです。

「動物と話しちゃまずいから?」
「・・・・・・」

そこから、いろいろあったけど
はしょるとして

「はしょるのかよ!!」
「・・・・・・」

お嫁さんは、ついに、食事に毒を盛られ、殺されてしまいました。

お婿さんは、ボロボロと泣きました。

「はしょりすぎて、気持ちがつながらなっっ!!」
「・・・・・・」

お婿さんは、せめても、と
遺骨を持って、相手の一族に謝りに行きました。

申し訳ありません。
お嫁さんを大切にすることが出来ませんでした。
自分の責任です。

お婿さんは、

それから、

自分の一族のもとへ、戻ることはありませんでした。

めでたしめでたし

おしまい。

「どう?」

絵本を閉じて、フワが云う。

「とっても哀しいような、笑えるような話♪」
「詳しくは、(カヤと祝子)を読んでねぇ」

「宣伝かよ!」

アヅチが云う。

「いや、てか、少なくとも笑えないだろうが!」

しかも

「めでたくないし!!」

そして

「途中、はしょりすぎて、結局はわけわかんねぇよ!!」

アヅチはひとりでツッコみまくる。

「うふふ」
「そうねぇ」

フワとシマは、にこにことマツバを見る。

「そうだろ、マツバ!」
「・・・・・・」
「何か云ってやれよ!!」
「・・・・・・」

「マツ、バ??」

「・・・・・・」

「・・・・??」

アヅチは、マツバを見る。

「おまっ!!?」

アヅチは固まる。

「うふふ♪」
「その子には、毒が効いたみたいねぇ」
「南一族には、効く人と効かない人がいるのかしら」

マツバが、

ボロボロと泣いている!!



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「夢幻章伝」34

2015年05月26日 | 物語「夢幻章伝」

「これ、アウトなやつ―――!!!」

おののくアヅチに
落ち着け、と
マツバは三度目のストレートを決める。

「ぐふっ」
「大丈夫よ口を付けてないんだから」

「そう、口を付けたら
 少しばかりタダじゃすまないだけよ」

ふふふとフワは言う。

「少しばかり、じゃないだろ!!
 俺はちょっとちびりそうだったぜ」

アヅチは、『銀の匙、毒』でググったらしい。
完全にあかんやつです。

だがしかし、とマツバはフワに問いかける。

「どういう事?
 黙っていればそのまま食べていたのに
 わざわざ毒があることを教えたり」
「……俺たちを試しているのか?」

あら、そう来る?とフワが言う。

「私たち、
 敵対する相手には容赦しないけど
 誰にでも残酷って訳じゃないの」

そこの所、誤解されちゃこまるわー、と
めそめそとポーズをとる。

「さすがに何も知らない人に
 毒入りの食事を出すなんて
 酷いわよね」

うんうん、と
アヅチとマツバは頷く。ごもっとも。

「だから、これは
 毒入りですよーって教えてから食べて貰うのよ」

す、
す、

「砂一族、こ「「わぁああーーーーー!!!!」」」

のぞき窓に挟まっていたへび呼ロイドが
思わず声を上げたので、語尾のあたりで
アヅチとマツバが叫んで誤魔化した。

「ん?何か今聞こえた様な?」
「気のせいだろう」
「そうよ話を続けなさいよ!!」

そうそう、と
フワは言う。

「それで、あなた達
 そのお食事食べる?」

「いや、そこまで聞いて
 食べるやつはいないだろ」
「私たちを飢えさせるつもり?」

違うわよ-、と
フワはどこかに手招きをする。
「シマ―――」
ととと、と、それに呼ばれる様に
先程の少女が姿を現す。

「この子はシマ。
 うちの一族ではお薬作りを担当しているの」
「まだ見習いなんだけど」

照れちゃうわ―、
そんなこと無いわよ自信持って、と
砂一族の少女達の話を聞きながら
アヅチとマツバは動きを止める。

「……薬って」
「つまり」

スパイスという名の―――毒!!?

「ねぇ、折角だから
 もう一つの器に銀のスプーンを使ってみてよ」
フワが言う。
「え?」
「まぁまぁ、お試しあれ」

食事は2人分用意されている。
箸を付けていない方の器の食事を
スプーンですくう。

「……変わらないわね」
スプーンは変わらず銀のまま。
「でも、後からじわじわと変色する可能性も」

「失礼ね、
 そっちには死んじゃう様な薬は入っていないわよ」

シマの言葉にアヅチ達は
そっと食事を遠ざけた。

「死んじゃう様な、って」
「つまり死なないけど、
 毒は入っているって意味にも取れるけど」

「「ご明察~」」

砂一族の2人は楽しそうに跳ねる。

「あなた達の容疑は晴れた訳じゃないって
 分かってる?」
「私達の要求は、こう、よ」

フワとシマは
交互に言う。

「そのもう一つの方の
 食事を食べたら、あなた達の解放を考えてあげる」
「私が作った新しい薬が
 どう影響するか、
 お試しさせて欲しいのよ~」
「大丈夫、
 人体には害のないものだから」
「もし、体調を崩した時は
 薬を扱うという点で医療面でも優れた
 砂一族の医療でサポートするわ」

いやいやいや。

「それ、ちっとも安心感が得られない」
「そもそも、
 『解放を考える』って全然らちがあかないわ」

「そう怯えないでよ
 危ない物じゃないっていってるでしょう」

ねぇ、とフワはシマに言う。

「そう、そのお薬は
 もちろんウチでも実験済みなの
 と聞いたらちょっとは安心するかしら?」

「え?じゃあ別に俺たちで実験しなくても」

そこよー、とシマが言う。
よくぞ聞いてくれました。

「同じ薬を使っても
 私たちとあなた達では効き具合が違うのよ」

「そんな事ってあるのか?」

アヅチの疑問に
マツバも首をかしげる。

「そうね例えば感染症の薬の一つは
 西一族であれば簡単に使えるけど
 東一族だと薬の効能が強すぎて、
 一か八かの使用しか出来ないの」

「「????」」

「血筋や食生活、生活環境による体質の違いがあるわけよ
 一族で効き目が分かれる物があるの
 私はそれを色々試したいだけ」

分かったかしら、とシマ。

「これだけ聞くと
 試してみる価値あるなーとは思わない?」

あなた達だって
早く外に出たいわよね、とフワ。

「くっ!!」
「どうにもこうにも
 食べるしか無さそうね」

がっと、2人はカレー皿を掴む。(危なくない方の)

「南一族の」「豆(特産品)の神様!!」

アヅチとマツバは祈る。

「「俺(私)達に、加護を!!」」

「命を!!」「大事にーーーー!!」



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「夢幻章伝」33

2015年05月22日 | 物語「夢幻章伝」

「お前、そこかー!!?」

アヅチは、つっこまなくていいことを、つっこむ。

「ほかに、何があるのよぉ!!」
「そこじゃなくてだなぁ!! ・・・ぐふっ!!」

アヅチのお腹に、マツバのストレートが入る。

「確かに、東一族の料理はおいしかったわ!」
マツバなりの、ごまかし。
「でも、私。そちらさまの料理を、まだいただいてないから!!」

ぐぎゅるるるるるるるる!

・・・いい感じで、お腹の音が鳴る。

「そうねぇ」

砂の少女が頷く。
「確かに、食べてもらわなきゃ比べられないわねぇ」
砂の少女は、落とした食器を拾う。
「うちの秘伝スパイスがたっぷり入ってる、この料理をぉ!!」

どーーーん

「ちょっと待ってなさい。新しいの持ってくるからぁ!」

せかせかと、少女は牢を去る。

「・・・・・・」
「・・・よかったぁ」

へび呼ロイドの安堵に続いて、

「あんたね!!」

マツバの、怒声!

「うっかりツッコむの、やめなさいよ!」
「そうだよ、アヅチ!」
さすがのへび呼ロイドも、焦っている。
「逃げようなんて、ばれた日にはっ」
「ばれた日には?」

――砂一族って、人を食べるって噂だし

人を
 食べるって
  食べるって
   食べるって

     (エコー)

「噂だけど!!」
「まったく話わからねぇ!!」

(注:地の文はアヅチには聞こえておりません)

「とりあえず」

いまだに、頭ボーンのマツバが仁王立ちする。

そして、へび呼ロイドをわしっと掴み、

「行け、へび呼ロイド!!」

またも、風船(?)部分から。
のぞき窓へ!!

「まままままままま!!」
「さっきの砂が戻ってくる前に行くのよ!(牢の外へ)」
「むむむむむむむ無理!」
「そうだ、もめてる場合じゃないな」

いまだに、頭ボーンのアヅチも加勢する。

「ここを、通れ!」
「そして、私たちを助けるのよ!!」

ふたりは、めずらしく協力している。

「無理無理無理無理ぃいいいー!!」

「ここを、折り曲げ(?)て!」
「そして、そこを、ねじ(?)れ!!」
「がががががががが!!!」

最終的に

「・・・動けない」

へび呼ロイドは、
前に進むどころか、戻ることも出来ない・・・微妙な状態になる。

「オイラ・・・・挟まって、る?」

「・・・・うん」
「・・・・ええ」

どうしようも、ない(汗)。

「・・・・こりゃあ」
「・・・・困ったわね」



「あなたたち、何遊んでるの~」

この、へび呼ロイドの微妙な挟まりのタイミングで
料理を持ったフワが現れる。

「遊んでるだぁ!?」
「失礼ね!!」

「・・・てか。何か、おかしくない?」

フワは、うーーんと、牢の中を見回す。
なんだろう、この違和感。と云わんばかりに。

「おかしいって、何がよ!」
「そうだ、いったい、何がおかしいと云うんだ!!」
「そうよ!!」
「云ってみろ!!」

・・・めずらしく、ふたりが協力している。(その2)

「うーーん。何がおかしいのかしら??」

「この状況を見て」
「いったい何がおかしいと!!」

しいて云うなら、のぞき窓に挟まった、何か、じゃないだろうか。

フワは首を傾げる。

「・・・ま、いっか♪」

「フワちゃぁああん!!」

へび呼ロイドも、思わずツッコむ。

「そんなことより、ランチを持って来たのよ~♪」

フワは、隙間から、料理を牢の中に入れる。

「ほら、食べて食べて!」

「うまそうじゃん」

アヅチは料理に近付く。

「あら、」
マツバも料理に近付き、云う。
「これは?」

牢には似合わない、銀のスプーン。

にこにことフワは笑う。

「うちの土産品よ。せっかくだから使って」
「砂一族の?」

首を傾げながら、マツバはそれを手に取る。

「きれいね!!」
「でっしょー♪ 使って使って!」

結構お腹がすいていたアヅチは、料理を手に取る。

「とりあえず、いただく!」

砂一族秘伝スパイス入り、の、カレー!!
牢の中は、カレーの匂いが充満している。
こうなったら、カレーを食べないわけにはいかない!

「あ。ちなみになんだけど」

フワは、ニコニコしながら云う。
「銀の食器が変色したら、食事に毒が混じってるってお知らせだから♪」

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・はい?」
「アヅチあんたぁ!!」

マツバは容赦なく、アヅチにストレートを入れる(2回目)

「おまっ、ぐふっ!」

アヅチの手から、スプーンが落ちる。

「スプーンが変色してるわ!」

こくっと、フワが頷く。

「当たり前よ、秘伝スパイス(毒)だもの!」



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「夢幻章伝」32

2015年05月19日 | 物語「夢幻章伝」

「……俺、か」

アヅチはうなだれる。
今回の一件の
全ての原因、は。

「まあ、とりあえずは腹ごしらえよ。
 もうすぐランチだって言うし」

腹ペコなマツバは宣言する。

アヅチは、お、と思う。
この状況でこれ以上アヅチを責めずに
なおかつ話題も変えようとしてくれている。

意外と良い奴なの、かも。
なんだかんだ言って迎えに来てくれたし。

「あぁ、ここの食事結構美味いぜ。
 朝食とか、
 ただのパンとミルクだってのにな」

石釜とかで焼いてるのかなーという
アヅチに、あぁああああ、とへび呼ロイドは震撼する。

それ、多分、
昨日の夕食から何も食べていないという
空腹時に食べたから、で
そして、その時マツバとへび呼ロイドは

「そう、私たちが東で食べた
  旬の野菜を使ったオーガニック会席
  シェフの気まぐれデザート付き
 も、美味しかったけどね」

「マツバォオオオアァアアアアアオオ。
 何で言っちゃうのぉおおおおお」
「だって、本当の事だもの。
 私、嘘は嫌いなのよ」

はぁ?とアヅチが立ち上がる。

「お前ら、今、なんて……んん?」

アヅチは、ふとマツバの手元を見る。

「おい」
「なによ?」
「お前、それ、どうした?」

アヅチの視線の先、
マツバの手元の、さらに指先の。

「ネイルよ。
 アロママッサージのオプションで」

マツバの爪は、
目立ちすぎないの淡い発色のカラーでまとめられ
清潔感とフェミニンを併せ持つ
春から夏へと変わり行く今の季節にぴったりの

「満喫してんじゃねーか!!!!」
「大丈夫よ」
「何が!!!!?」

すっと、マツバはポケットから一枚の用紙を取り出す。

「次回20%オフのチケット貰ったから」

ご友人・ご家族様でもご利用いただけます。

「やらねーよ!!!!!!
 大体、確かに俺が原因なんだろうが、そもそもだな」
「まぁ、待ってアヅチ!!!」

へび呼ロイドが間に入る。

「今度また、東に行こうよ!!
 美味しいご飯を食べにさ!!
 あと、そこの所のつまり詰まった話は
 ココを出てから―――!!」

ここは砂一族の牢で、
アヅチ達は髪の毛ボーンで
今は容疑者になっている。

仕方ないとアヅチは言う。

「そういえば、
 あいつら俺たちを捕らえて
 その後、どうしようってんだろうな?」
「そうねぇ、
 良くて、容疑が晴れるまでここで軟禁って所かしら」
「悪ければ………」

マツバは思い出す。
東一族のアマキが言っていた言葉を。

『砂一族って、人を食べるって噂だし』

食べるって
食べるって
食べるって(エコー)

「何にせよ、あんまり良心的な一族じゃなさそうだな」
「あの、フワって子と言い、
 考えが読めない感じだし」

マツバはそこの所は
アヅチに黙っておく事にした。
良心的。

「とりあえず、逃げだす方法を探しておいた方が良さそうね」

うーむ、と全員が室内を見回す。
実は南一族の魔法は、かなり大さっぱだが
全一族の中で一番威力が高い。

それでも牢が壊れなかったという事は
入り口を吹き飛ばして脱出という手段はなくなる。

「となると入り口の鍵か」
「鍵」
「鍵って言ったってどうやって」
「……」

「え?」

へび呼ロイドはアヅチの視線を感じる。

「え?なになにアヅチどしたの?」

「いや、よく考えたらさ」

牢として役割を果たしているこの部屋には
のぞき窓が付いている。

「ここ、通るんじゃね」

マツバもそれに頷く。

「そうね、通るわね」

「え?」

瞬間、がっと捕まれたへび呼ロイドは
のぞき窓に押しつけられる。

「あばばばばばば」

「頑張れ、へび呼ロイド」
まずは風船?部分から。
「もっと柔らかいかと思っていたのに
 意外と弾力がっくっ」
「手伝うわ」

マツバも加勢。

「おぼぼぼぼぼぼぼぼ。
 無理無理無理無理――――!!!」


からーん、と
何かが落ちる音がして
マツバとアヅチはそちらを見る。

先程のフワとは違う砂一族の少女が食器を取り落としている。
どうやら食事を届けに来ていた様だ。

「やべっ」
「まずいわね」

逃走を図ろうとしていたと分かれば
更に厳重な牢に入れられるかもしれない。

それとも、もっと、大変なことに!!!

少女は言う。

「あなた達、最初から聞いていたわよ!!!」

ずかずか、と牢に歩み寄る。

「ウチより東一族の料理が美味しいって
 どういう事よ!!!!!」

砂一族と東一族は敵対している。
色んな事で。



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「夢幻章伝」31

2015年05月15日 | 物語「夢幻章伝」

「お、」
「おいぃいい!?」

同僚(分子)たちをまとったまま、アヅチは扉を叩く。

「お前、ちょっ、開けろや!!」
「うちの水を大量に使われて、困るわ~」
「誤解だろ!」
「きれいなお水がないと、お薬作れないよ~」
「お前!!」
「世のため人のため、お薬を作ってる砂一族なのに~」
「話聞けよ!」

アヅチは、がしゃがしゃと扉を揺する。
一方
フワはにこにこと手を振る。

「こうなったら!」

あ。こんなところで、アヅチの活躍か??

「――せよ、い――、の、~~なる」

アヅチ、早口呪文中。

(呪文は、都合により、ぼんやり表記です)

「あら? 何、魔法?」

「それ!! 部屋ごと吹っ飛べぇええええ!!」



どどど

どどどどどーーーーーん!!

爆風!!!



どどど

どどどどどーーーーーん!!

――だが

――――しかし

部屋、無事!

無事じゃないのは、部屋の中にいる3人だった。

「・・・アヅチぃ」
「・・・あんたね」

3人は、噴煙で真っ黒になり
よくあるコントみたいに、髪の毛ボーン、だった。





「ばかね~」

隠れていたフワが、再度、窓から顔を出す。

「ここは、あの東一族専用のお部屋(牢)よ」
手をパタパタ振り、フワは煙を払う。
「そう簡単に壊れないし♪」

「げほげほっ」
「ちょっ、すごい煙っ」

「自業自得!」
「お前っ!!」
「まあ、待ってなさいよ」

フワはニコニコする。

「もうすぐお昼だから、ランチを差し入れしたげる♪」

じゃあね~

と、フワは姿を消す。

「・・・行っちゃった」

へび呼ロイドは、ふたりを見る。

「ふたりとも大丈夫!?」
「大丈夫なもんか!」
「それは、アヅチがむやみに魔法を使うからぁ」
「なんだってぇ!」

「・・・まあ、冷静に考えなさいよ」

見ると、髪の毛ボーンのマツバは部屋(牢)の隅に腰かけている。

「まず、・・・」

マツバは、きっと目を細め、

「あんたら並べ!!」

その瞬間
アヅチの周りにいた分子たちは、さっと整列する。

マツバの・・・尋問がはじまる!

「あんたら、ここの水飲んだの?」

ぴ、ぴぎゃあ・・・
(訳:はい、飲みました。)

「同僚たちよー!!」
へび呼ロイドは、涙でキコキコする。

「なんで、飲んだの!!」

ぴぎゃぴぎゃぴぎゃあぁああ
(訳:なぜなら、砂漠は日差しが強く、喉が渇くからです。)

「我慢しろよ!!」

ぴぎゃっぴぴぴぎゃっ
(訳:我慢が出来るだろうか、いや、出来ない。)

「お前らなぁ! 人のもの勝手にとっちゃダメだろ!?」
「アヅチ!」
マツバが一喝する。
「恩人たちにクレームを出さない!!」
「おっ、!!?」
「今、こいつらを責めていいのは、私だけよ!!」
「・・・マツバ」
「様・・・」

いやいや!

と、アヅチはツッコむ!

「そもそも、なぜ、俺がこんな目に!」
「なぜですって?」
マツバはさらに目を細める。
「夢幻章伝25をご覧なさい!」

出番のためだったのか
それとも
目立ちたかったのか

東一族の少年たちの作業の中

畑の中心に立ってしまい

結局は、邪魔をすることになり

一緒に一掃された、

「俺・・・」

「でしょ!?」

マツバは立ち上がる。

「そもそも原因はあんたよ!!」

以上、GW明けの回想も含んでみました。



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